SCP-1961-JP

「SCP-1961-JP」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

SCP-1961-JP - (2021/01/07 (木) 19:14:54) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/04/24 (月) 15:42:49
更新日:2024/04/14 Sun 13:30:59
所要時間:約 13 分で読めます




SCP-1961-JPはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) 。
JPのコードが示す通り、日本支部生まれのオブジェクト記事である。
オブジェクトクラスSafe
項目名は「古戦場」。


概要

コイツが何かと言うと、「ウォーターライン」と呼ばれる形式、つまり喫水線とそこから上の部分を再現した、艦艇のプラモデルである。
全部で8つあり、それぞれに番号が振られている。そして、それぞれにSCP-1961-JP-Aと分類された説明書が添付されているのだ。
もちろん箱も存在するが、問題なのはそのモデルとなった船。

パッケージには「1/700 財団駆逐艦 SCPSコルグエフ」と書かれている。
つまり財団の所有する任務用艦艇を模したプラモなのである。SCPSとは「SCP財団の船」という意味である。
ところが、財団にはこんな名前の船は存在せず、またこのプラモデルの製造元とされる会社にも、こんな商品を作った記録は存在しなかった。
モノ系SCPあるあるの一つ、出所不明タイプである。

さて、コイツら8つのプラモデルの異常性が何かと言うと、実はプラモデル自体には異常性はない。
構成材質であるプラスチックは、収容当時にはまだ存在していないもので、PS樹脂よりも柔軟性や対衝撃性に優れている程度である。


問題なのは説明書と、そこで「マジカルモーター」と解説されているSCP-1961-JP-B、つまりモーターである。


まずモーターのほうだが、
このオブジェクトに組み込み、ボタン電池二つを入れて動かすと、このプラモデルはオリジナルの艦船と同等の挙動を取るようになる。
これらの各種現象はオブジェクトの異常性による映像の投影に過ぎず、外界には影響を及ぼさない。

で、どんな具合に動くのかと言うと、

  • 何もしない→普通に航行する
  • 半径1メートル以内に攻撃対象を設置→艦載兵器を使用して攻撃。なお、対象となったのは要注意団体のマークやKeterクラスオブジェクトの模型、通常の兵器など
  • 衝撃を与える→与えられた場所から煙を吹いて「損傷」
  • 港湾施設の模型を設置→寄港して損傷個所を「修理」
  • 音声で指示する→光の点滅によるモールス信号で返答しつつ、可能な限り実行

と、プラモデルであることを除けば、財団の艦船としては至って普通の挙動を示す。


そして、説明書の方の異常性はというと、ずばり認識災害である。

といっても軽度のもので、この説明書を読んだ対象者は、「自分はこの船のクルーだ」という強固な認識に取り付かれ、現実の自身の感覚失調に陥るとともに、クルーとしての自分を疑似体験するようになる。
その間、全ての行動はSCP-1961-JPの挙動に連動するが、この影響は対象自身が退艦の意志を示すか、Cクラス記憶処理で無効にすることが出来る。
軽いといっても暴露しないに越したことはないため、説明書の閲覧には制限がかけられている。

ちなみにこのオブジェクト、当初は個人経営の玩具店で未開封の状態で発見された。
機密漏えい以外には異常性がなかったためAnomalousアイテムに指定されていたが、研究主任に任命された宮田博士によって実験として組み立てられた際にこれらの異常性が発覚し、Safeクラスのオブジェクトとして分類されたのである。

で、これらのオブジェクトのうち、一つは宮田博士のオフィスに置かれ、残りは低危険度保管ロッカーに収納されている。
実験のために動かす場合、説明書をモデルに財団が作った、無害な解説が渡される。

ちなみに、宮田博士は予算の追加を申請したようだが、却下された。

AO-1961-JP-AHMIOAS-1組立実験における宮田博士からの実験経費の追加申請は受理されません。
組み立て後の異常性を確認するにはただ組み立てるだけで済むのに、なぜ普通の塗装のみに止まらず汚し塗装だのなんだのを施し、エッチングパーツとやらを用いてディティールアップする必要があるのですか?
こだわりたいなら自腹を切るように。

どう考えても、ただの宮田博士の趣味だこれ。
当然ながら却下されてるが、裏を返せば自腹でならやってもいいと認めてないだろうか。



しかし、このプラモデル、一体誰がどうやって作ったのだろうか。




















AO-1961-JP-AHMIOASには、その出自を除いて異常性は存在しません。しかし、それが内包している情報は今後の財団の安全保障にとって重要なものであり、Anomalousアイテムに適用される保管体制では情報保全が不十分なものにならざるを得ないと考えます。よって、以下の措置の実行を提案するものであります。

  • 危険性を伴わず、収容が容易な人工異常性の付与によるSCPオブジェクトへの再分類。SCP-137、SCP-387、SCP-389-JPなどの研究成果が活用できるものと考えます。
  • クリアランス3以下の職員に開示される情報においての、AO-1961-JP-AHMIOASの出自の編集。
  • および、AO-1961-JP-AHMIOASの異常性の起源、AO-1961-JP-AHMIOAS-Aの異常性の存在などに関するカバーストーリーの付与。
  • 補遺などを用いた、AO-1961-JP-AHMIOASの非危険性の強調。
  • 上記4項の措置による、クリアランス3以下の職員の関心のAO-1961-JP-AHMIOAS本体への誘導。
  • これまでにAO-1961-JP-AHMIOAS-Aを閲覧した、および今後閲覧する職員の一部へのクラス-C記憶処理の実施。


承認する。AO-1961-JP-AHMIOASは200█年11月をもってSCP-1961-JPへと再分類される。 - 日本支部理事"千鳥"



上記の記述はだいたい本当だが、説明書の部分だけはカバーストーリーである。
認識災害のベクターではない。
また、このオブジェクト自体にも本来は異常性など存在しなかった。説明書の機密性を高めるために、無害とはいえあえて財団がオブジェクト扱いできるだけの異常性、おそらくはモーターを付け加えたのである。

このオブジェクトの一番の謎は、まさにこの説明書なのだ。
説明書を閲覧するにはセキュリティクリアランスレベル4が必要であり、それ以外には継続監視にあたっている機動部隊ろ-12("魔窟住まい")の部隊員にのみ許可されている。

説明書には実は、「実物の解説」として、SCP-1961-JP-Cと分類された、財団の艦船に関する解説が書かれている。
それによるとこの船は、2000年代から2100年代にかけてSCP財団が運用した、コルグエフ級の1番艦であり、同型の各艦の名前は、過去に財団が経験した大規模戦闘の起きた地名から引っ張られているという。

説明書にはこれらの戦闘に関する簡単な解説も付記されており、このうちいくつかは、収容済みのオブジェクトの収容違反に関連しているものであった。

そしてプラモデルの製造年月日は2100年代、つまり未来に作られたプラモデルが何らかの理由でこの時代にやってきたものと考えられている。
さらに、説明書にはコルグエフ級に属する艦艇の一覧があった。


  • SCPSコルグエフ
1番艦。ロシア連邦に属するバレンツ海のコルグエフ島。ここでは1920年にカオス・インサージェンシーとの大規模な激突があった。

  • SCPSザッケンブルグ
2番艦。デンマークのグリーンランド東部に位置するザッケンブルグ山。SCP-1968「世界を包む逆因果の円環」がここにある。

  • SCPSグーチャン
3番艦。中華人民共和国の湖南省湘西州に属する古丈県。SCP-2748「湘西から来た轢殺獣車」がある。

  • SCPSオノゴロ・ジマ
4番艦。[データ削除済]。1940年代に日本支部のあるオブジェクトを相手取った戦闘があった。日本で戦闘でオノゴロ……うっ、頭が。

  • SCPSプロヴィデンス
5番艦。アメリカ合衆国のロードアイランド州に存在するプロヴィデンス市。今の所財団絡みの事件や戦闘は起きておらず、ここで発見されたオブジェクトもない。

  • SCPSルブアルハリ
6番艦。アラビア半島南部に位置するルブアルハリ砂漠。ここのオマーン領内にSCP-557「古代封じ込め施設」が存在する。

  • SCPSアークティック
7番艦。北極。北極圏には複数のオブジェクトがあるが、その中でもSCP-902「最後のカウントダウン」やSCP-2675「揺りかご」絡みではないかと考えられている。

  • SCPSホイア
8番艦。ルーマニアのトランシルヴァニア地方に位置するホイア森林。SCP-2191「“ドラキュラ工場”」がある。

  • SCPSナルト
9番艦。日本の兵庫県にある鳴門海峡。ここの海底にはSCP-477-JP「鳴門海底都市」がある。

  • SCPSエイヤフィヤトラヨークトル
10番艦。アイスランドの南部にあるエイヤフィヤトラヨークトル氷冠。SCP-1262「敵対的な茂み」が発見された場所である。

  • SCPSノイシュタット
11番艦。ドイツに同名の街が複数存在するが、いずれにおいても財団絡みの戦闘はなく、オブジェクトも発見されていない。

  • SCPSバイカル
12番艦。ロシアのシベリア半島に位置するバイカル湖。SCP-610「にくにくしきもの」の感染区域がある。

  • SCPSケーン
13番艦。北大西洋の海底にあるケーン断裂帯。SCP-2846「大イカと船乗り」における秘匿情報であるSCP-2846-Cが沈んでいる。

  • SCPSイエローストーン
14番艦。[データ削除済]だが、財団世界でイエローストーンと言えば……嫌な予感しかしねえ。


ご覧の通り。過去の戦闘からこれからの戦闘までずらり、である。
そしてこれは、とりもなおさず、これから先に大規模な戦闘が複数回、恐らくは収容違反を巡って発生する、ということである。
そのうち二つはThaimielクラスの問題児であり、これが絡んでいるレベルの大規模戦となると、その影響がどれほどのものかは想像がつく。

この説明書の記述が、未来における大規模戦闘の予言となるのでは、との予測は、巨大に成長したSCP-1262に対し2010年4月に行われた攻撃作戦と、2019年1月に発生したSCP-610との大規模戦闘により、ほぼ確実なものとなった。

現在は、これらが示唆するインシデントへの対策が進められているが、如何せんプラモの説明書に記載された簡素なものであるため、詳細が分からずこれらの試みは難航している。



だが、だからと言ってお先真っ暗なわけではない。


SCP-1961-JPから垣間見える断片的な未来は、単に財団が多くの危機に直面することのみを示しているわけではない。
SCP-1961-JPを販売することになるのは、未知の企業でも要注意団体でもない。今も存在するいたって普通のプラモデルメーカーなのだ。これが発売された21██年では、財団はいったいどうなっているんだ?
まあ、21██年の人類にもプラモデルを組み立てられるだけの暇はあるようだ。今の私のようにね。


このオブジェクトは、未来の民間企業が作ったものである。
つまり裏を返せば、イエローストーンにおける一大戦闘がおこった後も現在の社会は問題なく続いており、プラモデルに需要がある程度には平和だ、という事実を意味している。
恐らく、「三頭政治」によるサーキック・カルトとの決戦も勝利を収めることが出来たのだろう。
ただし、財団所属の船がプラモデルとなり、オブジェクトに関連する説明が付与されていることを考えると、その時代には財団とSCPオブジェクトの存在が周知のものとなっていることが窺い知れる。

存続自体はしているようだが、果たしてこれが発売されている未来の世界はどんな光景が広がっているのだろうか。



余談

元記事の著者によると、プラモのモデルとなっているコルグエフ級の艦名は、全て「財団が勝利した戦場」から引っ張られているらしい。
5番艦プロヴィデンスについては該当するオブジェクトがないが、実はこの町にはかのラヴクラフトの墓がある。クトゥルー絡みのオブジェクトでも収容違反したのだろうか。



追記・修正はプラモデルを完成させてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1961-JP - 古戦場
by Ikkeby-V
http://ja.scp-wiki.net/scp-1961-jp

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/