SCP-5350

登録日:2020/05/19 Tue 04:23:21
更新日:2024/04/15 Mon 22:40:06
所要時間:約 15 分で読めます




SCP-5350とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。

項目名は「Oculoma」……VR機器を作っているOculusとは関係はない。
どちらもラテン語で「眼」が由来という語源つながりだけどね。


オブジェクトクラスは堂々たる Keter


Safety Continues in Public



SCiPの解説の前に述べておくが、この記事はBroken Masqurade Hub(壊された虚構ハブ)に属している。

簡単にいうと「あるK-クラスシナリオを防ぐために財団やGOC達が奮戦してかろうじて世界は守れたのだが、その代償として 財団や主な 要注意団体 、アノマリーや収容の概念が全世界に周知されてしまった世界 」である。

性質

SCP-5350はインフルエンザ株を異常な手段で改変したと思われるウイルスである。
陸生動物の体組織にそのウイルスが接触するとどんどん成長して 目玉にしか見えない構造物 に変化する。
SCP-5350-Aと指定されているがこの記事では括弧を付けた「目玉」で表記する。
もちろん肉体に「目玉」が増えたからといってそれが視覚として機能するわけでもないし
目玉」は哺乳類、昆虫、頭足類のどれかに酷似している上に瞳に当たる部分が勝手にキョロキョロ動いたり拡縮したりする。
つまりSCP-5350を浴びたひとは体に「目玉」がボコボコと生えているという外見がかなり嫌な感じになる。

SCP-5350は性質はインフルエンザに近いため主な感染経路は飛沫感染となる。
つまり感染者の体液に含まれるウイルスに接触すると感染するのでクシャミや咳の飛沫を浴びると危ない。
異常性のないインフルエンザウィルスと同じ殺菌手段で死ぬが、常温ならば宿主から離れた飛沫内でも長時間生きられる。
そして「目玉」は非常に脆く破れやすく 中にはウイルスたっぷりの液体で満たされている
どこまでも気持ち悪い。
目玉」をえぐり取ること自体はできるのだが
アレルギーで発生した湿疹をちぎっても意味がないのと同じで「目玉」がボコボコできるほど感染した重症者にそんなことをしても治療には何も寄与しない。

SCP-5350の付着箇所に「目玉」がどんどんできていくため体のどこにでも発生しうる。
体の表面に付着すればそこに「目玉」ができるし
呼吸で取り込めば 体内に発生する ので呼吸器系にできると呼吸困難、胃腸内にできると消化妨害を起こす。
単純な不快感や痒みに始まり、下痢や食欲減退、熱発や呼吸困難と重症化していき
感染期間やウイルス量が比例してどんどん体内で「目玉」が続出するため適切な治療をしないと死に繋がる。
というか呼吸器や肺に「目玉」ができることによる窒息死が洒落にならず、
感染者は迅速な応急処置ができないとヤバいし呼吸器周りが助かっても重篤患者は適切な治療を続けないと 1年持たない
そして一般に出回っているワクチンや薬品が効かず根治手段がない。
この件では財団が後手に回っており全世界に「オキュラスインフルエンザ」「オキュロマ」のパンデミックが発生してから発覚した。

ただしSCP-5350の弱点と呼べる性質が一つだけ判明している。
肉を食わない生物ほどウイルスに対しての抵抗が高く、 いわゆるベジタリアンやヴィーガンは他に何もせずとも一切発症しない 」ということ。

世界の反応

もちろん危険かつ異様な感染症なのでかなりの大パニックになった上に
ネット上ではデマも流言も含めて有象無象の意見が出まくっていた。
大体はどうせ財団が権益を確保するために撒いたウイルスだろとか
せっかくコロナが落ち着いたのに財団何してんねんとか
あたしの友達のカルキストの子が目玉だらけでしんどそうとかそんなのが溢れていた。

会議は踊り、されど進む

アノマリー由来のパンデミックに対応できる組織は多くない。
それらの組織のエリートがこの世界的な危機に共同で挑むことになった。

ロス
えー…では、通称オキュロマとも呼ばれるSCP-5350についてのタスクフォースによる初の公式会議を始めます。
記録を取りますので皆さん自己紹介をお願いできますか?
私はSCP財団疫学部長のイーライ・ロスです。
本来なら私は部下に仕事を一任しているのですがオキュロマの規模と感染速度の異様さのために(…ごほん)今回は私が直接担当することになりました。
メディケイ
ハロー、メレディス・メディケイです。マナによる慈善財団の疾病災害部門を統括しています。
その…皆さんのような高名な方に囲まれて、わたくしのような者がここにいて良いのかと困惑しています。
ロス
あなたが求められたためにここにいるのですよ。
それに書類によれば自分で志望していたはずでは?
メディケイ
わたくしが申し出た時と事態が変わりすぎですわ!スケールが…大きすぎます…。
(椅子に座り込んで呼吸を荒げながら)
ブラッドリー
UIUとフリーポートの両方を代表していますセス・ブラッドリーです。
生まれも育ちもポートランドですので今回のパンデミックについてフリーポートから全権を得ています。
スリーポートでも今回の危機は人ごとではありませんので。
+ Three PortlandsまたはFree portについて
アメリカのオレゴン州ポートランド、メイン州ポートランド、イギリスのポートランド島の3か所に飛び地で領土を持っている異常能力者の組織。
昔から財団に見つからないように行動していたが財団がアメリカのUIUと連携しだすとそれを利用して
UIUに人員を送り込んで自分たちの情報を隠蔽する工作を行わせていた
ヴェールが剥がれた今も独自の活動をしつつ付き合いの長いUIUに人を送っており
(ヘッドカノンにもよるけど)無能イメージのあるUIUだがフリーポート出身の捜査官は 財団に比肩するアノマリーのスペシャリスト
アルペジオ
私はエージェント・アルペジオ。GOCとWPO*1と国連安全保障理事会の代表をしています。
ロス
皆さんありがとう。ではアルペジオ、現在の状況を教えてください。
アルペジオ
(プロジェクターを操作しながら)喜んで。
オキュロマの感染はアメリカ北西部のオレゴン近辺から広がっていきました。
その中でも最初の原因は今は財団によって破壊されているこの肉詰め工場からと推定されています。
ウイルスを作成した元凶は動物保護アナリストのエミリア・ロバーツと思われます。
ブラッドリー
ここ最近で目が二つしかない犬は見たことないんだがね…大した動物愛護家じゃないか。
アルペジオ
彼女は正体を掴まれるとすぐにPETAや他の過激派組織と接触し、自分が知る魔術やアノマリー技術を流しました。
動物実験や“虐待”を行う民間人に対して異常・非異常を問わず様々な武器で殺人や破壊行為を繰り返し
某製薬企業への襲撃の際にエミリアの仲間はほとんど逮捕しましたが彼女は脱出され、未だ足取りは掴めません。
ブラッドリー
フリーポート全域において彼女の入域は不可能になっていると断言しますよ。
シカゴでは彼女の首に高額の賞金がかけられていますし彼女の安住の地は多くありません。
ロス
なにか他にいいニュースはないのかなあ。
アルペジオ
オキュロマの蔓延スピードがただ事ではありません。
オレゴンからスリーポートランドを襲い、ウェールズからイギリスに、そしてユーラシア大陸まで広まりました。
エアロゾル感染するようになったら英国は終わりでしょうね。
ロス
(頭を抱えながら)神よ、全世界のリセットボタンに指が近づいています。
メディケイ
記録を読んでいますわ。あなたの組織は非道です!
世界を守るためとなど言って何億人も見殺しにして…。
自分を恥ずかしいと思わないのですか?財団の倫理委員会とやらは何をやっているのです!
ロス
はいはい。その時のボタンを押したのは私じゃないし今回の会議には関係ないでしょう?
それに財団がそんな非道な組織だったら先日うちの書類データ全部を4chanのクソどもが漏らした時にリセットしてるでしょ。
メディケイ
あらあら(笑)素敵な失敗ですこと。
アルペジオ
落ち着いてくださいお嬢さん鎮静剤持ってきましょうか?
神経質になるのは仕方ないかもしれませんが私のプレゼンに集中してくださいね。
メディケイ
わかりました。でもわたくしが彼と仲良くなれそうにないのは理解してくださいね(ロスを見ながら)
アルペジオ
結構です。今のところSCP-5350への対処として三つの案があります。
一つ目はGOCのPHYSICS部門が総力をあげた魔術で 地球上のウイルス全てを無効化する というものです。
ブラッドリー
それだけの規模の魔術だと地球のマントルの熱のほとんどを消費して砕けますよね。
アルペジオ
二つ目の案はGOCのPSYCHE部門が総力をあげてミームエージェントを配布して 地球上の全生物を菜食主義者に変えます
ブラッドリー
それだと世界中の肉食獣は餓死しますよね。
アルペジオ
そして三つ目ですが感染していない生物のみをシェルターに入れた後に 他のすべてを核で焼きます
(長い沈黙)
ロス
まあ…それは厳しいかな、少し。
ブラッドリー
やりすぎでしょう、少し。
メディケイ
全部ダメです!
ブラッドリー
そうでしょうね。
アルペジオ
しかし他に何か手はありますか?
メディケイ
うーん…。
ブラッドリー
えっと…なぜそんな大規模にやろうとするんですかね?
マクロで行うと消耗が激しいですからミクロでいきましょうよ。
ロス
そうですね。(うなずき)
巨大な一つの魔術よりも小さな小さな魔術を数千数万単位で行いましょう。
それなら地球のマントルではなく1人1人の体温を利用できます。
メディケイ
わかりました!昔わたくし達に届けられた 魔術注射 のようなものですわね?
アルペジオ
…なんですかそれ?
メディケイ
わたくし達が難民のために活動していた時に届いた品です。
魔術注射 と呼ばれていたんですが銀製の注射器に見たことのないワクチンが入っていて
免疫不全や病気の人間でも短期間で回復したんです。
どこから来た品かわからなかったので本部にメールで問い合わせたのですが
答えの代わりにどこの現場にも 魔術注射 の箱が山ほど届けられたんですよ。
結局あれはどこのどなたが用立てたのでしょうか…?
ロス
……さあ…誰でしょうね?ところでアルペジオその手ならどうでしょうか?
アルペジオ
概算では可能ですね。50ガロンのインフルエンザワクチンのタンクに儀式をかけて
後は投与した患者の体温で術式を維持する設計ならウイルスを壊せますし経済的にも無理がありません。
ただそれでも人類全体のために永遠にワクチンを作り続けるわけにはいきませんよ。
メディケイ
では、それにミームを組み合わせましょう。ワクチンを摂取させつつミームエージェントも併用するのですわ。
ブラッドリー
菜食主義者に変えようということかな。
メディケイ
ええ。人類全体を変えるのはともかく少しづつ広める分には良いかと。
ブラッドリー
まあ環境にとってもいいかもね。
ロス
それで人類の感染者はなんとかなるとして、後は目玉だらけになった大量の動物をどうするべきかな。
アルペジオ
GOCのPTOLEMY部門が総力をあげて開発したクローンデバイスがあります。
それを量産すれば15年もあれば全地球上の感染した動物だけを駆逐できるでしょう。
ロス
有意義な15分だったね。コーヒーブレイクを挟んで詳細を詰めようか。
暫定的だが プロジェクト・ スコポフォビア (視線恐怖症)と呼ぶことにしたい。
ブラッドリー
いいですね。
アルペジオ
了解です。
メディケイ
わかりました。

…話はまとまったようだが地上の生命の命運をかけた会議がこれでいいのか?

収容プロトコルとその結果

  • 植物性食品の摂取を奨励して肉食を避ける国際キャンペーンを張る
  • 魔術付与したワクチンと肉を食いたい衝動を軽減するミームエージェントを全世界で配布する
  • 感染者は死ぬか完全に回復するまで強制隔離
  • 機動部隊ベータ7“マッズハッター”がSCP-5350に感染した動物の終了と焼却を担当する
  • GOC由来のクローン技術でウイルスの影響を無効化するように動物の遺伝子ゲノムをわずかに操作する
  • SCP-5350のサンプルはアノマリー疾患用の研究サイト-14で保管する

プロトコルの遂行と各組織の尽力によってSCP-5350の拡散スピードは著しく鈍化した。
2026年から2030年の間に感染者数は13億から5億未満に減少し、2034年には感染は収束する見込みだが
他の大規模感染症と同じで完全な根絶は難しいため当面はKeterのまま様子を見ることに決定した。


初めてSCP-5350が生まれたオレゴンの肉詰め工場跡地で一枚のメモが見つかった。
筆跡はエミリア・ロバーツのものと一致した。

四本足の友人に絶え間のない殺戮をしているのは誰?

表面だけを見て生物の知性の多寡を判断しているのは誰?

犬の一生が豚の一生より価値があると決めているのは誰?

二つの瞳だけでは見えないものが動物にはあるのよ?


補足

なんで動物殺されるのが嫌な奴が陸上生物全てに感染するウイルス作ったんだ?と言いたいところだが
この作品は2020年JAM(即興)コンテストの参加作品で
テーマが発表されてから短時間で書き上げた作品を競うコンテストなので
細かい粗探しや設定を考察するより各団体が集まっての面白おかしい会議の内容などを楽しむべきかもしれない。
このSCP-5350がエントリーしたコンテストのテーマは「見た(eye)以上に」

追記・修正は肉を食べるのを我慢してからお願いします。


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最終更新:2024年04月15日 22:40

*1 World Parahealth Organization(世界超保健機関)世界オカルト連合下部組織かつWHOの一部門。

*2 Center Anomalous Disease Center(アノマリー疾病管理センター)の略。