SCP-2800

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SCP-2800 - (2019/03/15 (金) 23:27:40) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/12/05 (火) 13:36:00
更新日:2024/03/24 Sun 17:56:36
所要時間:約 9 分で読めます 




SCP-2800は、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
オブジェクトクラスはSafe。

こいつを説明する前に、二つほど財団についてメタ的に振り返っておこう。
一つはSCiPに割り振られる番号について。基本的に創作サイトとしての財団において、番号の4桁目はサイト内での制作された日時の順序と非常におおまかにだが対応している。
このSCiPは本家の2000番代、財団内の表記を借りればシーズンⅢに所属している。現在の財団の最新枠組みは3000番代のシーズンⅣ。
まぁ、とりあえずはこのSCiPは黎明期の物ではなく、(製作者としての)財団職員間の共通理解がある程度固まった時期の作品と認識しておけば間違いない。

二つは財団においての人型異常存在に関して。
現実改変者なんかで特に顕著であるが、基本的に財団において人型異常存在というのは中々人気をとるのが難しい。
超人枠にはアベルちいさな魔女が不動の地位を占めているし、変な能力もちの人間たちならミスターズそのパチモノがずらりと並ぶ。
こうしたメンバー達に並び立つのは簡単なことではなく、多くの人型異常存在達が「X-MENに帰れ」との一言で去っていった。
X-MENに、というのは決してただの笑いごととは言えない。つまるところ、財団においては
特殊な能力を自在に操れる、それだけの人間はもういりません」という意識が強く働いていることの顕れ、それが「ノーエックスメン」なのである。


さて。以上の通り財団の傾向についてお話ししたわけだが、いい加減SCP-2800について説明しよう。
ぶっちゃけ一言で説明しようと思えば説明できる。










SCP-2800 - Cactusman(カクタスマン)


ある日突然サボテンパワーに目覚めたので、スーパーヒーロー「カクタスマン」として活動していた男性である。



概要

財団が当SCiPと遭遇したのは、収容違反を起こしたある現実歪曲型SCiPの再収容の最中。最早我々視点では日常のような光景である。
首尾よく発見された脱走SCiPの元にたどり着くと、そこにいたのはトゲだらけの身体で脱走SCiPに攻撃を試みる謎の男
とりあえず問題のSCiPを再収容したうえで財団はこの男性を確保。
警察も足取りを掴めないサイコ野郎のシリアルキラーの居場所を掴んだので捕まえてやろうと思ったと主張する彼の観察の結果、
こいつ自身もSCiPだね、という結論から財団は彼の収容を決定した。
なお、彼の攻撃行動についてほとんど効果がなかったことが報告書に明記されている。当人視点でもあっさり返り討ちにされた、財団の助けがなければ危なかったとか。

"Cactusman, the Spiked Menace."(カクタスマン、釘刺す脅威)と自らを呼称する彼の本名はダニエル・マッキンタイア。
身長187㎝の体重76㎏、茶色の髪に緑色の瞳を備えるスコットランド人男性である。
彼の異常性の根幹はサグワロサボテン*1のDNAを含むゲノムを保有していること
このゲノムの働きによって彼は多数のサボテン由来の特殊能力を操れるのである。
……過程がすっ飛んでいるように思えて仕方がないが、それが成立してしまうのが彼がSCiPであることの証左なのであろう、うん。
なお、この性質が先天的なものなのか後天的なものなのかは明らかになっていない。当人はある日目が覚めたら突然サボテンパワーに目覚めてたと語っているが、
これがゲノムの唐突な変異を表すのか、彼の異常性への自覚を意味するのかは何とも言い難いところである。財団世界は何でもありだしね。

彼は幼少期からのX-MENをはじめとするコミックヒーローへの憧れと、学校時代の暴力的ないじめの経験から
「この力を使って困っている人を助け、過去の自分のような目に遭う人を作らない」ことを決心。
スーパーヒーローとして振る舞い、犯罪者に立ち向かうために日夜奮闘してきた、と主張している。
のちに財団は彼が行ったヒーロー活動の証拠映像を発見しており、この証言は概ね正しいようである。
彼の「他人を助けたい」という欲求は中々に強力であり、たとえ彼が助力できるようなことが何もない状況でも事態への介入をためらわない。
これに起因する複数の収容上の都合から、財団は厳重な監視の下で、適度に人のためになる単純作業を与えてやることを収容プロトコルに明記している。


詳細な異常性

……財団に慣れた人ほど、彼について疑問符が浮かんでいる頃合いだと思われる。
この言ってしまえばごくごく平凡なアメコミヒーローがなぜ財団の特別収容プロトコルの対象として記録されているのか。
なぜ明確に「最低限人間並み以上の知的能力を持ち」「異常な能力を任意に行使できる」SCiPのオブジェクトクラスがSafeに留まっているのか*2
その答えは、つまるところ彼が発揮する異常な能力とは何なのか、に集約される。以下に列挙しよう。

  • 体表全体から2~3cmのトゲを生やす。トゲは自発的分離か自然分離によって外れる。
  • 気孔に類似した孔を通じて二酸化炭素を吸収しCAM型光合成*3を行う。孔を通じた排泄物のやり取りもできるが、「著しく不快」とのこと。
  • 常人の3倍程度の高効率な水分利用と、常人の5分の1程度の尿素産生。後者は植物のアンモニア等貯蔵メカニズムに由来すると推測されている。
  • サボテン由来の高度な冷却メカニズム他による、常人を上回る耐熱・耐乾性。
  • 他のサボテン科植物との共感能力。この能力を通じたコミュニケーションは、SCiPと植物双方を常識的な範囲で活性化させる。

ちょっと便利そうなのは間違いない。間違いないのだが……
……ヒーローの能力としては、そしてSCiPの異常性としても、悲しいほどにしょっぱい。

よくよく思い返してみよう。
彼の異常性はあくまでもサボテンDNAを含むゲノムを持ち、それが正常に機能していることに由来している。
なるほどその前提が成立するならば、サボテンの物理的な性質が発現することくらいは起きてもおかしくないかもしれない、そこまではいい。
だが、サボテンのDNAから例えばゴリラな筋肉、狼な牙が生まれるだろうか。流石にそんなわけはないだろう。
あるいは「遺伝子は普通だがSCiPなサボテン」由来のパワーだったとしたら何が起こるか分かったものではないが、
財団の調査結果はSCP-2800の異常性は正常なサグワロサボテンの物理的性質の発現に留まるとその可能性もバッサリと切り捨てている。
サボテンで空は飛べない。サボテンで銃弾は防げない。サボテンで世界を操る知性は、現実を変える力は手に入らない。サボテンダーの様に棘を飛ばすことすら出来ない。
ついでにやっぱり光合成できる()ザカリー・キャラハンと違って精神的影響性もない。
彼はどこまでいっても、ごく普通のヒーローになりたかった男性でしかない。サボテンのようにトゲを生やし、それで殴りつけることはできる。
だが、それ以上の特別なことは何もできない一人の平凡な男性の域にとどまってしまうのだ。
万が一彼が突如発狂して暴動を起こしたり財団を悪の組織と認定したとして、よしんば今まで見せていた正義の心が全て演技だったとして、
脅威度は サボテンの武器と防具に身を固めた一人の平凡な男性が殴りこんでくる のと何ら変わらない。

言葉を選ばず言ってしまえば、カクタスマンはどこぞのポンコツロボットと同様に、
収容を行った現時点で、およそその存在が財団にとって脅威足り得ないゆえにSafeクラスオブジェクトなのである。
人並みの力と知性はあるので、流石にアレよりは上だろうけどさ


収容上の問題点

さて。彼の能力は日夜世界崩壊の危機と戦う財団にしてみれば些細なものである。
問題なのはカクタスマン当人視点でもこの能力がささやかすぎることである。

カクタスマンがヒーロー活動に挑んできたことは既に述べた。
その気質上彼はこの活動に極めて精力的に挑んできたのだ。……全く歯が立たなくとも。
Louef博士: 最初のミッションとはどんなものだった?

SCP-2800: 麻薬ディーラーの男さ。僕は顔面を殴って、棘を何本かそこに残してやった。すごく良い出だしだったよ、そいつの仲間が殴り返してくるまでは。
警察が現れるまでボコボコにされたね。僕はしばらく入院して、それからまた犯罪と戦うためのパトロールに戻った。
カクタスマンはあんなちゃちな犯罪者にやられっぱなしじゃないってことを見せないといけないからね。

彼の武器はトゲだらけの肉体一つである。彼は信念をもって、それだけで悪と戦うことを受け入れた。
SCP-2800: 僕は全力を尽くした。仕事の後で毎晩何箇所も裏通りをパトロールした。時々、運次第だけど、揉め事が起きている場面を見つけた。
でも、うーん…僕はあまり助けになれなかった。

Louef博士: 詳しく説明してくれるか?

SCP-2800: 犯罪と戦おうとして出ていくと大体いつも、倒そうとした凶悪犯に叩きのめされるんだ。
確かに、僕は2、3発良いヒットを入れて、そこに何本か棘を刺して、あちこちに青あざを作る。でもそれだけじゃ決め手に欠けるんだよね。
そいつらはナイフやその辺のがらくたを持ち出してくる。だけど僕は素手だ。ナイフを使うヒーローなんている?
ヒーローなら子供に良いメッセージを伝えなきゃ。そうでしょ? スーパーヒーローは、子供のお手本でなきゃいけないんだ。

ヒーローとしてのカクタスマンは孤独である。サボテンの相棒はいる。彼らと言葉を交わせば肉体は活性化して代謝を強め、多少は心安らぐ。……多少は。
Louef博士: サボテンたちはどんなことを話すんだ?

SCP-2800: んー、あんまり。無口な連中なんだ。「ここすごく寒い」「のどかわいた」「わたしサボテンです」とか、何やかや。それぐらいかな。
Taleではもう少ししゃべるんだが、どのみち話すことはサボテン側の事情に限られる。

悪に打ち勝てないたびに、困っている人の助けになれないそのたびに、彼は己の無力に苛まれる。
このためにカクタスマンは慢性鬱病、英雄症候群を含む複数の精神疾患を抱えており、
能力的不足により他者の助力に成功しない事実にフラストレーションを示し、時として自傷行為を示す
財団はSCP-2800の保護の上でこの危うい精神性が最大の懸念と見ており、自殺に対する警戒監視下に置いたうえで
手を尽くして彼の精神的負担の軽減を図っている。

明日の行方も知らない財団世界に生まれたヒーローに、救いはあるのだろうか。


余談

SCP-001の記述の一つ、「カリーニンの提言-過去と未来」。
この中でSCP-001の活性化に伴う各種SCPの性質変化等が大量に確認されるわけだが、
その中にSCP-2800も登場している。で、その変質したSCP-2800の略記された内容がこちら。
全員、光合成が可能で、水分を高効率で利用する能力と、熱に対する高い許容値と、体から自由に棘を伸ばす能力と、
他のサボテン科植物と共感できる能力を備えた異常な男性及び女性ヒューマノイド群とメスの犬型存在。
まさかのカクタスバース開幕。なお、個体それぞれの性質に変化があるようには見えないにもかかわらず、
「収容の回復に失敗している」とのこと。どんだけ増えたんだカクタスマン。



子供が記事を開いて何かを書く。SCP-2800が立ち去ろうとして、子供が呼び止める。
子供はSCP-2800に記事を手渡す。SCP-2800は追記修正をして、子供にそれを返す。


SCP-2800 - Cactusman
by weizhong
http://www.scp-wiki.net/scp-2800
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