おんな城主直虎

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おんな城主直虎 - (2018/01/16 (火) 00:33:30) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2018/01/12 (金) 16:19:00
更新日:2024/04/27 Sat 13:32:40
所要時間:約 18 分で読めます




「おんな城主直虎」とは、2017年に放送された第56作目のNHK大河ドラマである。

【概要】

戦国時代(主に桶狭間の戦いから本能寺の変まで)の現在の浜松を舞台に、弱小勢力である井伊家の人々が知略を尽くして生き残り、やがて徳川の重臣になるまでを描いた物語である。
主人公は女性でありながら一時期井伊家の当主を務めた井伊直虎
……だが、放送直前になって男性説*1が発表されたりするなど、資料が少なく実像はよくわかっていない人物であり、作中で描かれるエピソードもほとんどが創作である。


序盤では今川の勢力圏で圧迫される井伊家の悲哀が描かれ、直虎の領主就任後は戦や粛清によってロクな人材がいなくなってしまった中小企業の悲哀めいた復興劇、
そして徳川・武田勢力の侵攻という悲劇を経て、直虎の教えを受けた万千代(後の井伊直政)の出世物語へと繋がっていく。

史料の制約もあってか、本作は同時代を舞台とした他の大河ドラマがこれまで描いてこなかった部分に積極的に光を当てているのが大きな特徴。
徳政令などの経済的紛争・解死人や持衰といったこの時代特有の風習・人身売買などのタイムスクープハンターを思い出しそうなシビアな現実・市井の人々の生活などが物語に取り込まれ、
多くの視聴者を驚かせた。
また、小野政次・瀬戸方久・築山殿・今川氏真・酒井忠次といった、これまでいいイメージが無かったり、立場の割にあまり光が当たらなかった人々を掘り下げ、再評価している点も大きな特徴である。
中でも小野政次は本作を代表する人気キャラとなり、通説の「井伊家乗っ取りを画策した奸臣」という評価がこの一作で覆されそうな勢いである。

女主人公とそれを取り巻く男たち、いう二年前を思い出すキャラクター、史料の少なさからゆえに良くも悪くも自由度の高い題材、
意外と取り上げられない家康の躍進期と没落する今川、という読めない要素と
ヒットした「真田丸」と重複する時代、という嫌でも比較してしまう事情から放送前は不安視する視聴者も多かったが、
疑心暗鬼や粛清が闊歩する戦国ならではの暗さ・息苦しさを取り上げ、細かい台詞や演出などにも、歴史ファンからすると思わず膝を打つような場面が多く
(一例を挙げれば、信長の「徳川殿の好きにいたせ」という台詞の新解釈など)、通好みの作風として一部では非常に高く評価されている。
一方、前作「真田丸」に続くコミカルな描写や、題材的に仕方ないとはいえ史実性に乏しく創作部分が殆どを占めるストーリー、オリキャラが活躍する場面が多いことなどには苦言の声もアリ、
ある意味「平清盛」や「真田丸」以上に評価が分かれた作品でもある。
全話の平均視聴率は歴代大河ドラマワースト3位の 12.8% だが、2017年のツイッターで最も話題になったドラマとして「#Twitterトレンド大賞」ドラマ部門で1位を獲得したり、
地元の「大河ドラマ館」の入場者数があの『篤姫』を抜く 歴代2位 を記録するなど、視聴率だけでは図れない人気の証明も持つ。
有名大河レビューサイトでの評価もほぼ真っ二つに分かれており、近年では最も議論を呼んだ作品とも言える。
とにかくこれまでの大河の枠に囚われない異色の一作であることは間違いない。



【名(迷?)台詞・名(迷?)場面】


先述したように、本作はこれまでの大河では描かれなかった史実や当時の価値観が大きな魅力であり、また有名な事件などについても度々独自の解釈を行っている。
これらは人を選ぶ面もあるが、視聴者に強烈な印象を与えたことは間違いなく、放送中はしばしばSNSなどで大きな話題となっていた。
一件ネタのように聞こえる場面なども、当時の価値観を忠実に反映していたり、後々の伏線になっていることも多いので油断できない。
ここでは代表的なものをいくつか挙げておく(「さわやかサイコパス」や「槍ドン」については登場人物紹介参照)。

◆政次「ここはかつて南朝の皇子(みこ)様が……」

直親から無茶振り(後述)された政次必死の弁明シーン。
南朝ゆかりの土地であり「井伊の領地でありながら井伊の領地に非ず」という理屈であるが、前振りもなくいきなり南朝なんて単語が飛び出しポカーンとした視聴者も多いだろう。
しかし実は往時の井伊は後醍醐天皇の第四皇子である宗良親王が逗留しており、伝承ではこの地で子供(尹良親王)まで作ったと言われるほどのガッチガチの南朝方だったりする。
つまり政次が出任せで言ったわけではなくきちんと歴史に準じた言い訳であり、歴史マニアというか南北朝マニアを唸らせたシーンの一つ。
……おい誰か劇中で説明しとけよ普通の視聴者はしらねーよ。


◆直虎「我はこれでも女子でな! 女子は血など見飽きておるからな!」

ハラスメントに厳しいこのご時世にド直球のセクハラを行う主人公。
材木泥棒の頭こと龍雲丸の処遇を巡って「打ち首にしろ」と主張する政次に対して、理屈は分かるがこれまで色々と縁のあった龍雲丸を殺したくない直虎。
その煮え切らぬ態度に「血を見たくないだけだろ」と政次が煽ったらとたんにコレである。これだから井伊家は……
言われた政次の顔も必見であり、さらにその後「本当に守りたいものは何だ」と言い返す政次のセリフも併せて
「スイーツ大河」と揶揄されたいくつかの作品とは一味違う激辛スイーツっぷりことを改めて視聴者に示したやり取りである。


◆龍雲丸「人なんか買えばいいじゃないですか。たまに売ってますよ」
 直虎 「人を、買う……その手があったか!!

日本史上最大級の地雷を嬉々として踏みに行く主人公。
人身売買は古代から近現代まで日本に厳然と存在した制度であり、戦国時代でも多くの大名がビジネスとしての奴隷狩り・人身売買を行っていたことは知られているが、
物語の主人公(しかも女性)が行う人身売買をポジティブに描くとは、まさに前代未聞である。
周囲も諫めるどころか、「商人を通したらマージンをぶっこ抜かれるから、『所有者』から直接買いましょう」などと、的確なアドバイスをする始末。
まさに戦国。


◆力也「男か女かわからねえが、どっちにしろ上玉だ」

これまた当時の価値観を如実に表現した台詞。後の家康と直政の関係の暗示とも取れる。
なおこのセリフが出た回は、
「領主でありながら自分で財布を持ち歩いていた直虎がスリに合い、家臣を置いて自ら追いかけた結果犯人グループに拉致され身代金を要求される」
という、よくよく考えると突っ込みどころ満載の展開であったが、多くの視聴者は

「まあ、(このドラマの)井伊家ならしゃーない」

と納得した。



◆投げ草履

家康に仕えることは叶ったものの、草履番という最下層に落とされてしまった万千代。
そこでもあまりに多い草履を捌ききれず悪戦苦闘。
そんな彼が編み出した技が、草履棚から取った草履を持ち主の足元までスライディングさせ、キレイに揃える」というトンデモ技であった。
放送当初は「無礼すぎる」「ありえん」と批判が殺到したのだが、実は江戸時代に存在した正しい作法である。(ただし出現したのは江戸中期ごろで、万千代が創始者というのはもちろん創作)。
どう考えても手で持っていったほうが早いように見えるが、この作法が一般的だった当時はむしろ、
「下郎がのこのこ歩いてきて、主の前に出るなぞ無礼千万」という考え方であった。
そのため草履番は、主が外出しようとする際には、身分の低い身で主の視界に入らないように注意して、
命じられるよりも早く的確に草履が揃った状態で投げられる技を日頃磨いておくことが肝要とされていた。
無駄に洗練された無駄のない無駄な作法の実例と言えるだろう。
一件ネタに見えるシーンでもちゃんと史実を踏まえているという、本作の独特の楽しみ方を象徴するシーンである。



◆劇団徳川

終盤のクライマックスになった本能寺の変についても、独自の味付けがなされた。
そもそも

明智光秀「信長様は徳川殿の命を狙っているといったな?あ れ は 嘘 だ

というとんでもない展開から始まった本作の本能寺の変。

石川数正が

「我らを殺すと見せかけて他の者を殺す……と見せかけて、やっぱり我らを殺すんじゃないですかね?」

などと、作中人物も視聴者も混乱させるセリフを吐いたりする中、穴山梅雪と同行中に信長横死の報を受ける徳川一行。
事情を知っていたせいで不自然なリアクションになってしまった一行は、穴山から怪しまれていることを察すると、

「このままでは信長様に申し訳が立たん。切腹する!!」(棒)
「いえ本当に信長様を思うなら京に上って仇を討ちませんと」(棒)
「いえそれには手勢が足りないので一端浜松に戻りましょう」(棒)
「「「えいえいおー!!」」」(棒)

穴山「」

という猿芝居を全員でうち、視聴者の腹筋を崩壊させた。
ただのギャグシーンではなく、史実でも家康は同じ状況で切腹すると言ったとされているために史実準拠のエピソードであり、
(「直虎」では)謀反のことをあらかじめ知ってるくせに切腹するとまで取り乱した理由付けとしてこんなギャグシーンになったと思われる。
それにしても、大河ドラマで2年連続で伊賀越えがギャグパートになろうとは……



【登場人物】


井伊家と井伊谷の人々



  • 井伊直虎(演:柴咲コウ)

主人公。本来の名は「おとわ」で、領主時代のみ直虎と名乗る。
政次はおろか直親よりも領主向きのキャラ、というある意味王道な女主人公。
今川との取引で一度は出家したが、家の為土地の為に、と一族の男たちが勝手にどんどん死んでいったので領主となる。
幼少期から領主時代は、知識や策謀に欠ける欠点を行動力と機転と諦めの悪さでカバーし、最初は軽んじていた家臣や領民からも次第に慕われていく。
直政を失い、井伊家が断絶してしまった後は、「家や領地などというものがあるから争いが無くならない」という思いから当時の既存の価値観に背を向け、
表向きは一介の農婦として生きながらも陰で領主や近隣諸国に影響を及ぼすという、新しい生き方を模索するようになる。
帰農しつつも政治的な影響力や庶民の人気をしっかり持ってる前領主とかいう爆弾を抱える羽目になった近藤殿は泣いていい。
酒乱の気があるのか、直親はじめ仲間や家族を次々に失ってしまった際には昼間から酔って槍を振り回すという壊れっぷりを見せた。
こんな女主人公見たことねえ。
また他の女性大河主人公が「人妻」・「バツイチ」・「バツイチ未亡人」・「再婚未亡人」と殆ど(『三姉妹』は情報不足のため詳細は不明だが)作中で結婚しているのに対し、生涯独身という大きな違いがある。
領主時代の衣装は時代考証担当者の渾身の一作らしく、実際よく映えているが、農婦時代のほうがかわいいという声もちらほら。


  • 小野政次(演:高橋一生)

直虎の幼馴染にして井伊家家老にして今川の目付。幼名の鶴丸から通称鶴。
本作の実質的な主人公という声も根強い、本作を代表するキャラクターで、本作の「落として上げる」芸風の象徴的存在。
幼少期に父が直親の父親の謀殺に加担したことを目の当たりにしており、自分は父のようにはならないと誓っていたが、
今川家の罠に嵌り、直親を見殺しにせざるを得ない状況に追い込まれたことにより闇堕ち
この時の目の光が消えたような演技は多くの視聴者を震撼させた。
その後は今川側の人間として、直虎に隠居を迫り、数々の妨害工作を行って他の家臣と対立する。
しかし実際には、闇堕ちしたように見えて内心では直虎を守るために行動しており、そのことを直虎に悟られたことによって和解。
徳川の侵攻の際、直虎と一芝居をうって井伊家を乗っ取ったように見せて結果的に井伊谷の人々を守るが、
自領の材木を盗んだ龍雲丸を匿ったことを恨む近藤により罠に嵌められて処刑される。

この時、政次の決意と覚悟を知ったおとわは、磔刑場に乗り込んで自ら政次を刺殺(通称・槍ドン)。
政次に対して恨み言を述べながら、

「お前の悪名は代々語り継いでやる」

と告げ、周囲にその姿を見せつけることで井伊家を守り、かつ政次の想いも守り抜いたのであった。


なお、今川側に見せかけて実は直虎側であることは今川家にもバレていた上、直虎が井伊家内に「実は政次はこちら側だ」とバラした時にも

「「「知ってた」」」

と全員に答えられたため、政次の演技は奏功していなかった模様。不憫。

ついでに言うと史実では息子がいたので普通に結婚していたものと思われるが、本作ではバッサリカットされ、生涯独身のままだった。
代わりに弟の妻であり、未亡人となっても自分に寄り添ってくれていたなつに求婚したが、タイミングがタイミングなので完全に死亡フラグであった。


  • 井伊直親(演:三浦春馬)

直虎・政次の幼馴染で、直虎の元婚約者にして初恋の人。幼名の亀乃丞から通称亀。
父が今川に粛清され、自分の命も狙われたため、幼くして亡命する羽目になる。
成人して期間後は、文武に長けた立派な若武者として、井伊家の期待を一身に背負うことになる。

……が、その爽やかさの合間から漂う胡散臭さから視聴者の間でつけられた綽名は「さわやかサイコパス」
それも視聴者の深読みや誤解の類ではなく、死後にネタばらしがされ作中人物からの評価が急落するという珍しいキャラ。

その片鱗は領主時代、今川の検地を誤魔化すために裏帳簿作って一部の土地を隠そうぜと政次に持ち掛け、「自分に任せておけ」と大見得を切りながら、
いざ隠した土地の存在が発覚すると、

直親「私は帰参したばかりでよくはわかりませんが、ここは井伊の土地ではありません……そうであったな、政次!!
政次「Σ(゜д゜;)」

まさかの政次に丸投げ。まさにこれはひどい。
その後今川家のの偽徳川家康作戦に引っかかって粛清されるのだが、それまで散々「俺にはおとわしかおらん」「逃亡先でもいつもおとわのことを考えていた」
と言っていたくせに現地妻と隠し子の存在が発覚(隠し子の登場時点では本当に直親の子かどうかは未確定だったが、その後のエピソードでほぼ確定)。
八方美人っぷりがバレたおとわと正妻のしのに「このスケコマシがー!!」と罵倒されることとなった。
しかもその親子は直親がいなくなった後に生活に困窮する、という追い打ちまできっちりかけられる。


  • 龍雲丸(演:柳楽優弥)

史料に登場しないオリキャラ。直虎の領主就任後、深刻な人材不足に陥っていた井伊家に現れた救世主。
盗賊団の首領であり、材木盗みによって近藤に捕まり処刑されそうになるが、色々あって井伊家に匿われる(このことが政次が処刑される遠因になる)。
多くの盗賊を統括するのみならず、築城も密偵も操船も戦もできてしまう超ハイスペックキャラ。
仕えたのが弱小井伊家でなかったら、一廉の人物として歴史に名を残したに違いない。
井伊家滅亡後は、直虎と事実婚のような形で同棲していたが、自らの追い求めるものと直虎が守りたいものの違いを悟って道を違える。
「実は武家出身」「実在した堀川城に入った」などの設定から、実はただのオリキャラではないのではないかとも予想され、
真名の候補として「新田友作」「呂宋助左衛門」「山田長政」などが挙げられていたが、一家の商人として世を去った。


  • 南渓(演:小林薫)

直虎の大叔父に当たる、井伊家の血を引く僧侶で龍潭寺の住職。
一話から最終話まで出続けた珍しいキャラ。
井伊家の知恵袋的存在で、難題を鮮やかに解決する策士……と思いきや、

「今川館が火事で焼ければワンチャン」
「先のことはわからん!! 諸行無常じゃ!!」

などと無責任なことを言って幼いおとわを絶望の淵に叩き落す困ったおじいちゃん。
ただし臨機応変な対応は苦手な代わりに大局観には優れているようで、「直虎を領主に据え、虎松に井伊家再興を委ねる」という策は結果的に成功している。
初登場シーンから飲酒していたり、宗派的にタブーであるはずのネギを寺で栽培してたりするフリーダム住職。
そんなんだから村人からも「(無くなった酒は)和尚が飲んじまったことにすればいい」とか言われる。
なお、彼がいつも抱いている猫、通称ニャン渓も隠れた人気キャラ(中盤で世代交代する)。

作中で実は井伊の血族ではない(母親の不義の子)ことを仄めかしているが、これも最近の研究を踏まえている。

  • 傑山(演:市原隼人)
龍潭寺の美坊主その1。おとわ時代から直虎を見守る兄貴分。
弓に秀でたバトル坊主でもあり、しばしば井伊谷の面々の護衛役を任される。
元ネタは、井伊直政が小牧・長久手の戦いで出陣する際に南渓から派遣されて共に戦い、後に南渓の次(三代目)の住職になった強弓の傑山宗俊。

  • 昊天(演:小松和重)
龍潭寺の美坊主その2。筋骨隆々の傑山とは対照的に柔らかな物腰のインテリ系
と思いきやこちらも槍や長刀の扱いに長けたバトル坊主。
元ネタは、井伊直政が小牧・長久手の戦いで出陣する際に南渓から派遣されて共に戦い、後に傑山の二世後(五代目)の住職になった長刀昊天こと昊天宗建。


  • 中野直之(演:矢本悠馬)
直虎の領主時代の重臣。後に近藤、その後万千代に仕える。
直虎からのあだ名は「之の字」。
当初は女性でかつ政治経験もない直虎に反発しており、見ているほうが脳の血管が切れそうになる激しい口喧嘩を繰り広げていたが、やがて無二の忠犬忠臣となる。
視聴者からのあだ名はチワワ。
武芸に優れ、弓を使わずに矢で敵を射れる程度の能力。
当初は脳筋キャラだったが、終盤では長篠の戦の戦況を解説したり間者を見破ったりと、智者としての一面も見せている。



  • 奥山六左衛門(演:田中美央)
直虎の領主時代の重臣。後に近藤、その後万千代に仕える。
直之同様、当初は反発していたが、直虎の撫民の精神に触れて感服し、

「自分は政治もわからないし、馬にも乗れないし弓も弾けないけど、農作業だけは頑張ります!!」

などとズレた決意を述べて、直虎&視聴者に「いや政治を覚えてくれ」という目で見られた。
直之と違い、終盤までどこか頼りないキャラのままであり、直虎に「武家やめれば?」とか言われる程であったが、その人柄はしばしば周囲の人間を和ませている。

ちなみに中野直之と奥山六左衛門のコンビは放送中に行われた企画で「ユキロック」と言うコンビ名が付けられたが、劇中ではコンビを組んで活動する機会は後半以降意外と少なくなっている。


  • 瀬戸方久(演:ムロツヨシ)
商人出身の家臣。かなりマイナーだが実在の人物。
初登場時は「解死人」という、村人に世話をしてもらっている代わりに何かあった時には生贄として殺される役目を負った人間として生きていた。
幼少期のおとわを助けて褒美を受け、それを元手に財を成した。
自ら「銭の犬」というほどの根っからの商売人で、倫理観などはあまり持ち合わせていなかったが、
城主として入った堀川城の落城を目の当たりにしたことで思うところがあったのか、以後は薬を商いにするようになる。
しかしそれでも銭の犬と言う心は変わらず、良いアイデアが浮かぶと「カーン!」と叫ぶのは終盤まで続くお約束となった。

史実では徳川の侵攻の際、真っ先に寝返って本領を安堵されたことから、井伊家寄りの資料では「わが身可愛さに主家を裏切った奸臣」とされることが多かった。
政次同様、本作で悪いイメージを払拭できた人物である。
なお史実では江戸時代に入った頃に処刑されている


  • 近藤康用(演:橋本じゅん)
今川から派遣された井伊家の監視役・井伊谷三人衆の一人であり、政次を処刑した張本人。もみあげと胸毛が濃い
政次の死までは完全な悪役として描かれており、子孫の方がSNSで不満をこぼすほどであったが、根は勇猛な武者であり、
直虎と和解後は的確な見識によって井伊谷を治め、広い度量で人々に接する愛すべきキャラクターとして描かれている。
「弓の空撃ちは怪我をするぞ!!」は名言。


  • 井伊万千代(演:菅田将暉)
直親の息子。幼名は虎松(演:寺田心)で、後の徳川四天王井伊直政。終盤の実質的な主人公。
徳川の侵攻時、父と同様に亡命を余儀なくされるが、帰参後は徳川に臣従。
その中で勲功を挙げて出世していき、井伊家の再興という悲願を果たす。
直虎・直親・政次の3人から薫陶を受け、結果的に3人の長所と欠点を兼ね備えた人物に成長する。

幼少期から「自分の母親を人質に出さないために他の女を生贄にする」というなかなかの鬼畜っぷりを見せるが、
帰参後(成長後)も
  • 井伊家の再興を優先するあまり、亡命中に世話になった松下家を滅亡の危機に陥らせる
  • 今は近藤のものである材木を、近藤にもおとわにも内緒で勝手に売り飛ばそうとする
等の傍若無人な振る舞いを繰り返す。どう考えても父親の遺伝です。本当にありがとうございました。
おまけに再登場後もしばらくは血の気の多く出世に燃える若武者であったが、やがて徳川家の中で成長し、文武に長け周囲にも慕われる名将になっていく。
血の気の多さは最後まで治らなかったがな!

なお彼の子孫は大河ドラマ第一作『花の生涯』の主人公にして、自身の死後その悪名により仲の良かった女性を不幸にしてしまった彦根城主・井伊直弼だが、
今作のナレーションは2008年の大河ドラマ『篤姫』でその井伊直弼役を演じた中村梅雀が務めている。
また、直虎の翌年、2018年の大河ドラマ『西郷どん』も幕末が舞台ということもあり井伊直弼も登場するが、演じるのは今作で今川家の軍師・太原雪斎役を演じた佐野史郎である。



今川家


東海一の弓取り。
ほとんどセリフのない春風亭昇太の怪演が話題を呼んだが、いつの間にか死んでいた(byたい平)
当然某番組でも度々ネタにされており、
本人も「いい答えには座布団を差しあげます。悪いと切腹です!」と笑顔で述べた事があった。



義元の後継者。直虎にとっては宿敵の一人にして、生涯の腐れ縁の相手。
予想外の父の急逝で今川家当主となるが、それは唐突過ぎて、しかも周囲の相手が悪すぎた。
しかし大沢基胤のように武田と徳川の同時侵攻と駿府陥落後も彼に付き従う臣下もおり、自身も懸川城に籠り家康を苦しめるなど決して暗愚ではない。

今川の当主時代は、その器量にそぐわぬ過大な役割を背負わされたためか、御家の維持のために奔走し余裕のない狂気を滲ませる悪役として描かれていたが、
今川の滅亡後はむしろその重責から解放されたためか、自然体で振る舞い利害を超えて活躍する好人物という、守護大名という良家のおぼっちゃんらしい人物。
暗愚ではないが盛り過ぎでもないこの描き方は秀逸と、今川ファンからも概ね好評。
あと政略結婚にはとても見えぬ嫁との仲の良さも見どころ。末永く爆発しろ。


  • 寿桂尼(演:浅丘ルリ子)
義元の母・氏真の祖母。桶狭間以降の実質的な今川の当主にしてデスノートの使い手。バケモノその一。
今川家を守るための非情さと、孫の氏真に縋られれば死の淵からも生還する逞しさを併せ持つ人物として描かれており、こちらも評価が高い。
直虎との面会で直虎が自分に似ていることを認識し、分かり合えた結果として

「自分と似ている考えをする奴は、必ず今川を裏切る」

と結論し、死の帳面に直虎の名を書く。
言い換えると彼女自身、今川はどうにもならない、と考えていたのがまた悲しい


徳川家


  • 徳川家康(演:阿部サダヲ)

「真田丸」から続いて本作にも登場。一人で碁を打つ変人で、悪人ではないが食えない人間。
本作では本来戦嫌いの家康が、信康事件や高天神の戦いを経て目指すべき道を意識する過程が描かれており、家康の成長物語でもある。
三方ヶ原のアレと直政との男色ネタはきっちり消化した。
あとやっぱり狸呼ばわりされ、それどころか終盤の宴席では狸の格好までした。
初登場の10代の頃から阿部サダヲ氏が演じたことも話題となった(大河だと他にも似た様な例はあるが)。
また阿部は同年、2019年度の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主演として指名された。


  • 瀬名(演:菜々緒)

家康の正室。史実では築山殿の名で知られる女性。
実は母親が井伊家出身(南渓の妹)であり、井伊家の血を引く者でもある。
従来は「武田と通じて織田家を裏切り、嫡男信康が粛清される原因を作った悪女」とされることが多かったが、
本作では「今川領を徳川のものとする」という野心こそあれど、夫を支え息子を愛する賢妻として描かれている。
能面踊りシーンは少々シュール過ぎるが……
「ああ、め で た や め で た や」


  • 石川数正(演:中村織央)

この時期の徳川家の筆頭家臣。
家康の離反によって死を待つ身であった瀬名と信康を助けに奔り、以後も瀬名らの側近のようにして動き、瀬名の最期を見送った。
その後自害しようとして忠勝に止められ、忠次に「一緒に恥を忍んで、徳川のために尽くそう」などと言われるが、
史実では「真田丸」でも描かれたように結局この後出奔してしまうので、やはり割り切れなかった模様。


  • 酒井忠次(演:みのすけ)

徳川四天王の一人。他の四天王とは年齢差が大きく、活躍した年代も古いため、四天王の中では最もマイナーな人物(ラノベ関連だと『境界線上のホライゾン』に同名の人物が登場しているが)。
本作では珍しく出番が多いが、気賀城攻めで独断行動をしたり、万千代に小姑のような嫌味をしたり、信康事件の原因を作って家康に「織田家に行っちまえ」と言われたりとあまりいいところがない。
しかし上記の数正へのセリフからもわかるように、主家への忠義は本物。



徳川四天王の一人。徳川家の中では早くから万千代に目をかける。その姿はさながら部活の先輩と後輩。
無骨な武人のようでいて、直虎には盛大にデレた。美人耐性が無いのか、尼フェチなのか
真田丸の暑苦しい舅殿とは全く違うようでどこか似ているという、両作品の繋がりを感じさせるキャラクター。


  • 榊原康政(演:尾美としのり)

徳川四天王の一人。一件冷徹なようでいて、万千代らの働きぶりはしっかり評価している。
政次や信長と並ぶ本作最大級のツンデレ。


  • ノブ(演:六角精児)
万千代らの後釜として草履番に任命された冴えない中年男。胡散臭い雰囲気を漂わせるその正体は何とあの本多正信
初登場時に妙な鷹匠だったので、詳しい人はピンと来るのがまた憎い演出。
三河一向一揆の際に徳川から離反した前歴から、忠勝らから疎んじられる描写もきっちり描かれ、
終盤には伊賀を越える一行の前にひょっこりと現れて後のサドの守の片鱗を見せ、視聴者を戦慄させた。

  • 小五郎(演:タモト清嵐)
家康の小姓頭。ノブ曰く酒井忠次の一門。万千代の嫌味な先輩。
元ネタはおそらく忠次の長男、家次。

その他


  • 織田信長(演:市川海老蔵)
言わずと知れた第六天魔王。誰もが納得の織田信長っぷりであり、本作屈指のナイスキャスティング。バケモノその二。そこ、無双とか言わない
初登場時から存分に魔王っぷりを発揮していたが、場面場面の発言「だけ」を拾うと実は割と普通の戦国大名。
だが雰囲気とか発言の際の行動とか以前の発言と関連付けた深読みをすると一気に魔王になる。
本能寺前夜ではウキウキしながら家康にあげる茶器を選ぶというデレ姿を見せ、多くの視聴者を萌死させた。


  • 明智光秀(演:光石研)

ご存知本能寺の変の首謀者。
本作では「家康と共謀していた」という説が取られており、「信長は家康を殺そうとしている」と家康に吹き込んで味方に引き入れるが、実際には信長はそんなことを考えていなかったことが判明。
家康を利用するためにウソをついたのか、信長の普段の言動を深読みして誤解してしまったのかは不明。


  • 武田信玄(演:松平健)
言わずと知れた若かりし日は氏真の演者になり世界線が違うと直虎の演者になる暴れん坊将軍甲斐の虎。
なのだが、武田と敵対する者たちの視点から描く今作では、勢力拡大のためには手段を選ばない謀略家としての面が強調される。バケモノその三。
駿河侵出のために策を巡らし、長男義信さえも自害に追い込み、挙げ句は井伊谷を火の海に沈めるというえげつなさが清々しい。
伝・武田信玄像(実際には畠山義続という説が有力)の完コピっぷりは必見。
宿敵北条氏康の死に歓喜し、マツケンサンバならぬ信玄ダンスも披露した。ちなみにそのダンスは演じたマツケンのアドリブである。
そしてその最期も(ある意味)必見である。


  • 自然(演:田中レイ)
終盤に直虎らに保護された子供。その振る舞いから武家の出だと推測されるが……
後に龍潭寺で出家し悦岫と名乗るが、これは「信長の子とされる龍潭寺四世住職」(つまり傑山と昊天の間に入る)の名前が元ネタ。







追記・修正なら好きにするがよい。その代わり、我も好きにするがのう。


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