暴れん坊将軍

登録日:2011/05/11 Wed 07:09:59
更新日:2025/04/07 Mon 15:21:49
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バカラッパカラッパカラッパカラッ…ヒヒーン


暴れん坊将軍

♪デデデーンデーデーデーデーン


『暴れん坊将軍』とは、東映製作・テレビ朝日系で放映された時代劇のテレビシリーズである。
主演は『マツケンサンバ』でも知られる松平健で、一世一代の代表作でもある。

●目次

【概要】

天下の大将軍・徳川吉宗公が正体を隠して市井の人々と触れ合いつつ、闇で蠢く悪を懲らしめ世直しをしていく痛快娯楽時代劇である。
テレビシリーズは1978年から2002年までの12シーズン製作され、その後も2008年まで単発スペシャルを放送。総放送回数は832回と、同一主演俳優の作品では大川橋蔵版の『銭形平次』(フジテレビ)に次ぐ二位を誇る。
ただし、基本的な設定だけは軸として一貫しているが、流れが続いているシリーズもあれば、完全にリセットして仕切り直しているシリーズもある。

第1シリーズだけは『吉宗評判記』というサブタイトルがあった。

音楽は菊池俊輔が担当。メインテーマ曲は「ああ人生に涙あり」(『水戸黄門』)や「殺しのテーマ」(『必殺』シリーズ)と並ぶ知名度を誇り、「テレビ時代劇を見た事がなくてもこの曲を知っている」という人も多い事だろう。
また、大阪近鉄バファローズのチャンステーマとして用いられていた事でも有名で、他球団の応援団がこれに追随した事でチャンテが定着した、いわば始祖ともいえる存在である。あの2001年の「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン」の北川博敏の打席で流れていたのもこの曲だった。
他のテレビ朝日の東映作品同様に、電波を問わず頻繁に再放送が行われていてそこでハマった人も多く、今なおグッズが発売されるなど高い人気を誇る。

映像作品は2008年のスペシャルを最後に長らく途絶えていたが、根強い人気もあってか、2025年1月4日に約17年ぶりとなる新作スペシャルが放送。
新作では将軍就任後20年あまりが経過した世界観となり、吉宗には3人の息子がいるという設定で描かれる。いつ身を固めて、そんなにこさえたんですか上様。*1
監督は三池崇史が担当。

【基本ストーリー】

基本的な話の流れは黄金パターンが確立されており、
  1. 巷を騒がせる悪事を聞きつけ、吉宗がその深刻さを憂慮する*2
  2. 吉宗がゲストと交流(襲われている所を助ける事が多い)
  3. 事態が急展開
  4. 怒り心頭の吉宗が敵の本拠地へ突入(ゲストが悪党の手にかかって殺されたりすると、ここで松平健が歌う上様のキャラソン楽曲が流れる豪華版となる)
  5. スマッシュブラザーズもとい殺陣シーン開始(後述)
  6. エピローグ(基本的にはハッピーエンド*3だが、まれにもの哀しいビターエンドもある)
原則的にこのような流れで物語が展開する(詳細は こちら も参照)。

吉宗は町に降りる際に「徳田新之助」の偽名を用いる*4
事件解決後、被害者周辺から「上様とは知らず大変なご無礼を…どうかお許し下され」と懇願され、「俺は徳田新之助、それで構わん」などと返すのがお約束。ただしテレビスペシャルなどは江戸城が占拠されるためこの限りではない。

【殺陣】

アニヲタ…

余 の 顔 を 見 忘 れ た か !


クライマックスにおける殺陣は、松平健の力強く流れるように美しい剣技が冴え渡り、壮快でカタルシス抜群な血湧き肉躍る最大の見せ場である。ここでも基本パターンが確立されている。
  1. 悪党の前に吉宗登場。主な登場パターンは以下の通りである。
    1. 黒幕の屋敷などで悪事の談合や出世祝いなどと称した宴席を開き、事がうまく進んで調子づく悪党の振る舞いを、エコーがかかったセリフで咎めながら姿を見せる
      (「その悪事、許す訳にはいかぬな」「余の目は節穴ではない」「その宴、この世の名残りの宴と知るがよい」など)
    2. 悪党がその回の被害者を斬ろうとしている所に扇子(白地に「正義」と書かれている)を投げつけて乱入
    3. 画面外から室内に悪事の証拠品を投げ込む(例:偽小判、牡丹の花、着火した爆弾(もちろん火薬抜きで爆発はしない)など。槍を投げて手下の一人を仕留めるパターンもあり)
  2. 突然の来襲に驚く悪党に対し、吉宗が「余の顔を見忘れたか!」と一喝して平伏させる*5
  3. 黒幕は一度は「う、上様… !? 」などと驚いて平伏する*6も、吉宗から悪事の内容を改めて暴露されると開き直って反逆し、手下を呼び寄せて吉宗を襲わせる*7(詳細は後述)
  4. 吉宗が抜いた刀を肩の高さで構え、「カチャッ」と音を鳴らしながら刀を返すのを合図に殺陣開始。この際、ハバキ部分に刻まれた三つ葉葵の家紋がアップになる
  5. 例のテーマ*8をバックに吉宗が手下どもをなぎ倒す。数人倒す→ゆっくり歩いて黒幕に迫る→また数人倒す、を繰り返し黒幕を追い詰めていく*9
  6. 10~15人ほど倒した所で「カーン!」の効果音と共に吉宗が黒幕を睨みつけるアップが入る。
    御庭番の2人が助勢に入るのもこの前後。手下の筆頭格もこの辺りで処理される
  7. 最後は黒幕自ら吉宗に斬りかかるも叩きのめされ、吉宗の「成敗!」の合図で御庭番に斬り捨てられる
  8. 吉宗が音を鳴らしながら納刀し、厳しい視線で遠くを眺めるカットを以て殺陣終了
基本は吉宗と御庭番2人の合計3名だけで大勢の敵を蹴散らしていくが、時には大岡越前守忠相や山田朝右衛門など助っ人が加わる事も。忠相は「これなるお方をどなたと心得る !? 」と敵に啖呵を切る場面も見られたが、中の人が格さんと同じ人だった時(第1~7シリーズ及び2008年スペシャル)は「印籠を出すんじゃないか」と思った視聴者もいたとか。
また、高位の武士の黒幕が最後の最後に咄嗟に切腹しようすると「切腹ならん!成敗!」と名誉を保つ死に方を認めず斬らせたり、
他にも仇討ちを志す被害者の遺族がゲストの場合は、刀を叩き落された黒幕を隅に追いつめた後遺族にとどめを任せる事もあった。この場合、最後の「成敗!」がゲストにとどめを促すセリフに変わる(「〇〇、本懐を!*10」など)。
ちなみによく知られるお約束のパターンになったのは第2シリーズの『暴れん坊将軍Ⅱ』からで、最初のシリーズ『吉宗評判記』では「闇の将軍だ」などと名乗って悪党を懲らしめてから、後日その黒幕を江戸城に呼び出し、あの若侍の正体が将軍吉宗である事を明かした上で処分を申し渡す『 遠山の金さん 』に近いパターンが多かった。中には殺陣シーンなしだったり、将軍である事を相手が知らぬまま敵の黒幕と騎馬戦(スタントマンなし!)で一騎打ちなど、イレギュラーな展開もあった。

【悪人の反逆】

ほとんどの場合、吉宗が正体を明かしたら悪人たちは一旦はひれ伏し、言い訳したりするものの、
断罪の意志(「この場にて潔く腹を切れい!」「潔く法の裁きを受けよ!」「天に代わって成敗する」「吉宗、断じて許さんぞ」など)を突きつけられると開き直ってひれ伏すのをやめ、最終的には往生際が悪く牙を剥いてくる*11。これまたいろいろなパターンがある。
ちなみに吉宗に恨みを持つ悪党や宗治勢力、吉宗の事をそもそも知らない野盗の類しかいない場合は吉宗にひれ伏さないパターンもある*12
  • 言いがかり型:「上様がこのような所に来られるはずがない!」「恐れ多くも上様の名を騙る不届き者じゃー!」
    • 直前まで本物の吉宗だと認識していたにも関わらず、処断を逃れるために突如なりすましを疑い出すパターン。
      中には「上様の顔など忘れた」と大喜利みたいなことを口にする悪党までいた。
      掌返しする前に「黙れ、この素浪人が!」などと逆上してから「恐れ多くも上様の名を騙る~」と続けるパターンもあったりする。また、「不届き者」を「痴れ者」「狼藉者」「偽者」などと言い換えたパターンもある。
  • 反逆型:「上様!お手向い致しますぞ」「ふっふっふ…飛んで火に入る夏の虫よのう」「上様、地獄への道連れとなってもらいますぞ」「吉宗、ここで死ねばただの人ぞ !! 」
    • 「お手向い致しますぞ」の場合は上様が相手である事を承知の上で反逆するため、すっとぼけ型よりかは絵面がマシに思えるパターン。
      …まぁ、これとすっとぼけ型や自暴自棄型が組み合わさったパターンもあるが…というか複合パターンの方が多い。
  • 自暴自棄型:「もはやこれまで…」「こうなれば毒食わば皿までじゃ!」「そこまでバレているならば、悪党らしく死に花を咲かせてくれるわ!」
    • どうあがいても藩内処分か切腹確定なので自暴自棄になって、その場で反抗し始めるというとりわけ往生際の悪いパターン。
      まれに、話の開始時に既に沙汰を待つ身で反逆を企てる者もおり、このタイプに分類される。
  • どのパターンであっても、あの最強死亡フラグ「者ども、出合え!出合えー!この者は上様の~」といった発言が連発される。
  • スペシャルでは、正体を明かされてもなお余裕な態度の者もいる。
  • 時折吉宗のライバルである尾張藩藩主・徳川宗春(詳細は後述)の勢力が敵として登場する事があり、この場合は「吉宗の首を我が殿、宗春公に差し出せ!」と殺る気満々で襲ってくる。
    • なお、宗春の勢力の悪党が吉宗に追い詰められると「これは私の一存で宗春公は関係ない」などと述べてから吉宗に斬りかかって返り討ちに遭うか、直後に切腹して果てるパターンが多い。
  • 一度だけ上方の商人が「これは好都合や!この世をもっと面白おかしくするために、将軍はんにも替わってもらいまひょか!」と言った事がある。
  • その場に大岡忠相もいた場合は悪党側が彼に反応する事もあるが、反逆に移行した際は「大岡ともども斬り捨てい!」とか「そこの偽大岡(偽町奉行)もろとも斬れい!」などと吉宗共々亡き者にしようとする。
吉宗がこうした悪党の悪あがきに反応する事は基本的になく、さっさと刀を抜いて無双モードに移行する事が多いが、構える前に一言呟く場合もまれにある。
(例:「愚か者!」「どこまでも腐りきった奴らめ」「俺の命は天下の命、三つ葉葵の風が吹くってな。貴様ら如き悪党に、渡す訳にはいかんのだ!」「名もなき女(その回で悪党に殺された者)に弔いの歌を聞かせてやる」)
たまに悪党側の下っ端数人が吉宗に先制攻撃してくるパターンもあるが、その場合でも吉宗は下っ端どもの攻撃を素手や鞘で軽くいなしてから呟いたり、刀を抜いたりする。

【成敗】

実は原則吉宗や忠相は峰打ちを行っており、実際に人を斬っているのは御庭番だけである。
殺陣シーンなどで吉宗と御庭番らが敵に斬りつける時の音はそれぞれ違い、前者が打撃音に対して後者は斬撃音になっている事からもわかる。
これは「上様の刀が汚れる」「上様に斬られたら却って名誉になってしまうから」などの理由によるもの。黒幕の成敗を基本的に御庭番にさせているのもこのため。
しかし、何の罪もない善人が犠牲になっていたり、どうしても許し難い外道、はたまた吉宗本人にも何かしらの縁のある相手に手を出した悪党に対しては吉宗自身が直々に成敗を下すケースも存在する*13
また前述のように、被害者の遺族らに仇討ちとしてとどめを刺させるケースも存在する。
  • 御庭番(倉地左源太)が殉職した事にマジギレし、彼を銃撃した鉄砲隊を一人残らず斬り捨てたり、この回の悪党も情け容赦なく斬るなどの殺戮マシーン化した事も。
  • 徳田新之助としての自分の養父になるはずだった旗本が悪党どもの手により落命した際も、怒りと哀しみで殺戮マシーン化した。
社会的地位のある親玉の成敗に関しては、公には急病による死や不慮の事故死として処理され、お家断絶か後任の者が家督を継いでいる。
気絶させるだけに留まった手下は忠相が召し捕っているという設定。
決着をつけた後、もしゲストがその場に立ち会っていれば「上様とは露知らず、無礼の数々をお許し下さい!」などと土下座して非礼を詫び、それに対して吉宗は「俺は徳田新之助、それでよい」「全ては徳田新之助がやった事だ」など笑って語りかける事で一件落着となる。

【登場人物】

◆徳川吉宗

演:松平健

誰もが知ってる江戸幕府八代将軍。
強く優しく正義感に溢れ、女心にやや疎いのも含めて、まさにヒーローとしての理想形。
市井に溶け込む際は、「め組に居候している貧乏旗本の三男坊・徳田新之助」を名乗っている。「新之助」は史実での吉宗の幼名であり、三男坊で家督とほぼ無縁な「はず」だった事や、幼少期は手がつけられないほどの「暴れん坊」で有名だったというのも史実である。
何度か敵に捕まって拷問されているが、一晩中痛めつけられても呻き声一つ上げない強靱な心身の持ち主。
アホみたいに強いが、将軍様の剣術指南役や、2003年4月7日に放送された最終回スペシャル「吉宗と不思議のダンジョン」ラスボスである佐渡奉行・堀田釆女(演:津嘉山正種)など、吉宗以上の力量の剣士もいる事はいる。
天然のジゴロであり、本人にその気はなくてもハートを射止めた相手は数知れず。自身の命を狙ってきた女暗殺者も陥落させたほか、御庭番のくノ一フラグを立てた事も。
初期は大体め組でちやほやされるが、後期になると快活な姐さんたちにいいようにこき使われたりもした。
シリーズ中、本人が見初めたのは第8シリーズでヒロインとして描かれた鶴姫*14だけである(だが、第8シリーズ終了後にキャストの中村あずさが結婚を機に芸能界を引退したため、以後のシリーズでは設定自体がなかった事になった)。
まあ史実に合わせて子供とか出していたら、「長男をどう描くか」という問題が発生したかも知れないからしょうがないね(後述の通り、一応2025年スペシャルで一つの答えは出たが)。
人間関係には極めて恵まれている一方で、家族愛や親子愛と縁遠い幼少期を過ごしていた(これは史実でもある)せいか、徳田新之助としての自分に養子縁組の話が持ち上がった際は、養父の候補となった旗本と心を通わせて「父上」と呼び慕うまでになった事も。

(制作局こそ違うが)時代劇ヒーローとして肩を並べる徳川光圀との共演もあり、『水戸黄門』の 第28部17話 第38部5話 では若かりし頃の徳川新之助(徳川源六*15)として光圀と出会い、彼と協力して現地の与力や勘定奉行らの悪事を暴き出し、成敗している。メタ的な視点では、この時の光圀との経験が後の『暴れん坊将軍』の原点になったとも解釈できる秀逸なエピソードである。
一方で第8シリーズ10話()では、当時隠居の身だった水戸藩三代藩主・徳川綱條*16(演:神山繁)が当時江戸で出版されていた『水戸黄門漫遊記』に触発され、「自分も叔父のようになりたい」と御用人の古田介乃丞(演:住吉正博)と永井鶴右衛門(演:藤沢徹夫)を「介さん・鶴さん」として伴い、お忍びで江戸を訪れる展開が描かれている。そしてそこで徳田新之助として町に出ていた吉宗と鉢合わせして互いに慌てまくったり、幕閣復帰を目論む水戸藩の江戸家老に謀殺されかけ危ない目に遭ったりしていた。

銀幕デビュー作品で、なぜか仮面ライダーオーズと時空を越えて共闘する。
もちろん「成敗!」も言った。

そしてゲーム『仮面ライダー バトライド・ウォー2』にもゲスト出演しており、まさかのゲームデビューも果たす。
声はもちろん松平健本人で、オーズや「鎧武者」がモチーフとなる仮面ライダー鎧武ら歴代の平成ライダーと競演を果たした。
さらに、一部ステージのみではあるがプレイアブルキャラクターとして使用可能となっており、本作では生身の人間でありながら仮面ライダーに匹敵する実力を持つという凄まじい設定(レベルは最初からカンスト)。
ここでは全並行世界の支配を目論む超巨大組織の大ショッカーが、彼の存在を脅威と感じて直接抹殺に乗り出すというとんでもない事になっているが、彼らの末路は言うまでもない。
というか、映画では実現しなかったガラとの直接対決までやってのける。
実に恐ろしい。

◆じい

歴代の顔ぶれ
加納五郎左衛門忠房:有島一郎(第1・2シリーズ)
田之倉孫兵衛:船越英二(第3~7シリーズ)
宍戸官兵衛:高島忠夫(第8・9シリーズ)
有馬彦右衛門:名古屋章(第9~12シリーズ)
横川勘十郎:神山繁(2004年新春スペシャル)
加納五郎左衛門:伊東四朗(2008年スペシャル)→小野武彦(2025年スペシャル)

御側御用取次。モデルは史実で吉宗が創設した同名の役職だが、キャラ名は「加納」「有馬」と実在の人物の名字を数度借りた以外は本作のオリジナルとなっている。
吉宗とのコミカルなやり取りは毎度の名物で、この存在なくして『暴れん坊将軍』は成立しない。
たびたび姿を眩ます吉宗に頭を悩ませたり、事あるごとに見合いを勧めたり*17、「吉宗を探すため」などの理由で、“ご隠居(新之助の伯叔父、あるいは知り合いの隠居もしくは町人)”として自分も町に繰り出しては町人の文化にはしゃいだりする、愛すべきお爺ちゃん。
口やかましく窘めるが吉宗との絆は深く、吉宗が瀕死の重傷を負った時は、嵐の中で行水しながら回復を願い続けた事も。
キャストが替わるごとにキャラクターの名前も変わっているが、いずれも性格や人物像の設定は大部分が共通している。
吉宗の生母・お由利の方(演:丹阿弥谷津子→中村玉緒)とフラグを立てて、誰得な色恋沙汰と思いきや微笑ましい展開をしていた爺ちゃんもいる。
その婆さん尼だけどな!

◆大岡越前守忠相

演:横内正(第1~7シリーズ)→田村亮(第8~12シリーズ・2004年新春スペシャル)→大和田伸也(2008年スペシャル)→勝村政信(2025年スペシャル)

ご存じ”大岡裁き”の南町奉行で、本作のレギュラー版終了後には、同じテレビ朝日で彼が主人公(ここでは北大路欣也が演じた)のドラマ『 名奉行!大岡越前 』が放送されるくらいの人気を誇る人物。
本作でもその暖かみのある裁量で町民から絶大な支持を得ており、吉宗の最も信頼する懐刀。吉宗からは「忠相」と下の名前で呼ばれる。
吉宗の失踪癖にも寛容だが、真面目さゆえにじいから愚痴をこぼされると困り果てる。

幾度となく失脚を狙う奸計で切腹寸前に追いやられているが、そのたびに吉宗と共に切り抜け、また奉行の立場を活かして吉宗の窮地を幾度となく救った。
史実でも目安箱や小石川療養所設立など吉宗の時代に活躍しており、史実では晩年に大名(現在の愛知県岡崎市に位置する西大平藩の初代藩主)にもなった。

TBSの「ナショナル劇場」枠で放送された彼が主人公(ここでは加藤剛が演じた)の時代劇ドラマ『 大岡越前 』では吉宗の方がいろいろ無理を言って彼を困らせており、後にNHKの「BS時代劇」枠で放送された 同名作品 (ここでは東山紀之と高橋克典が演じた)でも似たり寄ったりの演出のため、こっちに慣れてると結構新鮮。まぁ自然な流れか。
なお二代目を演じた田村亮は、フジテレビで放送された時代劇『 乾いて候 』でも大岡越前を演じている。

◆御庭番

歴代の顔ぶれ
第1シリーズ
薮田助八:宮内洋(第1~87話)→大月半蔵:和崎俊哉(第88~207話)
おその:夏樹陽子
第2シリーズ
木葉才蔵:荒木茂 さぎり:朝加真由美
第3シリーズ
倉地左源太:三ツ木清隆(第1~57話)→才三:五代高之(第57~129話)
疾風:菅野玲子(第1~76話)→梢:高島礼子(第77~129話)
第4・5シリーズ
才三:五代高之 茜:入江まゆ子
第6・7シリーズ
速水佐平次:若松俊秀(第6シリーズ)桐原佐助:池谷太郎(第7シリーズ)
小雪:安藤晃子
第8~12シリーズ
十文字隼人:大森貴人
あやめ:大竹一重(第8シリーズ)皐月:東風平千香(第9シリーズ)
渚:山口香緒里(第10シリーズ)あざみ:松永香織(第11・12シリーズ)
2004年新春スペシャル
五郎太:篠塚勝 楓:村井美樹
2008年スペシャル
佐助:松田悟志 蛍:松永京子
2025年スペシャル
八兵衛:浜田学 こはる:中島亜梨沙

吉宗の側に控える男女一組で構成された密偵。
忍びの性質上あまり表に出る事はなく、コミカルなシーンも少なめだが、それだけにスポットが当たった回は濃いドラマが描かれる。
将軍の側近なら当然だが非常に優秀な人材が揃っており、吉宗が悪を打ち倒せるのも彼らの尽力あってこそ。
基本的にシリーズごとに入れ替わるが薮田助八と倉地左源太の両名は殉職という形で交代している*18
女性御庭番からは第3シリーズの疾風が途中から梢へと交代しているが、これは男性御庭番のような殉職形式ではなく何の説明もなく姿を消し、突如交代したパターンである(交代に至った理由は不明)。
なお、女性の御庭番は度々負傷したり捕えられるイベントがある。男性の御庭番も負傷・捕縛イベントはあるけど。
おそらくいろんな年齢層の愚息さんが暴れん坊になって待ちわびたイベントだろう。ただ残念ながら肌を出すなどの露骨なシーンはない。
また男性の御庭番は同じ東映という事もあり特撮出身者がキャスティングされる事が多い(宮内洋、荒木茂、五代高之、若松俊秀、松田悟志)。
後期でメインを担当した大森貴人は吉宗の中の人の付き人であり、名実ともに御庭番にふさわしい役だったと言えよう。
くの一には高島礼子がドラマデビュー兼初レギュラー作品として出演していた事で知られ、後年凱旋出演を果たす事となる。

◆辰五郎

演:北島三郎→堺正章(2008年スペシャル)→生瀬勝久(2025年スペシャル)

町火消し”め組”を率いる頭で、江戸っ子全開の粋な親分。おまち(演:岐邑美沙子)という妹がいる。
徳田新之助の正体を初期から(レギュラーとしては)知っている数少ない存在で、吉宗とは確固たる信頼関係で結ばれた協力者にして親友。
初期の頃は、クライマックスで吉宗さえ取り逃がした悪党と対峙し、たった一人で叩きのめし引っ捕らえるという強さが描かれていたりもした。
レギュラー版の演者の本業は歌手であり、番組のテーマ曲も担当*19
そのため、スケジュールの都合から理由で登場しない*20回も多かった。
シリーズ後期では後継者に頭の座を譲り、自身は町火消しの肝煎→総元締めへと昇進したり引退したりしているが、全作に渡って登場していた。
後任としては、第8~10シリーズで2代目頭の長次郎(演:山本譲二)、第11・12シリーズ及び2004新春スペシャルで3代目頭の栄五郎(演:松村雄基)が登場している。

◆め組の姐さん

歴代の顔ぶれ
辰五郎の妻・おさい:春川ますみ(第1・2シリーズ)→浅茅陽子(第3~5シリーズ)→坂口良子(第6・7シリーズ)→岡本麗(2008年スペシャル)→高島礼子(2025年スペシャル)
長次郎の妻・おぶん:生稲晃子(第8~10シリーズ)
栄五郎の妹・お杏:いしのようこ(第11・12シリーズ・2004新春スペシャル)

荒くれ者の多いめ組を取り仕切る肝っ玉の据わった女性。特におさいは前述の通り辰五郎が欠席する事が多かったため、回によっては親分の代わりに表舞台に出る事も多かった。
新之助の正体を知らないせいか時折幕府(=将軍)の悪口を言う事もあり、その時は辰五郎をヒヤヒヤさせる。
おぶんは第7シリーズから登場しており、その時は岡っ引きの父の後を継いで目明しと魚屋を兼業する「女一心太助」と称された男勝りのキャラクターで、第8シリーズで長次郎と結婚し姐さんのポジションとなった。また長次郎が頭を務めた第8~10シリーズは小頭が不在で、おぶんが実質上の小頭を兼ねていた。
お杏は宮大工だった夫・房吉(演:湯江健幸)と死別しており(第11シリーズの第7・8話で、数々の不正を働いていた材木商と勘定奉行による口封じの謀殺だった事が判明)、女手一つで娘のもも(演:内堀美咲)を育てている。

◆め組の小頭

歴代の顔ぶれ
源三(初代小頭):園田裕久(第1・2シリーズ)
半次郎(2代目小頭):佐藤B作(第3シリーズ)
紋次郎(3代目小頭):渡辺篤史(第4シリーズ)
安次郎(4代目小頭):小野ヤスシ(第5シリーズ)
卯之吉(5代目小頭):三遊亭楽太郎(後の6代目三遊亭円楽)(第6・7シリーズ)
峰次(6代目小頭):中野英雄(第11・12シリーズ)
半次郎:梨本謙次郎(2008スペシャル)

”め組”のサブリーダー。シリーズによっては設定されない事もあった。

基本的に(特に中期以降)作中のコメディリリーフ役を担っているが、いずれも主役の回が必ず存在する。その内容は基本的に、「自身のミスでめ組に重大なトラブルが発生する→責任を取ってめ組を辞める事を示唆する→吉宗や周囲に諭されて立ち直る」というものだった。他にキャラごとにいくつかバリエーションがある*21

第6・7シリーズで小頭の卯之吉を演じたのはご存じ「笑点」の腹黒の人。彼の出演するシリーズは、キャストが落語家なのを踏まえてか「死神」「風呂敷」「芝浜」「品川心中」などの落語の噺を基にしたエピソードがいくつか見られた。第7シリーズでは桂歌丸が父親の治助役としてゲスト出演した事もあり、二人で「お前のような腹黒い奴」「クソジジイ」などと大喜利の罵倒合戦を彷彿とさせる親子喧嘩を繰り広げる場面もあった。山田くん、長屋ですが二人の座布団を持ってきなさい。
また、とある回ではゲストキャラから武士の階級制度について説明を受けたときには、「私にはそういう難しい事はよくわからないんですが…」と返すシーンも。

源三は温厚かつ真面目で責任感が強い一本気な性格。周囲からは「源さん」、若い衆からは「兄貴」と呼ばれ慕われている。母親と仁兵衛長屋で暮らしていたが、後に死別する。第2シリーズの第66話で高崎の町火消しの頭に栄転し、その後は第1シリーズから居候として登場していた元因幡藩のお抱え力士で骨接ぎ医の龍虎(演:龍虎)が小頭的なポジションになり、若い衆からは「関取」「親方」と呼ばれていた。大銀杏と七三いなせを合わせたような髪形に紫色か青色の着流しという出で立ちが多く、女好きで口が悪く、やや斜に構えているが情に厚い。その後第5シリーズでは駿府の火消しの組頭になった事が判明しており、第33話でゲスト出演している。また第1シリーズの初期は二人小頭制で源三の他に新吉(演:和崎俊哉)という小頭がいたが、第21話で火付盗賊改方の才賀源四郎(演:川辺久造)に殺されている。
半次郎は若い衆からは「兄貴」と呼ばれており、お調子者の酒豪だが、根は真面目で責任感が強い。やや金にがめつい(第24話)が、愛した女を負傷しながらも守ろうとしたり(第29話)、借金を苦に自殺しようとした父娘に金を与えたり(第43話)と、妹のお葉(演:伊藤つかさ)想いな人情家で男気があるが、どういう訳か女に縁がなく、恋が実ったためしがない。
紋次郎は幼い頃に父親と死別しており、渡世人や大工をしていた時期がある(第9話)。真面目で正義感が強いが、女に騙されやすいなどやや抜けた所がある。また、過去に錠前屋に勤めていた時の友人とのいざこざから、饅頭が大の苦手(第18話)。
卯之吉は酒と女にだらしのないお調子者だが根は心優しく、話術と演技力に長けており、変装や小芝居でしばしば事件解決に貢献している。
峰次は喧嘩っ早いが情に厚い性格。お杏に惚れ込んでいて新之助との三角関係を展開しており、またお杏の娘・ももに「お父つぁん」と呼ばれたくて涙ぐましい努力を重ねていた。

◆山田朝右衛門

演:栗塚旭

ある時は用心棒稼業、ある時は公儀御試御用、ある時は浪人…と立ち位置がコロコロ変わる、シリーズ初期と第3~第7シリーズまで登場していた準レギュラー。モデルは江戸時代に実在した、刀剣の試し斬り役を務めていた山田家当主の代々の名乗りで、史実でも死刑執行人を兼ねており、「首切り浅右衛門」「人斬り浅右衛門」とも呼ばれていた。
登場当初は「一色十郎太」と名乗りながら用心棒稼業をしており、ひょんな事から徳田新之助としての吉宗と出会う。
初期から筋の通らない事を嫌っており、雇い主があくどい輩だとわかると、すぐに手を切って吉宗側に味方する事も多かった。

割と早い段階から「山田朝右衛門」と名乗り始め、公儀御試御用(おためしごよう)として罪人の首を刎ねる死刑執行人の役回りも仰せつかるようになる。
この事もあってか「首切り朝右衛門」として町民から畏怖され、特にめ組の面々からは、できれば関わりたくない危険人物かのように恐れられていた。
ちなみに朝右衛門自身はシリーズ初期における、め組の姐さん(おさい)の声を「黄色い声」と例えるほど苦手としていたりする。

徳田新之助としての吉宗とは気心の知れた相手として「徳田」や「おぬし」などと呼びながらタメ口で話すような仲であり、
「将軍(上様)がケチだと苦労する」などと面と向かって口にするほどだったが、第1シリーズ『吉宗評判記』の第57話で新之助が持っていた刀を通して、彼の正体を知る。
以降は徳田新之助=徳川吉宗である事を知る数少ない協力者となり、町内で会った際は「徳田殿」と呼ぶようになるなど態度も改めた。

続く第2シリーズでは一切登場しなかったものの、第3シリーズでは一部設定を刷新(公儀御試御用を仰せつかったお屋敷住まいという設定になった)して再登場。
ここでは不仲だった娘を悪党に強姦されて傷物にされたり、愛弟子が死ぬなどいろいろとさんざんな目に遭いつつも最終的に職を辞して、娘と共に江戸を離れていた。後に一人で江戸へ戻り*22、江戸町内で浪人としての生活を始め、これ以後は浪人設定で固定された。
これまでは大体ムッとした面持ちで笑顔をあまり見せない朝右衛門だったが、日常シーンで笑顔を見せる事が増え始め、め組の面々とも徐々に親しくなっていった。

刀剣の扱いに手慣れており、目利きも行える事から彼が登場する話は敵方に凄腕の剣客が現れたり、刀剣が深く関わるパターンが多い。
回によっては吉宗らと共に敵の本拠地へ赴き、殺陣シーンにて悪党一味を斬る事も。本拠地へ赴かない場合もあるが、その場合は単身で敵方の剣客などと相対した上で斬る。
第4シリーズ以降も時折登場したものの、第7シリーズ17話を最後に登場しなくなった。

◆徳川宗春

金は活かして使え、過度な倹約は却って無益。
芸能は庶民の栄養、見世物や茶店を許す。

演:中尾彬*23(第1~7シリーズ)→西岡徳馬(第8・9シリーズ)→GACKT(2025年スペシャル)

尾張徳川藩藩主。作中では史実とは異なり、「吉宗と将軍職争いで敗れ、吉宗を逆恨みしている」という設定。
権力の亡者・自己保身の権化として描かれており、前述の通り藩ぐるみで吉宗に「上様の首を宗春公に」と刺客を送っては「宗春公は無関係、俺が勝手にやった(要約)」などと毎回部下に言わせて、「知らん!余は何も知らん!」と責任逃れする呆れた人物。吉宗から叱責されても反省する事はなく、次も策謀を巡らせる事を示唆するシーンで終了というパターンがお決まりだった。
史実ではそもそも世代が離れていた*24ため、吉宗と対立できる時期があまりなかったとか…。個人的な関係はまあまあ悪くなかったらしく、尾張藩主としてのばらまき政策が祟って隠居に追い込まれた後も、吉宗からは丁寧な気色伺いが何度も来ているほか、宗春も吉宗から下賜された朝鮮人参を栽培するなど、政策面のような対立はなかった。
本作の印象が強すぎて「『水戸黄門』の柳沢吉保*25のような悪党」のイメージがつき、初期シリーズでは時折登場しては吉宗といがみ合う準レギュラー枠だったため、なおの事悪役のイメージが強くなっていた。また、キャストの都合で吉宗よりも年上のイメージが強いが、実際は宗春が12歳も年下である。

しかし、後期になるとシリーズ内で1~2回程度しか出ないゲストキャラと化し*26、第9シリーズにて因縁に終止符が打たれた事で、以後は登場しなくなった。

2025年スペシャルで久しぶりに登場した際は、ABC制作の芸能人格付けチェック』でお馴染みのGACKT様が演じている。「民のためには自分が派手に楽しむ事こそ肝要」という信念を持つ”傾き者”で、黒ずくめの着物の上にド派手な羽織を纏い、1m超もある長い煙管をくゆらせたり、諸肌脱いで大判小判の入った壺を両手に持って筋トレに励むなど、過去シリーズの宗春とは見た目のイメージも含めて180度異なるキャラとなっているが、これは史実の宗春が、尾張藩内で城下に芝居小屋などの遊興施設を開設して広く歌舞音曲を許すなどの豪華絢爛な施策や、それに基づくお祭り騒ぎを何度も行っていた事に由来する。
享保の大飢饉などで高まる幕府への不満を利用して、吉宗の質素倹約を是とする施策に異を唱え、次期将軍の座を伺うが…?
なお、本作の3日前に放送された『格付けチェック2025お正月スペシャル』の結果が、偶然にも「最後に屋敷を改めに来た大岡忠相の前で、洋銃を構えた様子から一転して姿が消えた所」や、「贅沢が過ぎて私財を売り払う羽目になり、クモの巣だらけの屋敷でくしゃみをする姿」という本作の結末の前フリのようになっており、本作の放送後は「ここでも『映す価値なし』かw」などとさんざんネタにされてしまった。

◆徳川家重

俺の顔を見忘れたか?まあ覚えちゃいねえか。

生まれつき首が傾いちまってるせいか、曲がった事が嫌いでね!

演:西畑大吾(なにわ男子)

2025年スペシャルで登場した、吉宗の嫡男にして後の江戸幕府九代将軍。史実では脳性麻痺とおぼしき障害で右半身が不自由だった上、言語障害もあって自力では満足に人と会話できず*27、側用人の大岡忠光*28(演:木村了)を重用し、心身の介助を受けながら将軍の職務を行っていたとされる。また彼が将軍になってからも、吉宗が存命中は後見人として実権を握っていたという。トイレも近かったらしく、町民の間では「小便公方」というあだ名で呼ばれたりもした。一説では幼少期から遊興と酒色にふける暗愚な人物であり、『志村けんのバカ殿様』のモデルともいわれている。将軍になれたのもあくまで長子相続の慣例に沿っただけで、城内では「次男の徳川宗武*29(演:駒木根葵汰)の方が次期将軍にふさわしい」という意見がしばしば聞かれたという。
作中では障害に対するもどかしさから癇癪を起こす事もあり、別邸に籠もりがちだった。気を許しているのは長年仕えてきた大岡忠光のみで、父の吉宗にも心を閉ざしていた。だが実は頭脳明晰で父譲りの正義感と優しさを持ち、陰では「将軍にふさわしい力量」を身につけるべく不屈の精神と不断の努力でリハビリを重ねて、江戸っ子言葉でなら流暢に話せるようになった*30ほか、軽くて片手で使えるレイピア(両刃の直刀で刀身は短く、外見は短剣に近い)を左手で扱う剣術の腕にも優れている*31。そして父と同様に周囲の目を盗んでは「商家の三男坊・徳長福太郎(とみたろう)*32」として町へ繰り出し、市井の状況を学んでいる。
完璧超人の吉宗とは違い、「五体満足でなければ性格も明朗快活でない、ハンデとコンプレックスを抱えながらも強い正義感で悪を滅ぼす新たなヒーロー」像という、現代のパラスリートにも通じるイメージを打ち出している。

◆ナレーション

若山弦蔵→千葉繁(2025年スペシャル)

作中の登場人物ではないが、『暴れん坊将軍』シリーズになくてはならない存在。
基本的に物語冒頭と締めおよび次回予告の語り手を担当しているが、回によっては時代背景や状況説明を語る事も。
シリアス回であろうとコメディ回であろうと、落ち着いた声で淡々と語るのが特徴。

若山が2021年に亡くなったため、2025年スペシャルでは千葉繁が起用された。
東映つながりでこれのようなハイテンション…は一切見せず、終始真面目なナレーションに徹していた。


【音楽】

劇伴曲を一貫して担当していたのは菊池俊輔。
時代劇としてはかなりの長期シリーズ作品なので、劇中で使われた曲は多種多様である。

『殺陣のテーマ』は後述する「Iiii-43 アクション」のものが特に有名だが、
それ以前から使われていた「初期版(仮称)」や、過去のシリーズで2回程度しか使われてない「ライトアレンジ版(仮称)」、
第8シリーズ内でのみ使われた「第8シリーズ版(仮称)」…と、殺陣のテーマだけでも複数のバージョンがある。

2025年スペシャルでは遠藤浩二が劇伴担当で共同クレジットされており、『暴れん坊将軍のテーマ』や『殺陣のテーマ』などは遠藤がアレンジした物が使用されている。

◆「東映傑作TVシリーズ暴れん坊将軍Vol.1オリジナルサウンドトラック」

この作品唯一のサウンドトラック。全32曲収録であり、いくつか抜粋すると…

「旧オープニング曲」…暴れん坊将軍のテーマ(第3シリーズ以降のバージョン・タイトルコールなし)
「M-3」:物語冒頭にて流れる曲
「M-71」:吉宗のテーマ(シリアスな場面で流れるタイプ)
「夢灯り」:第5~7シリーズにおける上様のキャラソン挿入歌
「M-72 夕焼け」:「余の顔を見忘れたか!」のシーンにて流れる曲
「Iiii-43 アクション」:殺陣のテーマ
「M-18」:物語の締めにて流れる曲

…とまぁ有名かつ主要な曲は一通り揃っているのだが、この暴れん坊将軍のサントラ、Vol.1以降は出されていない。
なので、昔の映像作品あるあるで歯抜け収録となっており、聞けない曲は数多い。
初期シリーズで多用された「め組のテーマ(仮称)」や「辰五郎のテーマ(仮称)」などが未収録なのは惜しいところである。

◆「暴れん坊将軍」挿入歌集「斬って候」

上様のキャラソン挿入歌が収録されたアルバム。オリジナルカラオケ版もあり。
ただし収録内容は「斬って候」「ぬくもり」「夢灯り」「やじろべえ」の4曲だけとなっており、
第2シリーズから長らく多用されていた「夜明け」や、それぞれ1回ずつしか使用されなかった「千代紙」「想い出かくれんぼ」は未収録。

【余談】

史実の徳川吉宗は貨幣や米価の調整に奔走した事から、”米将軍”と呼ばれていた*33
だが、このドラマがあまりにも有名になったせいで、日本史の試験の「吉宗は( )将軍と呼ばれた」という穴埋め問題「暴れん坊」と回答してしまう受験生が続出したという逸話があったりする。
また、ハワイの放送局のキクテレビでもこの番組を英語字幕スーパーつきで放送したため、現地のロコたちも松平を「Syogun-Yoshimune」と呼んでいるとか。

1995年には、NHKが本作に対抗するべく大河ドラマ 八代将軍吉宗 』を放送した。こちらは西田敏行を吉宗役に起用し、その生涯を孫の世代に至るまで忠実に描いた『将軍家のホームドラマ』をコンセプトとして制作したが、吉宗=マツケンのイメージを覆す事はできなかった。
ただし、本作が当時土曜20時台の放送に対しこちらは日曜20時台の放送だったため、時代劇マニアは週末に二つの吉宗を見て比較するのを定番としていた(なお、このドラマには水戸黄門こと徳川光圀(演:長門裕之)も出ていたりする)。

第9シリーズ19話のサブタイトルは「江戸壊滅の危機!すい星激突の恐怖」。
一部界隈では「伝説の回」とも呼ばれている話で、違和感の凄いCGで描かれた、割と大きな彗星がたびたび出てくるSF回。時代劇でSFとは…?
というか彗星が激突したら江戸壊滅どころか地球壊滅なんですが…*34
なお、史実の江戸時代でも吉宗の没後の1817年に、八王子に隕石が落下した記録が残っている。

松平の代表楽曲である『マツケンサンバⅡ』は、本作の舞台版のエンディングで使用されていた物が始まり。当初は音源が公演会場内でしか発売されないインディーズ作品だったが、2003年に当時の妻だった大地真央との離婚騒動を追っかけていたワイドショーのスタッフから話題となり*35、一気に知名度が上昇。翌2004年にメジャーシングルとして発売され、一大ブームを巻き起こした。
詳細は前述のリンク先を参照。

関東地区では、2015年から平日早朝の4時台に「おはよう!時代劇」の枠名*36で再放送しており、放送中は時刻と天気予報(サイドパネル)の表示が行われている。今やキー局唯一の時代劇再放送枠なせいか視聴者は意外と多く、時間帯によっては視聴率トップになる事もあるとか。

本作とは縁もゆかりもないネタだが、「暴れん坊」という名称もあってか、まれに下半身の元気があり余ってる男性の通称にもなる。
また、X JAPANToshIがライブ中のMCで、よく観客に向かって「てめぇら !! 暴れん坊将軍で行けオルアァ !!! 」と叫ぶ。
…果たして「暴れん坊将軍で行く」とはどういう事なのか?

追記・修正を絶やしてはならぬと、Wikiに籠もり続ける吉宗であった

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最終更新:2025年04月07日 15:21

*1 現実の吉宗は将軍に就任した時点で息子3人がおり、終始独身でじいに縁談を勧められたりしている『暴れん坊将軍』の方が史実とは離れている。

*2 第6シリーズからはめ組に”町内版目安箱”といえる「よろづ相談処」が開設され、そこに持ち込まれる相談事が事件の発端になる事も多い。

*3 「救えなかった被害者を回想したり、改心して立ち直った者の近況を聞く」「事件を踏まえ、再発防止の観点から改革の必要性を語り、忠相らと共に問題意識を共有し合う」パターンや、吉原で遊び狂ったり二日酔いで苦しむなどコミカルなパターンもある。

*4 実在した吉宗も過去に「得田新之助」と名乗っていた時期があり、それが元ネタだと思われる。字面はわざと変えているが、ちゃんと史実を調べた上で設定されているのが覗える。

*5 吉宗を始めとする、名前に「家」の字がつかない徳川将軍は普通の大名として生活していた経験があるので、当時の大名仲間やその側近たちは当然面識があるし、庶民も参加し得る愛好会や勉強会に出席した事もあるので、広く顔が知られている。

*6 この時、「カーン!」という効果音と共に一瞬江戸城での将軍謁見シーンが流れ、悪党が目の前の人物の正体に気づく演出が入る。

*7 現場にその回の被害者などゲストがいた場合は、「えっ !? 新さん(徳田様)が上様 !? 」と驚きつつ同様に平服するパターンが多い。

*8 確立されたのは第3シーズン。それ以前ではだいたい2種類のメインテーマのアレンジが使い分けられていた。

*9 傍目には「大勢で1人を囲んでいるんだから後ろから斬りかかれよ」と思うかも知れないが、実際の殺陣の様子を見ればそれを狙った瞬間に背後を睨みつけて牽制したりタイミングを外している描写がちゃんとある。

*10 「本懐」は本望の意だが、時代劇では仇討ちの事を指し、「本懐を遂げる」と言ったらそれは仇討ちを果たす事を意味する慣用句となっている。

*11 なお『水戸黄門』における光圀の相手はせいぜい地方の役人や奉行なのに対し、こちらは中央の高級官僚・大商人・大名などより権力に近い者たちであるためともいえる。

*12 中には尺の都合なのか、吉宗が「余の顔を見忘れたか」などと口にしないまま殺陣へ移行し、悪代官側が最後まで新之助=吉宗と知らないまま成敗される話もある(第2シリーズ95話など)。

*13 ちなみに、最初期は吉宗と知って襲いかかってくる敵や悪逆非道を尽くす悪党など、「殺らなきゃこちらが殺られる」ような連中が相手だったり、傍に御庭番がいない状況だと躊躇なく斬っている事もある。

*14 彦根藩主・井伊直惟の娘にして、大奥を取り仕切る御年寄・月島(演:長内美那子)の姪。女大学・明徳館では素性を隠し、「千鶴」と名乗って教授を務めている。なお吉宗は千鶴が鶴姫である事を知っているが、鶴姫は徳田新之助が吉宗である事を知らず、新之助と吉宗という2人の男への恋心で揺れ動く様が描かれた。

*15 キャストは第28部が茂山逸平、第38部が柳沢太介。

*16 光圀の兄・松平頼重の次男で、光圀の甥に当たる。

*17 史実の吉宗は将軍になる前に正室を持っていたが死別し、その後もその女性だけを正室と定めて事実上の奥様(お世継ぎを産む役も)は側室に任せているため外部の女性と縁談させる必要性はなかった。

*18 助八は吉宗を狙った銃撃をその身で庇った事により、左源太は愛する者を守るために鉄砲隊の銃撃を受けて命を落とした。

*19 前期はエンディング、後期はオープニングテーマ曲をそれぞれ担当していた。

*20 本編内では「上方に出かけている」などと補足される事が多かった。

*21 卯之吉の場合は「死神に取り憑かれた」と思いこんだ親友を助けるための芝居のせいで「死神を退治する力がある」と周囲に思いこまれ、材木商の跡取りの暗殺を謀る悪党に邪魔者として命を狙われるという、落語「死神」をベースとした話もあった。また安次郎の場合は、深川の長屋で起こった殺人事件の容疑をかけられて北町奉行所に逮捕され、無実を信じる吉宗が彼を救うべく奔走する話があった。

*22 娘は国元へ戻った際、然るべき相手に嫁がせたとの事。

*23 第2シリーズのスペシャルで、一度だけ成田三樹夫が演じた事もあった。

*24 宗春の尾張藩主就任は吉宗治世後半の時期であり、それまでは部屋住みとして単なる予備扱いだった。

*25 あちらも、史実では劇中のような悪人ではなかった…という説が有力である。

*26 これについては、シリーズの途中で吉宗から直々に蟄居謹慎を申しつけられたというのもある。

*27 江戸幕府の公式史書『徳川実紀』には「御多病にて、御言葉さはやかならざりし故、近侍の臣といへども聞き取り奉る事難し」とある。

*28 大岡忠相の親戚に当たる。

*29 こちらは若かりし頃の吉宗を思わせる文武両道の立派な人物で、自身は兄を差し置いて次期将軍に推されている事に複雑な思いを抱いている。

*30 このため、公の場などでは忠光が武家言葉に翻訳する形が取られていた。

*31 殺陣のシーンでは、峰打ちの代わりに相手の刀を払い飛ばしたり、レイピアの護拳の部分で殴って気絶させたりしていた。

*32 父と同様に、史実での家重の幼名「長福丸(ながとみまる)」にちなんでいる。

*33 他にも「公事方御定書」の制定という大事業を成した事から「法律将軍」、将軍に就任したての若いころ、江戸城で自ら火の見櫓の上に立って火事の様子を眺めた事があるという伝説から「火事将軍」、米で酒を作らせて米価を安定させようとした事から「酒将軍」などのあだ名もある。

*34 最終的に彗星は江戸から離れたある村の付近に落下し、その周辺が大爆発を起こしただけで済んだ(その村の住人は長次郎たちの誘導によって避難していたため、皆無事だった)。

*35 それ以前にも変わった曲としてTBSラジオの「コサキンdeワァオ」で紹介された事もあったが、ブレイクには至らなかった。

*36 この枠では他の東映製作の時代劇も放送されるため。