前の十年と傾向は同じだが、NHKの迷走が激しくなってきた。
平均視聴率で『花の乱』以下の作品が五作も登場する程であり、以前は頻繁にあった20%以上の数字が出ることも大げさではなく極めて稀になり、裏番組の台頭もあって視聴率一桁回も頻発するようになった。
しかし低視聴率の作品に対する全体的な評価は「『花の乱』同様に好きな人は徹底的に好きだけど万人受けはしない、むしろ嫌われる」または「単純な出来の悪さや賛否両論で左右にぶん殴る」という傾向に分かれていた。
ただし2010年代中盤以降はその骨太な出来、意外な展開、そして魅力的なキャラクターから高視聴率を記録したり、SNSで高評価を得ている作品も現れており、視聴率だけが総合評価ではない事を印象付けた。
もっとも、従来から土曜日の再放送やBSプレミアムなどでの先行放送があることに加え、近年の録画機器の普及や有料動画配信サービスのNHKオンデマンドの存在により、
視聴スタイルが激変したことで従来の視聴率だけでは成り立たなくなったことも忘れてはならない。
また、『いだてん』からはBS4K放送がスタートし、地上波やBSプレミアムよりも最も早い日曜午前9時から放送されている。
なお、大河ドラマ枠での放送ではないが2016年から2018年までは3シーズンに分けて大河ファンタジー『精霊の守り人』が放送されている他、
2017年2月には大河ドラマを公式が盛大にパロった深夜ドラマ『空想大河ドラマ 小田信夫』が放送された。
龍馬伝
放映期間:2010年
原作:なし
主人公:
坂本龍馬(演:
福山雅治)
時代:幕末
脚本:福田靖
1968年以来となる坂本龍馬モノ。坂本龍馬が拠点をおいた長崎出身の福山雅治が坂本龍馬役を演じた。
維新回天が成った後、三菱財閥の領袖にのし上がった土佐出身の岩崎弥太郎から語られる龍馬の話という形を取っている。
ちなみに記者が取材に来たのは「維新の影で活躍した土佐藩の人物がいるそうですが?」という理由。
坂本龍馬が維新後すぐはマイナー人物だったという史実から来ている。
篤姫で人気を博した幕末モノだったが、幕末モノは伸びない法則が適用され天地人より視聴率は落ちた。一応、前回の坂本龍馬主役の大河『竜馬がゆく』からは4%くらい上げている。
本作の1年前に放映されたドラマ版『JIN-仁-』に登場する、内野聖陽が演じた坂本龍馬の評判が非常によかった為、そちらと比較されてしまったのも一因だろう。
また、伊勢谷友介演じる高杉晋作が主役を食うレベルのキャラ立ちをしており、四境戦争の際に
着流し&三味線姿で敵を斬り捨てまくる無双描写が話題を呼んだ。
後の実写版における蒼紫のキャスティングに影響を及ぼしたとも噂される
なお、最終回、近江屋事件の龍馬暗殺シーンで愛媛県知事選挙の当確速報テロップが出たため、苦情が殺到する事態にも発展した。
TEAM NACSのメンバーが演じた役柄がやたら不憫なのは気のせいだろうか……
チーフ監督を務めたのは大友啓史。後に監督を務めた実写映画『
るろうに剣心』シリーズでも本作のキャストの何名かが出演しており、佐藤健が人斬り以蔵から
人斬り抜刀斎に転生したりしている。
OPのクレジットは2年連続で横書き。
江~姫たちの戦国~
放映期間:2011年
原作:田渕久美子「江 姫たちの戦国(書き下ろし)」
主人公:江(演:上野樹里)
時代:戦国時代~江戸時代前期
脚本:田渕久美子
通称:シエ。あるいは「スイーツ大河」など。
浅井家の三姉妹の人生は散々ドラマ化されるだけのドラマチックなものであって題材は悪く無いうえ、
『篤姫』を成功させた田淵久美子脚本なのにどうしてこうなった……という出来。
(史実では燃えていない)小谷城が炎上する、信長が死の間際に江の幻を見る、その信長の亡霊が江の危機を(物理的に)救う、
本能寺の変後の明智光秀に会いに行って説教する、清洲会議を盗み聞きする、近江・大坂・江戸を簡単に行き来する、
徳川秀忠が大坂の陣直前に一人で大坂城に乗り込んで秀頼・淀殿と直談判しようとする、
文禄の役で豊臣秀勝(江の2番目の夫)が朝鮮の民衆を庇って家臣に斬られ現地の子供と交流して非戦思想を持つ…などなど、
史実における有名人物・事件に(本来関わっていない)江を無理矢理絡ませようとする姿勢や、
史実と全く乖離している上に当時の思想や風習も丸無視した展開、
さらには「光るものを持っている」などのふわっとした理由で江をやたらと持ち上げる(史実の有名人を含む)周辺人物等、ツッコミどころを挙げていけばキリがない。
9歳の姫様が神君伊賀越えに参加して無事生還できるわけねぇだろ! いいかげんにしろ!
三姉妹の子役時代がほぼ無い(江6歳時点で既に上野樹里(当時24歳))のもどういうことだったのだろうか。
ただ、戦国ものでもスルーされがちな朝鮮出兵を時間を割いて描写したことだけは評価できるという声も。
東日本大震災による放送休止の影響か、予定より話数が1話削減された。
また、慶長伏見地震と思しき描写は、単なる伏見の徳川屋敷の火事(原因は侍女の失火)として扱われている。
男性陣(信長・光秀・秀吉・家康・浅井・秀次あたり)の評価は高く、「こっちが主演の大河で良かったんじゃね?」という声もちらほら。
幕末モノで数字が出ないと言われる龍馬伝を平均視聴率で下回ったのも宜なるかな。17話までは20%以上の回もあったが、それ以降は一度も20%以上を記録できずに終わった。
2011年の大河は坂の上の雲第三部という意見もないことはない。
放映期間:2012年
原作:なし
主人公:平清盛(演:松山ケンイチ)
時代:平安時代末期
脚本:藤本有紀
7年ぶりとなる平安末期・源平争乱モノ。脚本は『ちりとてちん』やドラマ版『
Q.E.D. 証明終了』を手掛けた藤本有紀。
今回は時代を反映したセットや衣装を用意し、しっかり平安末期を描こうとした…のだが、
余りにもリアルさを追求したためか、結果として劇中の様相が貧相でみすぼらしくなってしまい、当時の兵庫県知事から的外れな批判を受けた(対照的に神戸市長はフォローするような発言をしていた)。
また皇室(あるいは皇族)を研究家内でも賛否ある「王家」呼びして要らん問題を引き寄せたりと、周辺が囂しかった。
下手に触れるとこうなるため、南北朝時代など時の天皇や上皇がハッスルした時代はやりにくいのである。
さらに源平合戦以前の余りなじみのない時代ということもあり、複雑かつ難解な人間関係や時代背景、夜8時に濡れ場的描写、中盤にはオリンピック中継が入って放送休止、などマイナスも多く、視聴率は伸び悩み『花の乱』すら下回るワースト記録を達成してしまった。
回ごとの最低視聴率ではワースト2位。39~42話にかけては全て一桁、源氏が決起する45回に至っては7.3%と2012年時点での史上最低記録を出してしまった。
しかし、批判を受けても史実重視で作ったセットや衣装のこだわりなど見るべき面はあり、むしろシンプルなキャラが少ないレベルというエキセントリックな登場人物たちや幻想的な演出、
男同士の濡れ場を示唆するようなシーンなども一部で受け、2012年Twitterでもっとも話題となったドラマになった。
実写映画版デスノートの
L役の松山ケンイチと、後に連続ドラマ版デスノートで
夜神月を演じた窪田正孝が清盛・重盛の親子役で出演している。
同人方面も盛り上がり、本Wikiにも項目が立っている。
良くも悪くも見る人を選ぶもののクオリティは決して低く無い作品のため、興味のある人は一見の価値あり。
八重の桜
放映期間:2013年
原作:なし
主人公:新島八重(演:綾瀬はるか)
時代:幕末~明治時代中期
脚本:山本むつみ、吉澤智子、三浦有為子
2011年の東日本大震災を受け、急遽福島出身の新島八重を主人公に据えた企画を立ち上げて作った大河である。
幕末、逆賊となってしまった会津藩で官軍にスペンサー銃をぶっ放して戦い、
維新回天後は混乱の中夫川崎尚之助(演:長谷川博己)と別れるも、生き別れていた兄山本覚馬(演:西島秀俊)と再会し、その縁で出会った新島襄(演:オダギリジョー)と再婚。
夫の夢である同志社大学設立に奔走し、日清戦争で看護婦として活躍した新島八重の人生を描く。
当初は朝ドラでやれと言う下馬評もあったが、蓋を開けてみてば安心の大河クオリティ。
八重がスペンサー銃を構えてぶっ放すシーンは非常にかっこいい。
綾瀬はるかのそれまでのイメージをひっくり返す当たり役と評する人も多く、本人も非常に印象に残っているらしい。
他にも山本、松平容保役の
綾野剛の本人が乗り移ったと言われるほどの役への入れ込み様や、胡散臭さ満点の徳川慶喜役の小泉孝太郎等、若手男性陣のハマりっぷりも見どころ。
「西郷」繋がりで会津藩の重役西郷頼母(維新時38歳)を福島県出身の西田敏行(『翔ぶが如く』版西郷隆盛、当時66歳)が演じるという小ネタもあったりした。
ただし明治期以降は駆け足気味の描写となり、会津藩関係者も殆ど出なくなり、例によって低予算のシーンが増えたため、悪い意味でも大河クオリティだった。
それでも藩閥政治とその問題点、明治期のキリスト教史など、同時代を舞台にした他作品ではあまり触れられない要素を真正面から描いているため、
後半も明治期を描いたドラマとしては良作という声も。
ちなみに、
戦争で兄の妻が斃れた過去を持つ会津出身の女性・山川捨松と、会津を攻めた官軍士官の一人・大山巌の結婚…かつての敵対関係を個人レベルでだが越えた婚姻という史実を、八重達を交え独自の解釈で描いた
腕相撲の回は腹筋崩壊もの。
後半やや落ち込んだものの、視聴率は前作より回復した。とは言え花の乱から少し上げただけとすこし寂しい結果となった。
また、
タイムスクープハンターとタイアップしたり漫画雑誌『
ジャンプSQ.』等でコミカライズが行われるという一風変わったプロモーションが展開された。
なお『SQ.』での連載は後に『
魔都精兵のスレイブ』の作画を担当する竹村洋平によるもの。
大河ドラマと同期間の月刊連載ということもあり、駆け足気味に会津編を描き切り、八重が新島襄と出会う部分で完結している。
なおコミックス後日談のワンカットに登場した高木時尾の旦那は後ろ姿のみだがどう見ても
悪・即・斬の人だったり……
余談ながら、同作で八重の幼馴染にして会津藩の名将山川浩(大蔵。捨松の兄)を演じた玉山鉄二が主演を務めた翌年の連続テレビ小説『マッサン』では、故郷を追われた会津藩士のその後が語られており、八重の桜ファンを歓喜させたとか。
軍師官兵衛
放映期間:2014年
原作:なし
主人公:
黒田官兵衛(演:
岡田准一)
時代:戦国時代~安土桃山時代
脚本:前川洋一
秀吉の軍師として知られ、後半生は秀吉も恐れたとされる怜悧な智謀の士・黒田官兵衛の人生を描く。
物語の前半では「戦は嫌じゃあ!」等と言っていた主人公が、
有岡城幽閉を経て脚を痛めてからは人が変わったように悪い顔して悪辣な策を囁く暗黒軍師と化し、視聴者をびっくりさせた。
なんでも岡田准一と竹中直人が人物像について製作に意見した結果だとか。
それでも近年の戦国大河の主人公と同じく、基本的に「戦のない世を作る」のが最終目標。
なのに最終回でヒャッハーしたのは謎展開なのだが……史実最後の九州切り取り大暴れと、作中思想の折り合いが付かなかった結果であろう。
終盤の非常に悪い笑顔で活躍する官兵衛は必見。
竹中直人を秀吉として再登板させるなど話題作りに腐心したが、前作は越えたが視聴率は伸びきらなかった。
晩年の黒い秀吉を積極的に描こうとしていた割には、秀次事件や朝鮮出兵は終盤が低予算化する関係もあってなおざりに触れる程度と、やや中途半端だった感は否めない。
しかし関西圏や北部九州といった官兵衛の「お膝元」ではかなり高い視聴率となっており、地域性が出る結果になった。
劇伴は
ジョジョの奇妙な冒険などでおなじみ菅野祐悟。
黒田長政役の松坂桃李他、特撮出身のキャストが多数出演している。
また小河良利役で出演するはずだった石田太郎が撮影前に急逝したため、代役として磯部勉が登板している。
無双シリーズの『戦国無双4』ではコラボ衣装やエディットパーツが配信された。
因みに主演の岡田准一は歴史が好きで、黒田官兵衛の有名な台詞である「ご運が開けましたぞ」を言えて嬉しかったらしい。
OPクレジットは4年ぶりの横書きだが、次の横書きの作品は2023年の『どうする家康』まで出てこない。
語り手は当初は藤村志保だったが、
フガフガ声独特な語り口が賛否両論となり、その上大怪我して入院したことから、7話以降は元NHKアナウンサーの広瀬修子に交代した。
余談ながら、本作で淀殿を演じた二階堂ふみは10年後、アメリカの時代劇ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』で淀殿をモチーフにした落葉の方を演じている。
花燃ゆ
放映期間:2015年
原作:なし
主人公:杉文(演:井上真央)
時代:幕末~明治時代中期
脚本:大島里美、宮村優子、金子ありさ、小松江里子
ひとことで言うとシエとほとんど同じ轍を踏んでダダ滑りした。
登場しても良いはずの重要人物(長州藩士や主人公の姉も含む)が大勢登場しなかったり、出ていてもわずかな出番だったり、
多少の史実をスルーするのは大河でもよくある事とは言え、殆どがナレーションで済まされるなど、ピックアップのやり方は大いに突っ込まれた。
幕末物で大政奉還について一言も触れないというのは流石にないだろう……。
同じくマイナーな幕末女性主人公だった新島八重とよく比較されるが、あちらは(歴史ファン以外への知名度こそ無かったものの)激動の人生を力強く歩んだ女性だったのに対して、
こちらは歴史の表舞台で活躍したと言える時期が「再婚した群馬県令の妻だったころ」位では、どうしても捏造部分が多くならざるを得ない。
しかも前線で銃をぶっ放していたヒロインの記憶がまだ新しいのに「家で健気に夫の帰りを待つのが妻の戦いよ!!」とか言われても……
群馬県令も大物チックに描かれていたが、『篤姫』の小松帯刀みたいに大久保や西郷という巨魁に埋もれてしまったタイプではなく、どうも地味。
おまけに群馬県令時代最大の事件である県庁移転問題を華麗にスルーしたため地元民からもそっぽを向かれた。
身もふたもないが、吉田松陰の妹で久坂玄瑞の妻(しかも久坂には邪険にされていた)ってだけの人物を主人公に据えたのが間違いだったし、
(ただし戦時中に「杉文」を主人公にした本が一冊存在したことも確か)
そもそも「『花神』である程度長州ネタ総ざらいしちゃった」感がある。
かといって他に長州系で一年持ちそうな人物となると「こと死去時の事件にうかつに触れると隣国から苦情が来る人」くらいしか……(本作でも出番自体はあるけど)
『八重の桜』で長州藩士をテロリストのように描いて長州ファンや地元民からクレームが来たためバランスを取るために作られた、とまことしやかに噂される。
……のだが、その『八重の桜』は「長州にも義はあった」としっかりフォローしている上に、木戸孝允や槇村正直などは「クセは強いが魅力もある」人物として描かれている。
対して本作の長州藩士は「突然中二レベルの薄っぺらい主張を声高に叫び、政権転覆を主張する」「意味もなく軍を率いて上京し挙句勝手に乱を起こす」などの描写(というより描写不足)のせいで
よっぽど救いのないテロリストっぽいと言われることも。
プロモーションも斜め上にすっ飛んでいくようなものだったりどうしたらよく見えるのか…という塩梅であった。
視聴率も第三回以降は15%すら越えられず、平均視聴率はワースト3位タイの12.0%、厳密に言えば平清盛を0.01ポイント下回って実質ワースト2位である。
底の深さでは清盛やいだてんに軍配が上がるものの、浮上するきっかけすらなかったといえよう。
脚本家4人体制というのも異例(最初は2人だったが、視聴率が伸びず新たに入れたがそれでも伸びなかったという感じ)。
なお、そのうち1人は時代劇初挑戦で、「家長とは一緒に食事しないとか、各自にお膳があることも初めて知った」と歴史に疎い発言もある。
脚本がこんな体たらくなのに、このご時世で幕末の長州藩士をテロリストに見えないように描けというほうが無茶だ。
しかもよりによって、単体でもトホホな本作は後半になって凶悪な刺客が身内のNHKから出現したのである。
それがこの年の下半期の朝の連続テレビ小説で、本作と同じく幕末から明治期を生きた女性を描き、平均視聴率23.5%を記録し今なお根強い人気に支えられる『あさが来た』。
シナリオの質も時代考証も良く、魅力的なキャラクターも多かった朝ドラは回を重ねる毎に評判を上げ、本作と明暗を大きく分けていくことでも当時話題になった。
ナレーターを務めたのは
赤い彗星こと
池田秀一。
また、川井憲次担当の松陰の辞世の句を歌詞として取り入れたメイン・テーマは、本編の評価に反して大河ドラマ屈指の名OP曲。OP詐欺? 何故松陰を主人公にしなかったって? 言ってやるな。
なお、主演の井上真央にとって本作は自身のキャリアに傷をつけた黒歴史同然らしい。そもそも脚本の不出来が批判されているのに会見で主演に「私の力不足」とか言わせてる時点で……
真田丸
放映期間:2016年
原作:なし
主人公:
真田信繁(幸村)(演:堺雅人)
時代:安土桃山時代~江戸時代前期
脚本:三谷幸喜
大坂夏の陣において「日の本一の兵」と言わしめた真田信繁(幸村)。
その信繁を主人公に、武田家滅亡後、有力国人に過ぎなかった真田家を大名に発展させた父・真田昌幸、
徳川家臣の大名として真田家を守り抜いた兄・真田信之ら真田家全体を戦国を渡る「一艘の船」として描く。
脚本は『新選組!』以来の登板となる三谷幸喜。
当初は「講談(真田十勇士)ではなく史実準拠で描く」とのことで不安の声もあったが、考証に基づいた骨の通った脚本は健在であり、概ね好評である。
汁かけ飯を食う北条氏政、家康を前に居眠りをする本多正信など、歴史好きをニヤリとさせるシーンも随所に登場する他、
『真田太平記』で真田幸村を演じた草刈正雄が真田昌幸役でカムバックしたり、
北条氏政役の高嶋政伸や秀吉役の小日向文世らの不気味さが尋常じゃないなど、大物のキャスティングが絶妙。
『黄金の日日』で呂宋助左衛門を演じた九代目松本幸四郎が、呂宋助左衛門として衣装もそのままに登場するなどの心憎いファンサービスも。
さらに十勇士こそ登場しないものの、史実にモデルとなった人物がいたことで「佐助」は信繁の忠臣として登場しており、
服部半蔵や、名前こそ出ないが北条の風魔忍軍と忍者対決をするなどの活躍を見せている。
ストーリーは「青春篇」「大坂城篇」「九度山篇」「大坂の陣篇」の四部構成で、
信繁という若者が武田家の滅亡から豊臣政権の興亡まで戦国時代を駆け抜けた、15歳から48歳、33年間の物語となっている。
主人公・信繁は「なるべく犠牲を出さずに戦国を終わらせたい」という最近の大河主人公らしい考えを抱くが、そこから「謀略策略駆使して犠牲を最小限に抑える」という方向性に弾け、
やがて自分を気にかけてくれた秀吉への恩義から、敗者である豊臣方の人間でありながら「最期まで望みを捨てずに生きる」という信念を持って戦い続けていく。
あくまでも信繁、あるいは真田家視点に徹し、真田家が関わらないところは本能寺の変や関ヶ原の戦いでさえ速攻で終わらせ、
むしろ以後の混乱にフォーカスを当てるなど、徹底的に最初から最後まで「真田家の戦国」を描くことに終止している。
史実で信繁が大坂の陣まであまり戦場で活躍していなかった一方、滅びゆく戦国武将たちと関係があったことを逆手に取り、
本能寺の変で空白地帯と化した甲信地方の争奪戦いわゆる「天正壬午の乱」や、
家族経営のブラック企業と化した大坂城の情勢に振り回されつつ必死に駆け回る中で武田・上杉・北条・豊臣と様々な英雄たちの思いを背負い、
最後の大坂の陣では信繁が積極的に自分の武勲を捏造して士気を上げていくなど、後に講談が生まれた理由も描写している。
またその構成を利用して序盤は予算を抑え、クライマックスの大坂の陣篇で一挙に資金を投入して合戦シーンを撮影する方針は極めて効果的で、
特に終盤に向けた四十話「幸村」と四十四話「築城」はこれまでの積み重ねが一挙に意味を為してくる、長期放送の大河ドラマならではの回であった。
また優秀な武将だが行き当たりばったりでやること為すこと上手くいかない真田昌幸、
大名として必死になって真田家を守ろうとするが父・弟へのコンプレックスがある真田信幸、
人が良すぎて義を重んじるためホイホイ引き受けるが実行できない上杉景勝、
恐ろしいほど有能かつ冷酷な独裁者から次第に耄碌していくが孫のように信繁を可愛がる豊臣秀吉、
決して無能ではないが叔父からの重圧に潰れていく豊臣秀次、優秀で義理堅いが頭も堅いため孤立を深めていく石田三成、
悪辣で腹黒で執念深いが小心で理を重んじ情に篤い最後の戦国武将・徳川家康、天真爛漫だが虚無的な淀殿、
秀吉の後継者として才覚を発揮するも未熟なため情勢を読めない豊臣秀頼など、
各人を一方的に善人・悪人、優秀・暗愚と描くのではなく、正負両面を描写しているのも特徴。
最後まで扱いが残念だった大蔵卿は泣いていい。
が、彼女もまた「戦がわからないし浪人を信用しない」という面が強調されているだけで、「豊臣の御家大事で戦反対」という女性らしい心情はきちんと表現されている。
それに臣下であった徳川によって追い詰められた状況下では、浪人たちではなく豊臣家が勝たねばならないと思い詰めるのも無理はない。
そもそも主人公の信繁からして
「知恵者ではあり戦術面では優れているが、自分で大きな戦略や軍略を描くことは出来ず、大業を成す器ではない」という形で描かれており、
最後に立ちはだかる敵であり、常に大局的視点で動き続ける家康との対比が最後まで描かれた。
他にもあの
高木渉が俳優として出演していたり、思いつきだけで行動する父に振り回される信幸を評しての「真田丸どうでしょう」、
室賀正武の繰り返される「
黙れ小童!」、大河史上最速級の退場をする織田信長、
各大名が本能寺の変後の混乱から必死に立ち直ろうとする中
マジで必死の伊賀越をする徳川家康、
今にも仮面ライダーに変身しそうな顔をした本多忠勝を指しての「あまりに恐ろしい舅」、明国攻めを描くかわりに史実準拠で開かれる
肥前名護屋城大仮装大会、
全く出てこないと思っていたら終盤
ナントカ官兵衛呼ばわりされる前々作主人公、
そして、登場人物の死を有働由美子アナの淡々としたナレーションのみで告げる演出(通称「有働砲」「ナレ死」)などが視聴者の間で異様な盛り上がりを見せるなど、ネタにも事欠かない。
ちなみにこの「ナレ死」の反響は早々に製作側も把握していたらしく、二十六話では
ナレーションの途中を息を吹き返し、いくらか大事なセリフを語ったあと改めてナレ死で退場という逆手に取った演出もされた(※字面はギャグっぽいけど真面目なシーンです)
ただし、『新選組!』同様にこれら喜劇的な部分はかなりの賛否両論である。
特に序盤はメインヒロイン格のきりがウザいとか、史実では優秀で活躍した兄・信幸の扱いが悪すぎるなどの批判が多かった。
ただ、きりのウザさは武将ではないただの娘(正室側室はもちろん大名家の姫ですらない地元豪族の娘)としての視点のためで、信幸も才覚を発揮するのは老成してから。
加えて言えば信繁を含めた彼ら全員がまだ十代後半から二十代前半、関ヶ原でやっと三十代になる若者だった事が大きい。
一気に十数年経過する九度山篇を経て、信繁は一人の武将として世に打って出る決意を固め、長く信繁の傍にいたきりは彼の正室側室たちを纏めていく重要な役割を担い、
信幸もまた一人の大名として戦後の真田家を背負っていくべく策を練るなど、終盤に向けて成長を見せてくれる。
結果的には初回視聴率19.9%、最終回視聴率14.7%、平均視聴率16.6%と、過去五年間の大河ではトップの記録を残したので、大成功と言って良いだろう。
特筆すべきは地上波より1時間前倒しで放送されるBSプレミアム(通称早丸)の高視聴率で、
「3%で健闘」と言われるBSにおいて平均視聴率4.7%、最後の10話は全て5%を突破するなど、歴史的な数字を残している。
ちなみに劇中のCGは大河ドラマから多くの影響を受けている『信長の野望』を手掛けるコーエーテクモグループが担当している。
シブサワ・コウによるCG地図を使用した解説のわかりやすさは概ね好評で、『信長の野望』の方にも『真田丸』仕様の大坂城のDLCが配信予定である他、
本格的にコーエーテクモとコラボし、真田幸村(信繁)の生涯48年間を描く「戦国無双真田丸」も発売決定している。
このゲームには、『真田丸』に使用されているCG地図を逆輸入されており、初回特典として『真田丸 真田信繁赤備え』のダウンロードシリアルが封入されている。
別にコラボはしていないが『戦国BASARA』もこの流れに乗って
真田幸村が主役の似たようなゲームを出した。
また本作のキャストの内信之・稲夫婦と塙団右衛門の演者は2017年の舞台『子供の事情』、
大谷吉継の演者以下他のサブキャスト陣は2018年のNHK正月時代劇『
風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~』で再び三谷作品に出演している。
放映期間:2017年
原作:なし
主人公:井伊直虎(演:柴咲コウ)
時代:戦国時代~安土桃山時代
脚本:森下佳子
遠江の国人として徳川家康に仕え、譜代の大藩・彦根藩の祖となった井伊直政。
その井伊直政を育て、一時的に女性ながら井伊家当主として支えた井伊直虎の生涯を描く。
井伊直弼の生涯から始まった大河ドラマは、54年目にしてついに彼の先祖の物語にまで至った。
2年連続の戦国もので、今までかたや「徳川四天王・徳川十六神将・徳川三傑の一柱」、
かたや「織田信長に桶狭間で倒される暗愚な大名」というイメージ優先でしか描かれることの無かった井伊家・今川家に焦点を当てた作品。
主人公がまた女性であること、本人が井伊谷城を巡る戦いを三度経験しただけなこと、
桶狭間以外の戦国大事件にほぼ関わることなく1582年で亡くなること、恋愛関係が重点されるような予告から、早々に出来が懸念されていた……
……だが蓋を開けてみると、戦国の殺伐さ・理不尽さもしっかり描きつつも、中心人物三人を始めとするキャラクターをしっかり掘り下げ、
戦国時代という動乱の中、過酷な運命に立ち向かっていく小領主の物語であった。
予告編で一部の登場人物が当時の成年としてはあり得ない格好をしていたことにもちゃんと意味があることが明かされたり、意外なほど骨太な作りだった。
その一方、この健気な人々が今後次々井伊家に降りかかる苦難に翻弄される姿を見せられるのかと戦々恐々としている人もおり、
案の定、父以上に苛烈な支配体制を敷く今川氏真とそれを操る女大名寿桂尼の前に、井伊家の男たちが次々と死亡して女子供しか残っていない状態となり、
そんな中で1人生き残った小野但馬守政次が井伊家を守るために主君を売ってまで今川に屈し暗黒面に染まっていくという、
前年の清々しいまでの智謀知略のぶつかり合いとは正反対のハードな描写へと急転している。
男だけがほとんど灰色に染まった公式HPの相関図は衝撃的である。
ネットでは「(スイーツではなく)ハバネロ大河」「首桶が準レギュラー」などの物騒な言葉が躍った。
その後直虎が井伊家の当主、そして「おんな城主」となる形でようやく新章が開幕したが、
それ以降も今川家の圧力、家臣や農民との仲違い、更に事あるたびに邪魔をするような態度を示す政次など苦労の連続。
しかし、そんな中でも直虎は諦めずに奮闘を続け、その政次を含めた頼もしい家臣たちと共に井伊谷、そして井伊家を立て直していく事になる。
だが、その果てで彼女たちを待っていた結末、そして直虎が取った選択は……。
そして、物語は虎松改め井伊万千代――後の徳川四天王の1人、井伊直政へと受け継がれていく。
中野直之と奥山六左衛門の「ユキロック」こと凸凹家臣コンビ、架空の人物ながら非常に重要な役割を担った龍雲丸、銭の犬こと瀬戸方久、
情に厚い徳川家康、これまでに無い側面が描かれた今川氏真など魅力的なキャラクターが非常に多い作品だが、
特に上記の高橋一生氏が演じる小野但馬守政次は、それまでの伝承で「井伊家を陥れた極悪人」というイメージが強かったのを、
家臣としての責務、代々家に受け継がれてきた暗黙の矜持を見事な演技で昇華させたとファンから高く評価された。
その人気は物語退場後も続き、彼をテーマにした「鶴のうた」という緊急特盤CDまで制作されるに至っている。
白黒を つけむと君を一人待つ 天つたう日ぞ 楽しからずや
また今作の
サブタイトルは総集編も含めて古今東西の様々な映画・テレビドラマなどの作品や一節を捩ったものになっており、
「
おとわ危機一髪」「
罪と罰」「
ぬしの名は」「
嫌われ政次の一生」「
井伊を共に去りぬ」「
信長、浜松来たいってよ」など分かりやすいものから、
「
虎と龍」「
死の帳面」など一捻り加えたものまで様々。
その範囲は「
おんな城主対おんな大名」「
虎松の野望」、前年のパロディ返しとも言える「
逃げるは恥だが時に勝つ」、
果ては脚本を手掛けた森下佳子女史の作品から取られた「
天正の草履番」まで節操がない。
一方で第4回「
女子にこそあれ次郎法師」は史実の直虎の詳細を記した数少ない資料「井伊家伝記」の一節から取られた他、
物語の大きな節目となった第12回は、今作のタイトルがそのままサブタイトルになっている。
なお、これらの元ネタについては番組終了後の公式ツイッターでそれを連想させるツイートが投稿されており、その中で第49回「本能寺
が変」はただのダジャレだとぶっちゃけられている。
放送前に発売されたノベライズはなかなかハードな展開だったらしいが、
ドラマ本編でも解死人、人身売買など、放送コードギリギリのラインで中世戦国時代の荒んだ世情をちょくちょく導入している。
史実的大事件に絡んだことが少ないがゆえに世情を描くしかないというところもあるが、マニア受けは相当する部分もキチンと描いており、評判はかなり高い。
全話の平均視聴率こそ12.8%と歴代大河ドラマワースト4位となってしまったものの、
2017年のツイッターで最も話題になったドラマとして「#Twitterトレンド大賞」ドラマ部門で1位を獲得したり、
地元の「大河ドラマ館」の入場者数があの『篤姫』を抜く歴代2位を記録したり、視聴率だけでは測れない人気ぶりを示す結果を見せた。
西郷どん
放映期間:2018年
原作:林真理子「西郷どん!」
主人公:
西郷隆盛(演:鈴木亮平)
時代:幕末~明治時代前期
脚本:中園ミホ
2018年放送。平成内で完結する最後の大河であり、原作小説付きの大河ドラマもこの年が最後。
1990年放映の『翔ぶが如く』以来28年ぶりとなる西郷隆盛主役の大河ドラマ。
ちなみにタイトルの読みは「さいごうどん」ではなく「せごどん」。
放送開始と同時期に単行本が発売された。
明確な「政治的な話ではなく、西郷隆盛の人生を描く」という脚本家のコメント及び原作展開からやっぱり不安の声があがり、
今までメディア作品であまり出てこなかった西郷最初の妻登場、渡辺謙が島津斉彬役で出演、奄美大島ロケと話題を創るも、最終的な平均視聴率はワースト5位となる12.7%を記録してしまった。
当初は全50話と発表されていたが、冒頭で書いた理由からか全47話となった(穴埋め分は本作に関係する特番を放送)。
明治時代編はそのせいか後半10話しかなく、西南戦争がラスト2話しかない。
さらに、西郷と西南戦争を語るにあたり必須と言えるだろう征韓論について一切触れないという衝撃の展開を行い、視聴者の失笑を買った。
おまけに西郷の最期が単に撃たれて倒れるだけ。確かに銃弾を受けて転倒後、「最早これまで」と悟って介錯されたという史実に伝わる西郷の最期は壮絶であるが、
切腹→周囲の人間が介錯という展開自体は時代劇でもよく見られる上、史実で介錯を担った別府晋介はちゃんと出ているのに……。
史実人物の描写にも偏りがあり、
中村半次郎(桐野利秋)は「人斬り半次郎」の異名こそ出てくるが、(唯一確認できる人斬りである)赤松小三郎が未登場のため人斬りシーンが無い。
また史実で最初薩摩に確保され斉彬と対話し、維新直前薩摩藩に英語や航海術を教えたりしたジョン万次郎も、
日本帰国直後に捕まった「
謎の漂流者」扱いで出番ほぼ無しで、(前述の話数削減のあおりを受けてか)再登場は無かった。
西郷に大きい影響を与えた人物の1人として知られる藤田東湖も原作にはちゃんと登場するのだが、本編には登場せず紀行で触れられるのみだった。
西郷と敵対する島津斉興、井伊直弼、島津久光といった面々はテンプレ的な悪人描写が目立ち、ただの主人公の敵役程度に貶められてしまった。
特に徳川慶喜に至っては
遊郭狂いという原作小説にすら無い謎設定を与えられている。
結果的に西郷隆盛という清濁併せ呑む複雑な人物を描き切れていたとは到底言えず、
西郷の戦争や陰謀を好む黒い一面に関する描写はほとんど除外され、陽の部分だけ抽出したような作風となってしまった。
ひとことで例えるなら幕末版『天地人』と言ったところだろうか。
とはいえ、鈴木亮平の役への入れ込みようは本物で晩年の太った西郷を体現するために、一日四食とったほか、間食としてドーナツを思いついたら食べていたと後日談で明かしている(さらにすごいのは監督からの指示ではなく、自発的にやっていたということ)。
ナレーターは当初市原悦子が担当予定だったが、体調不良のため降板。そのため、『翔ぶが如く』で西郷役だった西田敏行が代役を務めた。
番組後半では西田が西郷の息子(奄美大島での妻である愛加那との子)で本編終了後京都市長になった西郷菊次郎役としても出演し、以降は息子の視点から父の人生が語られていく形となった。
また余談だが、本作・『いだてん』と2作続けて伊藤博文が同じキャスト(演:浜野謙太)で出演し、
キャストこそ違うが大隈重信も登場(本作では若き新政府サイドの人物。『いだてん』では早稲田大学創始者)。
アニメ関連では橋本左内役で
風間俊介(2020年の『麒麟がくる』で徳川家康役に)、西郷のご近所さんとして犬山イヌコ、中山忠能役で
緒方賢一がゲスト出演している。
劇伴は富貴晴美が大河史上最年少で担当した。
いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~
放映期間:2019年
原作:なし
主人公:金栗四三(演:六代目中村勘九郎)、田畑政治(演:阿部サダヲ)
時代:明治時代中期~昭和時代
脚本:宮藤官九郎
最後の平成開始作品。2019年5月から新元号となるため、大河ドラマとしては『春日局』(1989年元日開始)についで2作目の「年号をまたぐ」作品となった。
2020年東京オリンピックに先駆けて日本と近代オリンピックの関わり、東京の変遷を描く、
1986年『いのち』以来の近現代を題材とした大河ドラマで、
1985年『春の波濤』に次いで2作目の実在人物主役近現代大河でもある。
「落語の神様」五代目古今亭志ん生(演:
ビートたけし、青年期:森山未來)による架空の落語「東京オリムピック噺」と彼の半生を背景にし、
1912年ストックホルムオリンピックでの日本初出場から1964年の東京オリンピック開催までの約半世紀を、
最初のオリンピック選手である金栗四三と、東京オリンピック招致に中心的な役割を果たした田畑政治の二人の主人公によるリレー形式で描く。
主演の一人中村勘九郎は20年前の『元禄繚乱』主演の故中村勘三郎の息子で、脚本を手がけるのは阿部サダヲの芝居兼
バンド仲間であるクドカンこと宮藤官九郎。
また、同脚本家による『
あまちゃん』から続投したスタッフも多い。
……が、「現代劇」、「マイナーな主人公」、「題材がスポーツと落語」、「東京2020合わせ」、「時代を行き来する複雑な群像劇構成」、
「事故の後遺症で滑舌の悪いビートたけしを語りに採用する」等の「王道外し、挑戦的要素の多さ」から、「何がしたいのかわからない」などと酷評され視聴率は低迷。「小河ドラマ」とも揶揄された。
またサブキャストの内、黒坂辛作役のピエール瀧が第10話放送後に薬物使用で逮捕され、後任には三宅弘城が急遽起用され、それまでの出演シーンもソフト化に向けて全て撮り直された。
また、大松博文役の徳井義実は初出演回の放送前に脱税発覚で活動自粛となったが、登場時期が終盤だったため出演部分は殆ど放送され、
自粛から復帰後のBSプレミアムでの再放送では一部カットされていた徳井の出演シーンが放送された。
これらの不祥事も重なったせいか、瞬間・平均共に歴代ワースト一位、史上初の平均視聴率1桁大河となってしまった…。
しかし、『花燃ゆ』をも下回ってしまった視聴率に反してSNSでの評価は賛否ありながらも決して低くなく、
そのような評価を受けて「録画で後から観ていた視聴者も少なくないのでは?」と言われたほど(しかし、実際は録画視聴率も低かった)で、
『平清盛』同様、「見る人は選ぶが、ハマる人はとことんハマる作品」と言えるかもしれない。
2019年12月のギャラクシー賞月間賞も受賞している。
ちなみに時代が近い影響か、志ん生の孫である池波志乃が志ん生の妻(池波の祖母。ちなみにこの役は3回目)役、
中盤に登場した犬養毅(演:塩見三省)の曾孫である安藤サクラが終盤で河西昌枝役としてゲスト出演。
サブキャスト陣は特撮出身・ミュージシャン・芸人・元アイドル・
声優兼業と多岐に渡り、
たけし・田口トモロヲ(金栗信彦役)・松尾スズキ(橘家圓喬役)・塚本晋也(副島道正役)・三谷幸喜(市川崑役)と計5人映画監督経験者もいたり。
また作中の国旗考証を担当した評論家吹浦忠正が終盤でドラマにも登場(演:須藤蓮)し、
勘九郎の弟である中村七之助も6代目三遊亭圓生役で参加。高橋是清役だった萩原健一は本作が遺作となった。