NHK大河ドラマ

登録日:2016/04/15 Fri 03:14:25
更新日:2025/04/25 Fri 10:31:14
所要時間:約 105 分で読めます





NHK大河ドラマとは、NHKにて一年間に渡り放映される大型時代劇である。

※2009年~2011年の3年間、大河ドラマ枠で放送された『坂の上の雲』に関しては当該項目を参照。

+ 目次


概要

連続テレビ小説に遅れること2年、1963年から現在まで50年以上に渡って制作・放映されている。

当初は大型連続時代劇と呼ばれていたが、二作目以降新聞で「大河ドラマ」の異名が付き一般的に呼ばれるようになった。
NHKも1977年辺りから公式に大河ドラマの名称を使用しており、2004年の『新選組!』からは番組オープニングで大河ドラマのテロップが付くようになった。

地上波は日曜20時からNHK総合にて放送されているが、BSでは日曜18時、2019年からはBS4Kでも日曜朝9時からそれぞれ先行放送されている。
また、本放送を見逃しても、翌週の土曜13時からも先週回の再放送を行っている他、
動画配信サービス「NHKプラス」「NHKオンデマンド」でも放送終了後から最新話が配信されている。
また、(民間含めた)衛星放送や配信サイトでも旧作の放送・配信が実施されている。

日曜に45分×50話前後という大枠を取って放映されており、報道特別番組などが編成されない限り放送休止はない。スポーツ中継や国政選挙のある場合は、定時より繰り上げ放送が実施される。
曜日は開始から一切変わっていないが時刻は
  • 1963年4月~1964年3月が20:45~
  • 1964年4月~12月が21:30~
  • 1965年1月~1969年4月6日までが20:15~
  • 1969年4月13日から20:00~
と変遷を遂げている。
また、2024年10月以降地上波における20時のテレビドラマ枠はここのみとなっている。

放送回数は当初丸々1年52話、その後は年末年始特番を入れるため50話となった。2010年代以降は働き方改革に伴うスタッフの休養日増加に伴い、47話程度の回数となっている。

長く続いているだけあり視聴率やクオリティに対するハードルは高め。
現在他局のドラマの場合、視聴率は二桁取ることさえ至難だが、大河ドラマの場合10%前半であってもメディアからは「視聴率低迷」と評されることもある。
一方で高評価を得た場合は、キャストやスタッフにとっても大きな実績になりうるチャンスでもある。
キャストの演技は勿論のこと、脚本や劇伴(特にテーマ曲)なども注目され、他作品で実績のある錚々たるキャスト・スタッフが揃うことも多い。
また、舞台となった地域や登場人物ゆかりの地が賑わうこともある。
オープニングクレジット映像も作品に応じた工夫溢れるものとなっており、今や民放では同種のクレジットがほぼ消滅してしまったせいか、NHKの本気が感じられるシーンのひとつ。

大河ドラマはあくまでも「史実を基にしたドラマ」なので、架空の人物が物語に絡んできたり、
歴史上無名の人物が物語の主要人物になったりと、史実に必ずしも忠実ではない演出も多い。
というかむしろその脚色と演出こそが「大河ドラマをどう面白くするか」と言う重要な鍵となる。
一方史実に忠実な部分はしばしば「すでにネタバレされてる」等と逆にネタにされることも。
開始当初は原作付き小説が多かったが、2010年代以降は完全描き下ろしが主流となった。これはSNSの急速な普及に伴い、設定や時代考証に関する質問が増加したことへの対応で、小説では旧来の説を採用している例も多く対応が難しくなったためとしている。


舞台

舞台となる時代は、概ね戦国・安土桃山時代か幕末が多く、時折源平争乱や忠臣蔵が混ざると言った塩梅。
ただし忠臣蔵モノは1999年の『元禄繚乱』を最後に途絶えている*1
また「幕末モノは不人気」というジンクスも言われていたが『篤姫』が高視聴率を叩き出してからはあまり言われなくなった。
『山河燃ゆ』や『いだてん』など、近現代を舞台とした作品も時折ある。
ちなみに戦国時代から江戸時代が多いのはセットや衣装、場合によっては映像なども使い廻しが出来る*2という制作上の事情もあるらしく、三谷幸喜は奈良時代を舞台にした作品を提案したら前述の理由から却下されたという。

舞台となる地域はテーマ、地域、時代、主人公プロフィールなどが偏らないよう日本各地になるため、
各自治体で大河ドラマの誘致活動が行われており、地域によっては「〇〇(歴史上の人物)の大河ドラマ化を願う会」といった誘致団体を設けている例も少なくない。
主演となる人物は昭和期までは教科書の上位に載る「歴史上の偉人」が多かったが、平成期以降は教科書でもあまり取り上げられないマイナーな人物、歴史上の敗者を主演にした作品も多く制作されるようになった。

また、これまで大河ドラマで一番多く出番があった歴史上の人物は徳川家康で27作品に及ぶ。『毛利元就』以外の全ての戦国時代のドラマに出てくる上に、幕末から昭和までを描いた『青天を衝け』や鎌倉時代を描いた『鎌倉殿の13人』にまで何故か出演しているのが要因だろう。
なお徳川家康は主役に選ばれた回数も3回と、大石内蔵助とタイでトップとなっている。

1年間放送されるため経済効果は莫大なものがあり、舞台となった地域では放送期間中に様々なイベントや大河ドラマに因んだ臨時の展覧会が行われるほか、
近接する交通機関でのラッピング電車・バスの運行や、NHKにおいてもスピンオフのようなドキュメンタリーの放送、場合によっては民放でも特集されることがある。
但しこれらの経済効果もドラマの視聴率やクオリティに左右されるのだが。


出演者

主演俳優は他作品で実績を積んだ人物が起用されることが多く、2000年代後半以降はホリプロ所属俳優が起用される例が多い。
脇役には黎明期から現在まで声優のキャスティングも比較的多数行われている。
ちなみに主演最多は西田敏行の4作品。

俳優にとっては長いスパンで演技を見てもらえるので飛躍のチャンスであり、脚色と俳優の演技がマッチすれば大いに株を上げることになる。
しかし、一年近くスケジュールを拘束されるため、大河で悪評を被るとしばらく他の仕事がなくなる上に評判だけが加速度的に悪くなるという諸刃の剣でもある。

ナレーションを含めた最多出演者は江守徹の19作。次いで西田敏行、内藤武敏の15作、北村和夫、久米明の14作、磯部勉、金田龍之介、佐藤慶、鈴木瑞穂の13作、清水綋治の12作、石坂浩二*3、近藤正臣、中村梅雀、高橋英樹、小栗旬の10作と続く。
西田敏行は先述の通り主演が4作もあるため、「ミスター大河ドラマ」とも称される。
西田敏行、西田敏行に滅ぼされる」という年表コピペを見たことある人も多いのでは。


その他

予算は他のテレビドラマと比しても潤沢な方ではあるが、大抵は序盤にド派手なロケ撮影を敢行し、終盤は屋外のシーンもスタジオ撮影で済ませる傾向が強い。
このため合戦シーンが終盤に来る場合、だいぶ妥協したクオリティになるか、過去作品からの使い回しと合わせて簡単な内容になることが多い。
エキストラを多数集めて軍装や鎧を着せるのは至難の業であり、撮影にも編集にも時間を費やすためやむを得ないのだろう。

NHK公式サイトの歴代作品一覧表ではNHKのマスコット「どーもくん」が各作品ごとに主人公のコスプレをしており*4
『源義経』版は牛若丸・『義経』版は武将義経と主役被りがある場合は違うコスをしたり、『春の波濤』等女性主役では女装したり、
『花燃ゆ』だけ和服版と洋装版の2種類いたり、『真田丸』では忍者連れだったり、『新選組!』では拳を口に入れようとしたりと以外に芸が細かい。

作品リスト

昔は収録用のテープが2インチと呼ばれる貴重品で、再放送に関する著作権制度も確立されていなかったため使いまわすのが常識であり、全話が完全に残されているのは1978年の『黄金の日日』以降となる。
それ以前の作品はNHKに1話程度しか残っておらず、全話の再視聴は絶望的となっている。
一方出演俳優やどこかの旧家や施設が録画していたテープが発見されることもあり、それに望みをかけよう。
また、NHKの番組公開ライブラリーでは現存回や総集編が公開されているが、
2019年現在『山河燃ゆ』、『八代将軍吉宗』、『元禄繚乱』、『八重の桜』の総集編公開はされていない(他は『軍師官兵衛』まで公開済み)。

1963~1969年



1970~1979年



1980~1989年



1990~1999年



2000~2009年



2010~2019年



2020~2029年



最後に。本シリーズは「史実を基にした」ドラマではあるが、当然その史実が後世に書き換えられているものだってある。
そのため、史実を基にしたドラマかつフィクションと思った方が断然いい*46
もちろん程度はあるだろうが、別段その時代の研究者等でもないのにムキになって細かなところまで粗探ししても、
「ドラマの内容にそこまで本気にならなくとも」と苦笑されるのが大半であり、楽しく見るのが一番である。
多少の差異なら笑って流すくらいの心持ちで楽しみ、
もしも個人的に許せない差異があったとしても、だからといって楽しんで見ている人を不快にさせるような振る舞いは避けるべきであろう。




追記・修正は、大河ドラマはフィクションだと割り切れる方がお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • NHK
  • ドラマ
  • 大河ドラマ
  • 歴史
  • 時代劇
  • 戦国時代
  • 幕末
  • 史実を基にした、フィクションや仮説や推測や脚色や噂や伝説を織り交ぜて描かれたドラマ
  • 平家物語
  • 忠臣蔵
  • 所要時間30分以上の項目
  • 所要時間60分以上の項目
  • 豪華俳優陣
  • 1920年代以降生まれホイホイ
  • テレビ
  • テレビ番組
  • コメント欄ログ化項目
  • 大型連続時代劇
最終更新:2025年04月25日 10:31

*1 これは忠臣蔵作品全般に見られる傾向でもあり、近年研究が進み吉良上野介が悪人ではなかったことや、赤穂浪士がテロリストであるという認識が一般化したことが理由に挙げられる。

*2 小栗旬が子役時代に『秀吉』で石田佐吉を演じた映像の切り抜きが『天地人』のアバン解説コーナーで小栗旬演じる石田三成の少年時代の様子として流用されたことがある。

*3 『花の生涯』と『赤穂浪士』に出演しているとする情報もあるが、前者は関わっておらず後者は撮影見学の際に衣装も着せられたが放送には使われなかったと本人が語っている。

*4 一人じゃ足りないときは「うさじい」と「たーちゃん」が加わる。

*5 大河では「武田信玄」、NHKでは「サラメシ」でもおなじみ中井貴一の父親である。

*6 後に「柳生宗矩」に改題、ドラマ用に書き下ろし

*7 一部なら『琉球の風』の第一話のみ横書き。

*8 他のオリキャラ主人公大河は主人公周辺と実在人物・歴史的事件が絡み合って進み、2019年の『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』は大正・昭和時代が舞台だが実在人物を主人公としている。

*9 余談だが、アニメの逃げ若では本作の鎌倉滅亡の描写をオマージュしたような場面が挟まれている。

*10 さすがに「ゴールデンタイムであんまりそれやっても」と思ったらしい

*11 以降「史実とは異なり実は生きていた」というようなドラマの展開を「赤マフラー」と揶揄されることになる。本作の時輔については、一応当時の史料でも生存説が唱えられているものがあり、大河と同時進行で執筆されていた原作小説でも大陸への密偵となる形で生き延びている。

*12 野武士と戦う為に侍を雇う、戸口で不意打ちして侍を選別、豪雨の中の決戦で次々と倒れていく仲間たちなど。

*13 ただし、史実で維新志士の面々が剣術修行や藩命などで江戸に来た時期と合致はしており、住居や道場の位置などから、天然理心流師範で度々江戸の各剣術道場に顔出ししていた近藤が顔合わせしていてもおかしくはない…という想像を膨らませることは出来るっちゃあ出来る。

*14 年間を通してなら『山河燃ゆ』以来22年ぶり

*15 そもそも戦国時代に軍師らしい軍師という概念があったかもわからない。

*16 なお、同じく長野県警で敢助の幼馴染の上原由衣も本作の諏訪御料人こと由布姫をモチーフにしている(名前としては『風林火山』の由布姫と『武田信玄』の湖衣姫の併せ技か)。

*17 2015年にNHKで放映された『かぶき者 慶次』という時代劇のインタビューで未出演の理由をプロデューサーが明かしている。なお、この慶次の時代劇は原案:火坂雅志、脚本:小松江里子と『天地人』と同じ座組での制作となっている。

*18 歴史考証の小和田哲男は、「分かりやすい演出にしたいというスタッフからの要望があり、『少しなら』ということで折り合いをつけたが、完成版では想像以上に炎上しており、今年一番のショックだった」「学者仲間からも散々苦情を言われた」と述べている

*19 例えば上述したように近江・大坂・江戸を簡単に行き来するなど、当時の交通事情等を考えればまず有り得ない。

*20 大河ドラマ内では会津編でも斎藤一は登場していたのだが、同誌において当の斎藤一も登場するるろうに剣心のキネマ版と連載期間が被っていたからかコミカライズの方では全く出番がなかった。

*21 特に松蔭から縁談を持ちかけられた際に美人じゃないから結婚したくないと語る・京都で愛人を作って子まで成した話は有名

*22 しかも本人は結局本編には1回も登場しなかった

*23 その一方で桶狭間の戦いの影響が井伊家に与えた影響を上手く描けていないという意見もあるが

*24 主要人物の戦死・暗殺、御家乗っ取り、戦で焼け野原になるetc

*25 尤も、描き方次第では韓国を不必要に刺激する国際上デリケートな問題ゆえ、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

*26 一応久光は「明治編」で西郷に叱咤激励の言葉を投げかけるなど、フォローされているが

*27 時系列的には『春の波濤』終盤から始まり、『山河燃ゆ』の時代を経て『いのち』後半あたりで終わる(『いのち』最終回時点で本作の主人公2人は既に他界)ストーリーとなる。

*28 しかもいわゆるお使い展開の多さに、視聴者からは往年のファミコンRPGとかけて「十兵衛クエスト」と呼ばれた

*29 写真が残っている徳川慶喜も草彅剛とかなり似ており、セットで取りざたされることも。

*30 同様の現象は『花燃ゆ』と『あさが来た』でも発生しているが、『あさが来た』の方が幕末から始まる変則的な作りであったのと逆に、こちらは『青天』が昭和に至るまでを描いたことで発生した

*31 門をくぐってから城までに目測で1kmぐらいの広場がある

*32 最終回にて、三代将軍徳川家光の乳母である「福(春日局)」役として登場している。

*33 一応、将軍としての誇りと意地を見せる場面もあり、終盤には穏やかな姿も見せている。

*34 同時・見逃し配信サービスのNHKプラスの平均視聴UB数は歴代最高視聴数を記録していたが、後続の「光る君へ」に抜かれた。NHKプラスの利用者数拡大が主な要因と見るべきだろう

*35 本名は香子とする説も多いが、本作ではまひろとしている。

*36 ただし、ちやは…というより紫式部の母は史実では「紫式部が幼い頃に亡くなった」ことしか分かっておらず、道兼に殺されたというのも創作である。また、忯子の死についても歴史書『大鏡』には兼家が策謀を走らせたとあるが、実際に呪っていたのかは不明。

*37 手に負えない人やろくでなしを表す言葉。

*38 事実、主演の吉高氏自身もTwitter(現:X)で「個人的に格付けチェックも大好きな番組なのでそらそうよなぁとも思ったり」と敗北を認めるツイートをしている。

*39 ほぼ同じ理由で、民放は翌年から視聴率集計に「TVer」の再生数をカウントできる形式に変更を決めた、と書けばリアタイ視聴離れが体感してもらえると思う

*40 性的シーン・暴力シーンなどセンシティブな演出に関して、出演者らの心身の安全への配慮と、監督ら制作側が意図する表現を両立できるよう調整するスタッフのこと。

*41 『鬼平犯科帳』でも昔の自分を悔悟する場面はあるのだが、高潔な鬼平に親しんだ視聴者からは驚きの声も見られた。

*42 松坂はこれまで二回大河ドラマに出演しており、軍師官兵衛では官兵衛の息子長政を演じている

*43 大隈の妻は小栗と親戚関係にあり、明治時代には小栗の遺児を養育している。

*44 横須賀造船所の設立などの小栗の業績に対し、薩摩の東郷平八郎が遺族を招いて礼を言った話はもっと知られてよいだろう

*45 『新選組!』の近藤勇も厳密には幕臣にあたるが、ここでは幕政に携わったものと定義する。

*46 『いだてん』では「事実を元にしたフィクションである」ということが明記されている。