登録日:2010/01/18(月) 16:09:17
更新日:2024/12/08 Sun 11:21:08
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『人間失格』は、
太宰治の中編小説。
1948年に雑誌「展望」に連載小説として発表された。
よく太宰の遺作として扱われているが、太宰はこの後に「グッド・バイ」という小説を(未完ながら)書いている。
『俗天使』などの作品の中に『人間失格』について言及している箇所があることから、長年の構想を経て書かれた作品であると言える。
作品の原型としては『HUMAN LOST』という小説がある。
また、『あさましきもの』という作品に出てくる内容がほぼそのまま用いられている。
物語は二人の語り手によって進められる。
一人は、「葉蔵」と言う男の記した三冊の手記と三枚の写真を、ある場末の酒場のマダムから受け取った作家と思しき男。
まず、三枚の写真に写る児童、少年、そして青年とも老年とも見える男性を眺めるにあたって、
耐え難い嫌悪感と虚無感を感じ取ったと言う書き出しで、「はしがき」を記し、その手記と写真を得た時のことを回想する形で「
あとがき」とした。
その間に挟まれて居るのが、「葉蔵」と言う名の男の手記であり、三枚の写真に写りこんでいた彼が第二の語り手、そして主人公である。
手記には、葉蔵が自らの半生を振り返りながら、ひたすら後悔、もしくは自嘲を繰り返す文言が綴られている。
前半はいかに自分が社会に対して不適合であるか、狂人であり道化であるか、そうであると思い込み、要らぬ気苦労を背負い込んでいたか、
そして後半はその気苦労を忘れ、多少の図太さを得た自分がいよいよ本当に狂気と惰性の沼に落ちて行ったかが描かれている。
葉蔵は裕福な家庭に育ち、幼少の頃にすでに女中や親戚の女に犯され、「理解出来ない」としながらも確実に女の生態を把握しており、
その深く陰を落とした、印象派画家の自画像のような美貌と、
他人を極端に恐れ、道化として振る舞っていたことによる上辺のコミュニケーション能力の異常な発達により、
家族の手配した下宿よりも紐として女の部屋で眠っている期間の方が長いと言う稀代の垂らしである。
本人はそれを忌まわしい呪詛のように思っており、実際に、人間関係を築くにあたって、
葉蔵は草食系の極致、同時にその対極にあると言うきわめて特異な性分をしていた。
そんな葉蔵が、遊び半分の反政府活動や、鎌倉での心中未遂を経て、
薄ら暗い酒場の裏の路地を無気力、無軌道にふらふらと彷徨する様子が、葉蔵本人の手によって記されている。
文章は
太宰治特有の、不浄と清浄を同居させた流れるような語彙で描かれ、一見読みやすい。
しかし、気を抜くと、霧のように意識の焦点から外れてしまい、なかなか何かの作業をしながらでは読み込めない、掴み所の無い文体を取る。
夏目漱石の『こころ』と長年にわたり累計部数を争っている。
太宰の生誕100年前後には、さまざまな企画により『人間失格』が人々の注目を集めた。
2007年、集英社文庫新装版の表紙を小畑健が描いたことで話題となった。
2009年には
アニメ化。小畑健がキャラクター原案を担当した。
2010年には生田斗真主演で映画化された。
追記・修正を切に願います。
- 読んだら死にたくなる。 -- 名無しさん (2014-07-09 20:44:43)
- 中学生の頃、これを読んで悩みすぎるのも良くないなぁ、くらいにしか思わんかったわwwそういう意味じゃ読んで正解だったか。 -- 名無しさん (2014-08-22 14:31:07)
- 主人公の葉蔵は、ハンサムな上に、あまり学校に行かなくとも点数を取れる程に頭が良い。そして、実力を隠しながら学校生活を送り、異性からも同性からも好かれる。 淫売婦と遊ぶうちに喫茶店の女の子、牛肉を買いに行った店の女中さん、煙草屋の娘、歌舞伎を見に行って隣りの席の人、親戚の娘などからラブレターを貰い、誰かわからぬ娘が、自分の留守中にお手製らしい人形を置いて行ったりとモテにモテまくる。紆余曲折の果てに煙草屋の看板娘と結婚をするのだが、他にも三人ほどの女性から好意を寄せられたり、子持ちの女性や、人妻、バーのマダムからも好意を寄せられる。恣意的な解釈をすれば、ラノベの主人公みたいなスペック。まぁ、本人の人生はライトどころかヘヴィもいい所だけれども。 -- 名無しさん (2019-08-13 21:58:39)
- 古屋兎丸氏作の人間失格は現代版(2000年代)に上手くアレンジされてて面白いよ -- 名無しさん (2024-05-14 00:19:29)
- 空任された時は原作者の遺族からクレームがついたため「人間・失格」と間にコンマが挿入されたタイトルに変更されただっけ? -- 名無しさん (2024-06-22 14:47:09)
- ↑ドラマ化 -- 名無しさん (2024-06-22 14:47:36)
- 母曰く「中学生、もしくは高校までには読んでおかないと、主人公についていけない」 -- 名無しさん (2024-08-30 12:09:43)
- 主人公が性的虐待を受けてたの、意外と見落とされがち -- 名無しさん (2024-12-08 11:21:08)
最終更新:2024年12月08日 11:21