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夏の決心

登録日:2011/08/07 Sun 15:04:02
更新日:2026/10/17 Sat 19:39:22
所要時間:約 6 分で読めます




『夏の決心』は、1994年8月1日に発売された大江千里の29枚目のシングル曲である。

J-POP界に夏を題材にした楽曲は山とあるが、この曲はその中でも、特に「夏休み」という言葉と強く結びついた曲の一つ。
フジテレビの子供向け番組『ポンキッキーズ』で使用され、夏が近づくたびに耳にする機会があったことから、曲を聴くだけで当時の番組や夏休みの風景を思い出す人も少なくないはずである。

何しろ、夏休みは長いようで短い。
学校がある間は、休みになったらあれをしよう、これをしようと考えていたのに、いざ休みに入ると、気がつけば何日も過ぎている。遊びに行くのもよし、普段できないことに挑戦するのもよし。そんな夏休みならではの期待と焦りを、この曲は実に軽やかに思い出させてくれる。

この曲の魅力は、単に明るく爽やかな夏の歌というだけではない。聴いていると、何か特別なことをしなければもったいないような、今のうちに何かを始めたくなるような気持ちにさせてくれるのだ。

夏が来るたびにこの曲を聴きたくなる人もいれば、歌手の名前までは覚えていなくても、曲が流れた途端に「ああ、この歌か!」と思い出す人もいるだろう。そうした記憶の結びつきも含めて、『夏の決心』は1990年代の子供番組文化を象徴する楽曲の一つになっている。

楽曲としての『夏の決心』

大江千里は、シンガーソングライターとしてポップスの世界で活躍した後、ジャズピアニストへと活動の軸を移した人物でもある。
本人のインタビューによれば、『夏の決心』の歌詞を作る際、「夏休みのうちにやりたいこと」を100個ほど箇条書きにしたノートを用意し、そこから「線香花火」や「下駄を揃える」といった情景につながる言葉を拾い上げていったという。

この曲が描くのは、日常の中にある小さな楽しみや、誰かと一緒に過ごす時間、夏休みだからこそやってみたいことの数々である。だからこそ、聴いている側も自分自身の夏休みを重ね合わせやすいのだろう。
歌詞に描かれた出来事をそのまま経験していなくても、自分なら何をしようかと想像する余地がある。

また、この曲が発表された1994年は、大江がポップスの世界で活動を続けながら、ジャズへの思いを強めていた時期でもある。
本人の振り返りでは、同曲を発表した後も日本で自身の音楽と向き合い、その後、47歳でジャズミュージシャンとしての活動を本格化させるために渡米した経緯が語られている。
そうしたキャリアの転換点を知ってから聴くと、この曲は大江千里のポップス時代を振り返る上でも印象深い作品といえる。

『ポンキッキーズ』は、従来の『ひらけ!ポンキッキ』から続く子供向け番組の流れを受け継ぎつつ、「子供扱いせず、大人の感性で良いものを」という目標を掲げて表現の幅を広げていった番組だった*1。
『夏の決心』も、子供が聴けば夏休みへの期待を膨らませる歌として楽しめる一方、大人が聴けば、限られた時間をどう使うかという問題が自然と浮かび上がってくる。

子供の頃は、夏休みが来れば自由な時間がたっぷりあるように思えた。
しかし大人になると、仕事や日々の用事に追われ、まとまった休みを取ること自体が難しくなる。せっかくの休日も、休息や家事だけで終わってしまうことがある。
だからこそ、夏休みを思い切り楽しもうとするこの曲の感覚が、かえって身に染みるのかもしれない。

MV

『ポンキッキーズ』で『夏の決心』が使用された際は、主に「P-kiesメロディ」という音楽コーナーで流された。
この曲を語る上で欠かせないのが、その際に使用されたMVの存在である。
  • ワニバージョン
ワニの人形が、温泉や海に行くという内容。印象に残っている人は多いだろう。
あえてワニにセリフを喋らせず、テロップのみにしている。
サングラスをかけたワニがオープンカーに乗ったり、温泉につかったり……いいね~。
見ていてどこかへ遊びに行きたくなるかも。
「おでかけアニマルズ」というサブタイトルのようなものがつけられており、ワニが印象的だがダチョウやイグアナもいっしょにドライブしてたりする。

  • ラインダンスバージョン
他のポンキッキーズ使用曲の例にもれず、歌に合わせてラインダンスもしていた。
曲に合わせて踊り、ズレる事もない完璧なダンス。見る人を驚かせた事だろう。

いずれのバージョンとも複数のバージョンがあった。

カバー

「名曲ルネッサンス」をコンセプトに活動していたアイドルグループ「アイドルネッサンス」(2018年解散)が2015年にこの曲をカバーした。
2015年7月28日にシングル化されている。

また、ポンキッキーズの後継番組である『ガチャムク』でもやはり夏の時期にこの曲は披露されていたり、ガチャピンによる歌唱バージョンがガチャピンの公式Youtubeチャンネルにアップされたりもしている。


『夏の決心』は、1994年に生まれ、『ポンキッキーズ』で多くの人の記憶に刻まれ、その後も歌い継がれてきた。
夏休みはやっぱり短い。子供の頃と大人になってからでは、過ごし方も、楽しみにしていることも違う。
それでも、夏が来たら何かをしてみたい、限られた時間を大切に楽しみたいという気持ちは、そう簡単には変わらない。
この曲が今でも夏の定番として思い出されるのは、単に昔よく流れていたからというだけではないのだろう。
聴くたびに、あの頃の夏休みがよみがえる。そして、今の自分にとっての夏休みについても、少し考えたくなる。
そんな不思議な力を持った曲なのである。

余談

  • ちなみに、この曲には『進め!少年編』というバージョンもある。
    大江千里が日テレのバラエティー番組『電波少年』に出演した際に、「進め!~少年」という曲を作ってほしいと言われて作ったもの。
    こちらはベストアルバム『Sloppy Joe II』に収録されている。

  • X(旧Teitter)で連載されている漫画『ちいかわ』の2026年4月19日投稿回でこの曲のワンフレーズが使用され少し話題になった。
    赤いアロハシャツにサングラスで夏スタイルのうさぎが運転(?)するオープンカー(?)でドライブ(?)中のいつもの三匹が楽しそうに口ずさんでいる。ちいかわ達にとっても夏のドライブといえばこの曲らしい。


追記・修正はたまねぎを好きになれたらお願いします。

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最終更新:2026年10月17日 19:39

*1 2023年に行われた山田洋久へのインタビューより。