オープンカー

登録日:2025/04/05 Sat 04:53:34
更新日:2025/05/16 Fri 22:48:04
所要時間:約 27 分で読めます




オープンカーとは、読んで字の如く屋根開けられ(オープンにでき)るクルマのことである。


概要

屋根という構造物を取り払うことで、車内の快適性よりも軽快な運動性能という趣味性に重きを置いたのがオープンカーというジャンルである。
それゆえ特にスポーツカーによく採用されるが、一方で「屋根の開閉機構を付ける」だけで既存車種と容易に差別化できる利点からハッチバック車などにオープン仕様が追加されることもある。
ただし設計上の制約で室内を広くできないため、ほとんどのモデルは2ドア2シーターで、4シーターのオープンカーは少数派。
ラゲッジ容量もあまり重視していないモデルが大半のため、「日常の足から週末のドライブまでこれ1台!」というような用途には向かない。

21世紀現在はエコカーブーム→SUVブーム→電動化、と特にスポーツカーにとっては逆風吹きっぱなしの情勢。
同様に趣味性に重きを置くオープンカーもその情勢の煽りを受けているものの、オープンエアの楽しさという替えの効かない長所を持つためニッチながら一定の需要は常にある。
そのため新車で買うよりも中古で程々の個体を見つけて乗り潰す、という買い方もわりと主流だが、中古車は幌or開閉機構の状態をチェックすること。
それを怠ると後々痛い目を見るぞ!!

呼称いろいろ

Q.「カブリオレ」「コンバーチブル」「スパイダー」「スピードスター」「ロードスター」「バルケッタ」……
……結局のところ全部オープンカーでは……?
A.まァ大体そうだわな……

というわけで、一口に「オープンカー」といっても色々と呼び方がある。
一応きちんと区別されている呼称もあるのだが、ぶっちゃけるとこれらの呼称、だいたいは違う言語で同じものを指しているだけなのでどう呼んでも一応間違いではない。

ただ、「オープンカー」は和製英語なので海外では通じないことには注意。
一応、それぞれの細かいニュアンスは以下の通り。

  • 「カブリオレ」はフランス語、「コンバーチブル」は英語
  • 「コンバーチブル」は「変えられる」「改造できる」という意味合いがあり、カブリオレ共々基本的には『既存車種のいちバリエーションとしてオープンモデルを設定・追加したもの』ものに使われる
  • ロードスターとカブリオレ、スパイダーの由来はいずれも馬車の分類から。下記の歴史にもある通り、特にスポーツ色の強いモデルはロードスターと呼ばれやすい
  • 「バルケッタ」はイタリア語で「小舟」の意味。比較的小柄なオープン専用車両に使われる

オープンカーの歴史

黎明期の自動車を人々が「馬無し馬車」と称したように、自動車文化には馬車文化が色濃く引き継がれている。
例えば、オープンカーを指すジャンル名「カブリオレ」「ロードスター」などは本来は馬車の分類名。
特に「1頭立てで車輪は2つ、2人掛けの座席の後ろに付けられたお立ち台から御者が手綱を取る」という形式のカブリオレは軽快さを重視したスタイリングで人気を集め、また快適性にも優れていたことから辻馬車……今で言うタクシーとしてもよく活躍していた。
英語でタクシーを指す言葉にはCabという単語があるが、その由来はCabrioletを縮めたものであることからもそれが現れている。
一方、ロードスターは完全に「スピード特化」の馬車と言え、とにかく軽く小さく低重心を突き詰めドアすらも省略した作り。据え付けられた幌も非常用の簡易なものだった。

これらのような幌馬車の構造を自動車に応用したものが現代まで連なる「オープンカー」の起源である。
ゆえに現代でもこうした名前の使い分けはある程度引き継がれており、よりスピード重視ならロードスター、速さよりスタイリング重視ならカブリオレといった具合になっている。
もっとも、今やカブリオレはタクシー用途にはまるで向かなくなってしまったが。

世界初の自動車は18世紀後半、馬車の荷台に蒸気機関をくっつける形で誕生した「キュニョーの砲車」。
この原初の自動車の時点で屋根はなく、ある意味自動車はオープンカーから始まったと言える。
ただ、これらは「馬車からの流れで屋根がない」というよりはエンジン等の技術が未成熟だったゆえの非力さのせいで屋根をつけたくてもつけられなかったのが実情のようだ。

それから時代が流れ、自動車が富裕層を中心に「馬車の代わり」として普及し始めると、それまで馬車の制作に関わっていた車体職人(コーチビルダー)が自動車のボディを制作し、エンジン等を備えたシャーシと組み合わせて製造されるようになる。
そのために馬車で培われたノウハウがそのまま自動車へと移行する形になり、こうしてカブリオレやロードスターが自動車の一ジャンルとして定着していったのだ。

ただし、自動車が大衆にも本格普及し始めた1970年代以降は市場において安全性に問題があるという認識が一般化し、オープンカーは冬の時代を迎えた。そしてそれを打破したのがあのマツダ・ロードスターである。

競技用車のオープンカー

さて、ここまでは市販車としてのオープンカーの話。
自動車の発展普及に欠かせない文化はもうひとつある。そう、すなわち自動車競争だ。
黎明期より、競技用の自動車は屋根やドアのない車両として作られることが多かった。
理由はいくつかあるが、特に大きなものとしては「屋根・ドアに割く部品を省ける=軽量化・信頼性向上」「開口部から直接乗り降りするので事故の際に脱出・救助が容易」などだろうか。
実際、かつて安全面の問題からF1にキャノピーを付けようと提案された際にも、「緊急時にキャノピーが邪魔になってドライバーを素早く脱出させられなくなる可能性」が理由のひとつに挙がり断念されたことがある。
後述するように軽量化のメリットこそ現在ではなくなっているものの、こうした理由から競技専用車両は未だにドア無し・屋根無しで制作されるものが少なくないのだ。

結果として、現在におけるレース専用車両は
  • 市販車をベースに改造した、あるいは中身はほぼ専用設計ながら「見せかけだけ」市販車のガワを被せた車両
  • 市販車とは一切関係のない、完全に競技専用の車両
の2パターンに大きく分けられるが、中でも後者のタイプでは所謂「プロトタイプスポーツカー」と呼ばれるジャンルを除いてはそのほとんどがオープンスタイル。
中でもF1マシンに代表される、「4輪でタイヤがむき出しの単座式車両」はフォーミュラカーと呼ばれ一大ジャンルを築いている。
なお以前はプロトタイプもオープンが主流だったが「横転時の安定性が担保できない」という理由で一部の入門用ジャンル以外はすべて廃止されてクローズドのみになっている。

軍用車のオープンカー

競技用の他にもう一つオープンカーが根付いたジャンル、それが軍用車である。
一応ここではキャビン上部にハッチがあるタイプは含まず、屋根全体を取り外せる物をオープンカーとして扱う。

自動車はその誕生から軍と共に歴史を紡いできたが、市販車が金属化し、ドアが付き屋根が付きエアコンやオートクルーズまで付くのが当然となり、オープンカーがすっかり少数派となった現代においても、軍用車のオープンカーはバリバリ現役で使われている。
当然、国民の血税を使って開発し購入している以上、伊達や酔狂で採用しているわけではない。
ではその理由は何なのかというと
  • 小型の車両にも重機関銃や対戦車ミサイルなど比較的大型の武装を搭載でき、そのまま使用も可能
  • 身を乗り出せば射線を妨げる物が無いので効率的に周囲の警戒を行えるほか、走行中の射撃がしやすく、手榴弾等の投擲も出来る
  • 屋根に加えてドアやフロントガラスを外すなり畳むなりすれば…
    • 車高を低くし隠密性を保てる
    • 行動を阻害する構造物がほぼ無いので乗車中の警戒や戦闘がしやすい
    • 重武装をした歩兵でも乗り降りをスムーズに行える
    • 内部容積が限られる輸送ヘリでも空輸出来る
などが挙げられるか。
当然防御力は無に等しいので基本は偵察用か、あるいは奇襲や破壊工作など反撃されない前提の特殊作戦向け。
また普段使いでは上記のメリットが帳消しになって使い辛さしか残らないので、幌を張るなどして運用するのが普通。


特徴

メリット

  • 開放感が得られる
オープンカーでしか味わえない快感といえば、兎にも角にもこれだろう。
「頭上に何も無い」ゆえの視界の広さ・明るさ、そして何より「風を感じて走る心地良さ」。
普通の車でも窓を開ければ風は感じられるが、それでも全身では味わえないし何より視覚的な開放感は決して得られない。
一方で身体全てを外界に晒して走るバイクとはまた違って「車の中にいる」という安心感や包まれ感も得られるし、なによりヘルメットが要らない
オープンカーの心地良さは、オープンカーでしか得られないのだ。

  • 軽快そうな印象を与える
人間の感覚的に、モノの下側にボリュームがあると「安定感」を感じやすい。
その点、屋根を取り去ったことで車体の上半分がほぼ何も無い状態になるオープンカーは視覚的な安定感が大きく、またその見た目から「軽そう」な印象を受ける。
すなわち、走行性能が高そうに見えるのだ。スポーツカーを作る上で、この視覚的なメリットがどれだけ大きいかは語るまでもないだろう。

……軽そうというか、実際軽いんじゃないの?と思った方も多いかもしれない。
確かにかつては実際軽かったのだが、諸々の事情から実は「屋根がない」=軽量化、とはいかないのが現代の事情である。
詳しくは下記にて。

  • カッコイイ!
……結局のところこれに尽きる。
上述の通りオープンカーは「スポーツカーの一ジャンル」という向きが強く、中でも純粋な「速さ」よりも「操る楽しさ」に重点を置いたものが多い。
そのためエアロパーツや整流ダクトなどでゴテゴテに武装した戦闘機のようなフォルムのものは少なく、流麗なシルエットを重視した優雅なデザインが多くを占める。
その優れたスタイリングに惹かれるというオーナーも数多い。

そしてなにより、オープンカーに欠かせないのが「屋根の開閉機構」。
幌にしろメタルルーフにしろ、開け閉めすることでクルマの見た目がガラリと一変する。
すなわち、変形機構は男のロマン。憧れを抱かない者がいるだろうか?いや、いまい。

  • 緊急時の脱出が容易
こちらは主に競技車両で重視されるポイント。
クローズドルーフの車両は当然ドアから出入りすることになるが、そうなると事故の際にドア枠が歪んで開けられなくなるおそれがあるほか、事故の衝撃でドライバーが失神してしまった場合など「自力で車両から脱出できない」状況になった際は救助するにもやはりドアが邪魔になる。
その点、天井が空いていれば最悪その穴から直接引きずり出してやれば良い*1ため、救助する側も楽だし何より時短になる。
超高速からの大クラッシュもままあるモータースポーツの世界において、救助にかかる1秒の差で命にかかわる結果をもたらしかねない。
そのため、規定でオープンスタイルの車両とすることには大きな意義があるのだ*2

デメリット

  • 信頼性の問題
上で「屋根がないと部品点数が減って信頼性が上がる」とは書いたが、それはあくまで競技車両の話。
冷静に考えてほしい。屋根のない車が普段使いに耐えうるだろうか?答えはもちろん否である。
というわけで競技車両(&極一部の変態向け車両)ならいざ知らず、市販車に関しては雨天時に雨を凌げる「展開式の屋根」が必須になる。
すなわち普通の車にはない「屋根の展開機構」がつくわけで……その分だけ当然部品点数は増えるし、それが可動部品である以上いつかは壊れる

もちろん、定期的なメンテナンスを行って壊れる前に交換すればいいだけの話ではある。が、それが何を意味するのかと言えば……
オープンカーとは、根本的に金食い虫なのだ。

  • 剛性が低下する
剛性とは、路面や走行状況から受ける衝撃に対する抵抗性のこと。「車体のねじれにくさ」とも言い換えられようか。
この剛性が高いほど、すなわち車体がねじれにくくなるほど、クルマの姿勢が乱れにくくなりタイヤのパワーを無駄なく路面に伝えられる。
すなわち、剛性が高い車はまっすぐ進みやすい・曲がる時にブレない・スムーズに止まれる=エネルギーロスが少なく燃費が良い・疲れない車だと言えるのだ。

例えるなら、ひとつ「ティッシュの箱」を用意してもらいたい。「畳んだり潰したりしていない空箱」があればベストだ。
この箱がクルマ全体、四隅の角はタイヤだと考えてほしい。
まずはこれを、そのままの状態で左右にねじってみよう。走行中の車体には、絶えずこういう力が加わっている。

では次に、この箱の天面を切り取った状態で、同じように箱を左右にねじってみよう。
どうだろうか。箱を開ける前より、箱は簡単にねじれたはずだ。
……そう、この「天面の開けられたティッシュの箱」こそ、オープンカーの晒される状況なのだ。
オープンカーがどれほど構造上不利なのか、おわかりいただけただろうか。

一昔前のDQNがよくやったDIY改造で「固定式の屋根をぶった切ってオープンカー化する」というものがあるが、この改造は考え無しに行うとクルマの寿命を縮めてしまう
理由は上記の箱ティッシュの例からもわかるだろう。
オープンカーにクローズド車と同等の剛性を持たせるには、適切な補強が不可欠なのだ。
メーカーでもパレード用の特装車などで「改造で作ったオープンカー」の例はあるが、それらはこうした強度面の問題をキチンと把握して、しっかりと補強を施している。
が、補強をするということはすなわち「余分なパーツを付け足す」ということであるわけで……

  • 実は軽量化には逆効果
上記の「剛性問題」がこのデメリットに繋がってくる。
構造上頑丈に作るのが難しいので、クローズド車よりも入念な補強を施す必要がある=部品点数増加=重量増
ここに上述の「屋根の開閉機構」分の重量もさらに乗ってくるし、それが金属ルーフであれば重量さらにドン。
というわけで重量比で見た効率という側面で言えば、オープンカーという構造は非効率なのだ。

ただ、これはあくまで現状の市販車で主流の「モノコック構造」というシャーシ構造を採用した車の話。
かつての車は荷重を受け持つシャーシはボディと別体で、シャーシの剛性さえよければボディ形状にはそれほど気を配らずとも良かった(実際、現行のオープンカーはモノコックを採用していない例がほとんど)。
そのため、モノコック構造が流行る前はオープンカーにもキチンと「軽量化」というメリットはあったと言える。

また、競技用車両の話ではこれもまた変わってくる。
というのもレースカーに乗せる人員など大抵1名、多くても2名いれば充分で、しかもそう頻繁に乗り降りすることもないので乗降性にもそれほど気を遣う必要がない。
そのため市販のオープンカーほどには広い開口部を作る必要がなく、最悪「人ひとりがとりあえず通れるくらいの穴」さえあればいいため「天面の空いた箱」にはならずに済むのだ。

  • 空力上不利
屋根を閉じていれば問題無いが、屋根を開けていると空力的にも実は不利。
「いやいや、どこぞのダウンフォース厨じゃあるまいし、市販車で空力なんて無意味じゃないの?」と思うかもしれないが、ダウンフォースはともかく空気抵抗の軽減、すなわち空力は燃費や騒音が追求される現代の市販車では重要なファクターなのだ。屋根があるクルマだとクルマ上部の空気はボンネット→屋根→トランクと滑らかに流れるが、オープン状態だとトランクへ空気を流す屋根がないので空気がキャビンに流れ込み、気流が乱れてしまうのだ。このためウィングやスポイラーなどのエアロパーツも効果が半減し、結果空気抵抗が増えて燃費が悪化したり風切り音で騒音の元にもなる。
これはレーシングカーでも問題で、プロトタイプスポーツカー等では空気抵抗が少なく最高速度、燃費で有利なクローズド、軽量で視界に優れるオープンと性能は差別化されていた。

  • 安全面の問題
オープンカーはバイク程ではないものの、上面が野ざらしになるため安全面の問題がつきまとう。
とはいってもごく一部の変態マシンを除けばフロントウインドウくらいはついているし、余程昔の車でなければピラーの強度も十分持たされているので、飛石等の危険性はほとんど考えなくていいため「不安」の域を出ないものではあるのだが。

ただ、車体が横転してしまうほどの大事故となると話は別。
野ざらしの頭部がそのまま地面に擦り付けられる格好になってしまうため、構造上非常に危険なのだ。
特に競技用車両ではそのような大クラッシュなど「よくある事」であるため対策は必要不可欠。

こうした事情から、市販車にしろ競技用車両にしろ、オープン構造の車には必ず「ロールバー」と呼ばれる頭部を保護するための構造が組み込まれており、車種によっては内蔵しているものも少なくない。
今度オープンカーを見かける機会があったら、座席の後ろを見てみてほしい。ちょうど頭の上に出るくらいの高さの棒が伸びているはずだ。

レーシングカーの世界でもフォーミュラカーにおいてドライバーが飛来物の直撃で死傷する事故が相次いだため*3、最近のオープンタイプのレーシングカーには何かしらの保護具が義務付けられている。F1のHALOが有名だろう*4

  • 快適性の問題
オープンカーというクルマは良くも悪くも自然と一体になる乗り物。
すなわち屋外の自然条件がモロに室内に響いてくるのだ。
特に頭上を遮るものがないというのが相当響き、夏場は地獄。オープンになんかとてもしていられないし、特に幌の場合は屋根の断熱性など無いに等しいために閉めても暑い

ただ、誤解されがちだが冬場は意外と快適
というのもオープンカーは「屋根を開けて走る」という条件を考慮して内装類が設計されている分、通常のものより強力なエアコンが装備されていることが多い。
また最近の車ならシートヒーターが標準搭載されていることも多いため、さながら走る露天風呂と言ってもいい程にポカポカだったりするのだ。
こうした事情もあって、オープンカーの旬は真夏以外オールシーズンと語るオーナーも多い。

またよく聞く懸念点として風で髪が乱れるというものが挙げられ、特に女性に嫌がられるポイントとしてよく知られる。
これについては条件次第ではあるものの概ね間違いではない。
実はサイドウインドウを目一杯上げるだけでは風が後方から回りこんできてしまい効果が薄い。そのため、タルガトップ(※後述)でない形式のオープンカーには大抵低めの衝立のようなプレートが座席後方に用意されている。
一見頼りない見た目だが、これを立てるだけで風の影響はかなり抑えられる。
ただ頭頂部付近の風だけはどうにもならないため、気になるなら帽子を被るなどしよう。
というか日差しを遮る意味合いもあって、帽子はわりと必需品。

雨の日なんてそりゃあもう最悪だが、高速道路で飛ばしていれば気流が雨から守ってくれるようになるので速度さえ出ていれば問題ない。
でも人間も車も、天候は関係なくどこかで休憩しないといけないよね?
事前に確認しろ、嫌なら乗るなということである。

  • 目立つ
車選びの際に「オープンカーはちょっと……」と倦厭される理由の中でも特に大きなものだろう。
車内の様子が外から丸見えなうえ、「屋根がない」という一目でわかる特徴から否応にも周囲の目線が気になるのだ。
別に通行人みんながみんな道行く車の一台一台を見ているわけでもないし、ましてや「どんな人が乗っているか」などほとんどの人は興味も持たない……とは言っても、それでも気にはなるだろう。
どこまで行っても心理的な問題ゆえにどうしようもないことではあるのだが、だからこそあえて言いたい。

人目を気にして好きな車に乗れないなんて、勿体ないだろうが!!!

…真面目な話に戻すと、これは用途によっては利点でもある。各種パレードに使うクルマはこの理由からかならずオープン構造とするほか(その意味ではお祭りの山車・だんじりは機械的なエンジンがついてないオープンカーと言える)、野球場で使うオープンカーはこれから登板する投手の姿が見えるようにオープン構造のことも多い。現に現在NPB1軍本拠地で恒常的にリリーフカーで登場させている3球場*5はすべてオープンカー構造である。

分類

大まかに分けて、屋根の材質開閉方式の2つの基準で区分される。

ソフトトップ

ソフトの名の通り、布・ビニールなどの軟質素材でできた屋根。
早い話が幌車のことであり、クローズにするとちょうど「車体にテントを張った」ような見た目になるのが特徴。
幌馬車から連綿と続く由緒ある方式で、おそらくオープンカーと聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのはこちら。
スポーツカーだけでなくミニのようなハッチバック車にも採用例があるほか、ジープのようなオフロード車でも一昔前くらいまでは標準的だった。今でも軍用車両などは幌屋根・ドア無しのスタイルが多く見られる。

布製という材質ゆえの質感もあってかどこかクラシカルな見た目になりやすく、オールドファッションなデザインとはよくマッチする。
一方で「屋根形状」のデザイン性はあまり高くなく、開閉方式などもとっくに煮詰めきられて久しいため斬新な形状にするのは難しい。
そのためバリエーションもせいぜい幌の開閉方式が手動式か電動式かくらいしかない。

その唯一無二な質感ゆえ愛好家も多いが、実用性という観点ではハードトップには劣る。
特に幌という素材特有のデリケートさによる難点が多いのは否めない。
ざっと挙げられるのは以下の通り。

  • 穴が空きやすい
薄く柔らかい布で屋根が構成されたその見た目通り、物理的なダメージにはめっぽう弱い。
皮肉なことに、特に幌にダメージを与えやすいのは開閉操作だったりする。
頻繁に幌を開け閉めすればするほど、布同士が擦れたり骨組みとの間に挟まれたりして少しずつダメージが蓄積していく。そうしていつの間にか穴が……というわけだ。

しかも困ったことに、材質にもよるが一度穴が空くと、そこから一気に広がってしまうこともある。
というのも幌を閉じている間はそれなりに強い力でピンと張られているため、そこに走行風が穴から入ろうとして押し広げてしまうのだ。
このため、もし穴を見つけたら仮留めでいいから小さいうちにテープ等で応急処置してしまいたい。

ともあれ、「オープン走行を楽しむために幌を開け閉めする」こと自体が幌にダメージを与えてしまうため、幌を長持ちさせるには「なるべく幌を動かさない」ことが最適、ということになる。
それじゃあオープンカーを買った意味がない!と張り替え前提に開け閉めしまくるか、修理費を浮かすためにも大切に乗るかは各オーナーの自由ということで。
オープンカー乗り曰く「晴れた日に屋根を開けないというのはオープンカーに対する冒涜」とまで言う人もいるが、ぶっちゃけそれはその人の信念なだけなので言わせておけばOKである。

また穴が空きやすいということは意図的に空けることも容易いということでもあり、車上荒らしには基本的に無力
大事な車に傷をつけられないためにも、オープンにしたまま車を離れないのはもちろん、クローズにしていても車内に荷物を置きっぱなしにはしないこと。
ソフトトップ車でそれをやるのは「どうぞ盗んでください」と言っているようなものである。

  • 劣化しやすい
物理的なダメージはもちろん、光学的・化学的ダメージにも弱い。
幌というのは乙女のお肌よりデリケートなのだ。

具体的に何がダメなのかというと、日光。花粉。あと鳥のウ〇コ。その他諸々。
鳥糞は金属ボディにもよろしくないのでさておくとしても、特に日光による劣化は要注意。青空駐車でもしようものなら数年もしないうちに劣化して色褪せてしまう。
幌車を買うならなるべく屋根付きのガレージに入れてあげたいところ。レディに野宿なんてさせちゃいけません。

花粉は水に触れると酸性になるため、〇ンコ同様ボディにも大敵だが幌にとってもよろしくない。シーズン中はこまめに洗い落としてしまいたい。おのれ花粉、人間だけでなくクルマにも被害をもたらすとは。

  • 静粛性が低い
まあこれは見ての通り。薄っぺらい布で外の騒音をシャットアウトできるはずもない。
トンネルにでも入ろうものなら何も聞こえなくなります。

まぁ外の音を拾いやすいということは周囲の異変にも気付きやすいということでもある、と前向きに捉えることはできるか。
そして外の音が入ってくるということは、当然中の音もダダ漏れ……かと思いきや、その辺は案外大丈夫だったりする。
どうしても不安ならオーディオをかけたまま車外に出て、そのまま数歩離れてみよう。思った程には漏れてないはず。
でも爆音は勘弁な!

ハードトップ

メタルトップと別称されることからもわかる通り、普通の車と同じ金属などの硬質素材でできた屋根。
一見すると普通の車と変わりなく、知識がないとオープンカーとはわかりにくい。
一方で、普通の車にはまずありえないところにボディを開閉するための分割線があったりするので、見る人が見れば一目で見分けられる。

こちらは屋根素材には大きな特徴がないということもあって取り扱いの気軽さが大きな強み。
幌と違って洗車も自動洗車機に突っ込んで問題ないし、静粛性もクローズド時なら普通の車と同等。
一方で幌と違って柔軟性のない材質であることに加え、内張りなどもあるため分厚いものになりやすく、そのぶん嵩張るのは大きなデメリット。

デタッチャブルトップ

着脱式(デタッチャブル)の名の通り、ちょうど「蓋」のように屋根が丸ごと車両本体から分離できる。
後付けのパーツとしても簡単に用意できるため、ソフトトップ車にもオプションとして選択できたり社外品のアフターパーツとして別途購入・取り付けできたりすることも多い。
既に純正のデタッチャブルトップが用意されている車両でも、メーカー内外問わずより軽量なカーボン製にするなど差別化したものを後から発売するといったこともでき、「拡張性」という意味では非常に利便性が高い。

上述したオープンカーの欠点のひとつである「部品点数の多さ」という側面でも、固定用の金具が数個必要なくらいで他のタイプより圧倒的に少なく維持しやすい。幌が破けたり分割線から雨漏りしたりといった心配もないしネ!
なんなら「屋根は開けないもの」と割り切って完全なクローズド車として使うという選択もできるため、こうした特徴から普通の車に近い感覚で扱えるのも大きなメリットである。

一方で「屋根を丸ごと取り外す」というその方式ゆえにハードトップの中でも特に嵩張るのは無視できないデメリットか。
車の屋根というけっこう大きな部品を保管しておくためのスペースが必要になるし、デカい分1人で脱着するのはかなり骨が折れる。カーボン製ならまだしも、大抵はFRP製だしリアガラスの重量もあるので普通に重いし。
そして車内に保管しておく手段がないため、取り外して出かけた先で雨に降られたなんて日にはずぶ濡れ必至。
総じて「取り扱いの手軽さ」に関してはほぼ投げ捨ててしまっている格好であり、オープン走行は「気が向いたらできなくもない」程度のものになってしまいがち。

といったようにオープン走行を楽しみたい人にはあまりお勧めできない方式ではあるが、一方でスポーツ走行を楽しみたい人、さらに言えばサーキットで走りたい人には

  • 固定式の屋根を後付けできるため、多少なりとも剛性が上がる
  • ボディ上面が滑らかになるため空気抵抗が若干改善される
  • 開閉機構が要らないので重量増加も最低限で済む
  • 事故に見舞われた際、特に横転してしまった際に頭部を保護できる

といった特徴から人気は高い。
……というか特に最後の理由から幌のままではサーキット走行が認められないケースもあるため、特にスポーツ走行を重視したモデルには十中八九用意されている。

リトラクタブルハードトップ

ルーフを分割してトランクスペースなどに収納できるようにした、格納式(リトラクタブル)のハードトップ。
性質上大規模な機構になりがちなため、基本的には電動式。ごく一部だが「人力でルーフを分割してトランクに収める」変態方式もないことはない
スイッチ1つで変形メカ宜しくダイナミックに可動してルーフが展開・格納される、男の子が大好きな収納方式。小さなお子様のいるご家庭なら大いに喜んで貰えるだろう。なお妻の視線

なにも伊達や酔狂だけでこんなド派手な開閉方式を採用しているわけではなく、「ハードトップならではの快適性」と「開閉機構の手軽さ」を両立させた結果、「電動開閉式のハードトップ」に行き着いたというだけのこと。伊達や酔狂が全くないとは言ってない
電動幌にも同じことが言えるが、展開も格納もボタン1つで済むというのは実際便利。安全上の問題から徐行時限定にはなる*6ものの、走行しながら開閉することも可能。
オープン時も車体にルーフが格納されているので、ルーフの保管場所に困ることもない。
「取り扱いの手軽さ」という観点では非常に優れた方式と言えるだろう。

とはいえ欠点ももちろんある。
中でも大きなものはルーフの収納場所は大抵トランクルームと共有ということ。
トランクスペースが格納したルーフに占拠されてしまうため、オープン時にはトランクが使えないか、使えても大幅に制限されてしまいがち。
「ルーフの格納スペース」と「トランクルーム」を別体にして収納に影響が出ないようにしたモデルも少なくはないが、その場合そもそものトランク容量が犠牲になっていることも……。
「人も荷物もたくさん積んでオープン走行」というのは大抵の場合厳しいだろう。
なので子供にはウケてもファミリー利用には根本的に向いてない。……まぁもっとも、オープンカー自体そもそもファミリー向けではないものが大半なのでその辺は今更か。

また、可動部品とそれを制御する電装部品を組み込まなければいけないので、ソフトトップは無論、同じ素材のデタッチャブルトップより部品としては重くなる。

そして、電動式全般に言えることではあるが故障した場合の修理費が高くつきやすいのも痛いところ。
幌の場合も張り替えとなるとまあまあ高くつくのだが、電動ハードトップの場合ASSY交換(ユニット一式丸ごと交換)での対応となる事が多いため、ディーラー対応に任せてしまうと結構な額が飛ぶ。幌と違ってDIYでの応急処置というのも難しい。
もちろん故障部位だけの交換で安く済ませてくれる業者もあるので、やりようによっては逆に幌より安く直せる場合もあるためケースバイケースか。
ただディーラー以外の業者では人気の車種でないと対応してくれないといったケースもままあるので、対応拒否されても泣かないこと。
とりあえずいざという時に備えて情報収集しておくと後々のトラブルで役立つかもしれない。「壊れたらそれまで」と割り切ってしまう手もなくはないが

可動部品の故障以外には雨漏りも意外な落とし穴。
ルーフを分割して収納するという構造上、パッキンの劣化などでいつかは起こるものと覚悟はしておいた方がいいだろう。
幸い、幌とは違って「放っておくと一気に悪化する」ということはないだろうが、それでも早めに対処しないと電装系までお釈迦になって余計に高くつきかねない。

屋根無し

上記の通り、市販のオープンカーはほとんどの場合屋根があるものだが、中には開閉式とか脱着式云々以前にマジで屋根が無い変態もある。繰り返すが市販車で、である。勿論雨のドライブどころかラゲッジルームすらほとんど無いなど実用性は皆無なクルマばかり。スーパーカーをミニカーの如く爆買いできるくらいのセレブの為のクルマである。メルセデスベンツSLRマクラーレン・スターリングモスやアリエル・アトム等が有名どころか。

似て非なるもの

ぱっと見クローズドだが、オープンエアを楽しみたいというジャンル。
これらは上記のような開閉方式の違いというよりは、「分割方法」の違いと言うべきか。

タルガトップ・Tバールーフ

どちらもリアガラスまで含めたルーフ丸ごとではなく、「頭上部分のみ」を取り外せるようにした構造のこと。
ほぼ1枚の板状になっていて頭上の空間全てがオープンになるのがタルガトップ、車体中央部分のみ残り上から見るとちょうど「T」の字型に車体が残るのがTバールーフ。
ちなみにタルガトップはポルシェの商標のため、厳密にはポルシェ車しかタルガトップを名乗れない。
Tバールーフはかつてアメリカで「オープンカーの構造を維持しつつ衝突安全性をクリアするのがコスト的に割に合わない」という問題をクリアするため、「支柱」となる部分だけを残して取り外せるよう考案されたもの。
そのため、シボレー・コルベットやポンティアック・トランザムといったアメリカンスポーツカーへの採用例が多く、北米市場を主戦場とした日産・フェアレディZにもこのタイプが用意されていた。
しかしぶっちゃけ見た目的にイマイチだったため、マツダ・ロードスターが来襲すると市場を荒らし尽くされてしまい、結果消滅してしまった。

屋根全体を開閉するのとは異なり一部分のみで済むため、外した部品が嵩張らないという利点がある。
そのためトランクルームなどの収納場所を圧迫せず、実用性を維持しながら気軽にオープンスタイルを楽しめるのが大きな利点。
ただし視覚的にも体感的にも「オープンカーならではの感覚」は限定的になるため、オープンカー愛好家に認めて貰えない中途半端という意見も見られる。
ただオープンカーともクーペとも違うその独特なスタイルにこそ惹かれるというファンもまた多く、独特なコミュニティを形成しているジャンルでもある。

サンルーフ

これについてはもはやオープンカーとは言えないが、屋根が開くという共通点上一応記載。
屋根が丸ごと、もしくは大部分が開く構造になっているオープンカーとは違い、こちらは開くのは大きくても屋根の半分程度。それが屋根後方にスライドするように開閉する。
オープンカーほど剛性を犠牲にせず、屋根の収納スペースも無いので普通のクルマにオプションとして設定できるケースも少なくない。何ならスポーツカーどころかミニバン等のファミリーカーでも普通に見られる。
オープンカーのデメリットを可能な限り軽減し、気軽にオープンカーの気分を味わえるのが最大の特徴。喫煙者であればサンルーフを通じて排煙することもできるので、クローズドとオープンのいいとこ取りとも言える。悪い言い方をするとどっちつかずで中途半端とも言えるが…

このジャンルの派生としてはキャンバストップがある。
帆布(キャンバス)天井(トップ)という名前の通りに「頭上部分だけが布製で、後方へスライド開閉可能」なタイプを指す。
コンパクトカーに設置される例が多く、代表的なものにルパン三世の愛車でお馴染みフィアット・500がある。

サンルーフは欧米では1950年代以降、日本車でも1970年代後半以降本格装備されるようになった。
ただし、オープンカーほど顕著ではないが開閉構造の分重くなる、剛性の低下、信頼性が落ちるというオープンカー根本のデメリットからは逃れられない。屋根に収納する分屋根=クルマの上部の重量が増加するため高重心になるというオープンカーには無いデメリットも。
そのため、日本では高温多湿で雨が多い気候も相まってか、2000年代以降は採用車種が減少傾向にある。

なまじファミリーカーでも設定がある分、開いたサンルーフから頭を出していた子供が高架橋に頭を激突させて死亡するという痛ましい事故も起きている。…まあ走行中は全員シートベルトを着用して着座するのが当たり前なのでメーカーやサンルーフの落ち度では全くないが…。

主な車種

ここまでは特徴について紹介してきたが、古今東西の市販車を簡単に解説。
興味を持った人は、新車や中古車選びの参考になってくれたいいなー…と思う。

  • マツダ・ロードスター
1989年に登場したキング・オブ・オープンカーで、国内で新車購入可能なオープンカーその1。
当初はマツダの「ユーノス」ブランドで発売されたため「ユーノス・ロードスター」という車名であり、1998年に登場した2代目から現在の車名となった。
前述したように絶滅状態だったオープンカーを復権させた車種であり、60〜70年代のイギリス製オープンカーを目標として開発が進められた。
「人馬一体」というコンセプトが示す通り、ドライバー(人)が血の通った馬を自由自在に操っているような走りをするスポーツカーを目指していたため、
オープンカーであるだけでなく徹底した軽量化や重量バランス電子化も最低限とする形で実現させた。
当時オープンカーといえば高級車が殆どだったが、大衆車に落とし込んだのも大きいインパクトを与えた。
そのため初代はメーカー側がレストアサービスを始めるなど今もなお根強い人気を誇る。
現行型である4代目は流石に幅は3ナンバーサイズであるものの、軽量コンパクトなど初代のコンセプトは未だ守られ続けている。

  • ダイハツ・コペン
2002年に登場した、国内で新車購入可能なオープンカーその2。
丸みを帯びた初代モデルと、カスタム性を重視した2代目(現行モデル)がある。
初代は軽自動車では初となる電動ハードトップを装備した。
現行は基本の「ローブ」、SUV風の「エクスプレイ」、初代をイメージした「セロ」、トヨタ仕込みの「GR SPORT」と4種類のボディを持つ。

  • ホンダ・S660
2015年に登場した軽自動車。
2011年に発表された電気自動車のコンセプトカーを基に開発され、発売当初は『ビートの再来』と話題を呼んだ。
2022年に生産を終了したが、これは年々厳しくなる安全基準に対応できなくなったため。

  • ホンダ・ビート
1991年に登場。
同時期にデビューしたスズキカプチーノ・マツダAZ-1と並び「平成ABCトリオ」と呼ばれた。
当時のホンダのフラッグシップスポーツカー、ホンダ・NSXと同じミッドシップレイアウトを採用し、バックミラーはNSXと同じ部品を使っている。
創業者である本田宗一郎が最後に送り出した新車でもある。
トリオの中では今なお人気が高く、生産台数の半数近くが今も現存しており、メーカーから純正部品の再販が行われたほど。
実はホンダには同名のスクーターもある。

  • ホンダ・S2000
1999年にホンダ創立50周年を記念して登場。
S800以来となる久々のFR車であり、当時ミニバンメーカーと揶揄されはじめていたホンダが採算なんぞクソ喰らえと作り上げたホンダスポーツの最高傑作。
企業CMの「Do You Have a Honda?」で走り抜ける姿を見た人も多いだろう*7
F20CというMAX9000回転まで吹け上がり、ピストンスピードはF1エンジンに匹敵する高回転エンジンと前後バランス50対50を実現したレイアウト構造による高い操作性が特徴で、今なお高い人気を誇る。

  • トヨタ・MRスパイダー/MR-S
日本初のミッドシップ車・MR2の一族にもオープンモデルがあった。
MRスパイダーはSW20を改造し、92台だけが販売された幻のモデル。
MR-Sについては当該項目参照。

  • ホンダ・シティカブリオレ
1984年に登場。後述するS800以来となる国産オープンカーである。
ベース車種の「シティ」は1981年に登場した小型ハッチバックで、当時としては画期的な背を高くしたスタイルで大ヒットした。
当時ヨーロッパではフォルクスワーゲン・ゴルフやフォード・エスコートといったハッチバックベースのオープンカーが登場していたので、それに倣ったものといえる。
ハッチバックには設定されなかったパステル系のカラーバリエーション*8や、広報車でわざわざ横浜ナンバー(湘南ナンバーは当時未設定)を用意するなど当時の世間の流行だった『軽薄短小』を上手いこと生かしヒットしたが、本家が1986年にモデルチェンジしそのまま大コケしたのでわずか2年で生産終了となった。

  • バモス・ホンダ
1970年に登場した軽トラのオープンカー。
軽トラにオープンカー?と思われがちだが、これは是非とも画像を検索していただきたい。
アニヲタ的には「ウルトラマンタロウ」のラビットパンダや「けものフレンズ」のスタッフカーのベース車といえばピンと来る人もいるんじゃないだろうか。
車名が先に来ているのは、当時販売していたオートバイ「ダックス・ホンダ」「シャリィ・ホンダ」にちなんだものとされる。
来るレジャーブームを目論んで開発されたモデルで、フロントにスペアタイヤを置いた独特の顔も特徴。
3年間の生産台数は2500台と全く売れなかった珍車のひとつ。
ちなみにバモスという車名は1999年から軽のワンボックスとして復活したが、車名以外のつながりはない。

  • ダットサン・フェアレディ
日産自動車のセダン「ブルーバード」をベースに、イギリスのMGを目標に開発されたオープンモデル。
北米市場で最初に販売された国産スポーツカーである。
レースでも実力を発揮し、末期には国産車で初めて200km/hをオーバーする高性能ぶりを見せたが、年々厳しくなる北米の安全基準にそぐわなくなってきたため、クローズドルーフタイプへのモデルチェンジが決定。
そして誕生したのが「日産・フェアレディZ」である。

  • ホンダ・S360/S500/S600/S800
ホンダが軽トラのT360とともに、初めて手掛けた4輪車である。
S360は試作車のみ、S500は量産先行車のような扱いで、本格的に量産されたのはS600とS800のみ。
数字は排気量を意味するが、当時の軽自動車は排気量が360ccだったのでS360を除いて全て小型乗用車の扱い。
2輪車のノウハウをつぎ込んだ高出力のメカニズムが特徴で、当時の評論家からは『グランプリレーサーを乗用車に落とし込んだ』『時計のような精密なエンジン』と評された。

  • ポルシェ・ボクスター
1996年に登場。
968の実質後継となるモデルだが、駆動方式はFRからMRに変更。
911よりも安い価格で大ヒットを遂げ、当時不振だったポルシェの救世主となった。
ポルシェの中ではエントリーモデルであるが、ミッドシップかつ軽量なので911より潜在能力は高いんでは?とか言われていたり。
これを固定屋根にしたモデルが『ケイマン』になる。
2代目であるType987に追加されたハイパフォーマンスモデル「ボクスタースパイダー」はその名称*9と、軽量化のためにソフトトップを手動化&ソフトトップ内の補強を抜いたため「200km/h以上出すと屋根が吹っ飛ぶので、高速道路を走るときは屋根を格納してから走行してください」というハチャメチャなお達しが出ていたことでも有名。
Type981と982にもこのスパイダーは出たが、流石に屋根の補強は戻したらしく「290km/h以上~」になった。

  • ポルシェ・911
基本はクーペだが、バリエーションモデルとしてタルガトップとカブリオレを内包している。
ちなみに登場順はクーペ→タルガトップ→カブリオレの順。
一時期タルガトップは単なる巨大サンルーフになっていたが、Type991より「一度リアガラスを動かして屋根を納める」という大がかりなシステムを導入して開放感を復活させた。

  • BMW・Zシリーズ
1996年に初代Z3が登場。Zとはドイツ語で「未来」という意味の「Zukunft」から。
BMWこだわりのFRパッケージと直列6気筒エンジンが特徴。
2002年に生産を終了し、より上位のZ4とZ8にバトンタッチ。Z8は3年で生産終了したが、Z4はモデルチェンジをはさみつつ2025年現在も生産中。
現在販売中の3代目はトヨタ・GRスープラとプラットフォームを共用する兄弟車である。

  • ロータス・セブン
現代まで続くロータス社のブランドを確立させた、初期ロータスの名車として名高い一台。
ハイパフォーマンスモデル「スーパーセブン」の名でもよく知られる。
「サーキットまで自走してレースした後、そのまま自宅まで自走して帰るためのクルマ」として開発されたクラブマンレーサーであり、見た目はまさに古き良き時代のレースカー。
最大の特徴はバラバラのパーツとしてオーナーへデリバリーされたのち、オーナー自らの手で組み上げるキットカーという販売方式を取ったこと。
これによって当時のイギリスの税制システムもあって完成車を売るより遥かに安価に作れる上に小規模な工場でも生産でき、
さらに組み立て式な分改造も容易だったため各オーナーが思い思いの「ぼくのかんがえたさいきょうのセブン」に仕上げることもできた。
その優れた設計思想はロータスの手を離れた後もケータハムへのライセンス生産や多数のレプリカモデルへと繋がっていき、
一連のセブン・ファミリーは今なお多くのユーザーを虜にしている。

  • ロータス・エラン
そのセブンに次いで世に送り出したスポーツモデル。
Y型のバックボーンフレームは以降ロータスの基準になるというマイルストーン的存在で、13年にわたって製造され人気を博した。
前述したマツダ・ロードスターが目標としたのはこのモデルともされる。
なお、1990年からはFF車として2代目が登場したが、こちらはイマイチ売れなかった。

  • ロータス・エリーゼ/エキシージ
S660同様に布屋根のタルガトップを持つ小型スポーツカー。
エキシージはそのクーペモデルという名目だが、シャーシ自体はエリーゼと同じなため、簡単な加工で屋根が外れる上にエリーゼの屋根を流用することが可能だった。
というかメーカー自ら屋根をエリーゼの物と入れ替えたモデルを「エキシージロードスター」として発売していたりする。
走りの面もロータスの十八番というべき軽量・足回りを重視した設計とミッドシップレイアウトが生み出す高いコーナリング性能で曲がりくねった道も楽々走り抜ける。

  • ロータス・340R/2-イレブン/3-イレブン
340Rはエリーゼ、残りの2つはエキシージをベースにオープンオンリーとした限定モデル。なお屋根だけでなくドアもない。
下記のX-BOWと違い、室内電装品の耐水処理はあまり強固ではないらしく、雨の日に走らせたらそのまま故障したとかいう報告もちらほら。
でも雨が多い日本国内に相当の台数が入っているとかいう話があり、3-イレブンについては自動車玩具のトミカで製品化されている。

  • KTM・X-BOW
屋根?なんですかそれの代表格。
メーカーから分かるように車というか4輪版バイク。メーターは同車のスーパースポーツバイク「RC8R」から流用されているほどである。
なもんでドアも当然のようにない。
そういうわけでこれのオーナーも大体は車よりバイク愛好家に近い思考らしく、
Q:オープンカーって雨が降ったらどうするんですか?
A:どうもしません、強いて言うなら雨合羽を着るのと(濡れるという)覚悟を決める。
という素敵な回答を残している。
その辺を我慢出来るというなら、790Kgという軽量ボディに240馬力のパワーが生み出すハイパフォーマンスな走りが味わえる。
街乗りよりもサーキットを走り込む人にはオススメ出来る一台だ。

余談

今では廃れてしまったが、かつては「ハードトップ」というボディスタイルが存在していた。
これは固定式の屋根を持ちながら、屋根の前端〜後端を結ぶアーチ以外にピラー(窓柱)を持たない構造を指し、そのスタイルが「脱着式ハードトップを付けたオープンカーのよう」ということでこう呼ばれるようになった。
フランス語ではFaux Cabrioret(偽カブリオレ)と呼ばれていることもその経緯を示している。
窓枠がないということは真横からの衝撃に弱いということでもあり、その安全面の問題から年々厳しくなってゆく衝突安全基準を満たすことが難しくなった結果、ピラーをドアに組み込みつつもサッシュレスドアにすることでその見た目を維持した「ピラードハードトップ」というスタイルへと移行する形で消滅した。


ちなみに、本項目が立った4月5日は「オープンカーの日」でもある。
4月はの舞い散る中を走れるオープンカーにとって最高の季節であることと、オープンカーは「五感」に訴える車ということから。


追記・修正は時速60キロの風圧の感触を全身で感じたことのある人にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 自動車
  • オープンカー
  • スポーツカー
  • 秀逸な項目
  • 男のロマン
  • アメ車
  • ロードスター
  • カブリオレ
  • コンバーチブル
  • スパイダー
  • 日本車
  • 憧れ
  • スタイリッシュ
  • 該当日に建てられた項目
最終更新:2025年05月16日 22:48

*1 実際、F1のコクピットは「シート自体が簡単に外れる」構造になっていて、自力で降りれなくなったドライバーをそのまま引っこ抜ける構造になっている。

*2 オープンではなくても、例えばSUPER GTの場合全車両において運転席側の屋根の一部が外せなければならないよう決められている。一部とはいえ、高さの制限が緩和できるのは救助の上ではかなり大きい。

*3 有名どころだとF1にて前走者の部品がヘルメットに直撃し衝撃で失神、そのままクラッシュして大怪我。シーズンを棒に振ったフェリペ・マッサが挙げられる。

*4 先ほど例に挙げたマッサの事故が開発のきっかけとなっている。ただ見た目の問題や「F1は命を掛けて走るスポーツ」という風潮、その後重大事故がなかなか起こらなかった事から実装まで9年かかり、その間に1名HALOがあれば助かったとも言われるクラッシュで犠牲になっている。

*5 阪神甲子園球場、横浜スタジアム、千葉マリンスタジアム。絶対的なスター選手と言えるほどのリリーフ投手がいた・いるチームの本拠という理由もあるんだろう

*6 ほとんどの「走行中のルーフ開閉機能」を搭載した車両は、高速走行中には開閉ができないようリミッターが掛けられている。

*7 車単体としてのCMは打っておらず、CMで登場したのはこれだけである。

*8 全部で12色あり、当時の日本車では例のない多さだった。

*9 ボクスターは「ボクサー&ロードスター」から生み出した造語で、スパイダーは上にあるようにオープンモデルの意味。つまり「ボクサーエンジン搭載屋根なし屋根なし車」になって「頭痛が痛い」みたいになってしまっている。