チャペルの子供達

登録日:2010/03/09(火) 01:51:17
更新日:2024/02/18 Sun 19:45:53
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たしか"チャペル計画"というものだったね
新たな人類への祝福の鐘をならす礼拝堂…
素晴らしいネーミングだよ

「チャペルの子供達」とは、ARMSに登場する敵組織『エグリゴリ』により生み出された人工天才児達のこと。



◆チルドレン・オブ・チャペル


サミュエル・ティリングハーストが提唱した
「人間の脳細胞は全て胎児期に作られ、以後は増殖しない。人工的に胎児の脳に干渉する事で、知的能力の高い人間を意図的に生み出す事が可能である」
という理論に基づき行われた天才児育成計画。
それによりエグリゴリの行った、薬物投与により胎児の脳を常人よりも成長させ、人工的に天才を生み出す『チャペル計画』により生まれた子供達のことを指す。

全米数箇所の大学病院で夫婦を対象にした新薬投与実験から生まれた。
その新薬は胎児の大脳新皮質を著しく活性化させ、彼らは生後三ヶ月で言葉を話し、小学校に入る年齢で大学の博士号を取得するといった天才ばかりである。
当初は両親のもと一般社会で暮らしていたが、一部の子供は知性の高さ故に学校などに馴染めず問題をおこす者もいた。
特に『チャペル計画』により生み出された双子、アル・ボーエンとジェフ・ボーエンは学校のいじめに対し、スクールバス内に毒ガスを散布して同級生達を毒殺。
更にそれを咎めた両親をも銃で殺害し、その後は当時7歳にして「チャペルの子供達」としてエグリゴリに迎え入れられる。
しかし彼らが引き起こしたテロ事件により、予定よりも早くチャペルの子供達はエグリゴリに回収されることとなった。

親には子供と引き換えに、一生暮らすことのできるだけの金と住居が与えられた。
だがそもそもこの実験は極秘裏に行われ、胎児の両親の同意はなかった為、彼らを産み育てた親の中には子供を手放すことを拒否する者も居た。

しかし、エグリゴリの工作によりある者は職を奪われ、またある者は莫大な借金を背負わされ、結局はエグリゴリの取引に応じるしかない状況に追い込まれた。
そして子供達は全員エグリゴリの下へ集められ、研究者として迎えられた。彼らは自分を売った親を憎んでおり、大人を軽蔑している。


エグリゴリを打倒するために、廃棄処分されるところだったサイボーグ部隊、猟犬部隊(ハウンド)を調整、強化し、オリジナルARMS達の捕獲を計画した。
彼らを洗脳して手駒に加える為にギャローズ・ベルの町に誘い込み待ち構える。



主なメンバー

アル・ボーエン&ジェフ・ボーエン

チャペルの子供達の中でナンバー1と言われた双子。
毒ガス、洗脳装置、サイボーグ、強化人間などエグリゴリの実験室で数々の殺戮兵器を開発して来た天才科学者でもある。
当初は技術屋として雇われたのだが、自分達の遊び道具として二体の軍人の死体を蘇生させ『プラスとマイナス』というサイボーグを生み出した。
この二体を使ってエグリゴリの刺客に志願し、実戦に出て次々とミッションをこなしていった。
しかし涼達を襲撃した事で隠蔽工作が出来なくなった為、エグリゴリから切り捨てられ、レッドによりジェフは始末されてしまった。

・オスカー・ブレンテン

ギャローズ・ベルの「チャペルの子供達」のリーダー。
“猟犬(ハウンド)”部隊を強化改造してボディガードにし、涼達オリジナルARMSを捕獲・洗脳してエグリゴリに反旗を翻そうとする。
根は親の愛に餓えた寂しい子供であり、猟犬部隊の隊長であるスティンガーを父親代わりに慕っていた。
尚、父親は保安官のふりをしていた元フリスコ市警の警官であったリチャード・ブレンデン。ワイロを取った事がないのを自慢にしていた。

・シャーリー・ロズウェル

ギャローズベルで本当の保安官を務めていた少女。大人達を軽蔑し、他人のように接している。



◆研究

C-0048

アルがかつて作り出した恐ろしく強力な毒ガス。かつてバス内に散布して同級生達を皆殺しにした。
後にギャローズ・ベルの街を襲撃したエグリゴリのイプシロンフォースが使って、子供や研究員達を虐殺。
アフリカ象をも瞬殺できる神経ガスだが、涼のARMSは全身に回ったナノマシンがどんな傷も一瞬で癒しどんな毒物も分解する為、全く通用しなかった。
…と思われたが、流石に許容量があるのか分解スピードが追い付かなかったのか、アザゼル接触直前で血を吐いて倒れていた。

『プラス』と『マイナス』

アルとジェフが造り上げたサイボーグ兵士。ただし自我はなく、アル達のラジコン操作で動いている。
黒い服がアルが操る『プラス』、白い方がジェフの操る『マイナス』。劇中のサイボーグの中でもとりわけ怪力とタフネスを誇る。
チタン合金製の装甲は相当分厚く、首筋ですら第一段階の隼人のブレードでは叩き切る事ができなかった。
また、死体から蘇生した自我のない痛みも恐怖も感じない人形であるため、爆発に巻き込まれても怯むことがない。
腕からは電撃を放出することができ、放電による攻撃や直接電流を流す攻撃はARMSさえも麻痺させることができる。*1
当初は武士の妹を人質に取ったこともあり一方的に涼達を追い詰めるが、第二形態に進化した涼のARMSによる砲撃で『プラス』が破壊。
その後2人を始末しにきたキース・レッドにより『マイナス』も腕を切り落とされ、更に体を真っ二つにされ破壊された。

マシンナリーインプラント

鐙沢村の村人達に施した洗脳装置。脳にチップを入れて、遠隔操作をする技術により精神操作(マインドコントロール)で操っている。
目つきを見れば一目瞭然との事で、うつろで焦点のあってない目をしている。本人はほとんど眠っている状態で、外部命令で動かされている。
耳裏など見えにくいところにバーコードが印字されており、流された特殊な波長の音波から命令を受け行動する。
ただし命令が途絶えると発作を起こして死亡してしまう。(恐らく逃亡による情報漏洩の防止策)
なお、鐙沢村の村人は全てエグリゴリに拉致された死刑囚や、事故で死んだり行方不明になっているはずの者達で構成されていた。
アルもエグリゴリにいた頃は関わっていた。

ギャローズ・ベル

夜間9時以降外出禁止の街。支配しているのはチャペルの子供達であり、街にいる大人は全て彼等をエグリゴリに売った親である。
地下の研究施設でアザゼルの研究、解析を行っており、オリジナルARMSの力を我が物としてエグリゴリに反旗を翻そうと考えていた。
彼らが信頼できるのは、自分達を決して裏切らない『猟犬部隊』だけ。

猟犬(ハウンド)部隊

エグリゴリによって薬物で試験的に作られた強化人間(ブーステッドマン)部隊。
薬物投与で脳内のアドレナリンを過剰に分泌させることにより、獣のごとき反射神経・運動神経と視聴嗅覚を持ち、狼並の連携が取れる。
そのスピードと反射神経は『白兎』と『女王』すらも翻弄でき、超振動ナイフを用いる事でARMSすらも切り裂く事ができる。
ただしアドレナリンの過剰分泌は肉体に多大な負担を強いるもので、運が良くても廃人に、悪ければそのまま死んでしまう。
この欠陥からエグリゴリから廃棄処分される予定だったが、チャペルの子供達が彼らを専属部隊に雇用した。
アルはこの欠点を「ニトロを使ったエンジンは、ただの一回で焼きついて使い物にならなくなる」と説明した。
それでも最終決戦まで生き残っており、エグリゴリの戦闘部隊を圧倒するなど、実際には失敗作とは言えない戦果を挙げている。


アザゼル

五万年前に地球に落ちてきた、ARMSのもとになった金属生命体。
劇中40年以上なんの生命反応も示さなかった為、死んだサンプルだと思われていたが…?
バイオレットをして
「太陽系と同時に発生し、五万年前に地球に落下して、半世紀前に発見されるまで
 地底で生きながらえてきた中のたかだか四十~五十年の"死"がなんだというの?」

アザゼルは赤ん坊のように真っ白な存在であり、より"強い意思"に引かれてオリジナルARMSに引き寄せられていく。
これは彼が何十億年も独りぼっちだったからこそ、蛍が仲間の光を求めて飛ぶように強い意志(ジャバウォック)に惹かれたのであった。






以下ネタバレ





反乱の企てはすでにエグリゴリに把握されており、ギャローズ・ベルを包囲され、地下研究施設にもエグリゴリの精鋭部隊が突入され絶体絶命の危機に陥った。

しかし、そんな彼らを救ったのは、憎んでいた親達だった。

「シャーリー…許してくれ………私は…怖かった…
 生まれて三ヶ月で「ハロー」としゃべったお前が…
 ジュニアスクールに入る歳に物理学の学位まで取ったお前が…
 …どうして…私はお前から目をそむけてしまったのだろう…!?
 いつでもお前は誰かの助けを求めていたのに…
 そしてそれは、親である私にしか出来ない事だったのに…」

それに応えるように、シャーリーは父に『怖かった!』と抱き着き、邂逅を果たす。

このことで、チャペルの子供達とその親は互いの絆を取り戻した。
いくら天才的な頭脳を持つといっても、彼らは親の愛情を、家族を望む子供でもあったのだ。

そして毒ガスの中で戦い、死に瀕した涼とユーゴーの前にアザゼルがジャバウォックの姿で近づいてくる。
ユーゴーの危機に涼の中の憎悪が暴走しかけるが、『カツミ』の声で正気を取り戻すと、アザゼルと邂逅した。
アザゼルは涼の強い意志に反応し、自分の体を分解し細胞をナノマシンとして大気中に飛散させて毒ガスの成分を電気分解し消してくれたのだった。

「ただ…一つだけ"アザゼル"の言葉が聞こえた…
 "我が子らよ…生きろ"… と……
 そう言い残して…アザゼルは…死んだ…」




「理論的な言葉ではないが… まさに奇跡は起きたんだ…」





まあこの後ギャローズベルではシルバー兄さんが大暴れして、高速機動隊が『白兎』の音速でバラバラにされたり、子供達は地下河川に逃げ込んでしばらく退場。



一段落が着いたところで涼達も合流し、エグリゴリに囲まれた町から脱出するために地下河川へ向かう。
追跡を不可能にする為に地下河川の入り口を爆破しようとするが、なんとここにきてオスカーが仕掛けたダイナマイトの着火装置が不発。
オスカーの父親が息子をネタに投降するふりをして飛び出し、入り口で敵を巻き込んでダイナマイトで自爆をした。
彼は息子のミスを帳消しにする為、そしてみんなを助ける為に一芝居打ったのだった。

―てめえのやるべき事は、"死"を待つ事じゃないはずだ―
(そうだよ、若造…私の義務はこの町を守ることだ……… この町の人間と…私の息子のために…)

オスカーは父親の死に責任を感じ塞ぎ込み、チャペルの子供達も意気消沈して生きる意味を見失いかける。
そこへアルがやってきて、食事にも手をつけられないオスカーに父親も無駄死にだったなと馬鹿にしてみせた。

「…たしかにパパが死んだのは僕のせいだ… 僕が…起爆装置の設計を誤ったばかりに…
 だけど…僕はおまえなんかに負けないぞ 僕はリチャードの息子、オスカー・ブレンデンだ
 絶対この洞窟から抜け出して、生き延びてやる!!」

これにより怒りをバネにして、オスカーとチャペルの子供達は活気を取り戻した。
アルは殴られてまで憎まれ役を買ってみせてやったのだった。


長い長い洞窟の道を進み、幻覚を見るほど心身共に疲弊しきったところに、なんと待っていたのは行き止まりという無情。
しかし人一人なんとか通れる隙間の先にあった大岩をどかすと、ようやく外に出られた。
場所はグランドキャニオン。薄暗く狭かった洞窟から一転、眩しい日差しと待望の水場に喜ぶ一同。



だがここが劇中最大のトラウマになるとは、この時誰も知る由もなかった・・・。





このエグリゴリの攻撃で壊滅的な損害を受け、ほとんどのチャペルの子供達は死傷してしまった。
生き残ったオスカーはアルにアザゼル研究の成果全てを託し、後にスティンガーの養子となる。




以下さらなるネタバレ





今から五万年前にアリゾナの大地に落下した『アザゼル』が落下した事で出来たクレーターを利用して作られたのがギャローズ・ベル。
ネイティブアメリカン達に"悪魔の住む場所"として恐れられ、誰も近づかなかった場所で、それに目をつけた騎兵隊が戦略的な拠点として創設した。
その為、エグリゴリと言う組織の"発生の地"でもある。

1960年代にチャペル計画は実行に移され、数多くの失敗を重ねた後、最初の成功例であり奇蹟の子供「アリス」が誕生する。
全ては『究極の進化』を目論むキース・ホワイトが企んだ『ARMS計画』の捨て石に過ぎなかった。


キース・ホワイト
「私は究極の進化を手に入れ蘇った!! おまえの…"地球"<ガイア>の意志を継ぐ者として!!
 "アリス"の憎悪とともに我が意志をおまえに託す!! 今こそガイアと融合するのだ!!」













アル「そんな事は不可能だ」




「キース・ホワイト…おまえは、一つ大きな間違いを犯している
 アザゼルはおまえの言う進化なんて求めてはいない アザゼルが惹かれたのは、常にヒトの心なんだ
 ティリングハースト博士が僕に託した未完成論文にこうあったよ

 アザゼルこそは四十五億年の孤独そのもの… だから寄り添うものを求めた…
 いろんな意志が互いに惹かれ合い、結びつこうとするのは生命としての本能…
 "宇宙の摂理"はそこにある…とな!!

 そんな事もわからんおまえに、アザゼルが心を開くと思うか?

 "進化"という幻想に縛られているだけの哀れな奴なんかにな!!



これまでやってきた全てを否定され、アザゼルも何も応えない中、何も分かっていなかった自分を嘲笑しながら、ホワイトは全てに絶望して消えていったのだった。


追記・修正はデザイナーズベイビーとして生まれた方にお願いします。

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最終更新:2024年02月18日 19:45

*1 自分に電撃が伝わらないよう、肩からこの腕にかけて絶縁機能が設けてある。涼はその仕組みに気付いて反撃に転じた。