登録日:2010/10/17(日) 17:55:16
更新日:2025/03/26 Wed 17:27:08
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のさばる悪をなんとする
天の裁きは待ってはおれぬ
この世の正義も
あてにはならぬ
闇に裁いて仕置する
南無阿弥陀仏
■新必殺仕置人
『新必殺仕置人』は【必殺シリーズ】の第10弾として、77年(昭和52年)1月21日から同年11月4日までABC/テレビ朝日系列で放映された日本の時代劇。全41話。
その名の通り第2弾『
必殺仕置人』の正式な続編。
中村主水シリーズとしては第5作目となる。
各話のタイトルは「○○無用」とカウントされる。
【概要】
“果たせぬ恨みを晴らす殺し屋”達を主人公としたインモラルで、一般的な時代劇の範疇を越えた演出で人気を博してきた必殺シリーズ。
その中でも、第2作『必殺仕置人』にて初登場した“人殺しをする警察官”をコンセプトに生み出された
中村主水は既に複数のタイトルを跨いで登場し、その人気がシリーズの打ち切りをも救ったという、文字通りの看板キャラクターとなっていた。
そして、本作はシリーズ第10作を記念すると共に、シリーズの集大成として主水のデビュー作である『必殺仕置人』の直接の続編として制作され、イコールとして、この時点でのシリーズの総決算を担う作品となった。
本作の最大のトピックスは、やはりシリーズ最大の人気キャラクターである
念仏の鉄の約4年振りの復活にあるだろう。
『仕置人』時代より更にパワーアップを果たした主水と鉄の「歴代最強コンビ」を中心に、鋳掛屋の己代松、絵草子屋の正八、女スリのおていを加えた強烈な個性を放ちまくる鉄曰く
仲良し五人組が市井の晴らせぬ怨みの為に巨悪に挑む姿が描かれた。
また、本作独自の設定である一大殺し屋組織「寅の会」の存在も注目の一つ。
この組織の前にあっては、鉄や主水すらも、会に所属する殺し屋に過ぎず、自由奔放に仕置を行っていた『仕置人』当時との差別化を計る事に成功…失敗すれば死が待つと云う緊張感の中で、知恵を巡らす仕置人の姿がドラマに深みを与えていた。
上記の設定に加え、それまでの作品から良い部分のみを抜き出したとまで言われる完成度の高いシナリオ群と、悪ノリした出演陣によるアドリブ満載のギャグ要素も加味された正にシリーズ最高傑作の呼び名に相応しい大傑作である。
【物語】
最下級の牢屋同心から、脱獄を未然に防いだ功績により再び定町迴り同心に復帰していた中村主水に、かつての仲間、念仏の鉄が接触…その命が狙われていると云う事を告げて来た。
江戸に舞い戻っていた鉄は毎月“寅”の日に句会を装って行われる闇の競売組織……「寅の会」に所属する仕置人となっていたのだった。
鉄の忠告を受けた主水……そして、会による粛清を恐れながらも調査を開始した鉄は、遂に依頼人の正体に辿り着き逆に仕置を完了する。
……こうして、自らの窮地を脱した主水は鉄チームの仕置人として裏稼業に復帰するのであった……。
……鉄達、仕置人の挑む次なる仕置は?
【寅の会】
元締め・虎が主催する仕置人組織。
上記の様に俳句会に見せかけて競売が行われている。
標的の命を競売に懸け、最も安い値を付けた者が競り落とす仕組み(ダッチオークション方式)になっている。
非常に戒律が厳しく、裏切った者や外道仕置を行った者には容赦無く死神の粛清の銛が飛ぶ。
……が、鉄は劇中で何度か難しい条件の仕置を受ける事で見逃されている。
【登場人物】
南町奉行所のダメ同心だが、裏の顔は優れた頭脳と卓越した剣技で敵を討つ闇の仕置人。
今作では旧知の鉄と組んでいる事もあり、仲間との距離も近く生き生きと仕置に挑む様子が見られる。
その所為か前作までは必要最小限の動きで相手を倒す暗殺剣が多かったのに対し、本作では正面からの立ち回りが多い(多人数を一瞬で切り伏せる早業も披露)。
また、中村家の描写も明るい物が増えている。
元、島帰りの破戒僧で“かんのん長屋”に住む骨接ぎ師。「仕置人」の
最終回の後、上方に移っていたが江戸に舞い戻り、「寅の会」の仕置人となっていた。
前作より更に享楽主義に磨きがかかり、仕置以外の時には女郎屋に入り浸るか、辺り構わず寝転がっている……と云う有様になっている。
己代松から売り上げをくすねたりとダメ人間ぶりを発揮する一方で、女、子供に同情し義憤を燃やすなど、人情家の一面も見せる。
一応は医者なので知識も豊富。
必殺の骨外しは一撃必殺の背骨折りに変化している。
朴訥な印象の、島帰りの鋳掛屋職人。
鉄や主水とは違い“本物”の人情家で、弱い立場の人間に対して心からの同情も見せる。
鉄とはかつて命のやり取りをした間柄で、互いに生き残ったのが縁で仲間となった。
武器はお手製の竹筒鉄砲。
名前は「みよまつ」と読み、劇中では松、まっつぁん等と呼ばれることも多い。
後年の媒体では名前を「巳代松」「鋳掛屋の巳代松」と紹介しているケースも多いが、劇中のクレジットでは職業名を付けない「己代松」が正式名称。
若い絵草子売りで、バックアップ担当。
人を和ませる雰囲気があり、潜入調査もお手の物。
腕っ節はからきしだが、足が速い。
人情家で甘ちゃん……その優しさ故に辛い目にも遭っているが、死神を最期に救ったのは正八の優しさだった。
挿入歌も担当。
同じくバックアップ担当。
腕利きの女スリで、その技術を活かしたエピソードも多い。
飄々とした食えない姐さんだが、それだけに物事の正否を冷静に判断しており、主水が裏切ったと誤解された際にはただ一人、主水を庇ってもいる。
最終回に於て、実は己代松と好きあって居た事実が発覚…後付け的な設定ながら物語のラストに感動を与えた。
「寅の会」を仕切る闇の世界の大物ながら、外道仕置を嫌う信念の男でもある。
自分の信念に近い鉄を頼りにする面も見られる。
演じる藤村富美男は(元祖)ミスタータイガースと呼ばれた伝説の野球人で、自らバット型の武器を以て粛清に当たる(なんと現役時代の映像付き)事もあった。
「寅の会」の粛清を担当する凄腕の仕置人。
抑揚の無い言葉で喋り、地中から出現するなど、人間離れした演出がされている。
武器は凄まじい命中率と威力を誇るロープ付きの銛で、仕置の際には遮光器を着用する。
……これらの特徴は、終盤に明かされる彼の正体に関わる謎である。
第21話から登場した正体不明の男。
派手な色の六尺褌姿で、屋根…もしくは屋根と屋根の間の渡しから釣糸を垂らしている。
基本的にそれ“だけ”のキャラクターなのだが、回によっては主水の悪行を咎めたり、
次回予告をしたり、延々と体操してたりする。
……最終回では意外(過ぎ)な正体が明らかになる。
主水の姑。
ダメ婿“だからこそ”良いと泣くなど、かなり主水に甘くなっている。
主水の妻。
あからさまに主水に甘えたりする事もある。
【余談】
本来は全52話の予定だったが、中村せん役の菅井きんの降板問題が起こり、スタッフの説得の必要があった事から製作開始が遅延…遅れた分が前作【必殺からくり人血風編】となった。
当時の娘の縁談に際し、せんの“鬼姑”のイメージを危惧した為だったと云う。
尚、縁談は無事に終了し、晴れて菅井きんは中村せん役に復帰となった。
事実上の主役であるにもかかわらず、従来作ではクレジットがトメ扱いとなっていた中村主水の正式な初主演作。
代わりに念仏の鉄がトメ。その際のクレジットは「起こし」で映される。
……ただし仕置人の続編と云う事もありストーリーライン上では念仏の鉄が中心に置かれており、これは新仕置人が予め物語の方向性を定めて製作していた為で、藤田、山崎両サイドに確認を取った上での演出である。
本作の出来があまりに良過ぎた事が、以降の必殺シリーズの低迷、打ち切り危機を招いた発端となった。
こう〜もく〜や〜ついき〜しゅうせい〜人〜まか〜せ〜
第10弾【新必殺仕置人】
前作←【必殺からくり人血風編】
次作→【新必殺からくり人 東海道五十三次殺し旅】
- 「命売ります」の札を下げてた依頼人(片腕の老人)がどうなったのか気になる。 -- 名無しさん (2016-09-07 16:09:56)
- 個人的には「最高傑作」というより「前期エッセンスの集大成」として楽しんでいる。鉄はあまりに見事に死に過ぎた感がある -- 名無しさん (2017-01-11 00:32:19)
- 正八がメインの回は結構いい出来だった気がする。 -- 名無しさん (2017-04-29 21:00:35)
- 上記の中の某人物の正体はシベリアの少数民族で人種的にも東洋系なんだな。 -- 名無しさん (2022-04-17 13:14:48)
- 生れて始めて見た「必殺」がよりによってこれの最終回だったから完全に肝を潰してしまい、結局本放送で「商売人」その他は見ておらず(第一話でいきなり「ルーツ」のパロディをかますぐらいだから子供でも楽しめたかも)本格的に見始めたのは「仕事人」以降だった… -- 名無しさん (2022-08-24 00:32:18)
最終更新:2025年03月26日 17:27