登録日:2011/03/30(水) 21:03:25
更新日:2025/03/16 Sun 19:01:39
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1919年頃に稲垣仲静が制作した絵画。京都国立近代美術館に所蔵されている。
朱色の座布団に女性的なポーズで座り、
あっちの方向をジーっと眺めている奇妙な表情をした
猫の色彩画。
毛の一本単位まで丁寧に書き込む伝統的な日本画の手法。その一方で奇妙な顔の起伏は色の濃淡で表現した西洋画風。
つまりは伝統と最新の両方を取り込んだ、この頃にしては意欲的な作品なのである。
奇妙なポーズとなんか微妙にいやらしさを感じる目をした魅力的な猫の肖像。この猫は仲静のペットだったそうな。
ちなみにあっちの方向を向いてるいやらしさを感じる目は、瞳に金や緑青を使い透明感を出し、
胡粉によって光を表現するなどかなりの手間をかけているみたいである。一度見たら忘れられないなんとも奇妙な眼差し……。
そして、奇妙なポーズは猫を女性として
擬人化して描いていた。こんな所に現代との繋がりが……。
日本画の背景は余白を作ることを美するのだが、この絵は背景色をアーチ型の金色にしている。
おそらくは光り輝く仏像の背中をモデルにしたのだと思われる。
光背はモチーフとなるものを聖的な存在として強調するらしいので、仲静はこの猫を神々しくするために取り入れたのだろう。
作者の稲垣仲静(1897~1922)が『猫』を描いたのは23歳の時。
25歳で死ぬまで無数のスケッチを描いてたらしいが、所在が知れてる絵がほとんど無い謎多き画家。
この作品を描いた年、仲静は国画展に入選したがそのモデルも猫。相当な猫好きだったようだ。
2010年9月25日放送分の『美の巨人たち』にてこの絵が取り上げられた。
追記・修正お願いします
- 日本画の項目とはニャんとも珍しい -- 名無しさん (2017-01-19 21:36:25)
最終更新:2025年03月16日 19:01