速水玲香誘拐殺人事件(金田一少年の事件簿)

登録日:2012/07/12 Thu 02:17:58
更新日:2023/03/12 Sun 20:10:21
所要時間:約 13 分で読めます







さて────いよいよだな。

めくるめくスリリングなショーの幕開けだ!



速水玲香誘拐殺人事件とは、金田一少年の事件簿での事件の1つであり、かつて金田一少年が解決した事件のうちの一件。単行本26巻~27巻に収録。全9話。
テレビドラマでは第3シーズン第6話として2001年8月25日に、テレビアニメでは第47話~第50話として1998年5月18日~6月8日にかけて放送された。
Fileシリーズ最終回の作品。
登場する怪人は「道化人形」。

アニメ版の容疑者リストの順番は上段が左から鏑木、玲香、保之で下段が三田村、小渕沢、真奈美、逆井の順でバックは薄い緑色。
玲香は雪夜叉伝説殺人事件以来2回目の容疑者リストに載る。


以下、ネタバレにご注意下さい。


【あらすじ】

一たちともすっかり顔なじみとなった人気アイドル・速水玲香が、今回も事件に巻き込まれる。
舞台稽古の終了後、何者かに誘拐される玲香と彼女のマネージャー・安岡保之。
玲香の所属事務所である鏑木プロダクションには、「道化人形」を名乗る人物から身代金を要求するビデオテープが送られ、受け渡し人に金田一一を指名する。
指定された場所に身代金を持って行く一だったが、その途中で思わぬ事故に巻き込まれ、受け渡しは頓挫してしまう。
そして「道化人形」から舞い込んだ一本の電話───「二人ハ殺シタ」。


【登場人物】


  • 安岡保之(やすおか やすゆき)
CV:高木渉/演:岩本恭生
玲香のマネージャー。42歳。鏑木葉子の甥。
冴えない小物っぽい感じの男だが、マネージャーとしての誇りは高い。
道化人形に襲われた際、玲香を守ろうとするも2人とも誘拐されることになり、
監禁場所においては、「助かった後のスキャンダルを避けるために、男女別々の部屋にしてほしい」と道化人形に懇願し、
道化人形からは「マネージャーの鑑」と称賛された。
身代金受渡しの失敗後、玲香の目の前で射殺。遺体は山梨県河口湖で発見された。
哀れな被害者という印象を与えたが、いつきの調査により、鏑木プロ乗っ取り未遂を初めとした様々な問題行動が浮かび上がってくる。
ドラマ版で彼を演じたのはものまねタレントの岩本恭生氏。

  • 逆井成美(さかい なるみ)
CV:松谷彼哉
鏑木プロダクションスタッフ。23歳。
玲香専属のメイク係。
身内の入院費で金に困っていた。
鏑木の素性を理解しており、プロダクションにも見切りをつけている。

  • 鏑木葉子(かぶらぎ ようこ)
CV:鈴木れい子/演:浅香光代
年商は数十億とも言われている、鏑木プロダクション社長。52歳。
表向きは人情に厚い親切な一面を見せ、玲香を養女にしようとしているが、本性は冷酷非情で、金への執着心が半端ない強欲ドケチおばさん。
玲香と保之の身代金1億円を要求された際、「もったいないから」という理由*1で、新聞紙の偽札束を渡そうとした。
しかも犯人から「警察に報せたら、2人の命は無い」と言われていたにも関わらず、独断でためらい無く警察に報せた*2。とことん性悪。
その後、甥の保之の遺体を見ても、顔色一つ変えずに淡々としていた。(逆井曰く、保之には昔から手を焼かされていたので、厄介者がいなくなって、清々したらしい)
ちなみにドラマ版で彼女を演じたのは、大女優であるミッチーこと浅香光代先生。
1億円を出し渋った理由に付いては、ドラマでは所属が三田村と玲香の二人だけの小さな事務所である為、そんな大金は簡単には出せない…という、原作に比べると一応は納得のいく理由となっている。

  • 小渕沢英成(おぶちざわ ひでなり)
CV:金光宣明
鏑木葉子の秘書。35歳。
2年前に大手プロダクションに勤めていたが失踪し、3か月前に着任したばかりらしい。
常に無表情な地味メン。彼のみこれまでの経歴が一切不明だった。

  • 三田村圭子(みたむら けいこ)
CV:土井美加/演:いしだあゆみ
ベテラン女優。45歳。名前の由来はもしかしたら三田佳子。
わがままな一面のある玲香とは撮影現場でそりが合う仲とは言えないが、今回の事件において
鏑木の代わりに玲香たちの身代金1億円をポンと用意した太っ腹な女性。
アニメ版ではその理由を「この話が美談として広まれば、大きな仕事が入ってくるから」と語るが…
その後も、玲香を見捨てようとした鏑木たちに嫌悪感を示していたりと、何かと気にかけている。
福岡出身であり、玲香に明太子入りのおにぎりを持ってきた。

  • 安岡真奈美(やすおか まなみ)
CV:こおろぎさとみ/演:有森也実
鏑木プロダクションスタッフで、安岡保之の妻。31歳。
メガネをかけた気弱そうな女性。とっても美人。
仲が良かったのか、夫が殺された際、ショックを受けて激しく泣きながら一に八つ当たりしてしまう。
アニメ版では野原ひまわり、ドラマ版では東ラブのさとみちゃんの人が担当していた。

  • 道化人形(どうけにんぎょう)(ドラマ版:影法師(かげぼうし))
玲香と保之を監禁した誘拐犯。
ピエロに扮し、ボイスチェンジャーで喋る。
潔癖症らしく、監禁中に保之にヒゲを剃るよう強要し、身代金の引き渡し相手に金田一一を指名する。
アニメ版ではやたら愉快なBGMが流れるため、非常にシュールで不気味。
ドラマ版では、真っ黒のシーサーのような面を被った怪人となっている。

  • 安岡舞
ドラマ版オリジナルキャラクター。
安岡保之・真奈美夫妻の娘。


【レギュラー陣】
おなじみ主人公。
オープニングではアルバイトとして玲香の影武者を演じるも、寒いギャグやあんまりな女装姿がまずかったのか激怒したファンにボコられ美雪に手当されていた。
事件発生後は身代金引き渡しの人間に指名され、血のように赤いバラを目印に待っていろと言われたが、
引き渡し場所へ行くと更にあちこち場所を変えられ散々振り回されてしまう。
取引失敗後、「玲香を殺した」という犯人の電話を受け、自分のせいだと絶望しかけるが、美雪の涙ながらの抱擁と激励で、気を取り直した。
誘拐された玲香を助けるべく、探偵としての大先輩であるシャーロック・ホームズばりのアクションを披露している。
多分歴代の事件で、トップクラスに体を張った事件だろう。

おなじみヒロイン。
病欠した端役の代役に、見た目採用で指名されてしまうが、元々演劇部だったのもありそれが見事にハマっていた。
…現実では、たとえ端役でも、たまたまその場にいただけの一般人(しかも未成年)を代理起用することなど絶対あり得ないのだが。
なお、某推理漫画主人公ヒロイン旅行先でドラマ撮影に起用された事がある。
今回は恋のライバルである玲香に塩を送る粋な面も見せた。
中盤には、全てに絶望して諦めかけた一を抱擁、涙を流しながら激励した。実に健気で素晴らしい子である。

おなじみオッサン。
毎度ながら事件の捜査を担当。
彼の無精ヒゲが、事件解決のヒントとなった。

  • 正野
  • 中村一郎
  • 住吉慎吾
剣持警部と共に、宅配業者に変装して事務所に赴いた。
中村は「幽霊客船殺人事件」、住吉は「証言パズル」に登場した刑事。
ちなみに、中村は「誰が女神を殺したか?」にも、チラッと登場。「幽霊客船殺人事件」のことを匂わされそうになって話を遮っていた。

今回の主役にして、薄幸の人気アイドル。
マネージャーの保之と共に、「道化人形」なる人物に誘拐されてしまう。
身代金受け渡しの失敗後、犯人から「(安岡ともども)殺した」という電話が入るが、なぜか路上にボロボロの状態で倒れているところを一に発見され、保護される。
幸い、たいしたケガはしていなかった。タイトルまんまだと玲香が「誘拐殺人」されたようだが未遂に終わったといえよう。
鏑木との養子縁組の話があったが、監禁中に道化人形から警察への通報とニセ身代金のことを聞き、彼女の本性を理解。
保護された後、本人を問いただし、病室から叩き出した。養子縁組も無かったことに。
ドラマ版では超絶ビッチな風貌に変貌。でも中身は一緒。

おなじみフリーライター。
鏑木プロダクションの関係者の背後関係について調べるよう、一に依頼され快く引き受けた。
その情報網は確かであり、すぐさま色々な事実を調べ上げて報告してくれた。

アニメ版のみに登場。
玲香のファンであり、彼女のサインをもらって大喜び。
身代金受け渡しをサポートするが、途中で食べ物に釣られて引き下がった。緊迫した空気の中でケーキやパフェにはしゃぐシーンは割とKY。
しかし山道を一日中歩いたはずの、玲香の靴に傷が無いことに真っ先に疑問を抱き、それが推理のヒントとなった(原作では一が気づいた)


【ドラマ版のみの登場人物】

  • 中山秀征
  • 麻木久仁子
芸能人。
一と玲香が出演していたテレビ番組のMCをしていた。

  • 水野晴郎
映画評論家。但し、作中での職業は不明。
映画館前で一と待ち合わせをしていた美雪に、もうすぐ映画が始まる事を告げて映画館に入っていった。

  • 松村邦洋
一の妄想内にて、寿司を食べ過ぎて太った一として登場。


【以下、ネタバレにご注意ください】












許せない……!!この半年 どうやって奴を地獄に叩き込んでやろうかとずっと考えてたわ!!

  • 安岡真奈美
この事件の真犯人「道化人形」(ドラマ版では「影法師」)。
7年前に鏑木プロダクションの、アイドル歌手として活動していたが、舞い込む仕事は屈辱的なものばかりな上、鏑木の甥だった安岡保之にしつこく言い寄られてしまう。
それでも我慢しながら仕事をこなし、安岡を軽くいなしてきた彼女だったが、
ようやく苦労が報われ、人気も上がってきた頃のある日、暴漢にレイプされスキャンダルとなり、芸能界を追われ絶望のどん底に陥る。
そんな中、手を差し伸べて来た保之の言葉にほだされ結婚する。
しかし、レイプ事件は保之が彼女を手に入れるために暴漢と共謀して起こした自作自演であり、物語の半年前にその事実を知った彼女は復讐を決意する。
そして、復讐の方法をとある人物に教唆され、殺人を決行した。

そもそも玲香の誘拐は、保之と2人で計画した狂言誘拐だった。
保之の目的は、『新聞紙を束ねた偽の札束を玲香に見せ付け、鏑木の信頼を失墜させて、玲香と鏑木の養子縁組を破綻させるため』だったが、真奈美はそれを利用し『最初から保之だけを殺す』つもりでいた。
しかし、鏑木の方は二人の予想通りにケチって偽の札束を用意したのだが、『話を聞きつけた三田村が、代わりに本物の1億円を用意してしまう』という予想外のハプニングが発生。
そこで、取り引きを失敗させるために「バスの出発時間ギリギリに乗れ」「今すぐバスを降りろ」などの無茶な行動を指示、それをクリアしてしまった場合の「保険」として、吊り橋に細工を仕掛けた。
さらにアニメ版では、『保之を殺し玲香にも養女の話を断らせることで、いずれ鏑木プロダクションを自分のものにするつもりだった』と語っている。
教唆した人物の助言通り、保之に髭を毎日剃らせ、更に玲香を利用した鉄壁のアリバイを作り上げ、保之殺害を実行した。
なお、彼女が事務所にいる時に「道化人形」から掛かってきた電話の主は保之であったと思われる(変声機を使用する事で、中身は違えど声だけで道化人形を二人の人間が演じる事は可能なので)。
保之を殺害後、銃口を玲香に向けるも、彼女を殺す気は最初から無かったため、最後の弾をわざと外して「弾切れ」という口実を作り、銃で彼女を殴って気絶させる。
死亡推定時刻をごまかすために保之の死体を河口湖に沈めた後、気絶したままの玲香を道路の脇に放置。服や靴、体に汚れを付けておき、彼女がさも『自力で脱出して一日中森の中をさまよった末に、そこまでたどり着いて気を失った』かのように見せかける。
そして証言者となる玲香の記憶を狂わせて、事務所スタッフがいた日に殺されたと思い込ませた
しかしながら一は「(営利目的の誘拐だとしたら)どうしてわざわざ取引を失敗させるような無理難題を何度も言ってきたのか」と疑問を持ち、玲香が一日中森の中をさまよっていたわりには靴が傷ついていないこと、ずぼらな性格の保之が1日髭剃りをさぼっていた際の髭と翌日に剃った長さの違う髭がシェーバー内に残っていた事でアリバイが崩れたこと、
更に犯人しか知りえないはずの一言を咄嗟に口走ってしまったことが、動機と犯行の露呈に繋がってしまう。
一を責める際、「踏み板が外れたなんて言い訳にならない」という台詞を言ったことが致命傷となった。一はたしかに吊り橋から落ちたが、それは『吊り橋のロープがボロボロになっており、一の重さでロープが切れた』からであった。真奈美は自分が仕掛けた罠が成功したと思い、口を滑らせてしまった事で一に犯人だと見抜かれてしまった。

真相を暴かれた後は別人の如く豹変し、捨て台詞を吐いていたが、犯罪計画を台無しにされたとして教唆した人物に見限られ、自殺に見せかけて毒殺された。

クズな被害者に人生をぶち壊されたという彼女の動機は哀れだが、罪のない玲香や一を巻き込んだことや、ラストでの態度がいかにも小者っぽいことから、読者からもあまり同情されない気の毒な人。
玲香と一を巻き込んだのは後述の「殺人教唆を行った人物」の意向が大きいが、その指示に反論もせず従った真奈美にも無論非がある。

ドラマ版では、娘・舞がいる設定。また、教唆した人物が未登場だった為、毒殺はされず、本当に自殺しようとしたが、玲香の説得で娘の舞のためにも生きて償うことになった。

  • 安岡保之
その実像は、金持ちのボンボンにありがちなクズ男。
真奈美に惚れ込んでいたためか彼女を自分のモノにするために暴漢たちに金を払い、彼女を失意のどん底に突き落としておきながらそれを救うという自作自演を行った。
(しかも、その時の共犯の後の台詞からすると、真奈美を直接レイプしたのは彼であり、共犯は真奈美の身体を押さえていただけである)
また女癖も相当悪かったようで、真奈美と結婚する前は勿論のこと、結婚後も結構な頻度で女にちょっかいを出していた模様。逆井成美もハッキリとは言わなかったが、言外に夫婦仲が良くないこと、女癖が悪いことを「…どうかしら?」という台詞で暴露されている。
他にも鏑木プロダクションを乗っ取る計画を立てたこともあり、普段から彼に甘かった鏑木も、この時ばかりは激怒したようである。

自分が後釜に座るはずの鏑木プロダクションが玲香の手に渡ることを防ぐため、鏑木の本性を玲香にバラそうと狂言誘拐を行い、養子縁組を潰そうと企んでいた。
狙いは当たったものの、その後自分が殺されるとは思っていなかった。
甥とはいえ、金や権力に対する執着心の強さは、まさに鏑木の血であろう。

  • 安岡舞
殺害された父親は犯罪者で、真犯人は母親と、ドラマ版では最大の被害者。
改心した母親が償いのためにも生きる道を選び、自身は鏑木に引き取られたのが、せめてもの救い。

  • 鏑木葉子
実は末期の癌に侵されていて、余命いくばくもない状態だったが、鏑木本人はそのことを知らなかった(自分でも「何か体調がおかしい」ぐらいは感じていた模様)。
真相解明の場で、真奈美からそのことを告げられて初めて事実に気付き、事件の後は放心状態になっているという。
逆井からも「鏑木プロは終わり」と見限られるようになった。
アイドル時代の真奈美には相当冷たく接していたらしく、「あんたのせいで屈辱的な仕事ばかりやらされた」と糾弾されており、
また折角人気が出てきて、稼げるようになってきた時期にも、ガードマンを付けていなかったことが伺え(多分「もったいないから」だろう)、
正直プロダクション社長としてのカリスマ・手腕も疑わしいレベルである。今までよく存続できていたものだ…。
その後に申し訳程度に、プロダクションスタッフとして雇っているとはいえ、これでは恨まれても仕方がないと言える。
尚、アニメ版ではこのくだりはカットされている。

ドラマ版では単にケチなだけのおばはんとして描かれており、真奈美の逮捕後は孫も同然の存在である舞を引き取るなど、原作に比べれば少しだけマシな人物となっている。

  • 三田村圭子
本人の口から明言は避けられたものの、速水玲香の本当の母親であることを匂わせている。
事件後初の稽古では、本来怒りのあまり玲香をぶつ場面で、涙を流しながら彼女を抱擁している。
スキャンダルを呼び玲香に更なる苦労を掛けることを見越していた彼女は、一にはもちろん、玲香自身にも明確な事実を告げることはなかった。
玲香の母ということは、小城拓也の母親である可能性が高いが彼の話題は一切出ないので関係は不明。
幼少時代の玲香が誘拐された際、父親が死亡し小城は母親ではなく養父母に引き取られたとされているので
この時点で玲香とは別れて暮らしていた事になる。


(以下、更なるネタバレ)










鏑木プロの小渕沢ですよ!

──そしてもうひとつの名は……

「地獄の傀儡師」──と言いましてね!



  • 小渕沢英成
終始地味に、鏑木に忠実に尽くしていた彼。
その正体は地獄の傀儡師・高遠遙一
なお、本物の「小渕沢英成」がどうしているかは作中では明かされておらず、いつきが情報網を駆使しても経歴が分からなかった事から、小淵沢は高遠が作り出した架空の人物である可能性もある。

実は道化人形のセリフに「血のように紅い薔薇」と言う、「魔術列車殺人事件」のときに使ったフレーズがあり、さり気ない伏線となっている。
金田一少年の事件簿はサザエさん時空の推理物であり、物語自体への伏線は少ないため、気づかなかった人も多いのではないだろうか。
保之殺害を決意した真奈美に殺人のシナリオを伝授したが、真相を暴かれた後の彼女の態度を「醜い」と評し、死の制裁を下す。
事件後、一の前に堂々と姿を現し、「負けたわけではない」という捨て台詞を残して消えた。

なお、過去の自分のケアレスミスを棚に上げて実行犯のミスを徹底的に糾弾するという高遠のスタンスはシリーズの中でも批判されても致し方ない物と言える。こうした彼の悪癖は今後のエピソードでもしばらく続くものの、弁護しておくならば彼なりに成長したのか獄門塾殺人事件を最後にそれ以降は特に見られなくなる。
真奈美のミスとされている3つの内、「犯人しか知り得ないことを口走った。」*3と「玲香の靴を汚しただけで傷を付けなかった。」は彼女一人のミスと言えるが、
「保之が1日髭剃りをさぼっていた際の髭と翌日に剃った長さの違う髭がシェーバー内に残っていた」ことについては高遠が真奈美に犯行を終えた後、
シェーバー内の髭もしくはシェーバー自体を処分しておくように指示しておけば防げたミスでもあるため、自らのミスを責任転嫁しているとも言える。

高遠が他人に殺人を教唆するのは原作・アニメ共にこの事件が初めてである。
ちなみに3か月前から秘書になったと言う経緯から「魔術列車殺人事件」から最低でも3か月は経過している模様(3ヶ月前に表れたのは本物の小渕沢で、後で彼を殺すなりなんなりしてすり替わったと言う可能性も否定は出来ないが)。


【謎解きについて】
単純な犯人当てに関してはかなりわかりやすいが、「犯行のすべてが金田一の目の届かないところで行われている」という変則パターンであるせいで、メイントリックは非常に高難易度。

有栖川有栖著『マジックミラー』の「アリバイ講義」を引用すると、「(アリバイの)証人が錯覚をしている場合」に当てはまるトリックでありながら、
その「(証人である玲香が)錯覚したもの」の描写が、事件を追う金田一の視点から読む読者には分かりづらいというのも、難易度を上げる一因になっている。

物証となるヒントはほぼ靴と髭剃りの二つしかない(実際にはシェーバーで剃った髭はあそこまできれいに残らないと思うが)。
メタ的なヒントも「サイレンの音は12時に鳴る」、「なぜか取引後から丸一日連絡して来ない犯人」くらい。
歴代でもかなり難しい部類に入ると思われる。





【原作との相違点】

◇アニメ版
  • フミが登場する。そのため、山で一からメモを受け取る人物が通りすがりの少年からフミに変更。それに伴い、玲香の靴に傷が無いことに気づくのが、一からフミに変更。
  • 冒頭の玲香の追っかけ集団の中に、タロット山荘殺人事件の滝下間太郎がいる。
  • 誘拐事件前、小渕沢から玲香に赤いバラの花束が手渡される。
  • 身代金要求の媒体がビデオテープから手紙と監禁された二人の写真に変更。
  • 玲香が監禁された日程が、「9月10日~13日」から「5月18日~20日」に変更。これは元々原作の雑誌掲載日に合わせていたものを、アニメ放映日に合わせて改変したもの。
  • 真奈美が一を突き飛ばした拍子に電話機が落ち、事務所内の会話が電話に録音された。この録音が犯人特定の証拠となった。
  • いつきは金田一に呼び出される形で病院を訪れる。また頼まれた際に「またか!?」と発している。
  • トリックの解明と犯人指摘の順序が逆になる。
  • 鏑木葉子が癌であることが宣告されない。
  • 7年前の真奈美が襲われた事件の概要がぼかされている。雑誌記事の「レイプ」という表現が無くなっており、「事件が面白おかしく報道された」とだけ語られている。

◇ドラマ版
  • 設定がリセットされているので、一と玲香は小学校時代の友人設定。父親は中学校の頃に亡くなっている事になっている。
  • 一が玲香の初恋の人としてTV出演する。
  • 一は玲香を呼び捨てで呼ぶ
  • 佐木竜太が登場。
  • 逆井成美、小渕沢英成、高遠遙一は登場しない。
  • 怪人名が「影法師」に変更、容貌も黒尽くめのものに変更。
  • 一が吊り橋の綱を切らず、足をただ踏み外すだけに変更。
  • 安岡夫妻の娘・舞が登場。
  • 安岡はタバコを吸わず、逆に三田村が喫煙者になっている。
  • いつき陽介が登場せず、鏑木プロの裏事情を提供する役が剣持に変更。
  • 吊り橋の板の細工は原作の板に切れ目を入れるから中が空洞の板を使用したに変更。
  • 一の推理で玲香の服の汚れと安岡が湖に捨てられた理由を話してない。
  • 安岡真奈美が死亡しない。
  • 一が吊り橋から落ちそうになっていた時に美雪が駆けつけ助けようとする。しかしその事でちょっとした喧嘩になってしまい、ラストで美雪が本心を言えず「これからも幼なじみでいようね」と言ってしまう。また仲直りしないまま終わっており、次回までその事を引きずっている。


追記・修正は紅茶に砂糖を入れてからお願いします。

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最終更新:2023年03月12日 20:10

*1 確かに簡単な金額ではないが、先述の年商から言っても、ちょっと無理をすれば払えるはず。

*2 一応結果論で言えば正しい判断ではあった。彼女の通報で来た剣持がバックアップに着いていなければ、一は吊り橋から転落して激流に呑まれた後誰にも助けられず命を落としていたかもしれない。

*3 こちらに関しても、元は高遠のリサーチ不足により三田村が玲香の実母だと把握していなかったのが発端で、本当に出されてしまった身代金が引き渡されないよう急遽様々な工作を施すこととなったために起きたミスである。また一の行く手を妨害するための数々の工作により「これは実はただの営利目的の誘拐事件ではない」と気付かれることにも繋がってしまった。