この腐りきった極道社会を正すための礎になれるんだ……
どうせあんたは放っておいたらロクな死に方しねえんだ
登場人物の少なさ等から察した人もいるかもしれないが、一連の事件の黒幕。
彼は自身も属する極道社会を「この世で最も非合理的で時代遅れな業界」と唾棄し、義理人情を重んじる古臭い極道たちを軽蔑している。
その為に飯渕は、ある野望を打ち上げる。
それは「東と西の極道組織をシステマティックに一本化し、合理的で近代的な組織に作り替えて支配する」こと。
シンプルかつスケールの大きい野心である。
飯渕は野望実現のため、先ずは東城会を手中に収める下準備のために寺田の信用を得て他幹部を排除して地位を向上。
その裏で「近江連合のある幹部」とも内通して計画を進め、時期が来たら寺田を殺して東城会を乗っ取り近江連合に渡す用意もしていた。
そして賭博による借金で首が回らなくなった川村を「計画実行のための駒」に選択。
表向きは真島組の組員とさせ、その裏で植松と近江連合佐倉会の若頭一ノ瀬を射殺させる。ひよっこ同然だろうによく殺せたな…。
こうして「東城会の人間が近江連合の幹部を殺した」という戦争の種を工面することに成功。
戦争という「切っ掛け」から東城会と近江連合をスムーズに合併させ、自分が支配者として極道社会を理想色に染め上げる予定であった。
真島が蒼天堀のキャバレー「グランド」にて川村を発見した時、既に川村は一ノ瀬を殺した後であった。
川村は飯渕からの最後の命令として真島に拳銃を向け、しかし真島に敵うはずもなく返り討ちにされる。
その様子を見て飯渕は用済みとなった川村を始末し、真島に自身の壮大で崇高な計画を語るも真島からは全く相手されなかった。
飯渕は最後の仕上げとして、川村が殺せなかった真島に全ての罪を着せて殺すことを決意。
戦闘開始ムービーでは素早い身のこなしと拳銃捌きを披露。銃使いのボスは意外と貴重である。
あの真島の背後を取ったり、銃をドスではじかれても即座に拾って発砲するなど、凄まじい身体能力を見せる。
…相手が真島の兄さんなので背後からのヘッドショットを一瞥もせず即回避などのトンデモ手段で躱されているが。
真島の殺害に失敗し、自分から真島に計画の全貌をベラベラ喋ったことで飯渕の計画は失敗に終わる。
「ブタ箱で臭い飯でも食ってイチから勉強してこいや」と真島からは放置されるが、直後に拳銃を拾い…
これから面白いことになる 最高のエンタテイメントだ
その場で笑いながら自分の頭を撃ち抜き自殺した。
彼の計画には近江連合も巻き込んでいるため、そちらからの報復も避けられないのは明白だったためだろう。
真島は事の顛末を寺田と近江連合にも報告し、戦争回避の「落とし前」として真島組の解散を余儀なくされた。
『2』にて真島が真島建設を興していたのはこのため。
『ONLINE』では、本編で語られなかった経歴と行間が描写されている。
まず彼が通じていた近江連合の幹部とは、近江四天王の1人である高島。
そもそも飯渕が極道の世界に入ったのも、コンサル会社で燻っていたところに高島の勧誘を受けたから。
飯渕はその際、高島から「組に囚われない駒を持て」という助言を受け、飯渕組とは別に金で私兵を増やしていた。
真島がキャバレーに来る前、飯渕は川村と一ノ瀬がドンパチを起こす様を遠目で確認していた。
そして一ノ瀬を射殺した後に川村が怖気づいて弱音を吐いたことから、「使えない駒」として内心見限り自分が真島を殺すと決意。
そして最後、真島に敗れた飯渕は一つの思考が頭をよぎる。
高島は真島の動きを監視しており、蒼天堀に乗り込んだことも高島から聞いた。それなのに真島を仕留めるための応援が高島から差し向けられていない。
ここにきて飯渕は、自分も高島にとって「使い捨ての駒」に過ぎなかったと悟る。
自決の直前に、真島が後ろを向いて去ったことから「自分の死すら心底どうでもいい」と思われていると察し、地獄で真島が来るのを待つことを決め、彼の人生は終わりとなった。