ムノムクァ

登録日:2025/08/10 Sun 03:05:21
更新日:2025/08/10 Sun 03:11:41NEW!
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ムノムクァ(Mnomquah)クトゥルフ神話大系に登場する神。別名は『月の龍(Dragon in the Moon)』。
日本語では、ムノムクアフムノムクアーなど表記揺れしている。

初出はリン・カーターの『Something in the Moonlight』(日本語未翻訳)だが、
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創作し、ブライアン・ラムレイが肉付けしたボクラグの存在が根底となっている。


■ボクラグとの関連

前提としてクトゥルフ神話には、月もしくは宇宙から地球に来訪したボクラグという蜥蜴神が存在しており、両生類種族のスーム=ハーに崇拝されているという設定が存在した。
詳細はボクラグの項目を参照。

『Something in the Moonlight』は月と蜥蜴に対する極度の偏執病を抱える患者と精神科医の交流を両者の視点を切り替えながら進行していく内容で、
元爬虫類学者の患者は論文が爬虫類の神を信奉するカルト教団の目に止まり、月の蜥蜴神に命を狙われていると語り、
医師が要求に応えて、ネクロノミコンの写しを手に入れて月の爬虫類に関連する内容を精査する。

ネクロノミコンには、旧支配者たちは宇宙の彼方から地球に降り立った。ボクラグとスーム=ハーも彼らと共に来訪したが途中で月に立ち寄っている。
ボクラグはスーム=ハーの代表者の名前で、彼らが信仰している本物の蜥蜴の神こそがムノムクァなのだと記されていた。

『魔道書ネクロノミコン外伝』など、以降のリン・カーターの作品でもムノムクァはボクラグの上位存在と設定されている。


■概要

旧支配者たちと共に宇宙の彼方から来訪したが、地球に降り立つことなく月の地下深く、ヌグ=ヤーの深みに存在するウッボスの暗黒の湖に留まった龍。

力は非常に強力で『Something in the Moonlight』では、コスの印やクトゥグァの召喚などの対抗策が検討されたが、
最終的に、正体と現在地を突き止めた上でゾアンの呪文を使用するしか対抗手段はないと結論付けられている*1

四大属性では水に当てはまり、火属性のクトゥグァと対立しているが上記の通りクトゥグァではムノムクァには敵わない。
『深淵への降下』(原題:The Descent into the Abyss)では、元々はヤーナクの玉座に君臨していたが「炎を焚きつけるもの」*2に敗れて追放されたという。

『ネクロノミコン外伝』では、ムナールのイブだけでなく、無名都市もムノムクァが地球に築かせた前哨基地で爬虫人類も配下だとされている。


ブライアン・ラムレイの設定

ブライアン・ラムレイの作品では『The Sorcerer's Book』(未翻訳)と『Mad Moon of Dreams』(未翻訳)に登場*3
ラムレイの作品では月の狂気を司る神としての側面が強調されており、ボクラグとの関連は一切触れられない。


『The Sorcerer's Book』は覚醒の世界の地球の始原に存在した大陸ティームドラが舞台で、ティームドラの神話に伝わる月神レースの別名がムノムクァだとされている。


『Mad Moon of Dreams』では、旧神によってドリームランドの月に封じられた超巨大怪獣な旧支配者。膜に覆われた眼窩の中には眼球はなく、名状しがたい器官が蠢いている。全身がエネルギーの膜に護られており、ありとあらゆる物理的な攻撃を防ぐ*4
月光に人間の狂気性を高める力を与える他、月の軌道を操作してゆっくりとだが思うがままに移動させる力を持つ。
口からは浴びせた獲物を吸引する強力な磁気光線を発射する。この光線は月光と同じ作用があり、魔術などで防壁を貼っても月光が透過するならば無効化してしまう。

オーンを伴侶とし、ムーンビーストとレンの角の生えた男達が配下。タラリオンの幻妖ラティ、ズラのゾンビ姫ズラ、イシャラの双子公爵と同盟を結んでいる。

月神レースは古代人が想像した架空の神でムノムクァとは別の存在。あるいはムノムクァの盲目の眼窩を見た古代人に想像された存在だと推測されている。


作中ではムーンビーストの司祭によって旧神の封印が緩んだことで、月をドリームランドに衝突させて合流した伴侶のオーンと共に荒廃した跡地を支配しようと行動を起こした。


■余談

前述の通りリン・カーターに創作された神なのだが『Something in the Moonlight』の知名度が低いのか何なのか、本国でも長らくブライアン・ラムレイが産みの親だと誤認されていた。

日本語訳されている書籍でもクトゥルフ神話用語辞典『エンサイクロペディア・クトゥルフ』、クトゥルフ神話TRPGクリーチャーデータ集『マレウス・モンストロルム』のムノムクァの解説ではラムレイが出典に記載されている*5

現在でも認知の修正は進んでいないようで、海外のファンコミュニティやファンwikiなどでもラムレイ初出の神として扱われていることがよくある。



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最終更新:2025年08月10日 03:11

*1 転写版ネクロノミコン提供者のミスカトニック大学職員が肝心のゾアンの呪文部分を複雑過ぎて写すのは無理と削ったため、患者は抵抗できずに窓から侵入した両生類人間に殺害された

*2 ヘンリー・カットナーの『魂を喰らうもの』に登場するベル=ヤルナクのヴォルヴァドスと思われる

*3 後者に関連してタイタス・クロウ・サーガの『旧神郷エリシア』内でも名が挙がる

*4 作中では都市を容易く消し飛ばす威力の最新式光線兵器の集中砲火を浴びても無傷だった

*5 原語版『エンサイクロペディア』では3版以降は修正されている