フェアリー ガネット

登録日:2014/10/10 Fri 13:59:00
更新日:2021/09/20 Mon 16:25:08
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ガネットとは、英国海軍に配備された対潜哨戒/攻撃機である。ガレットは「カツオドリ」の意。
世界で最も醜い航空機」のタイトルホルダーとしても知られる、英国面率直に言ってアクの強い機体。


性能諸元(AS.Mk1)

機体重量(自重/全備):6,840kg/9,800kg
飛行速度(最大/巡航):499km/h/481km/h
実用上昇限度:7,620m
航続距離:1,520km
エンジン:アームストロング・シドレー社製 ダブルマンバMk100ターボプロップ1基 2,950hp
武装:胴体爆弾倉内に907kgまでの通常爆弾または航空魚雷×1、ソノブイ、機雷など搭載可能。翼下に無誘導ロケット弾
乗員数:3名 


開発経緯

1945年に英海軍が発行した要求仕様書GR.17/45を軽くまとめると、「空母に積める攻撃機兼用の対潜哨戒機が欲しいんだよ、おうあくしろよ」というもので、
ブラックバーンとフェアリーがこれに名乗りをあげた。
ブラックバーンといえば、デファイアントの艦上機バージョン、ロック艦上戦闘機を設計したことでネタ的に知られるメーカーである。
そしてフェアリーはというと、航空機マニアからはカーチャンの買い物カゴ(ストリングバッグ)ことソードフィッシュ雷撃機の開発元として知られるメーカーだ。
まあどっちも英国面だと思っとけばよろしい。
そんでもって、ブラックバーンは試作名称B-54を、フェアリーは試作コードタイプQをそれぞれ提出する。

比較試験の結果、「タイプQを採用するんだよ、おうあくしろよ」ということになり、49年9月中旬の初飛行、翌50年6月中旬の空母着艦試験を経て、
一定の改良が加えられた後に53年に生産が開始された。
なお、生産までにやたらとかかったのは複座機だったのを三座機に設計変更したかららしい。


特徴

外観、推進系

何と言っても逆ガル翼を生やしたズングリ縦長のボディに二重反転プロペラという、凝ってるのか何なのかイマイチわかりづらいフォルムをしている。
これには訳があって、ツインタイプのターボプロップエンジンと爆弾倉、あと3人分のコクピットを仕込むためにこんなデザインになった。
ターボプロップエンジンが何かってことについてはググるなりウィキるなり各自でやっていただきたい、説明が面倒なので。
マンバというエンジンを2つ合体させ、そこからの出力を二重反転ペラで双発動力として取り出すわけだ。

単発機っぽい見た目の双発機というと他にはプファイルなんかも有名だが、単発2基を機体前後にブチ込んだ奴とは違い、
こいつの場合……説明が面倒なので、とにかく機首にエンジン2基ブチ込んだと思えばよろしい。
ともかく一見ではわかりづらいが双発機だってことだ。
双発機で、しかも推進器が同一軸線上を通ってるので片肺飛行もできる。これもプファイルに似てる。
また、片方のエンジンだけを切って意図的に片肺状態を起こし、航続距離を伸ばすこともできた。
ついでに言うと、ターボプロップというとケロシン、つまり灯油を使うわけだが、こいつの場合はディーゼル燃料、つまり軽油でも飛べた。

主翼はランディング・ギアの長さを抑えるために逆ガル翼を採用しており、さらにイラストリアス級後期型特有の天井の低い格納庫に詰め込めるように右翼側から見てZ字になるよう三つ折にできた。
爆弾倉を避けるために中翼になっているので、逆ガル翼の採用があまり報われてない気がするが多分気のせいである。
つまり、アレだ。エレベータから上がってくるときのこいつは、でぶちんボディに三つ折になった翼が貼り付いてるという奇妙奇天烈摩訶不思議な形状なんである。
そら「世界で最も醜い航空機」扱いもされるわ。一応、個人的には「カワハギみたいでかわいくないか?」と思ってたりする。
いや、確かに初見では「何でパーツごとでは一々理に適ってるはずなのにまとめるとこんなんなるねん?」とは思ったが。

コクピット

哨戒機などでは多い3座。

武装

胴体下部に爆弾倉が設けられており、ここに爆弾なり航空魚雷なりといった攻撃機用の爆装、あるいはソノブイや対潜爆雷などの対潜兵装を搭載できた。
あとは翼下にロケット弾を懸架したりとか。
機種によっては機体下部にレーダーを組み込んで、早期警戒機として運用されたものもあった。
主任務が対潜哨戒、攻撃任務にしたって制空権下でやるのがデフォなので、自衛火器は皆無。


戦歴……はないので配備状況など

主にファイアフライやアヴェンジャーなど、第二次大戦時に海軍が運用していた艦上攻撃機の後継機として配備された。
これは、当時は対潜哨戒任務に偵察仕様の艦攻を充てていたということが理由としてあった。
つまり、艦攻をちょいと兵装いじるだけで簡易対潜哨戒機にできたのであるから、対潜機に艦攻としての機能を付加するのも必然だった。

後にはスカイレイダーの代替機として、レーダーを抱えた複座の早期警戒機に改修されたものも運用された。
ちなみに、このタイプこそが英海軍に就役した最後の固定翼機(シーハリアー除く)であり、同時に海軍に就役した最後のフェアリー製機体でもあった。
早期警戒型は他のタイプよりも11年遅く78年にアーク・ロイヤル退役と同時に退役したが、これのせいで早期警戒能力が英海軍から失われ、
フォークランド紛争での損害につながったという意見まであるのだから、世の中何が災いするかわからんものである。


バリエーション

○タイプQ
フェアリー内部での原型機呼称コード。

○AS.Mk1
三座の初期生産タイプ。総生産機数は180機。

○T.Mk2
AS.Mk1を元にした複操縦装置付きの練習機。生産機数35機。

○AEW.Mk3
胴体下にレドームを設置し、後方警戒手席を撤去。空いたスペースで並列複座コクピットに再設計、電子機器とパイロットを詰め込んだ早期警戒型。
エンジンが換装されているほか、安定性向上のために尾翼などが再設計されている。生産機数は44機。
正直な話、「世界でry」扱いされてるのはだいたいこの型のせいな気がしなくもない。

○AS.Mk4
エンジンをより強力な改良型に換装し、爆装能力を高めた改良型三座対潜機。82機が生産された。

○T.Mk5
AS.Mk4をベースにした複操縦装置付き練習機。生産機数はわずか8機。

○COD.Mk4
AS.Mk4の余計な機内装備を撤去した輸送タイプ。CODはCarrier Onboard Deliveryの略で、空母用輸送機のこと。
洋上の空母に細々とした物資や人員を輸送するための機種である。

○ECM.Mk6
機種交替で余剰になったAS.Mk4を改修し、ECM機として陸上運用しようとした機種。

○AS.Mk6
AS.Mk4の電子装備を改良した性能向上改修型。改修されたのは少数のみ。





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最終更新:2021年09月20日 16:25