足跡の怪(ゲゲゲの鬼太郎)

登録日:2015/03/14 Sat 01:27:34
更新日:2019/10/01 Tue 09:32:30
所要時間:約 6 分で読めます




『足跡の怪』とは、水木しげるによって描かれた短編漫画。
アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第2期43話目の作品として知られており、鬼太郎史上最恐のトラウマ回として有名。
本項ではアニメ版のエピソードについて記載する。


以下、ネタバレ及びトラウマの再発にご注意ください……








【あらすじ】

とある農村で突如嵐が巻き起こり、地震で大地がひび割れる惨事が発生。
村人たちは近くの竹やぶへ避難したが、その中の三郎という少年の両親が見つからない。
村長は山の神である「タイタンボウ」が怒り、二人を神隠しに遭わせたのではと考え、鬼太郎に調査を依頼する。

とにかく「タイタンボウ」の怒りの原因を調べるため、「いらずの山」にやってきた鬼太郎たち。
そこには「タイタンボウ」を祀った巨大な石が置かれており、よく見ると一部が削り取られており、傍らにはハンマーが転がっていた。
削り取られた部分を元に戻せば怒りが収まり、三郎の両親も帰ってくると考えた鬼太郎たちは、早速その石を削り取った犯人捜しを行う。
石の付近をうろついていたのを見たという丸毛の証言からわかった犯人らしき人物はねずみ男だった。

早速その辺のガラクタを掻き集めて商売していたねずみ男を捕まえて事情を聴く鬼太郎だったが、石を削ったのはどうもねずみ男ではないという。
彼曰く、いらずの山に美味い茸があると聞き、たらふく食べた帰り道に偶然中村山田という2人の男が「タイタンボウ」の石を隕石か何かかと思い、研究のために削り取っていたのを見たらしい。
その最中に山田は突如落とし穴に落ちてしまうが、そこで見たものはどこまで続いているかわからない奈落の穴だった。
「もしや埋蔵金でも埋まっているのでは」と考える山田だったが、早く帰りたがった中村に急かされ、穴の中に小石を蹴落とし、2人で小便をして帰っていった。
ねずみ男はその一部始終を見聞きしていたのである。

事情を話し終えたねずみ男は、「自分は関係ない」とそそくさと先程の商売を続ける為その場を立ち去る。
しかし鬼太郎親子にはわかっていた。「埋蔵金」という言葉を聞いて、ねずみ男が黙っているわけはない。
後をつけると案の定、ねずみ男は山田の住んでいるアパートへ入っていった。
彼らの話では、あの大石があった場所の付近に大昔の大名が隠した今の金額にして100億円の埋蔵金が埋まっているという。
どうにかして石の破片を取り返そうと様子をうかがう鬼太郎たちだったが、ねずみ男と共に出かけようとした山田の身に異変が……。


こっ、小指がないッ!!


ドアに鍵をかけようと手を出した山田の右手の小指が、溶けたように消えてしまっていたのだ。
「小指の一本や二本くらい……」ととぼけかけたねずみ男もこれにはびっくり仰天。
2人は医者でもあった中村の下へ助けを求めに行くが、彼にも指が消えた原因はわからない。
そこに鬼太郎が現れ、指がなくなったのは「タイタンボウ」の祟りだと訴えるが、中村は祟りをバカにして取り合わない。
追い返そうと問答になる鬼太郎と中村の横で、帰ったはずの山田が真っ青な顔で飛び込んできた。


お、俺のがなくなった……
何が……?
耳が、耳がなくなったんだよ……!!


右手の小指に続き、今度は右の耳までが同じようになくなっていた。
さらに鬼太郎たちの目の前で、右目、そしてが次々と腐り潰れる様に溶けてなくなってゆく。
これが祟りだと改めて認識した山田は中村に石を返すよう懇願するが、迷信を信じない中村は「この石に潜む宇宙ウイルスのせいだ」とやはり取り合わない。
挙句、ねずみ男の「埋蔵金で整形手術すればいい」というわけのわからない理屈で説得されてしまった。

しかし、ねずみ男と共に部屋へ戻ろうとする山田は突如立ち止まり、背を向けてしまう。
彼が落ち込んでいると思ったねずみ男が、励ましの言葉をかけて前を向かせると……。



くっ、首がないッ!!!




そう、彼は顔の部分部分が溶けていった挙句、最終的に首から上がすべて溶けてなくなってしまったのである
あまりにショッキングな姿にその場に卒倒するねずみ男。
その横を、首のない山田の身体がいずこかへと走って行った。血の滴ったような赤い足跡を残して……

鬼太郎の指示を受けた猫娘がその足跡を追う。
その途中には、山田が着ていた服だけが人の形をして落ちていた。
彼は全身が完全に溶けてなくなってしまっていたのだ。
しかし足跡だけはなおもどこかへ続いていく……。


一方、気絶したねずみ男を起こし一部始終を聞いた後、祟られて同じ様に溶けたくなければ協力しろ、と彼を説得した鬼太郎は、再び中村の下へ石を取り返しに行く。
しかし彼は、「石の中の宇宙ウイルスを発見すれば、初めて宇宙生命を見つけた俺の名は世界中に知れ渡る」と聞く耳を持たない。
山田に対する友情よりも己の功名を優先させる中村の本性を知った目玉おやじは、「タブーを侵した報いで人間の心をなくした」と痛烈に批判。
ねずみ男も「目や鼻がなくなる代わりにハートがなくなったってわけだ」とうまいこと言っている。

最終的にねずみ男の口臭に怯んだ隙に中村から強引に石を奪い、「タイタンボウ」の聖地へ戻ってきた鬼太郎一行。
しかし石を元の場所に戻しても三郎の両親は帰って来ず、山田「だった」足跡が途切れている大穴に潜ってタイタンボウを説得、もしくは両親の奪還に向かう鬼太郎だったが、突き破れない霊力の壁にぶち当たり、流石の鬼太郎の力でもどうしようもない状況となってしまった。
「鬼太郎さんの嘘つき」と泣き崩れる三郎。
そこへ、石を取り返そうと狂気に取りつかれた中村が追ってくる。
ニトログリセリンを手に、鬼太郎たちを殺そうとする中村。しかし……


突然彼の付けていた眼鏡が、支えを失った様にポロリと落ちた。
それもそのはず、中村の鼻と耳があの時の山田の様に溶けてなくなっていたのだ。
自身に祟りが降りかかったことに怯えている隙にちゃんちゃんこでニトログリセリンを奪い取る鬼太郎。
しかしそれだけでは終わらず、中村の両目が、顔の上半分が、彼もまた「タイタンボウ」の祟りに遭い、山田と同じように溶けてしまった。
目がなくなった彼は、まるでゾンビの様にフラフラとよろめいた末、山田「だった」足跡が続く穴へと真っ逆さまに落ちていった。
そして山田と中村が消えた穴からは、三郎の両親がひょっこりと顔を出した。
事件は一件落着、帰路につく途中、自分のやろうとした事も忘れたかのようにしたり顔で猫娘にタブーについて説教するねずみ男に「それは自分に言い聞かせる事ね」とごもっともな反応を返す猫娘。
嘘つきと言ってしまった事を悪く思った三郎も鬼太郎たちにお礼を言い、その声は風に乗って鬼太郎にも届いていた。
そして、罰当たりな若者の最後を鬼太郎達と見届けた村長は、「若者は本当におっかないものを分かっておらん」と石を眺めて呟くのであった……。


【解説】

迷信や祟りを恐れない人間たちへの警鐘を意味する、寓話性の強いストーリー。
「タイタンボウ」に対して散々バカにした態度をとった結果、その報いを受けて無惨な最期を迎えた2人の男。
しかし、顔が、首が、全身が段々と溶けてなくなっていくという様は非常にグロテスクであり、当時の子供たちに強いトラウマを与えることとなった。
現在であれば間違いなく規制が入る描写である。
さらに「石を戻せば助かる」という可能性を潰し、何をしても助からないという結末も、この話の恐ろしさを際立たせるのに一役買っている。

「ゲゲゲの鬼太郎」において、軽い気持ちで取った人間の行動が妖怪の怒りを買って被害に遭うという話は、「見上げ入道」の回などいくつも存在する。
しかし、そのような話のほとんどは、鬼太郎が妖怪を退治したり、人間側が反省・謝罪して妖怪と和解したりといった形で被害者が救われる結末となっている。
この学者たちも「タイタンボウ」を怒らせようなどという気は全くなく、単に学者としての純粋な好奇心と、ちょっとした悪ふざけからタブーを犯してしまったわけだが、その結果、2人は死を持って償わなければならなくなった。
「どうせいつものように助かるだろう」と高をくくって観ていた視聴者には、余計に衝撃的であったことだろう。

我々自身も、この2人のようにはならないといえるだろうか。常日頃、神様の怒りを買わないよう、罰当たりなことをしないよう努めているだろうか。
自分では気づかない些細なことでも、神様を怒らせるきっかけになってしまうかもしれない。
「ゲゲゲの鬼太郎」で描かれるユーモラスで親しみやすい妖怪を見ると忘れがちだが、本来の妖怪や神様とは、決して優しく温かいだけの存在ではない。人智を超えた恐怖の存在であることを、忘れてはならないのである。


【余談】

冒頭にも書かれた通り、元々の原作は「鬼太郎シリーズ」ではない、わずか8ページの短編漫画。
こちらは初めに祟りに遭うのは中村の方になっており、ストーリーの設定もかなり異なっている。

「タイタンボウ」の御神石のモチーフは、奈良県明日香村にある石舞台古墳であるという説は通の間では有名。

本来、この話は5期でもアニメ化される予定だったが、放送予定だった3年目が丸々打ち切られた為、残念ながらお蔵入りとなってしまった。
しかし、6期70話にてついに「霊障 足跡の怪」として本話がリメイクされる事となった。
こちらではタイタンボウを祀る村の村長の一族が主役。それにあたって、タイタンボウについて少し掘り下げられた。
村の掟は主に「四日に一度、長がタイタンボウの石を参拝する」「村の者以外を石に近づけない」の2つ。
掟を破ると関係者は祟りによって破滅するが、それがなされると元に戻る。また、破ろうと考えると軽度の祟りが降りかかる。
また、上記の2人もエピソードが若干異なるながらも「タイタンボウの石を持ち帰って祟られた人間」として登場する。どうやら、20年くらい経っても魂を縛られたままの様子。
罰が苛烈であるものの、村民には特に何も求めていられないようで、生贄などハードな要求もないため祟り神という訳でもない様子。問題があるとすれば精々参拝の期間が短くなっている可能性がある程度。
その村の土地が元々タイタンボウが管轄する土地であると考えれば、後から勝手に住み着いて開拓している人間に対して礼儀を要求しているレベルと言える。


追記・修正は石を元の位置に戻してから、もしくは初めから石を砕かずにお願いします。

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