登録日:2015/04/19 Sun 13:03:00
更新日:2025/02/10 Mon 15:50:40
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四月十九日午後一時三分ごろ、稲穂県南部で、地震が発生しました。
震源はミドリ市の南方十キロにある黒瀬島付近の海底で、
震源の深さは二十キロ、地震の大きさはマグニチュード7.3。
地震のもっとも激しかったミドリ市で、震度7の激震が観測されました。
『
ズッコケ脅威の大震災』は、1998年7月に発表された『
ズッコケ三人組』シリーズの第37作目。作・那須正幹、作画・高橋信也(原画・前川かずお)。
シリーズの舞台であったミドリ市が大災害によって崩壊し、三人組が被災者となるという衝撃的な展開を迎える異色作である。
このため
サザエさん時空となっているズッコケ三人組シリーズでは唯一、
どの時系列にも属さない完全に独立した作品となっている。
こうなったのは阪神・淡路大震災の被災地である、神戸市の子供たちと作者との文通で「いずれ三人組に大地震を体験させます」と約束したため。
なお、シリーズ内に『驚異のズッコケ大時震』(1988年)という紛らわしいタイトルの作品があるが、タイムスリップものでこちらと無関係。
【あらすじ】
3月に入ってから、瀬戸内海のミドリ湾からは魚が消え、山では井戸が枯れるなど稲穂県のあちこちで異常現象が起きていた。
当事者達が不思議に思うなか、4月になって小さな揺れが続けて起こるようになるが、それを不安に思う人はごく僅かだった。
そして四月十九日の日曜日、ハチベエ、ハカセ、モーちゃんが思い思いの休日を過ごすなか、遂にその時がやってくる…
【登場人物】
◆ハチベエ(八谷良平)
見るからに勉強が嫌いそうな人相の色黒のチビで、運動神経は抜群。趣味は釣り。主人公その1。
震災前日に花山町の東にある大川で大物と遭遇。翌日リベンジを果たすために待ち構えていた所を被災。
実家の八百屋が倒壊し、生き埋めになった父親を救出するも、火災で商店街ごと焼失してしまう。
それでも負けず嫌いな性格なためか、被害の甚大さを伝える避難所のテレビの前で、家業の再開を決意する。
◆ハカセ(山中正太郎)
ラッキョウに眼鏡をかけさせたような顔の少年。集中したい時はトイレに籠るという妙な癖がある。主人公その2。
市営アパートの三号館に住んでおり、図書館へ出掛けようと玄関に居た所を被災する。
地震の衝撃で部屋が滅茶苦茶になるも、幸い家族共に目立った怪我を受けずに済み、倒壊寸前のアパートから避難した。
避難生活の最中、父親から祖父母の家に疎開することを提案されるも、花山町に留まることを選ぶ。
◆モーちゃん(奥田三吉)
お月さまのような顔をした、まるまるふとった少年。とにかく温厚で、クラスで最もモテる男子らしい。主人公その3。
家族で隣街のミドリデパートに出掛け、最上階のファミレスでチャーハンを食べようとしていた所を被災する。
三人組の中で最も優しい性格なため、人々が我先にとパニックになる中で、自ら見ず知らずの老人を背負って脱出した。
食いしん坊故に空腹の辛さが分かるのか、ハカセがお菓子を分けてあげると持ち掛けた時は珍しく断っている。
◆八谷勝平/八谷よね
ハチベエの両親で、花山商店街で八百屋である「八谷商店」を経営していた。
震災によって店舗と家財を失うも、辛うじて金庫は無事だったため、数日後には仮設店舗とトラックで営業を再開する。
信用第一がモットーの商売人であるため、高値で売れる状況でも「いつもどおり」の値段で野菜を売り続けた。
その後は商店街をどう再建させるかで組合が揉めるなか、おそらく勝手に元の位置にプレハブの店舗を建てて営業している。
◆荒井陽子/安藤圭子/榎本由美子
シリーズ準レギュラーの美少女トリオ。三人で人気歌手のコンサート会場に居た所を被災する。(他2人は無傷だが由美子はガラス片で右手をケガした)
三人とも新興住宅地である花山上町に住んで居たため、自宅は被害をあまり受けずに済んだらしい。
◆その他、花山第二小学校六年一組被災者生徒。
本人が登場したのは井上隆二と中森晋助(どちらも避難所で遭遇)。
井上は「自宅が全壊」、中森は「自宅が火事になり、両親と自分が火傷(両親は入院)」という状況だとそれぞれ本人が説明。
また、中森の話から他に伊藤恵が避難所にいたらしいが未登場。
他に宅和先生が被災直後に鈴木和代と代々木真悟の家がそれぞれ全焼を確認し、安否を気遣ってたが後に双方とも生存を確認し、六年一組生徒は全員生存と判明。
その後、自宅被災や親の入院などで秋山幸子・市原弘子・鈴木和代・徳大寺邦光・中森晋助・代々木真吾の6名は親戚宅に疎開し、3人組としばしの別れをすることになった。
◆宅和源太郎
三人組のクラスの担任で、かなりのベテラン教師。通称タクワン。
自宅が全壊するなか、教え子達の安否を確認するために、それぞれの家を歩き回っていた。
裏表紙のイラストは彼のその様子を描いたものになっている。
【用語】
◆稲穂県
三人組の住むミドリ市花山町がある県。火山は無く、過去数百年もの間大地震は発生していなかった。
震度2の揺れが頻発したことからミドリ大学が調査を初めることにしたが、皮肉にも調査開始日は四月二十日だった。
モデルは作者の出身地である広島県。
◆花山町
稲穂県ミドリ市内にある街。正確には花山駅周辺のみの地名だが、住人はその更に周りをひっくるめて花山町と呼んでいる。
震災によってハチベエの住む花山商店街は焼失、ハカセとモーちゃんの住む花山団地は六棟のうち二棟が倒壊、一棟が"く"の字に曲がる被害を受ける。
ハカセの推測では、川を埋め立てて作った南側の土地は被害が大きく、花山団地も山を切り崩して作ったからではないかとのこと。
駅前にあったコンクリート5階建て(初出の『ぼくらはズッコケ探偵団』より)の土屋外科病院さえも火災で焼けてしまった記述や、
旭橋(花山町の東の境界線付近になる大川を渡る道路橋)にまで戻ってきたメンツが左手側の火災がひどいのを見ているので、
明記されてはいないが、『それいけズッコケ三人組』から出ている本屋「アカツキ書店」、『とびだせズッコケ事件記者』に出てきた菓子店の「メルシー」と「風月堂」、喫茶店の「田園」など、
シリーズにこれまで出てきた駅前の店舗も犠牲になった可能性が大きい。
◆花山第二小学校
三人組の通う小学校。本作では避難所として使われおり、震災三日目辺りからは被災者同士のトラブルが続出している。
全校児童700人のうち、六年生、二年生、一年生の三名が犠牲となり、家族を失った者も少なくない模様。
◆平成○年稲穂県南部地震
作中で起こった大地震の正式名称。
地震の被害は、
震度7:ミドリ市 坂城郡
震度4:岡島県岡島市 倉橋市 八雲県八雲市
震度3:岡島県倉橋市
死者:1532以上
負傷者:22324以上
行方不明:521以上
ライフラインは全て遮断
大地震の前兆と思われる現象も多く起こっており、前述した現象の他に、地震雲や鳥の大移動、川での魚の大群などが目撃されている。
正確な年は伏せ字になっているが、「小学三年生の頃に阪神・淡路大震災があった」という台詞から発表年と同じ1998年(平成十年)に発生したと思われる。
あとがきでは、近い将来、日本のどこかで阪神・淡路大震災と同じクラスの大地震が起こる可能性は十分にあるとしており、
これから起こるであろう大地震で、そのときどんなことがおこるか、どうすればいいかを三人組に体験してもらったと締め括られている。
このページを追記・修正中に、荒らしが起こったらどうするか。
まず、PCを頭にのせて、荒らしから項目を守ろう。
荒らしがおさまったら、くつをはいておもてに出る。
もちろんPCはそのまま頭にのせて追記・修正すること。
- ジョークに硬い事は言いたくないんだけど、シリアスな作品で、震災を茶化すような追記・編集ネタはどうかなと思う。不謹慎とかじゃなくて、シリアスな記事でそこだけギャグは単純に浮いてるなぁと。 -- 名無しさん (2015-04-19 14:14:15)
- ノートPC頭に乗せて落下物から本当に見を守れるんだろうか?と真面目に考えてしまったじゃあないか…。 -- 名無しさん (2015-04-19 14:21:47)
- >シリーズでは唯一、どの時系列にも属さない完全に独立した作品となっている。←いやぁ、中年シリーズを含めて、どの作品も繋がりが曖昧だぞ。中年シリーズ内でも矛盾しまくってるしな。他にもあるかもよ、独立したの。 -- 名無しさん (2015-04-19 14:34:04)
- 某地震のときこの内容思い出したな...自分は被害をほぼ受けなかったがハチベエ父が怪我したシーン思い出して不安になった。あと記事最後のギャグは変えた方がいいと思う -- 名無しさん (2015-04-19 16:13:58)
- 一応補足すると、最後の追記修正の分だが、カバーの作者コメントが元ネタ。 -- 名無しさん (2015-04-19 23:48:46)
- ↑3そう言い切れるのがこれだけってことじゃないの。ラストでの状況で、あのあと他のエピソードがあったとは考えにくいし -- 名無しさん (2015-04-20 01:14:56)
- これ読んだなー -- 名無しさん (2015-04-20 11:37:15)
- 今、世界一受けたい授業でやってるなw -- 名無しさん (2018-10-27 20:50:57)
- 時系列の件だけど、真面目に考察すると無人島遭難中に夏休み生活エンジョイしてたりするよ。時系列まとめたサイトがあるので、一度見てみるのおすすめ -- 名無しさん (2018-10-27 22:28:38)
- この時系列で成長した三人組も見たかったなぁ。 -- 名無しさん (2021-09-22 12:38:12)
- この話で最も注目するべき点はマスコミが被災者を食い物にしてる報道を描写してる事だと思う。ハチベエがハカセかモーちゃんだったかの両親が被災して死んだって嘘を嬉々として取材しようとしてそれが嘘だと知ったらガッカリするシーンが印象的だった。 -- 名無しさん (2023-01-29 15:14:09)
- 内容はシリアスそのものなんだけど、追記・修正の文の様子を想像したら思わず吹き出してしまった -- 名無しさん (2023-01-31 20:59:33)
- この話を知って一番驚いたのはあの地震が起こる前に書かれたってことだな -- 名無しさん (2023-01-31 21:36:58)
- ハチベエがモーちゃんが親亡くなったって嘘ついて炊き出しを多くもらったり被災者たちが使ったトイレの掃除を生徒たちが嫌がって愚痴言ってたりとか地震起こったら絶対こういうのあるなってリアルが多かったな -- 名無しさん (2023-09-26 20:47:16)
- ↑2 とはいえ時期的にはまだ阪神・淡路大震災の記憶がまだ強かったからね -- 名無しさん (2024-05-14 13:40:40)
- ↑×3:東日本大震災以前だとよく分かるのがハチベエの「川で釣り→地震だ!→慌てて家に戻る」で、あくまで「家が心配」で戻る場面かな? 東日本以後だったらハチベエが津波を知らなくても、後日「あの時ぐずぐずしてたら津波に飲まれてた」と恐怖する場面を入れるはず。 -- 名無しさん (2024-08-08 23:38:43)
- ↑×3 あるなというか実際あったことだよ -- 名無しさん (2024-08-10 11:37:00)
- 大人になった今改めて見るべき作品かもしれんなあ…子供心に震災に対するリアリティを感じて作者は誠実に取材したんだろうな -- 名無しさん (2025-02-10 15:50:40)
最終更新:2025年02月10日 15:50