レイテ島からのハガキ(探偵ナイトスクープ)

登録日:2016/06/08 (水) 23:55:05
更新日:2020/08/29 Sat 18:45:54
所要時間:約 3 分で読めます





父は、母が私を身ごもっていたことを知っていたのでしょうか。
それとも、知らずに逝ってしまったのでしょうか。





「レイテ島からのハガキ」とは、テレビ朝日系のバラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」にて2011年1月7日放送された依頼である。

担当した探偵は田村裕。


【依頼内容】
依頼主は大阪府にお住まいの阪本征夫さん65歳(当時)。
依頼内容は「出征した父親が母親に送った古いハガキを解読して欲しい」というものだった。

「最近、私の心に引っ掛かっていることがあります。それは、新婚5ヶ月で出征した父は、
 私が母のおなかの中に息づいていたことを知ってくれていたのか、ということです」

阪本さんの父親は昭和19年8月に召集され、フィリピンのレイテ島に出征することとなった。
そして詳しい経緯は分からないが、依頼主が誕生した昭和20年1月には既に戦死していたという。

母親は女手一つで大変な苦労をしながらも依頼主を育て、そして5年前に他界したという。

そんな母親の遺品を整理していると、戦地の父親が母親に送った2枚のハガキを発見することになった。
母親はこのハガキを何度も何度も読み返し、更に鉛筆書きだったということもあり、1枚は何とか読めたが、もう一枚は殆ど読むことが出来なかった。

その2枚目の手紙の中で、「身重であるお前」と読める箇所を見つけるが、それが本当に身重なのか判断がつかない。
このほとんど読めない父親のハガキを、何とか判読して下さい、という依頼である。


【調査内容・結果】
まず探偵の田村が依頼主の阪本さんと直接出会い、件のハガキを拝見させてもらう。
確かに母親が何度も読み返したためか文字がすり減ってしまい、特に最後の4行は全く読めない状態であった。

そんなハガキの4行目に「身重」と読める箇所を依頼者は見つけるのだがが、自分の希望的観測であるということで確証は持てない。

そこでまず文字を大きくすれば読めるかもしれないと考え、ハガキを拡大コピーしてみて読むことが出来る箇所をなぞっていく。
しかし件の箇所はやはり解読できず、むしろ「重」ではなく「実」に見えると田村探偵は言う。



素人だけでは解決するのが難しいということで、今度は最先端コンピュータ技術の力を借りるべく、ビジュアルアーツ専門学校へ。

福田学科長の力を借りデジタルの力でハガキの濃淡をはっきりとさせるが、一番大事な箇所にシワが出来ていた。
シワができているとその部分が強調されてしまい、更にペン書きならまだしも鉛筆書きなのでシワの部分で光が分散してしまい、
やはり解読は出来なかった。



最後にやって来たのは奈良文化財研究所。主任研究員の馬場さんに件のハガキを見せると、
最初はかなり古く傷んでいるハガキに顔を曇らせるが、文字が鉛筆で書かれていることが分かると事態は一転する。

赤外線を当てることで鉛筆の成分である炭素のみを浮き上がらせる方法が存在しており、
それならば何とかすることが出来るという。

出来る限りシワを伸ばすようにガラスの板で挟み、分析のために光の角度や色を変えて複数の写真を撮影し、
更に数種類の写真を合成や画像処理を施すことでハガキの文字を浮き上がらせることに成功する。

ただこれでもすぐに解読することは難しく、
古文書解読の専門家達を援軍として召集し、解読のため少し時間を置くことになった。



そしてしばし時間が経ち、田村探偵と阪本さんの元に解読を終えた馬場さん達が訪れる。
そして解読の結果、読めない所が少しあったが件の箇所は「身重」で間違いないと断定する。

その理由は、かすれていたために読めなかった最後の4行に書かれていた、
父親が死を覚悟した辞世の句ともとれる3首の和歌から判明したのであった。

以下解読されたハガキの内容である。


『インキと煙草を持つてこなかつた故不自由してゐるよ。やはり持つ物は持つべきだね。


お前は大阪にゐる時から出征したらどこかに働きに行くと言つてゐたが、それは許さんぞ。
どんな事があつても身重であるお前が働きに行く事は許可せん。


兎角お互いが元気で会う日迄元気よく日々をすごそうではないか。亦帰れば新婚の様な気持ちで日を送ろう。


大三輪神社 思ひ出すよ。八日の晩の映画思ひ出して仕方ない。
でもお互いが別れた今は帰る迄仕方ないやないか。何回もいふ事であるが、勝手な行動丈は厳禁するよ。


最後に、


酔ふ心 君に訴ふ事ばかり ただに言へない 吾が胸の内

頼むぞと 親兄姉に求めしが 心引かるゝ 妊娠の妻

駅頭で 万歳叫ぶ 君の声 胸に残らむ 昨夜も今朝も


元気で。(返信不要)』


依頼者の阪本さんは涙ながらに、
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。何かスッキリしたような気持ちで本当に…、ありがたいです」と静かにお礼を言った。


【余談】
◯所長の西田敏行は涙脆いことに定評があるが、今回も冒頭の依頼を読んでいる段階で涙を流していた。
勿論依頼を終えた後も、号泣している。

◯今回のハガキはレイテ島からではなく、レイテ島に向かう前に寄った台湾から個人的に送られたハガキであるらしい。
当時は軍の検閲により、戦地からの手紙が家族にそのまま届かない可能性があった。
その為自分の最後の思いを妻と、生まれてくる子に送るためにこのような方法を取ったのではないか、とのことである。

◯田村探偵も依頼者の阪本さんの涙にもらい泣きしそうになったらしいが、
先に主任研究員の馬場さんがボロボロ泣き出してしまったので機を逃したという。

◯この回は極めて評価が高く、第四十八回ギャラクシー賞を受賞している。



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最終更新:2020年08月29日 18:45