学校の裏山(ドラえもん)

登録日:2025/08/11 Mon 09:48:00
更新日:2025/08/11 Mon 12:06:43NEW!
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いやなことがあったとき、一人になりたいとき、
ぼくはきまって学校の裏山にのぼるんだ。


学校の裏山(単行本・アニメなど一部媒体では『うら山』表記)とは、漫画ドラえもん』に登場する舞台の一つである。




【概要】

のび太たちが通う小学校のすぐ近く、真裏に位置する野山。通称「裏山」。正式名称は不明。

森林に恵まれ、野生動物も多く生息する自然豊かな緑の山で、山頂からはのび太の住む住宅街を一望できる。広大な敷地を有し、遊び場やレジャースポットとして子供たちを中心に住民に親しまれている。

登場頻度は「いつもの空き地」にやや劣るが、さまざまな事件や騒動の舞台になることが多く、山自体が物語のカギを握るケースも少なくない。

【特徴】

原作では標高や面積、詳細な地形などの明確な設定はなく、アニメや映画など媒体や制作時期によって描かれ方に差があるものの、「のび太の学校付近にある、木々に覆われたドーム状の山」という基本的な位置づけは共通している。

周辺施設との位置関係については『町内突破大作戦』に登場する『コノ道トーリャンセチャート』の地図で判明しており、山沿いを流れる「さくら川」*1を挟んで、頂上から東北東の方向に学校がある。
裏山から空き地や野比家へは、橋を渡って南東へ進み、左手に見える道を通ることで到達可能。『のび太の宇宙小戦争』によれば、野比家から裏山までは約700mとされている。
※以上の方角は、チャート地図の示す北が上向きであることを前提とした場合である。

裏山からは校舎が間近に見えることから、学校との位置関係は非常に近いことが推測できる。

町中にある山としてはかなりの規模だが、非力なのび太でも道具を使わずに頂上まで登れることから、見た目ほどの険しさはないと考えられる。
無敵砲台』や『風雲ドラえもん城』など巨大なひみつ道具が設置されたこともあり、それらを置ける広い平地が存在することもわかる。
また、『のび太のアニマル惑星』では裏山の一部をゴルフ場に開発する計画があったことから、相当な平地面積があることが推察される。

緑の豊富さのみならず人通りが疎らなことから、のび太にとっては静かな癒しの場であり、いやな思いをした時や一人になりたい時、その他暇を持て余した時にもよく訪れている。絶好の昼寝スポットらしく、自宅に次いで寝転んでいる場面も多い。
のび太の日本誕生』では家出先にも選んでおり『キャンピングカプセル』で居を構えるが、既に宅地開発のための造成計画が先行していたため立ち退きを余儀なくされた。

空き缶・吸い殻・紙くずなどのゴミが散乱していることもあり、ポイ捨ての問題は後を絶たないが、普段の人けのなさとは裏腹に遊びや行楽の場としての需要の根強さを裏付けている。
また、先生が通勤ルートとして裏山を通っている描写もあり、放課後に裏山で遊ぶ子どもたちを叱る場面も見られる。

人目に付きにくい空間という性質上秘密の作戦や疚しい行為に使われることも多く、のび太やジャイアンが0点の答案を処分したことがある。

◆一本杉/千年杉

裏山の頂上にそびえる巨大な杉の木。遠方からもその姿が確認できるほど高く、『スリルブーメラン』ではジャイアンが自力で登頂してみせた(本人曰く『今まで誰も登ったことがない』)。
『ぼく、桃太郎のなんなのさ』では600年以上前から存在しており、その時点ですでに数十メートルの高さにまで達していたことが明らかに。千年杉の名は伊達ではない。

目印として分かりやすいため、のび太はここに『タイムカプセル』を、スネ夫は100点の答案を埋めたことがある。後者のエピソードではドラえもんが『秘密書類やきすて銃』で答案を焼却してしまったが、その(無駄に)高い火力にも耐えたとすれば千年杉は相当丈夫である。

◆動植物

ウサギをはじめとする多くの哺乳類・鳥類が生息。ドラえもんの天敵・ネズミやのび太の天敵・のらも頻出する。のび太の町に度々現れる野犬はこの山を棲家としているのだろう。
昆虫類も豊富で、カブトムシやセミ、チョウなどが採れる場所として子供たちに人気がある。

植生は広葉樹が主体だが、竹藪もあり*2、『大砲でないしょの話』では「よくうれてしるけたっぷりの木イチゴ」の木が数多く自生していることが語られている。他にはサクラの木も確認されている。

山中に流れる小川には魚が住んでおり、のび太たちが釣りに訪れる場面もある。昔はアユやホタルも多く見られたようだが、ゴミの投棄などによる水質汚染で年々数を減らしている。

◆発掘

これまでに三葉虫*3やティラノサウルスの歯*4、魚類・貝類などの化石が多数発掘されており、自然だけでなく太古のロマンにも触れられる場所である。
さらに『宝星』では、ゴミ捨て場と化していた裏山の一角から、80億円相当の埋蔵金が発見される。裏山に強い愛着を持つのび太もこれには「またチャンスを失った」と悔しがっていた。
それにしても地味ながら驚くべきポテンシャルを秘めた山である。

『異説クラブメンバーズバッジ』では古井戸と思しき深穴も発見されており、上記の埋蔵金と合わせて過去に人が暮らしていた可能性も示唆されている。

◆環境問題

このように魅力にあふれる裏山だが、近年では宅地開発や伐採による自然破壊が進んでいる。

『さらばキー坊』『のび太のアニマル惑星』では、裏山の一部を造成して住宅地やゴルフ場を建設する都市計画が登場。自然保護に燃える住民たちはこれに猛反対し「裏山の緑を守る運動」を展開。「アニマル惑星」ではのび太のママも自然環境について熱心に勉強を始め、環境保全運動にも積極的に参加している。

そしてノビスケが暮らす25年後のトーキョーでは、かつて裏山や千年杉があった場所に「ヒルトップマンション」という集合住宅が建っていることが判明。町の自然を愛した人々の願いもむなしく、豊かな自然の宝庫は失われてしまった。
もっとも、のび太たちの町は練馬区内に位置し、当時からベッドタウンとしての発展が求められていた背景を鑑みれば、再開発そのものを一概に否定することも少々横暴ではある。

せめて千年杉だけでも残せなかったのか…と言いたいところだが、裏山開発に際し千年杉を他の土地に移植した可能性も考えられるし、あの大きさの木を動かす技術は相応の力を持ったひみつ道具が存在しない限り難しいだろう*5

また、前述のように不法投棄も深刻で、『のび太と緑の巨人伝』では、家具・家電などの粗大ゴミが大量に捨てられていた。
のび太が『ハメルンチャルメラ』を使った際にも、町から出た大量の粗大ゴミが裏山に運び込まれていた場面がある。一時的とはいえ山を汚された元凶がのび太だと知ったら山の心(後述)はどう思うだろう…。

【主なエピソード】

裏山が主要な舞台として登場するエピソードについて記述する。

◆『のび太救出決死探検隊』

『スモールライト』でラジコン飛行機に乗り遊んでいたのび太は、エンジントラブルにつき裏山に不時着してしまう。
救出に向かうドラえもんから話を聞いたスネ夫とジャイアンは、冒険心くすぐるスリルに飢えるあまり「のび太救出決死隊」を結成。よせばいいのに『ガリバートンネル』で小さくなり、役立ちそうな道具を一式手放した上で「大魔境」と化した裏山の中を冒険することになった。
彼らは無事のび太の下へたどり着けるのか?

この回の裏山でもかなりのゴミが捨てられており、ジャイアンも「気分を壊す」と零していた。

◆『異説クラブメンバーズバッジ』

裏山で深い穴を見つけたのび太は地底国への入口説を唱えるが、スネ夫からバッサリ否定されてしまう。悔しがるのび太を見かねたドラえもんは『異説クラブメンバーズバッジとマイク』で地底国の伝説を具現化させる。『動物粘土』で生み出された地底人によって地底国の文明は目まぐるしく発展していく。
散々バカにしたスネ夫とジャイアンを見返すことができ大満足ののび太。しかし、高度に発達した王国が裏山にあるという情報を得たマスコミや地権者らが黙っているはずもなく…。

「発掘」節で述べたように、くだんの深穴はスネ夫曰く古井戸らしい。真偽は定かでないが、人が暮らしていた形跡が他にも見られる事実を踏まえると十分説得力があると言える。

◆『森は生きている』

のび太と裏山の交流を描く、「愛情」をテーマにした感動回。

裏山の自然を心の拠り所とし、自分の住まいのように大切に扱うのび太を見て感心したドラえもんは、『心の土』で山との心を通じ合わせる。
裏山との心の距離がより縮まったのび太だったが、やがて家族や友達との日常よりも山での生活に依存するようになってしまう。
ドラえもんが『心よびだし機』で呼び出した山の心は、のび太を愛するがゆえに彼を帰したくないと主張。のび太を引き取りに訪れたドラえもんを追い払おうとするが…。

◆『さらばキー坊』

宅地開発計画により、裏山の一部が切り崩されマンションの建設が進行していた。
裏山の自然を愛するのび太は、せめて生まれたばかりの木だけでも助けたいと幼木を持ち帰り、植物に知能や運動機能を与える道具『植物自動化液』で「キー坊」を誕生させた。
キー坊と楽しい日々を過ごすのび太。ある日、故郷の裏山へキー坊を連れて行ったのび太とドラえもんは、そこで突然地球の存亡を懸けた戦いに巻き込まれる。

◆『うら山のウサギ怪獣』

裏山で野ウサギの親子を発見したのび太と静香。のび太からその話を聞いたジャイアンとスネ夫はウサギ狩りを決行。
野ウサギを守るべく、ドラえもんは『部分進化ガン』でウサギの体の一部を様々な動物のものに進化させることでジャイアンらに対抗させる。
『異説クラブメンバーズバッジ』に続き、道具によって引き起こされた裏山の怪奇現象に振り回されるジャイスネの受難が描かれる回でもある。

◆『スネ夫の無敵砲台』

この頃誰に対しても威張るようになったスネ夫。のび太が彼の頼みで『無敵砲台』なる脅威的な威力を持ったひみつ道具を買い与えてしまったことが発端のようだ。
『スパイ衛星』を用いた調査の結果、砲台は裏山に仕掛けられていることが判明した。のび太とドラえもんは無敵砲台を破壊すべく裏山へ特攻するが、高度な外敵察知能力を兼ね備えた砲台を相手に大苦戦する。

前述の通り、このエピソードで裏山には無敵砲台のような巨大設備を安置できる平らな敷地が存在することがわかる。

【裏山のモデル?】

◆高岡古城公園・卯辰山説

実際の練馬区には裏山のような広大で自然豊かな山は存在せず、原作者・藤子・F・不二雄が育った富山県高岡市の実在する山が裏山のモデルとする説がある。

具体的には、高岡駅から北東に徒歩15分の「高岡古城公園」内にある「卯辰山」がモデルとされる。
少年時代、F先生が通っていた高岡工藝専門学校の真裏に位置し、通学路や休息の場にもなっており、本人にとって思い出深い場所だったことが窺える。
標高は15.7mと「山」というより丘に近いが、「木イチゴの木が生えている」「ウサギが見られる*6」など、ドラえもんで描かれる裏山との共通点が多い。

なお、古城公園近くには「藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー」(高岡市美術館内)がある。

◆生田・枡形山説

かつてF先生が住んでいた川崎市多摩区生田*7の「枡形山」が裏山にそっくりであることから浮上した説。
作者は1961年、東京・トキワ荘から多摩区生田へ引っ越し晩年までこの町で暮らしていた。この地は後に連載を開始した「ドラえもん」生誕の地でもあり、同地域にあるこの山をモデルに学校の裏山を登場させたのではないかと考えられている。



もう他の項目には追記しないぞ。修正もしない。
ずうっと裏山くんのだけ編集するんだ。


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最終更新:2025年08月11日 12:06

*1 名称は『タイムカプセル』でのび太が描いた地図より。ただし『さらばキー坊』や『スネ夫の無敵砲台』の俯瞰図には川が見当たらない。

*2 『かぐやロボット』

*3 『化石大発見』。原作では発掘場所の崖が裏山の一部であるとは言及されていないが、スネ夫が作成した地図や他の回における裏山および周辺の描写(竹藪の存在など)から裏山の岸壁である可能性が高い。なお、わさドラ版アニメでは裏山の崖であることが明言されている。

*4 『全体復元液』

*5 25年後のトーキョーには一部先進機器が登場しているが、『どこでもドア』や『スモールライト』のような高度な道具の存在は示唆されていない。

*6 野生ではなく、園内施設「高岡古城公園動物園」で飼育されているウサギを指す。

*7藤子・F・不二雄ミュージアム」の所在地でもある。