名陶芸家殺人事件(名探偵コナン)

登録日:2017/03/20 Mon 22:39:00
更新日:2023/01/07 Sat 12:21:20
所要時間:約 13 分で読めます




それじゃー、この湯呑なんかもらっちゃおっかなー
なんて…


『名陶芸家殺人事件』とは、「名探偵コナン」において、江戸川コナンが解決した事件のうちの1件。
単行本第16巻・17巻に収録。テレビアニメでは第98話・99話として、1998年4月20日と27日に放送され、2022年8月20日と27日にはデジタルリマスター版で再放送された。


以下、ネタバレにご注意ください。


【あらすじ】
西多摩にある、人間国宝の陶芸家・菊右衛門の自宅に招かれた小五郎。
「最近の推理には粗がある」と言われ、緊張した空気が漂うも、実は菊右衛門は小五郎の大ファンであり、今回の招待も依頼ではなく、小五郎と話がしたかったからであった。

だが、菊右衛門の工房を見学中に事件が起こった。
新作「風水丸」を持ってこようとした彼の息子の嫁・益子が手を滑らせて「風水丸」を壊してしまったのである。
菊右衛門はショックを受けたものの、特に益子を責めることもなく、益子もまた最初はショックを受けていたが、夜の宴会の時には盛り上がっている姿を見せていた。

だが、翌朝になって、みんなが起き始めた時に益子が部屋にいないことに気付く。
携帯電話で呼び出そうとするも彼女は出ず、その最中に蔵の方から焼き物が割れる音が聞こえた。
急いでコナン達が駆けつけると、蔵の中には首を吊って亡くなっている益子の姿があった。
警察に通報後、前日に菊右衛門の「風水丸」を割ってしまったことに責任を感じて益子は自殺したのだと考えられていた。
だが、コナンだけは色々引っかかる点があることを理由に他殺の可能性を考える。
果たして、事件の真相は――。


【事件関係者】
関係者の名前は「陶磁器(の産地)」に由来する。

  • 菊右衛門(きくえもん)/土屋万吉(つちや まんきち)
CV:辻村真人
人間国宝の一人である陶芸家。78歳。
「菊右衛門」の名は代々襲名制になっており、彼自身は五代目に当たる。
妻と息子を二年前の交通事故で亡くしており、身の回りの世話は息子の嫁である益子に任せている。

毛利小五郎の大ファンであり、今回小五郎を自宅に招いたのも小五郎と話をするためだった。
最近は作品の出品も少なく、去年も二、三品しか出展はしていなかった、と話している。
今回、新作の壺「風水丸」を作ったが、益子の不注意で割れてしまった。
益子の事を責めはしなかったものの、強いショックを受けている様子だった。
宴会の時には月影島の事件の話を聞きたがっていた。
名前の由来は「酒井田柿右衛門(陶芸家)」と「伊万里焼(佐賀県)」。
アニメではコナンに忍術を教えてそうな声になった。

  • 土屋益子(つちや ますこ)
CV:磯辺万沙子
菊右衛門の息子の嫁。42歳。
夫を2年前の交通事故で亡くしているが、今でも義父の身の回りの世話を任されている。
菊右衛門の息子が惚れ込んだほどの目利きで、弟子たちの作品は彼女の目に適ったものしか菊右衛門が見ることがないという。
また、次期「菊右衛門」の選任の他、作品の取引や発表会の日時などを決定する仕事も彼女が任されている一方、酒が入ると人が変わる一面もある。

小五郎たちが訪れた日に、菊右衛門の新作「風水丸」を取りに蔵まで向かったが、誤って落として割ってしまう。
菊右衛門は彼女を責めず、彼女もその夜の宴会で酒を飲んで楽しんでいた(ちなみに彼女は霧天狗の事件の話を聞きたがっていた)のだが、翌朝になって蔵で首を吊っているところを発見される*1
すぐに縄から外して下ろしたが、すでに彼女は亡くなっていた。

遺体の足元には割れた焼き物の壺の破片が散乱しており、この壺を踏み台にしたと考えられている。
だが、彼女の遺体には履物を履いていないのに、足の裏が汚れていないなど不審な点も残されている。
また、右ふくらはぎがパックリ切れており、事件現場には彼女の血が飛び散っていた。
その他、普段は携帯電話を持ち歩いているが、携帯電話は自室の布団の下に電源が切れた状態で残されていたという。
名前の由来は「益子焼(栃木県)」*2

  • 有田義彦(ありた よしひこ)
CV:松尾貴司(現・松尾まつお)*3
菊右衛門の弟子の一人。36歳。
最近はメキメキ腕を上げており、作品のキレが出てきたという。
事件の前日に宴会時に眠ってしまった益子を自室に運んでいるが、それ以外は特に目立った行動はしていない。
名前は「有田焼(佐賀県)」。

  • 瀬戸隆一(せと りゅういち)
CV:高木渉
菊右衛門の弟子の一人。35歳。
師匠の作品を真似しているが最近スランプで作品数も減ってきているという。
だが、益子が言うには六代目「菊右衛門」の名前を継ぐのは瀬戸だと言われている。
事件の日は益子の携帯電話にかけるも結局出ず、「電話に出ない」と漏らしていた。
名前の由来は「瀬戸焼(愛知県)」。
アニメでは高木刑事と同じ声になった*4

  • 大谷薫(おおや かおる)
CV:岩田光央
菊右衛門の弟子の一人。36歳。
ここ3ヵ月は益子の目に適う陶芸品ができず限界なのかと悩んでいる。
事件の日は益子を起こしに部屋まで行ったが、すぐに戻ってきて布団が空だったことを伝えている。
名前の由来は「大谷焼(徳島県)」。「おおややき」ではなく「おおたにやき」と読む。
アニメでは焼き物の読み方に合わせてか苗字の読みが「おおたに」になっている。
なお、デジタルリマスター版放送の前の週に放送されていたのは原作回『牧場に墜ちた火種』で、こちらのほうにも岩田氏は日塚順哉役で出演しており、2022年8月放送の「コナン」に毎週出演した事となった。


【レギュラー陣】
ご存知主人公。
益子の自殺に違和感を覚え、「風水丸」の割れた現場にビー玉が落ちていたことにも疑問を持ち、捜査を行う。
なお、菊右衛門に「事件の推理に粗がある」と言われた時は小五郎以上に驚いていた。

ご存知蘭姉ちゃん。
小五郎がどの作品を選ぶかと聞かれた時に遠慮するように言ったら、一番の大当たりを選んでしまう結果になってしまう。
事件では特に活躍していないが、後の話で今回の事件に巻き込まれたことが活きることとなる。

ご存知迷探偵。
最初に菊右衛門に好きな作品を選ぶように言われると、蘭に言われて遠慮して自分が今使っている湯呑を選んだ。
だが、この湯呑は菊右衛門の名器であり、時価一千万円もする逸品と知らされ驚いていた。
事件については他殺の可能性を一切考えず、自殺だと押し通そうとする有様。
なお、宴中、菊右衛門たちに事件の話をするが、美術館の事件同窓会の事件手品師の事件しか起きた状態で解決していないため*5、話はこの3つしかできなかった。

ご存知警部殿。
通報で駆け付けるが、毎度のように事件現場に小五郎がいて、おまけに彼が二日酔いで態度が不真面目だったことで大激怒していた。
事件は小五郎が言うように自殺とコナンが見つけた疑問点から他殺の線も考えて捜査を行う。

ご存知高木君。
アニメ版のみ登場。事件の捜査に加わっていたが声優が瀬戸と同じだった為か、台詞はなし。

ご存知天才発明家。
エピローグ時に小五郎の探偵事務所に来ている。


【以下、事件の真相…さらなるネタバレに注意】






















……いえるわけないだろ?

物によっちゃ、先生の本物より僕のニセ物の方が高値で売れてたなんてな…


  • 瀬戸隆一
この事件の犯人。
今回、犯行現場にいなくても益子を自殺に見せかけて殺害する計画を立てていた。

事件の前日に開かれた宴会で、益子が眠ってしまった後に準備を実施。
まず、有田が益子を自室に運んだ後、宴会の途中で抜け、完全に眠っている益子を蔵まで運ぶ。
そして、益子を蔵の棚の最上段に寝かせ、天井の梁に括り付けられた縄の先端の輪を首にはめる。
あとは、朝になって益子が起き上がろうとした際に体勢を崩せば、そのまま首を吊ってしまうという仕掛けだった。
また、梁に括り付けた縄の結び目の真下に壺を重ねておき、首を吊る際の踏み台代わりに使われたと見えるようにしていたのである。

今回、名探偵である小五郎がいるのに殺人を犯したのは、自殺と見せかけて殺害するには、この時をおいて他にはなかったため。
瀬戸は、「「風水丸」を割ってしまったことに責任を感じて益子が自殺をした」という筋書きを立てていた。そこで、ビー玉を「風水丸」の底に仕掛けて傾けておき、壺を取ろうとすると落ちてしまうようにしていたのである。コナンが見つけたビー玉はこのために使用されたもの。
仕事上、益子が蔵の物を取り出すことが多く、最も「風水丸」を取る可能性が高かった。
つまり、いずれ益子は「風水丸」を落とすことになっていたと思われるが、それがよりによって小五郎が来た日に起こってしまったため、実行せざるを得なくなったののである。
また、その日は宴会で益子が酒を飲んで熟睡していたというのも大きかった。

瀬戸にとって想定外だったことは、益子の右ふくらはぎの傷と、自分の背中に付いた口紅だった。
右ふくらはぎの傷は、棚の最上段に飛び出ていた釘で引っかけた傷。
この血は棚の方から続いているが、遺体を下ろす時にさりげなく棚の方へ誘導して血を隠そうとした。
だが、床に落ちた液体(血液)の跡の大きさは落下する高さで変化し、現場には明らかに1m以上の高さから落ちた跡が残っていた。
この血痕が、被害者が棚の最上段にいたことを証明してしまったのである。
背中の口紅跡は、最上段に運ぶべく益子を担ぎ上げた際に付いてしまったもの。
それに気づかぬまま座椅子に座ったため、座椅子に口紅の色が移り、瀬戸の背中に口紅が付いていることをコナンに気付かれてしまった。

だが、瀬戸は「宴会の時には益子は寝てしまっていたため、偶然自分の背中に口紅を付けたかもしれない」と言い逃れようとした。
しかし、コナンはすでに瀬戸が犯人であるという決定的証拠を見つけていた。
今回の事件で瀬戸は確実に益子を殺害するために、彼女が眠っている棚の下に、自分の携帯電話を仕込んだ二重底の壺を置いていた。
明朝に電話を掛けた時にその携帯電話を鳴らし、益子が寝ぼけながら無意識に手を伸ばして体勢を崩すように仕向けていたのである。益子は普段から携帯電話の音を目覚まし代わりにしていたため、二重底の壺で罠を仕掛ければ、必ずいつもの癖で音を止めようと手を伸ばしてバランスを崩し、棚から落ちると読んでいた。
コナンは、瀬戸が益子の携帯電話に電話をかけた時「(電話に)出ないぞ」と言っていたのに、実際に見つかった益子の携帯電話は電源が切れていたことに違和感を覚えていた。
この場合、電話機は「電波が届かないか電源が入っていないため繋がらない」と答えるため、かけた瀬戸は本当なら「繋がらないぞ」と言わないとおかしいのだった。
そして、コナンが蔵で二重底の壺をわざと壊して中の携帯電話を皆に見せ、続けざまにその番号を調べればすぐに瀬戸のものだとわかると言われると犯行を認めた。

動機は自分が作った作品を、取引を任されていた益子が菊右衛門の作品だと偽って売りさばいていたから。
宴会の席で菊右衛門が「去年は二、三点しか出品できなかった」と言っていたのに対して、
小五郎が「去年の菊右衛門作品は十点ぐらいあったような…」と作品の数にズレが生じていたのもそのため。
実際に瀬戸の贋作は出来がよく、昨日割れてしまった「風水丸」もそのひとつであり、本物はしっかりと保管されている。
その贋作はすぐに割れた事を差し引いても、美術品の目利きができる益子や実際に作成した菊右衛門ですらも騙す程の作品に仕上がっていた。

瀬戸が益子がやっていたことに気付いた時には、自分が作った菊右衛門の贋作は数十個も売られていたという。
彼はそのことを問いただしたが、彼女からは謝罪の言葉どころか「ガラクタを売ってあげてるから感謝して」とまで言われてしまったのである。
最近の瀬戸のスランプもわざとであり、菊右衛門の名前をこれ以上傷つけたくないという思いからだったが、益子からは作らないと追い出すと言われ、腹に据えかねて殺害したのである。

動機を話して、菊右衛門は悔しく思いながら弟子を叱りつけてその場を後にした。
そして、菊右衛門が出て行った後に、有田は何故、菊右衛門に相談しなかったのかと瀬戸に問う。
それに対して瀬戸は「物によっては自分の贋作が真作よりも高値で売れた」という事実を菊右衛門に言えなかったと言い残し、警察に逮捕された。


  • 土屋益子
作品の取引を決定する仕事を任されていたことを利用して、瀬戸の作品を菊右衛門の作品だと偽って売りさばいていた。
そのことに対して一切悪びれる様子もなかったが、金儲けを楽しんでいるようにも見えない為、わざわざそんなことをしていた理由は不明。
だが、菊右衛門の死後に瀬戸などを利用して好き勝手やっていた可能性はあったと思われる。
その為、瀬戸が今回の犯行に及んだのはそうなることを恐れたからなのかもしれない。

  • 毛利小五郎
事件解決から二日後、事務所に阿笠が来ていた時に時価一千万円の湯呑でお茶を飲む小五郎。
阿笠は「そのような湯呑には見えない」と言うが、小五郎は「見た目と中身は違うんだ」とご満悦。
だが、お茶が熱くて、そのまま時価一千万円の湯呑を落としてしまう。
コナン達が慌てて湯呑をキャッチしようとするが、実は小五郎は腕に紐をつけて落ちない細工をしていた。
それを見ながらコナンは「おっちゃんの場合、見た目と中身は変わんね―な…」と呆れながら思うのだった。


【アニメにおける改変点】
原作ではすでに菊右衛門邸にいた所から話が始まっているが、アニメでは事務所で菊右衛門に呼び出されたという話を小五郎がしているところから始まっている。
その際、蘭は菊右衛門のことを知らず、歌舞伎役者か何かだと勘違いしており、小五郎やコナンを呆れさせていた。




追記・修正は高い湯呑でお茶を飲んでからお願いします。

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最終更新:2023年01月07日 12:21

*1 月影島の事件とは違い、アニメ版でも首を吊った状態の遺体の顔は見せている。

*2 余談だが、フルネームが設定されているにも関わらず、デジタルリマスター版でもキャスト欄には下の名前しか表記されていないが、下の名前は陶磁器の産地(益子)が入っており、産地名が苗字になっている3人(有田、瀬戸、大谷)と合わせる為、下の名前だけの表記になったと思われる。

*3 デジタルリマスター版の番組表のキャスト欄では松尾貴司名義だが、エンディングでは松尾まつお名義になっている。

*4 アニメ版ではこの時点で高木は登場済である。

*5 殺人事件以外なら『社長令嬢誘拐事件』等があるが。