ガミラスに下品な男は不要だ

登録日:2017/10/08 Sun 14:27:32
更新日:2025/03/02 Sun 22:39:54
所要時間:約 5 分で読めます






「諸君、宇宙戦艦ヤマトの無事を祈って乾杯しようではないか」

「ガハハハハ!ヤマトの無事を祈ってか!こりゃ面白い!総統も相当冗談がお好きで!ガハハハハ!ガハハハハ!」

「…」キュイィィィン、キュピッ

「ガハハハハ…ッ!?」バサッ、キュイィィィン

「ガミラスに下品な男は不要だ」


概要

ガミラスに下品な男は不要だ」とは、『宇宙戦艦ヤマト』の名(迷?)シーンである。



顛末

第11話「決断!!ガミラス絶対防衛線突入!!」において、ヤマトは太陽系外縁部へと差し掛かろうとしていた。
だが、そこにはガミラスが設置したデスラーの名を冠するデスラー機雷が無数に敷き詰められ、絶対の封鎖線を形成していた。
ヤマトが紙飛行機よりも脆く燃え尽きる様を、夕食後の座興としてデスラー総統にお楽しみいただきたいと豪語するタラン将軍。
デスラーは「今宵の酒は一段と味が良いだろう」と上機嫌になり、"ヤマトの無事を祈って"乾杯しようとする。


…が、その時。あからさまにガサツっぽそうな外見をした太ったオッサンのガミラス士官が「ヤマトの無事を祈ってか!こりゃ面白い!総統も相当冗談がお好きで!」と、
大声を上げながら、「総統」と「相当」をかけた、あまりにも下らないダジャレを発したのである。
これに機嫌を損ねたデスラーは椅子の肘掛けのカバーを展開してスイッチを一つタッチ。男の足元に落とし穴を発動させ、奈落へと放り込んだのである。
無粋な者が消えた後でデスラーはただ一言「ガミラスに下品な男は不要だ」とだけ呟き、その後は何事もなかったかのように乾杯が行われた。

リメイク作である『宇宙戦艦ヤマト2199』においてもこのシーンは使われており第8話「星に願いを」で登場。
椅子のスイッチがパネル式から細かいボタン式に変更、ヤマトへの仕掛けがデスラー機雷からデスラー魚雷に変更されていることや、「テロン人(ガミラス語で地球人)の健闘を祈って~」「罠に落としておいて健闘を祈るか?」など、台詞回しも多少変わってはいるが内容は健在で*1、乾杯前から酔っぱらっていた(=先に飲んでいた)点でも下品さと無礼さが強調されている。

余談であるが、この下品な男には「ドーテム・ゲルヒン」という名前がわざわざ設定されている。言わずもがな「とても下品」のもじりである。
キャラデザのスケッチにすら「ゲヒン将軍」などど書かれていたとか…



視聴者の反応

デスラーの残忍さを示すエピソードであるものの、
  • あまりにも下らないダジャレ
  • そんなダジャレを言うような男がなぜデスラー総統に直に対面できるような立場に登用されていたのか
  • 射殺、連行といった方法でなく、いわゆるボッシュートのごとく開くシュールな落とし穴を使ったのはなぜか
  • 「何故そんなところに落とし穴とスイッチが用意してあるのか」
等々ツッコミどころが多く、頻繁にネタにされるようになっていった。

また色々と推理・考察もされており、
  • この性格にもかかわらずそれなりの立場*2に出世しているのなら、軍人としての能力は高いのでは?
    • 2199のゲルヒンは食料資源省・食料生産管理局の局長という設定がある。この時初めて総統パーティに出席が許されたようだ。不慣れな場での緊張を酒で無理矢理ほぐそうとしたと見られる。
  • 落とし穴に落ちた後が描かれておらず、死んだかどうかは判らないので懲罰くらいで済んでいるかも?*3
  • 総統に対する無礼・失言は事実であるし、死んでいないなら敵や反逆者(例:ヒスとゲル)に対する態度*4も考えると割と真っ当ではないか?
  • 上記二点を鑑みるならデスラーが冷酷と言い切れるか?

メタな視点では、
  • ガミラスの軍人(将校)にもダジャレを言うような奴がいる = 地球人に近い感性を持つものもいる*5と示す演出では?
  • 画的に面白くしたかっただけで深い意味はないのでは…?
といった意見がある。


なお、デスラーが部下を粛清するのはこの場面だけではなく、下品な将軍以前にもシュルツ*6に対して「親衛隊を派遣しようか?」と、特攻を選ぶ一因にもなる発言を送り、本土決戦ではヒスを実際に射殺している。*7
後のシリーズまで見ると、2ではバンデベル将軍*8を自ら射殺しており、IIIではハイゲル将軍*9射殺している。

反面、大失態を犯した*10ドメルを「ドメルの他に誰がヤマトを倒せる?」と、総統権限で処刑を免除するなど、当時から単純な暴君とは言い切れない現実主義な面もあった。
失態を犯した者に対しては他にも、IIIでヒステンバーガー将軍*11に名誉挽回の機会を与えたり、太陽制御に失敗し責任を取る形で自決したフラウスキー少佐を「立派」と称えるシーンもあった。

またヤマト2ではヤマト相手に事実上引き分けに近い状況に陥った際に、安全のために「脱出」をして欲しいと言ったタランに怒りを向けつつも、直後に彼がそれを察して「退艦」と言い直したことで素直にそれを受け入れた場面もあった。

これらを見ると、デスラーは自己の美学を汚す者に対して容赦がないというのが見えてくる。上司にするには厄介なタイプだが、だからこそデスラーのカリスマ性に繋がっているものもあり、そうした面があるからこそ強い信念で戦うヤマトに共感を持ち、古代への友情へと繋がっていったこともあるだろう。

カリスマやリアリティという話でいくと、デスラーは「若き総統」である。外見的に年上の軍人は地球ガミラスを問わずいるし、皇帝じゃないので世襲していない可能性がある。ここはどっちでもいいのだが

ドイツ第三帝国で言う他の政治勢力ではないが、どうしても粛清しきれずに旧来の要職に居残っていた古い体制派、それも反発したか先回りで粛清される気骨のある者や有能者ではなく、おもねったという理由だけで生き延びて来た無能枠、それがゲルヒンであった可能性もある。
デスラー体制において出世したのではなく、それ以前の段階において要職にいた(そして気まぐれか、政治的理由で生かされていた)のが彼だったのかも知れない。「目を掛けた男」より「旧体制の人間だけど一応」くらいの意味合いだろう。
この場合、あの落とし穴装置も、出来てから組織的に軍よりは若いだろう親衛隊だけで対処しきれないほどの反逆があった時の為の個人用自衛システムともとれる。
そして実際にやらかしてくれたので、処分する理由が出来て粛清可能になり、デスラー的には万々歳という可能性もある。

要するに、彼が彼より前の権力から一代で築き上げた力の範囲、すなわち手の広さの問題である。
地球というよその銀河まで手を伸ばせる圧倒的な外征能力に対し、内政面ではありとあらゆる人間を完璧に管理できるわけがないという事なのだろう。



余談

『2199』が参戦したゲーム作品『スーパーロボット大戦V』においても、律儀に再現されている(デスラーの「ガミラスに下品な男は不要だ」のみ声付き)。
このシーンのためだけにドーテム・ゲルヒンの顔グラフィックを描き起こし*12キャラクター図鑑にゲルヒンの項目を作成したスタッフに名誉ガミラス臣民の権利を与えたいものである。

下品な男(ゲルヒン)を演じたのは旧版では安原義人氏。
イケメン演技が光る声優であるが下品な男は本当に下品な声の出し方をしている。さながら居酒屋のおっさんのような感じである。
そして『2199』でゲルヒンを演じたのは中村浩太郎氏、かなり安原氏の演技に似せており、違和感がない。

宇宙戦艦ヤマト大好きな庵野秀明監督はふしぎの海のナディア劇中でこのシーンのオマージュをおこなっている。
ガーゴイルがジャンとグランディス一味の活躍で壊滅した基地から飛行船で脱出した後、基地の責任者だった男に対して、
「たった数人の侵入者によって、基地の破滅を招いたのはいったい誰の責任かね?」
「そ、それは……」
「死を持って償ってもらうよ」
すると男の足元に穴が開いて、男は悲鳴と共に数千メートルの上空から海に落とされて処刑されたのであった。
庵野監督は後にさらに吹っ切れて、N-ノーチラスの発進シーンでヤマト発進の完全再現をするのは有名な話。


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最終更新:2025年03月02日 22:39

*1 2199のガミラス人はガミラス語で話しているはずなのに日本語のダジャレが通じるのか?というツッコミは野暮であろう。

*2 週刊「宇宙戦艦ヤマトパーフェクトファイル」の事典では「下品な将軍」と紹介されているが、将軍ならば日本では艦隊司令官クラスである

*3 2199では命を落としたとパンフに記載がある

*4 「こまぎれにしてシリウスザメのエサにしてしまえ」といった発言

*5 この将軍がオッサンであることに着目し、ガミラスの男も中年になるとダジャレを口に出す欲求を抑えられなくなる=ガミラス人にも「オヤジギャグ」という概念が存在するという解釈も見られる

*6 「たかが戦艦一隻」としか評価されていないヤマトに基地を壊滅させられ、しかも直前にヤマト撃沈の誤報までしていたという弁解の余地のない大失態を2度も犯したので、処刑宣告もおかしくはない。

*7 ヤマトがガミラス本星中枢を破壊したことで形勢不利を悟り、これ以上は破滅してしまうと考えて和平交渉を進言したのであり、ヒス自身に落ち度は全くない。

*8 作戦成功まであと一歩のところをミスで台無しにしたあげく、見苦しく言い訳をして、明らかにデスラーの逆鱗に触れている。

*9 ハイゲルは明白に反乱を企てており、処刑は当然のことである。

*10 失態の原因はデスラーが成功直前で横槍を入れたことにもある。

*11 支配目標に対し62%まで到達した時点で自分の部隊の1/3を損失していてた。なお後にきちんと支配を完了させた。

*12 ゲルヒンの台詞はメッセージボックス1個分のみ。