CLIP STUDIO PAINT

登録日:2018/05/09 Wed 22:45:38
更新日:2025/05/08 Thu 23:35:28
所要時間:約 5 分で読めます




概要

『CLIP STUDIO PAINT』とはセルシスが開発・販売しているペイントソフト。略称はクリスタ。
同社が同じく販売していた漫画制作ソフト『ComicStudio(コミックスタジオ)』と、
イラスト制作ソフト『IllustStudio(イラストスタジオ)』の両方の機能を併せ持つ両者の後継ソフトである。

現在デジタルイラストを描く為にはペイントソフトが必要であり、
数多くあるソフトの中でクリスタは『photoshop(フォトショップ)』『ペイントツールSAI』に並ぶ主要ソフトである。
フォトショップは高額*1だが多彩な機能が魅力であり、SAIは低価格で軽いので低スペックパソコンでも描ける。クリスタはその中間である。
コミスタの後継なので上記二つに比べ漫画制作に優れており、漫画家のクリスタ愛用者は非常に多い(椎名高志先生、得能正太郎先生、田亀源五郎先生、等々……)

発売前に『CLIP PAINT Lab』という名前で試験公開。
その後本来は『CLIP STUDIO』がソフト名になる予定だったが、
そちらはクリスタ関連管理用ソフトと創作応援サイト名に採用され、ソフト名は『CLIP STUDIO PAINT』が採用。

現在はWindows版・macOS 版共にVer2系統がリリースされている(後述の理由で、購入方式で利用できるバージョンが変わるため数値の特定が難しい)


2012年5月31日に『CLIP STUDIO PAINT PRO』が発売。
パッケージ版が9180円、ダウンロード版が5000円である。(税込)
2013年2月1日に『CLIP STUDIO PAINT EX』が発売された。
こちらはパッケージ版が36720円、ダウンロード版が23000円である。(税込)

PROとEXは機能がほぼ共通だが、EXはPROの全ての機能に加え、漫画制作に特化した機能が幾つも加えられている。
PROがイラスタの、EXはコミスタの発展したソフトというべきか。
イラストを描くだけならPRO、本格的に漫画を書く・同人誌を発行したいならEXを買うべきだろう。
PROでも漫画を作ろうと思えば一応できる。少し手間はかかるが。

その後2017年11月8日に『CLIP STUDIO PAINT EX for iPad』を発売。これは月額980円。
2018年4月26日に『CLIP STUDIO PAINT PRO for iPad』が発売され、これを機にPRO・EX共に年間契約が始まる。

バージョン1.Xの頃は買い切りのみで無料でアップデートされていたのだが、
2023年からのバージョン2.0系統からは通常の買い切り版と『アップデートプラン(年間契約)』というコースが新設された。
バージョン1.Xは→2.0にするにはどちらかを選択しなければならないが、
後者の場合は料金的に不利ではあるものの、新しい機能の追加が細かく行われたり一部の素材がフリーでダウンロードできるとというメリットがある。
(前者の場合はバグ取りなどのマイナーバージョンアップは行われる。素材も料金は必要だが入手可能)
ただアップデートプランに加入していた場合、契約終了すると加入前のバージョンにダウングレードされる。

セルシスの株を持っていると株主優待として「CLIP STUDIO PAINT EX」のアクティベーションコード(1デバイス分)”がもらえる。
もらえるのは半年分のコードだが、株主優待は年2回あるので、株を持っていればずっと使えることになる。

クリスタはコミスタ・イラスタの後継ソフトとして開発されたが、現在その完全上位互換という訳ではない。
なにより使い慣れたソフトに勝るものなどないので、今でもコミスタ・イラスタの愛用者も多い。
例えば『食戟のソーマ』の佐伯俊先生は作画をコミスタ、カラーをクリスタといった風に使い分けている。

佐伯先生の師匠で『ゆらぎ荘の幽奈さん』を連載していたミウラタダヒロ先生はコミスタ時代から愛用しており、クリスタの開発にも携わっていた。


アップデート

2019年12月5日には『Ver.1.9.5』が公開され、ユーザーインタフェースを大幅にリニューアルされた。

2020年12月10日に『Ver.1.10.5』が公開。
タイムラプス機能を追加されたことで制作工程を記録し、タイムラプス動画をSNSに投稿しやすくなった。
またPhotoshopブラシファイル(.abr)が読み込めるようになった。これでフォトショで自作したブラシをクリスタでも使用可能に。
投稿サイト『deviantART』では海外のデザイナーがPhotoshopブラシを無料で配布しているため、それを使えるようになったのも嬉しい。
ただしクリスタの機能でPhotoshopブラシを再現しているだけなので完璧ではない。

2021年5月27日に『Ver.1.10.10』が公開された。
小学館、KADOKAWAへの入稿に使用できる公認プリセットと、EX版にオンラインでチーム製作が出来る機能が追加。
またPhotoshopにもある機能『デュアルブラシ』と、ブラシカーソルの形状をブラシ形状にする機能も追加された。
これによって上記のPhotoshopブラシを取り込んだ際にデュアルブラシ機能を再現できるようになった。

デュアルブラシが追加された事で初期ブラシツールが一新された。特に追加された『ウェット水彩』はアナログ水彩の再現度が高いと評判。
しかしウェット水彩は非常に重くちょっとブラシサイズを大きくしただけでまともに動かなくなるほど重い。
これはマシンパワーが強くとも起こる現象であり、今後の改善に期待である。

『Ver.1.10.11』でもサブツールを複数同時に削除する事が出来ない。一方でツールならまとめて消すことが出来る。
なので消したいサブツールを「サブツールグループにまとめてツールパレットに移動させ、そこでまとめて削除」という裏技がある。


機能

クリスタには機能がたくさんあるので全ては紹介できないが、ここでは一部を紹介している。

  • ベクターレイヤー
通常のソフトにあるのはラスターレイヤーと言って、色を塗るためのレイヤーである。
これは画像の情報を方眼紙上のマス目1つずつの点を合わせて記録しているからであり、そのため拡大するとジャギーが目立つ。
ベクターの場合、線の描き始めと終わりを記録し、さらに筆圧も記録しているため、レイヤーを拡大しても再計算するためジャギーが発生しない。
またベクターの線と線が交差した部分まで消せるという消しゴムもあり、例えば十という線にベクター用の消しゴムで上の部分を消すとTになる。
他にも一度描いた線を太くしたり細くしたりと色々できる。
そのかわりこのレイヤーで『塗りつぶしツール』は使えない。

  • 3Dモデル
人物デッサンが苦手な人のためのモデル。
体型を変える他にポーズなどが用意されており、登録も出来るので苦手なポーズも描きやすくなる。
後述の素材を探すで有料及び無料の3Dキャラクターやポーズも配布されている。

  • ポーズスキャナー
Ver.1.8.6にて追加された新機能。
人間の写真を読み取る事で人物3Dがその写真の人物のポーズを自動的にとることができる。
iPad版ではカメラでポーズ写真を取れば、そのまま読み取らせることも可能。
ただし人物の写真は全体図、それもポーズが分かりやすくないと3Dに正確に反映されにくい。

  • パース定規
背景を描く時に便利な定規。1点~3点透視図を描く事が出来る。
定規にスナップさせておくとパースに沿った線を描ける。

  • 漫画パース
通常拳を前に突き出しても頭より大きな拳にはならない。
普通に描く分なら自分で拳の部分を変更すればいいのだが、3Dモデルを使うとそれは出来ない。
3Dモデルとパース定規を使い正確な描写だけだとリアリティはあっても迫力がない絵になってしまう……。
しかし、この漫画パース機能を3Dモデルに使うと強いパースがかかるため、前に突き出した拳が頭より大きな拳になるのだ。

  • レイヤーのLT変換
EX版限定の機能。
写真や3Dを線画レイヤーとトーンレイヤーに変換する事が出来る。
これで撮った写真を簡単にアナログ漫画の背景に使えるようになる。

  • 素材を探す
管理用ソフト『CLIP STUDIO』には素材を探すという項目がある。
そこにはセシルスが用意した素材の他に、ユーザーがカスタマイズや自作した様々な素材が無料か有料で配布されている。
特にランキング上位の素材『鉛筆R』は無料で配布されていて、鉛筆の質感が再現されていて便利。
アニメーターの足立慎吾氏、イラストレーターのしぐれうい氏も作画や線画にこの『鉛筆R』を使っているとの事。
有料では現実のお金と同じ役割のGOLDの他にクリスタ独自の通貨でもあるCLIPPYもあり、様々な方法で貯めたりたまにログインボーナスなどで貰えるイベントも実施される。

素材の多さも良いが、本コンテンツで入手した素材は商用利用が可能*2というのもメリットである。
ライセンス周りは案外見逃されやすい上、気にしたら気にしたで今度はせっかくいい素材を見つけても商用利用禁止だった・・・など
ライセンスの制約上使えなかった、ということも結構起こる。
この不安点を心配せずに作品に使えるというわけである。



追記・修正は作品を描いてからお願いします。

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最終更新:2025年05月08日 23:35

*1 現在はサブスクリプション方式のみでコースにもよるが月数千円とサブスクリプション方式では高価な方である。

*2 雑誌やアニメなど、商品として提供するイラストへ使用してよい、ということである。念のため、やらないと思うが素材そのものを自分の名義で売るのを許諾しているわけではない。