爆裂都市 BURST CITY(映画)

登録日:2025/08/15 Fri 21:52:28
更新日:2025/08/15 Fri 22:52:29NEW!
所要時間:約 5 分で読めるぜェェェェッ!






これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。


爆裂都市 Burst City』とは、1982年の日本映画。監督は石井聰亙、東映セントラルフィルム制作。




【概要】

埋立地にあるスラム街を舞台にロックバンドが繰り広げる過激な演奏バトルや、それに熱狂する若者達と取り締まろうとする警察達、スラム街を開発しようとする暴力団らと住人らのいざこざを、1980年公開の映画「狂い咲きサンダーロード」で高い評価を得た監督・石井聰亙を始めとした製作陣が描く混沌としたパンク映画となっており。
ロッカーズのボーカルだった陣内孝則を始め、スターリン、ルースターズ、INUといった一世を風靡した本物のロックバンド達も出演している。

製作陣が同じなのもあって狂い咲きサンダーロードと雰囲気が似ているが、両作品間に繋がりはない。ただし同映画を視聴済みならニヤリとさせられる小ネタが用意されている。
狂い咲きサンダーロードにマッドマックス2とデス・レース2000年が加わったかのようなあまりにも独特な内容と世界観で、監督曰く「永遠の未完成」、「限界を遥かに突破してしまい、収拾のつかない混乱状態と帰還不能状態に陥り、契約封切りに間に合わせる為に残された作品」。この作品でしか得られないモノがあるとして専らカルト映画扱いされることが多い。

ただブラックユーモアが楽しめる人なら比較的親しみやすい内容だった狂い咲きサンダーロードと比べると、画面が暗い場面が多い*1、長回しが多用されている影響でテンポが悪め、演出が独特すぎてストーリーが理解しにくいなど、遥かに人を選ぶ映画となっている。

【ストーリー】

高速道路や工業地帯に囲まれた埋立地「湾岸特別指定地区-304」ここには原子力発電所の建設計画が立ち上がっていたが、貧困層やホームレスらによってスラム街が築かれていた。
スラム街にあるライブハウス「20000V」ではロックバンド「バトル・ロッカーズ」と「マッド・スターリン」による過激な演奏バトルが繰り広げられ、毎週土曜日の夜はそれに熱狂する多くの若者客でごった返し、ライブ後客達とロックバンドらはドラッグレースに高じていた。

ある日スラム街に謎の兄弟が現れた、スラム街の住人は兄弟が何を言っているのか分からず、兄弟が乗ってきたマシンに触ろうとしたため喧嘩になるも、それをスラム街のリーダー格である坂田が制止する。坂田はスラム街に居てもいいが盗みや喧嘩を起こさないよう忠告し、兄弟もそれを理解しスラム街に滞在することになった。

建設予定の原子力発電所の利権に食い込むことを画策していた暴力団「菊川ファミリー」の若頭である霧島は部下である黒沼に湾岸特別指定地区の視察に来ていた政治家を接待するよう命令し、黒沼はブルーと言う名の少女を政治家に割り当てて接待し、見事原子力発電所の工事を菊川ファミリーが請け負う契約を取り付けた。

バトル・ロッカーズのメンバーらは次の土曜日の夜、20000Vで再びマッド・スターリンと演奏バトルを繰り広げるが、ライブハウスにバトルポリスが突入したことで客とバンド達は逃げ惑い、演奏はお互い終了せざるを得なくなる。その後ドラッグレースに高じる最中、レース会場にマシンに乗った兄弟が迷い込む、バトル・ロッカーズは兄弟のマシンに乗ろうとするも兄の怪力で撃退され、走り去る兄弟を車で追走するも振り切られてしまった。

スラム街を訪問した黒沼は、住人らを工事作業員として雇おうと交渉する住人らはそれを承諾し、屈強な肉体を持つ兄も工事に参加することになるが・・・


【登場人物】


  • バトル・ロッカーズ
演:陣内孝則(ザ・ロッカーズ:ボーカル)、鶴川仁美(ザ・ロッカーズ:ギター)、大江慎也(ザ・ルースターズ:ボーカル、ギター)、池畑潤二(ザ・ルースターズ:ドラムス)、伊勢田勇人
ライブハウス20000Vの人気バンド。バンドは副業なのでそれぞれ働いていたが業務中に自分の車しか整備しないなど、勤務態度が悪くクビになっている。車も好きでドラッグレースでは連勝していた。

  • マッド・スターリン
演:遠藤ミチロウ(ザ・スターリン:ボーカル)、タム(ザ・スターリン:ギター)、杉山晋太郎(ザ・スターリン:ギベース)、乾純(ザ・スターリン:ドラムス)
バトル・ロッカーズのライバルバンド。
解体した豚を投げる、ステージで立小便をするなど過激なパフォーマンスを行う*2
ラストのトラックでの演奏バトルは優勢であったが、それが仇となってバトルポリスに目を付けられ電気攻撃で音響機器が爆発し全員爆死した。

  • 菊川ファミリー
街で活動する暴力団。原子力発電所の利権に食い込もうとしており、接待と元々汚れ仕事で各所でたらい回しにされていた事業なのもあって、政府から原子力発電所の建設工事を請け負う契約を取り付けた。

  • 霧島
演:吉沢健
暴力団の若頭、黒沼と共に原子力発電所の利権を得て街を開発しようと画策する。
街を「腐っている」と評しスラム街の人々を「あぶれた屑」「殺虫剤を撒かねばならん」と発言するなど過激な思想の持主。
地上げ屋をやっていた過去があり、地上げの過程で地上げ屋グループのメンバーと共に兄弟の両親を殺害している。
怒りが爆発したスラム街の住人達の追いかけまわされリンチされて死亡した。

  • 黒沼
演:泉谷しげる
網目状になった髪型が特徴的な暴力団の構成員。成り上がりらしく、若い構成員からは良く思われていない。スラム街の坂田とは以前から面識があったようである。
接待のためにブルーを差し出したが、政治家のブルーに対する酷い行いの影響で情が移り、原子力発電所の一件が終わったら彼女を腐った街から出そうとしていたが、スラム街の住人達が脱走した件について力を借りようとして政治家を訪ねた際、ブルーが政治家に殺されたのに気づいて激怒し政治家を殺害したが泣き崩れた*3。その後どうなったかは不明。

  • 菊川
演:上田馬之助
菊川ファミリーのボス、大柄な身体を持つ金髪。原子力発電所の利権に関しては契約を取り付けた霧島を評価して全権を委任している。
スラム街の住人達が脱走した時は拠点まで逃げてきた霧島と黒沼を責めるが、直後に重機や工具を奪ったスラム街の住人達に拠点が襲撃され、兄の怪力で天井に頭が埋まってしまったところをボコボコにされ死亡した。

  • キチガイ兄弟/アホ
スラム街に現れた兄弟、二人とも何らかの発声障害を患っているのか言葉を喋ることができないが、会話内容を聞いて理解することはできる。スラム街に滞在することになった後も街中をマシンで走り回り、両親を殺害を殺害した地上げ屋グループのメンバーである霧島を探し続けていた。口が利けないのは地上げ屋に何かさせた影響なのか、元からこうだったのかは不明。
乗って来たマシン(側車付きのカワサキ Z400FX)はバトル・ロッカーズの車をドラッグレースで振り切るほど速い。

  • キチガイ兄
演:戸井十月
マシンを運転する鉄仮面を被り大柄な体格を持つ兄弟の兄。人を容易く投げ飛ばしたり、地面をもの凄いスピードで掘り続けたり、牢屋の扉をブチ破ることができるぐらいの怪力である。パワーだけでなく手先も器用なのかマシンの整備も自分で行う。

  • キチガイ弟
演:町田町蔵/町田康(INU:ボーカル)
兄が運転するマシンの側車に乗っている弟。警戒心が強いのかスラム街の住人が自分たちと対話を試みていた時は威嚇し続け兄に止められていた。
スラム街でマシンの見張りをしていた所で暴力団によるスラム街の解体が始まり、金目の物であるマシンと一緒に連行されたが要らないので政治家に渡され暴行を受けるが、それがブルーが反抗するきっかけになった。

  • 政治家/ロリコン
演:平口広美
原子力発電所の建設予定地である湾岸特別指定地区-304の視察に来ていた政治家。黒沼から娼婦の少女ブルーを貰い、関係者に菊川ファミリーが工事を契約できるよう取り繕った。
その後も湾岸特別指定地区を訪れるたびブルーとの行為にいそしみ、痛ぶっていた。
ブルーを殺害した後も弟を暴行し続けるが、訪ねてきた黒沼が死亡しているブルーを見たことで激高し殺害された。

  • ブルー
演:大林真由美
スラム街の娼婦である少女、政治家の接待のために黒沼によって差し出される。政治家は大層気に入ったようで、霧島からも「良い子だね」と評価を得ている。黒沼は原子力発電所の件が終わったら彼女と町を出るつもりだったようだが、弟を暴行する政治家を「豚」と罵倒し反抗したことで首を絞められ殺害されてしまった。

  • スラム街の住人達
本作の限界突破ぶりを象徴するかの如く個性的な人達。
原子力発電所の建設予定地に住み着いているホームレス故に社会的に良く思われておらず、暴力団によって奴隷にされかかったが兄のお陰で牢屋からの脱出に成功し、暴力団に反旗を翻す。

  • 坂田
演:麿赤児
スラム街のリーダー格である男。スラム街はみんなの場所なので居たければ居ていいが、モノを盗んだり、喧嘩をする奴は許さないというスタンス。
暴力団から工事用ダイナマイトを奪って使用したが、それがバトルポリスを退けるのに大いに役立った
ホームレスになる前は何をしていたかは不明だが兄弟のマシンを一緒に修理する場面がある。

  • バトルポリス
湾岸特別指定地区を管轄する警察、通称「ポリ」。
街自体が腐っているとも表現されるレベルなので仕方がないかもしれないが、殴られた時は問答無用でショットガン発砲する*4など取り締まりは非常に過激。
ストームトルーパーみたいな武装ポリも登場し、人々にロケット弾を撃ち込んだが坂田が投げたダイナマイトが直撃するなどの被害を受け撤退した。

  • スピード・キラーズ
演:コント赤信号(渡辺正行、石井章雄/ラサール石井、小宮孝泰)
自信満々で若者達が集まるドラッグレースに参加し、実力を見せつけようとしていたトリオ。バトル・ロッカーズにドラッグレースを仕掛けたがあっさり負かされ、車は横転して大破した。


追記・修正は、バトルポリスを追い返してからお願いします。

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最終更新:2025年08月15日 22:52

*1 意図的に解像度の荒い8mmフィルムで撮影されているのもあって見辛い

*2 これは演じているスターリンがライブで実際に行っていたパフォーマンスである。

*3 政治家を殺害したのはその場から逃走した弟がやったことになった

*4 非殺傷弾なのか撃たれた人は無事だった