登録日:2018/10/04 Thu 17:14:15
更新日:2022/01/20 Thu 21:52:08
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空飛ぶ絨毯とは、『千夜一夜物語』(アラビアンナイト)に収録されているお話のうちの一つである。
手に入りやすい邦訳は、岩波文庫の『完訳 千一夜物語』第10巻辺り(題は「ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語」)。
◇あらすじ
昔々、インドのとある王様には、三人の息子がいました。
長男のフーセイン、次男のアリ、そして三男のアーメッドです。
なお、この三人の息子以外にも、一人の姪がいました。
名前はヌーロニハルといって、王様の亡くなったお兄さん、つまり兄王の一人娘なのでした。
ヌーロニハル姫は大変美しく、三人の王子達は父にこう言いました。
三人の王子達「「「父上、どうかヌーロニハルをお嫁さんにください!」」」
そこで王様はある事を思い付き、こう言いました。
王様「良いだろう。但し、それぞれに条件を課そう。」
三人の王子達「「「じょ、条件!?」」」
その条件というのは、世にも珍しい物を一人一つずつ持って帰って来る事でした。
そしてその珍しい物の中で、一番だと認定された物の持ち主をヌーロニハルの婿にしてやるという事です。
フーセイン「それなら御安い御用さ!」
アリ「ヌーロニハルは俺のモノだ!」
アーメッド「兄貴達に敗北してなる物か! 愛しのヌーロニハルは俺のモノだ!」
そんなこんなで三人はヌーロニハル姫の
ハートを射止める為、世にも珍しい物を入手する旅に出ました。
三人はバラバラになって旅をし、珍しい物を手に入れたら宿屋で落ち合う様にしていました。
数日後、三人はそれぞれ珍しい物を入手し、宿屋で落ち合いました。
フーセイン「俺が手に入れたのはこの空飛ぶ絨毯さ!
これがあればタダで海外旅行出来たも同然さ!」
アリ「俺が手に入れたのはこの遠眼鏡だ!
どんなに遠い景色もこれ一本で眺める事が出来る!」
アーメッド「俺が手に入れたのはこの魔法の林檎だぜ!
この林檎は凄いぞぉ!匂いを嗅ぐだけで、どんな病を一発完治だぜ!」
そして三人は遠眼鏡で宮殿を覗いて見ました。
するとどうでしょう、ヌーロニハル姫が病に倒れ、苦しんでいました。
三人は空飛ぶ絨毯に乗り、宮殿へ帰還。
魔法の林檎でヌーロニハル姫の病を治しました。
三人の王子達「「「どうです!? 父上!」」」
王様「見事だ、我が息子達よ…しかし…。」
王様は弱りました。
何故なら三人の息子達が持って帰ってきた三種類のアイテムは、どれも珍しいうえ、いずれも人命救助に役立ったからです。
そこで再びアイデアが閃きました。
王様「一番遠くまで矢を飛ばした者をヌーロニハルの婿にしてやろう。」
そんな訳で、『ヌーロニハル姫を嫁にするのはどの王子か!? 弓矢選手権』が開かれました。
三人の王子達は一切に矢を飛ばしました。
結果は……
王様「アーメッドの矢が一番飛んだ。」
アーメッド「やったあ!これでヌーロニハルは俺のモノだあああ!」
フーセイン&アリ「「末っ子の癖に生意気な!」」
王様「だが、遠く飛びすぎて何処まで行ったのかは解らん。矢が見つからない為、無効。
よって、二番目に矢を遠く飛ばしたアリを婿にしてやろう。」
アリ「よっしゃああああ!」
そんな訳で次男のアリがヌーロニハル姫と無事、ゴールインしましたとさ。
めでたしめでたし。
……な訳なかった。
アーメッド「ひ……酷いっ……! そんなバカな話があるかっ……! 矢が見つからないから……! だから無効だなんて……そんな話があるかっ……!」
アーメッドは悔しさの余り、矢を探す旅に出ました。
アーメッド「♪弓矢~はど~うした~!」
アーメッドが矢を探していると、目の前に大きな岩があり、その側に矢が落ちていました。
しかも、その岩には扉がありました。
アーメッド「なんだろう? この扉は?」
アーメッドは岩の扉を開けました。
すると中には、美しいお姫様が一人いました。
ペリパヌー姫「ようこそ、アーメッド様。私はペリパヌーと申します。」
アーメッド「な、なんて可愛いお姫様なんだ! ほ、惚れちまったぜ!」
アーメッドはペリパヌー姫と結婚し、充実した毎日を送っていました。
やがて月日は流れ、アーメッドは久々にお城に戻りました。
王様「アーメッド、何処に言っていたのだ?
あれからフーセインも絨毯に乗って旅に出てしまい、寂しい限りだよ。」
アーメッド「俺は新しい嫁さんを手に入れ、充実した毎日を送っている。
一月に一回位は此処に戻るよ。じゃ、そういう事で…。」
アーメッドが城を出た後、大臣はこう言いました。
大臣「きっとアーメッド様は、ヌーロニハル様と結婚出来なかったのを怨んでいるに違いありません。」
王様「そ、そんなバカな!」
王様は魔術師にアーメッドを探させました。
すると、魔術師は顔を真っ青にしてこう言いました。
魔術師「た、大変です、王様!
アーメッド様は、私よりもずっと魔力のあるお姫様と暮らしています!」
それを聞いて王様はビックリ仰天!
王様「そ、そうなのか!? それじゃあこの国が乗っ取られるのも時間の問題だが、アーメッドがそんな事するハズは……。」
大臣「いえいえ。きっとアーメッド様は攻めてきます!」
魔術師「アーメッド様に無茶な注文をし、それが失敗したら処刑しましょう!」
翌月、アーメッドが城に来た時、王様は次の様な注文をしました。
1.軍隊がスッポリ入る位のテントを持ってくる。
2.ライオンの泉から水を汲んでくる。
3.身長1メートル、髭の長さ10メートルで力持ちの老人を連れてくる。
アーメッドはペリパヌー姫の城に帰り、相談しました。
ペリパヌー姫「それならこの私にお任せを。
チャラチャラッチャラ~、マジックテント~!(大○の○代風に甲高い声で)」
アーメッドはテントを受け取り、宮殿へ。
するとどうでしょう、軍隊はスッポリテントの中に入ったではありませんか。
続いてライオンの泉。
ペリパヌー姫「はい、羊肉~!(大山ry」
アーメッドは羊肉を受け取り、泉へ。
泉の番をしているライオンに羊肉を食べさせている隙を見て泉から水を汲み、王様に飲ませました。
最後の関門、身長1メートルで髭の長さ10メートルの力持ちの老人。
アーメッド「そんな老人何処にいるんだよ…。」
ペリパヌー姫「御心配なく…お兄様、出番よ!」
ペリパヌー姫の兄、シャイパルが登場。
しかも、条件に見事一致しているではありませんか!
シャイパル「大臣に魔術師よ! 王様を唆してアーメッドを殺害しようとした罪は大きいぞ!」
シャイパルは鉄の棒を振り回し、大臣と魔術師をフルスイング!
シャイパル「喰らえ! 炎ノ打撃(ファイヤーインパクト)!」
カッキーン!ホームラン!
王様「アーメッド、許しておくれ!」
王様はアーメッドに謝罪しました。
その時、アリとヌーロニハル姫も登場し、アーメッドとペリパヌー姫を歓迎しました。
アーメッド「これで一件落着…と言いたい所だが、フーセイン兄さんは何処にいるんだろう?」
アリ「そうだな~、兄さんも帰ってきて、一緒に暮らせば良いのに…。」
皆は空を見上げました。
空飛ぶ絨毯に乗って旅立った長男のフーセイン。
彼は今、何処にいるのやら……。
めでたしめでたし。
◇登場キャラクター
長男。
空飛ぶ絨毯を入手するが、ヌーロニハル姫とは結婚出来ず、その後は旅に出てそのまま物語からフェードアウト。
次男。
遠くの景色も楽々と見える遠眼鏡を入手。
弓矢選手権で二番目に遠く矢を飛ばし、アーメッドの矢が見つからないからという理由で棚ぼた式にヌーロニハル姫と結婚した。
三男。
食べるだけでなく、匂いを嗅ぐだけでも、どんな病も一発完治してしまう魔法の林檎を入手。
弓矢選手権で一番遠くまで矢を飛ばしたが、余りにも遠くまで飛ばし過ぎた為、無効となってしまう。
納得が行かず、矢を探す旅に出るが、それがかえって新しい恋の出会いを発見し、ペリパヌー姫と結婚した。
王様の姪にして、三兄弟の従妹。
アリと結婚した。
莫大な魔力を持つお姫様。
アーメッドと奇跡的な出会いを果たし、結婚した。
アーメッドが大臣と魔術師に唆された王様から無茶な注文を受けた際、持ち前の魔力を発揮して彼をサポートした。
ペリパヌー姫の兄。
身長1メートルで髭の長さは10メートル、そんでもって力持ちの老人。
三兄弟の父親。
姪と結婚したい息子達に「一番珍しい物を入手し、持ってくる様に」という命令を下すも、
全部が一番と言える様な物であった為、「弓矢選手権」を考案。
一番矢を遠く飛ばしたアーメッドを「矢が見つからないから」という理由で不合格にし、
二番目に矢を遠くに飛ばしたアリをヌーロニハル姫の婿にした。
一見すると理不尽にも見えるが、最終的にアーメッドは新たな出会いを果たし、結婚したので良しとしておこう。
◇アイテム
恐らく無茶苦茶知名度が高いアイテム。
これに乗って空を飛ぶ事が出来る。
あんまり有名なので勘違いされやすいが、原典ではアラジンもアリババもシンドバッドも乗ってはいない。
遠くの景色も楽々と見える様になる。
いわば今でいうところの望遠鏡である。
匂いを嗅ぐだけでもあらゆる病を一発完治する事が出来る、奇跡の林檎。
追記・修正は絨毯の上で遠くの景色を望遠鏡で覗き込み、林檎をかじりながらお願いします。
- 長男扱い悪いw -- 名無しさん (2018-10-04 17:39:05)
- アリババと40人の盗賊と同じく千夜一夜の原点に無かった可能性があるんだっけ? -- 名無しさん (2018-10-04 17:49:45)
- 移動用マジックアイテムとしてあっちこっちに引っ張りだこな空飛ぶ絨毯は原典だとこんな地味な扱いなのか。それが一番驚きだわ -- 名無しさん (2018-10-04 19:04:49)
- ↑3 前読んだ版だと最後に探し当てたら何があったのか「もう王族はこりごりだよ~」と出家してたってオチだった -- 名無しさん (2018-10-04 19:34:27)
- 競ってはいても兄弟の仲が悪いわけじゃないのがいいよね -- 名無しさん (2018-10-04 21:03:13)
- アメリカのかぼちゃ飛ばし大会も弾速が速すぎる&遠くに飛び過ぎると審査員が見失って失格になるとか -- 名無しさん (2018-10-04 21:16:53)
- 日本のモッケキョウホウも似てるなあ。 -- 名無しさん (2018-10-05 10:31:17)
- こういうお話だったのか、空飛ぶ絨毯て。 -- 名無しさん (2018-10-05 19:15:42)
- 自分が読んだ本ではさすがに理不尽だと思ったのかペリパヌー姫が魔法でアーメッドの矢を引き寄せたことになってて「本当ならこんなに飛ばなかった」とペリパヌー姫が明言してた -- 名無しさん (2018-10-05 21:36:51)
- 空と武絨毯、ほぼ本筋に関係ねえ・・・ -- 名無しさん (2018-10-05 22:34:32)
- タイトルになった空飛ぶ絨毯をゲットした一人だけが空気で不憫なうえ空飛ぶ絨毯そのものも空気という。タイトル変えた方がいいんじゃ…? -- 名無しさん (2018-10-05 22:53:37)
- 「アニキはとんでもないものを盗んでいきました」「いいえ、あの方は空気でしたわ」「いや、奴は確かに盗んでいきました。…この物語のタイトルです」世界旅行に出かけたアニキは、この物語を「空飛ぶ絨毯」として話すことで、世界中に確かな存在感を残していったのだ。空飛ぶ絨毯を見た人間は思わず聞いてしまうからな -- 名無しさん (2018-10-07 03:39:49)
- ↑2↑3 第800夜あたりだからな。シャーラザード先生もネタ切れで、出たとこ勝負の行き当たりばったりに連載繋いでる時期なんだろう……もともと劇中劇多用の引き延ばし作家だって? -- 名無しさん (2021-12-23 22:02:27)
- こんな展開アリー?(次男の名前だけに) -- 名無しさん (2022-01-20 21:52:08)
最終更新:2022年01月20日 21:52