キツツキ

登録日:2018/11/27 Tue 15:13:30
更新日:2025/01/15 Wed 18:56:55
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キツツキ(啄木鳥)とは、キツツキ目キツツキ科の鳥類の総称である。



概要


ミツオシエ科の姉妹群であり、ともにキツツキ下目を形成する。ちなみに「キツツキ」という鳥がいるわけではない。
この目はキリハシ亜目とキツツキ亜目に分かれており、前者はキリハシ科とオオガシラ科、後者はキツツキ科、ミツオシエ科、オオハシ科、ゴシキドリ科が属する。また、ミツオシエ科は托卵の習性がある。

外見はかなり異なるものの、共通して樹上生活への高い適正を持ち、対趾足となっている。
他の目との関連はまだはっきりしないが、プッポウソウ目に近いと考えられている。

大きさは十数センチ程の小鳥サイズから鳩程の大きさまで幅広い。
生息地も北アメリカ大陸、南アメリカ大陸北部および南部、ユーラシア大陸、イギリス、インドネシア、キューバ、スリランカ、日本、フィリピンと世界各国に広く分布している。
基本的にはどの種も肉食性であり主に昆虫を食べるが、中にはほかの鳥の雛鳥等の小鳥を食す種や、肉食傾向の強い雑食性で果実を食す種も存在する。

渡りは基本的に行わず、縄張りを定めるとその区域の中で周年生息する。

木の内部の虫を食べ、また木の更新を促進する助けになることから「森の番人」「森の大工」とも呼ばれている。
どういうことかというと、
  1. キツツキが木に穴を開けて巣穴にする
  2. リスなどの小動物が穴を広げ、巣穴として利用する
  3. フクロウなどの別の鳥がさらに広げ、巣穴にする
  4. クマが穴を広げてねぐらにする
  5. 大穴の空いた木が枯死し、倒木する
  6. 倒れた木にカミキリムシなどが住み着く
  7. 腐敗した倒木がクワガタなどの幼虫の住処になる
  8. 最終的に腐葉土となって別の木々の養分になる
という流れが形成されているため。

また、元々は虫をつついて食べるという生態から「ケラツツキ」と呼ばれていた。




木を突く行為について


最大の特徴は何といっても名前の由来にもなっている「嘴で木を突く」習性である。これには複数の理由が存在する。


まず一つ目は食糧確保。木を突いて穴をあけ、その中にいる虫たちを長い舌で絡めとって食べる。

二つ目に巣作り。
卵の色は白く、穴の中への産卵は先祖から受け継がれた習性であることがうかがえる。

三つ目にコミュニケーション。音によってメスを呼び寄せたり、自身の縄張りを知らせる。

四つ目に木を突くことで嘴を削り、その長さを程よくするためでもある(人間にとっての爪切りのようなものか)。


このつつく行為だがスピードが非常に速く、毎秒20回の速度で一点を突き続ける。
これは3秒間に50発の突きを放つ北斗百裂拳を若干ながら上回っている速さである。
ただし、このスピードだと一突きごとの威力は軽くなるために穴を開けるときにはペースは遅くなる。

ちなみに、この木をつつく行為は「ドラミング」と呼ばれている。
「何故頭が痛くならないのか」という疑問がよく出るが、キツツキの首は強靭な発達を遂げており、木に打ち付ける時に筋肉を緊張させている他、舌の骨が頭部の上方にまでのびてシートベルトの役割を果たすため、衝撃を上手く受け流すことができる。
だが2018年の研究結果により、セジロコゲラを対象とした検査で、脳の損傷とかかわりのあるタウ・タンパク質の増加が確認されたことから、「実は衝撃を殺し切れず脳が傷ついているのでは?」という説が浮上している。*1

それを裏付けるかのように、2022年には衝撃を吸収する構造がまったく存在しないことが判明。
これは頭に吸収構造があると、木をつつく力が大幅に弱まってしまうためである。
じゃあどうして平気でいられるのかというと……脳が小さいおかげだった。
わずか2g程度の小さい脳なら、つつく木の幹が柔らかいこともあって、脳震盪を起こす心配がないのである。


主な種類


日本生息種


アカゲラ
日本で最もよく見かけるキツツキ。恐らく日本人なら誰もが「キツツキ」と言われてこの鳥の姿を思い浮かべるであるであろう。大きさは20~24センチほど。
山や森、湿原などに生息するが、明るい場所を好むため開けた森や浅い林で見つかることも多い。
冬場は山から下りてくるため、夏よりも目撃できる可能性が高い。
快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーで登場しネットミームになった「なぜか飛んできたキツツキ」はおそらくこの種のメス(後頭部の羽毛が黒いため)。


アオゲラ
日本固有種。「アオ」と付いているが体色は黒かかった緑色。大きさは29-30センチ程。
明るめの林や公園などに生息する。「キョッキョッ」と特徴的な鳴き声を発する。「森の大工」という呼び名に一番近い生態で、一番大きな穴をあける。


クマゲラ
日本最大のキツツキ。熊のように真っ黒な体と50センチにもなる巨体が特徴。


コゲラ
日本最小のキツツキ。体色は黒と白のまだら模様。大きさは15センチほど。
生息域が広く、場所によっては街路樹に住み着いていることもザラ。コイツだけで亜種が9種類もいる。


アリスイ
キツツキ目の変わり種で、木をつつかない。
餌をとるのは主に地面の上で、文字通りアリを食べる。生息するのも葦原が主で、森や林には基本的にいない。
見る機会が意外と少ないことから、バードウォッチャーの間では人気が高い。


ノグチゲラ
沖縄本島北部に生息。羽の色は体が赤褐色で翼が黒。
特別天然記念物に指定されている絶滅危惧種。


キタタキ
インドから東南アジアにかけて生息し、日本では対馬に生息していた種。
上半身は黒、下半身は白で、オスは赤い冠羽を持つ。クマゲラに次ぐ大型種。
インドなどでは数多くいるが、対馬にいたものは森林伐採や乱獲により数を減らし、1920年を最後に目撃情報が途絶、絶滅したものとみられる。
また同じ亜種は朝鮮半島にも生息しているが、韓国でも同様の理由でほぼ絶滅し、北朝鮮に数十羽が生き残っているのみとされている。


海外生息種


ドングリキツツキ

北アメリカから中央アメリカに生息するキツツキで、その名の通り木に穴をあけドングリを埋め込む習性がある。
その貯め方は尋常でなく、もはや蓮コラレベル。人によってはトラウマになるかもしれない。
また、民家に数年にわたって300㎏以上もドングリを貯め込んでいたケースも報告されている。


サバクシマセゲラ

サボテンに穴を掘って巣にするキツツキ。
何とほかの鳥の雛を襲ってその脳を食べる。
得意のドラミングで頭蓋骨を打ち抜き、長い舌で脳をすするのである。
野生の世界は厳しいのだ……


オボロテンニョゲラ

アマゾンに生息するキツツキ。
「朧」で「天女」と、幽玄かつ神秘的な雰囲気の名前だが、その見た目は黄色い体黒褐色の翼、そして赤いほっぺ……
どう見てもピカチュウです。
ただしこれはオスの方で、メスに赤い模様はなく全体的に薄い色。こちらの方が英名の「Cream-colored Woodpecker」にマッチしているかもしれない。
もっとも、メスもメスでウッドストックやチョコボみたいな雰囲気である。
また、主食が独特な匂いを発する毒を持つアリであるためか、レモンの香りがしたという報告も。*2*3


架空世界のキツツキ


ウッディー・ウッドペッカー

アメリカの大手映画会社ユニバーサル・ピクチャーズ製作のアニメに主に登場する。
赤くてフサフサした頭部に青い身体の鳥のようなキャラクターといえば「ああアイツか」と思う諸兄もおられるかもしれない。
ちなみにモデルは、エボシクマゲラという北米に住むクマゲラの近縁種。


ツツケラ

アローラ地方に生息するノーマル/ひこうタイプのきつつきポケモン。
ここからケララッパ、ドデカバシと進化していくがケララッパまではキツツキっぽいのに、ドデカバシになるとオオハシという別の種類の鳥っぽくなる。
とはいえオオハシはキツツキ目に属しているので、あながち間違いでもなかったりする。


注意

キツツキは野鳥にあたる為個人での飼育は原則として禁止されています。


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最終更新:2025年01月15日 18:56

*1 キツツキが木をドラミングする際にかかる衝撃は瞬間的に1400Gに達するとされる。なお人間は60~100Gで脳震盪を起こす。

*2 https://x.com/mattthesparrow/status/1851208417064403025

*3 実際にオーストラリアのツムギアリはレモン味として知られているので、あながちおかしな話でもない