SCP-017-JP

登録日:2019/09/08 (日曜日) 11:39:31
更新日:2023/11/17 Fri 17:28:26
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最初はグー!じゃんけん……ナー!

SCP-017-JPはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスEuclid
メタタイトルは「ローカルルール」。

概要

SCP-017-JPは某県某郡周辺で行われるじゃんけんにおいて、ローカルルールとして追加される第四の手の形である。
SCP-017-JPは「ナー」「ナン」または「ナム」と呼ばれ、ルール上の扱いは以下の通り。

  • SCP-017-JPを出した人が一人だけの場合、その人が無条件で勝ち・他全員負け。
  • SCP-017-JPを出した人が複数いる場合、出した人は全員無条件で負け。それ以外の人はその時出していた手により通常の三すくみルールで勝敗を決める。
  • SCP-017-JPを出した人がいない場合、通常の三すくみルールで勝敗を決める。

一種の「切り札」的な諸刃の剣、もとい手になっており、このルール下では駆け引きが通常のじゃんけんよりも重要になるだろう。機会があればやってみるのも楽しそうだが、これはSCPオブジェクトである。収容されるだけの異常性があるのだ。
まずどんな形の手を出せば「ナー」となるのかだが、以下の通りである。


…無理じゃね?
やってみると分かるが、薬指と小指への負担がすごい。建て主は数分格闘してみたが両手を使って薬指を人差し指と中指の間に入れるまでは行ったものの小指を薬指の後ろに持っていくことはできなかった。ましてやこれをじゃんけんの際に片手でパッと出すなど常人にはまず不可能と思える。
しかし、心配ご無用。じゃんけんにSCP-017-JPが用いられた場合、これに参加していた人間は全て「この手の名前」「この手を使った時のルール」そしてこの手を即座に出せる能力を心身に授かるのだ。こうなった人をSCP-017-JP-1とする。

ここでじゃんけんという遊戯の性質を考えてほしいのだが、通常のじゃんけんの勝敗は参加者全員が3つの手のうち2つだけ、そのどちらかを選んだ時にのみ決する。その確率は参加者が2人か3人なら3分の2(≒66.7%)、4人なら27分の14(≒51.9%)、5人なら27分の10(≒37.0%)…という風にどんどん減ってゆく。つまり、じゃんけんというものは人数が多いほど勝敗が決しづらい仕組みなのだ。諸君にも子供のころなにかを争奪する大人数のじゃんけんで幾度も幾度もあいこが繰り返され実は決していた勝敗を見逃しかけた、といった経験のある人もいることだろう。え?そういう時はトーナメント戦するかグーとパーで分かれるやつで決めてた?すいませんがちょっとそれは置いといてください

ここにSCP-017-JPを導入してみよう。参加者が何人いようと、自分だけがこの手を出したならば問答無用でYou Winだ。実に迅速に勝負が終わって場も胸もスッキリする。
しかし、「ナー」を知っている人が多い状況でこれを使うのは危険だ。自分が使っても、他の誰か一人でも「ナー」を使ってしまったらその瞬間負けが決まる。
…その結果何が起こるか。SCP-017-JP-1は「ナー」を知らない人の多いじゃんけんで積極的に「ナー」を使おうとするのである。そして、SCP-017-JP-1がどんどん増え、SCP-017-JPはどんどん広まっていく。そのうちこのルールがローカルではなくなってしまうかもしれない…

特別収容プロトコル

というわけでコイツはSCP-471-JPのように積極的な拡散能力のある情報系オブジェクトといえる。収容はその隔離のためのものとなる。
SCP-471-JP同様にWebクローラでネット上の情報を検閲し、さらに某県某郡に住んだことのある一般人全員にCクラス記憶処理(必要ならBクラスも併用)を施すのが主な収容手順。ヘッドカノンにもよるがBとCクラスは注射なので「予防接種」とかのカバーストーリーでも使ったのだろうか。想定人数の99.9%に対してはすでに完了しており、残りの実行が急がれている。

加えて実験でSCP-017-JPを使用する場合、賭ける賞品は一辺10cm以下の固体に限る、とある。これには、SCP-017-JPの持つもう一つの異常性が関わっている。

「勝者」の居場所


先述の通り、「ナー」を出した人が複数いた場合それらは全員敗者となる。ここで気になるのが、参加者全員が「ナー」を使った場合である。
この場合、参加者全員敗者となる勝者不在のゲームとされ、勝者が決まるまで再試合が行われることもない。さらに、このゲームに賞品があった場合、これが何処かへ消え去ってしまうのである。これがSCP-017-JPの持つもう一つの異常性であり、賞品転移イベントと呼称される。この異常性は以下の実験時に発見されたものだった。

実験記録


最初の実験はルールの確認で終わったため割愛。

実験記録017-JP-2 他パターンの確認 - 日付1976/██/██


目的: 何度かゲームを実施させ、発生しうるパターンについて確認する。

実施内容: 実験記録017-JP-1と同様の条件でゲームを何度か実施させ、各ゲームの内容について記録する。

特記事項: 3ゲーム目の2回戦において、残り2名の状態でD-017-JP-4及びD-017-JP-6が同時にSCP-017-JPを使用した。この結果、2名はそれ以上ゲームを続けなかった。

補遺: 上記事例について、D-017-JP-4及びD-017-JP-6にどちらが勝利したのかを質問したが、二人とも自分は勝利していない旨の発言を行った。誰が勝利したのかを聞くと、両者とも黙って頭上を指さし、それ以上の事は答えられなかった。

分析: 追加ルール2に指定される「SCP-017-JPを選択したゲーム参加者が複数の場合、出した参加者全てが敗者となる」が残り2名の状態でも適用されたと考えられる。この場合2名ともが敗者となるため、再試合が行われると思われたが、結果はゲームの終了であった。勝者について尋ねた際の行動が気になる。

…勝者は上、というか天にいるのだろうか?

実験記録017-JP-3 賞品を賭けたゲームの実施 - 日付1976/██/██


目的: 賞品を賭けてゲームを実施し、実験参加者の勝利へのモチベーションを高める。この状態で実験記録017-JP-2と同様の状態を再現し、再試合が強制されているかどうかを確認する。

実施内容: Dクラス用の配給食の中で人気のあったデザートの余剰(みかん味のゼリー)を賞品とし、D-017-JP-1、D-017-JP-2の2名でゲームを実施させ、両者ともSCP-017-JPを使用した際の実験参加者の挙動を確認する。

結果: ゲームが開始され、両者ともSCP-017-JPを使用した。この直後に賞品であったみかん味のゼリーが富岡研究員の手元から未知の方法で消失した。D-017-JP-1、D-017-JP-2の両者に賞品の行方と勝者を聞いたところ、両者とも黙って頭上を指さし、それ以上の事は答えられなかった。

分析: 未知の異常性が発現した。賞品の行方を調査する必要がある。

みかんゼリーを賭けて戦った末に黙って頭上を指差すDクラスという構図がシュールである。
賞品は先述の「勝者」の元に転移したのだろう。ならばそれはどこなのか突き止めなければならない。続く実験では当時まだこういう状況で役立った試しがほとんどないGPSがなかったため船舶などが使っていた地上系システムの端末を改良したものを賞品にして同じことをやったが、発信位置を特定できなかった。つまりこの地球上ではないということなので、もっと長い距離から探知できるものを使用する必要がある。これでダメなら何光年も離れた宇宙空間かさもなくば異世界だ。

実験記録017-JP-5 超長距離通信用ビーコンを賭けたゲームの実施 - 日付1976/██/██


目的: 超長距離通信用ビーコンを賞品として設定し、実験記録017-JP-4と同様に消失させ、消失後の位置を確認する。

実施内容: 超長距離の通信に使用されるビーコンを賞品に設定し、D-017-JP-1、D-017-JP-2の2名でゲームを実施させ、両者ともSCP-017-JPを使用させる。ビーコン消失後の発信位置を特定する。

結果: ゲームが開始され、両者ともSCP-017-JPを使用した。この直後に賞品であったビーコンが富岡研究員の手元から未知の方法で消失した。ビーコンの発信源は当初は特定できなかったがおよそ5時間半後に通信が復活した。ビーコンの発信源は凡そ地球から60億km程度離れており、測定の結果エッジワース・カイパーベルト域内に存在するものと予想された。

分析: 「ゲームの勝者」はそこにいるのだろうか。

幸い、と言っていいか分からないが「勝者」は太陽系の辺境にいた。場所が分かったなら次はそこに行って確かめよう、と富岡研究員は探査申請を出したが、残念ながら予算の都合上却下された。1976年といえば人類がこの時点で最も遠くに送り出していた探査機パイオニア10号ですらまだ土星軌道あたりにいるころで、財団ならどうかは知らないがさすがにカイパーベルトまで行くのは厳しいかもしれない。というかまだ当時カイパーベルトの存在すら実証されてなかったし。

その後


最後の実験で飛ばしたビーコンの信号から軌道計算をしたところ、なんと賞品転移イベントで飛んで行ったものは彗星のような軌道で地球に迫ってきていることが判明した。そんじょそこらの小物なら大気圏で燃え尽きるからいいが、もし山とか家とかが賭けられたゲームで賞品転移イベントが発生したら未来の人類が危ない。というかそこまで大きくなくてもどう考えても宇宙空間にあるはずのないものが地球に向かってきていることを財団外に観測されたらヤバい。そういうわけで特別収容プロトコルに賞品の大きさ要件が加わったのだった。
既に上記の実験記録で転移してしまっていたものは約40年後に地球に最接近するとの予測であった。




そして、2018/██/██。その時がやってきた。報告書にはその時の写真が添付されている。


サイト-81██屋上にて 撮影者:サイト管理官 富岡




…わー…、きれいだなー…




でもコレとっくの昔に賞味期限切れ果てたみかんゼリーなんだよなぁ…



追記・修正はこの後さらに降ってくる旧式端末とビーコンとあと富岡研究員の人生に思いを馳せながらお願いします。



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最終更新:2023年11月17日 17:28