バットマン・フー・ラフズ(コミック)

登録日:2020/02/23 (日) 21:30:30
更新日:2021/12/20 Mon 09:37:53
所要時間:約 11 分で読めます




『The Batman Who Laughs』は2018年にDCコミックスから出版されたアメコミ作品。

+ 作品情報
『The Batman Who Laughs Vol.2』#1~#7
発売 2018年12月から
脚本 スコット・スナイダー
作画 ジョック

『The Batman Who Laughs: The Grim Knight』
発売 2019年3月
脚本 スコット・スナイダー、ジェームス・タイニンⅣ
作画 エドゥアルド・リッソ

日本では2020年に小学館集英社プロダクションから邦訳本が発売されている。

バットマン・メタル』で人気を博したバットマン・フー・ラフズと本家バットマンの戦いを描いた作品。
似て非なる存在の2人の激しい戦いを主軸にスナイダーが担当する『Justice League Vol.4』にも通じる幸福論を取り上げ、
他人と支え合い高みを目指すのが幸せなのか、本当の自分を受け入れ自らを解放するのが幸せなのかが語られている。

また本作同様スナイダーとジョックが担当した『バットマン:ブラックミラー』の精神的続編でもあり、
サイコパスの治療に取り組むジェームズ・ジュニアとそれを見守る父ゴードンの葛藤を上記の幸福論を交え描かれる。
ゴードン親子の壁として登場した銃に魅入られたバットマン、グリムナイトも注目を集め、ワンショットが発売された。

本作に登場した『ダーク・マルチバース』の人間と入れ替える血清は『Batman/Superman Vol.2』につながっていく。



【物語】

無縁仏の密輸事件を追い『ダーク・マルチバース』の幸福な自分の死体を発見したバットマンは、
死体を使いゴッサム市民を自分と同じ存在に変えようとするバットマン・フー・ラフズとの戦いを開始する。
協力を求めたジョーカーのウイルス*1や予想通り自分の上を行く強敵とその仲間グリムナイトに追い詰められ、
さらに切り札の浄化システム『ラスト・ラフ』*2とその起動の鍵を握るゴードンも奪われたバットマンだったが、
ゴードンの息子でサイコパスだったジェームズ・ジュニアやウイルスで得た闇の感覚さえも利用して戦いを続けていく。
ジェームズ・ジュニアの協力でゴードンを取り戻したバットマンだったが、『ラスト・ラフ』こそが敵の狙いだと気づき、
さらにバットマン・フー・ラフズからゴッサムの闇の真実を教えられ、絶望の淵に追い込まれる。
それでも自分を奮い立たせたバットマンは最後の戦いを挑む。果たしてゴッサムはどちらの蝙蝠と共に微笑むのか。


【登場人物】

ゴッサムを守る闇の騎士。幸せな自分の鏡像を利用しゴッサムを真の悪の街に変えようとするバットマン・フー・ラフズに挑む。
バットマンとゴッサムは一心同体であり互いに影響し合うという考えを胸に戦いに臨んでいる。
強敵を前に再びジョーカーと手を組もうとするも、勝利には同じ存在になるしか無いと思った彼の手でウイルスに感染してしまう。
変化を抑えながら戦いを開始し敵の狙いを見抜くも、一歩先を行かれ浄化システム『ラスト・ラフ』に必要なウェインタワーとゴードンを失った。
絶望的な状況の中、手を組んだジェームズ・ジュニアの言葉でジョーカーの判断が正しかったと悟りウイルスを受け入れ、
ジェームズ・ジュニアにゴードンと敵が狙う水道管の捜索を任せると、自身は変化で手にした闇の感覚で敵の先を行こうとする。
作戦は失敗に終わるもゴードン救出に成功すると『ラスト・ラフ』を起動し血清が流し込むまれる水道管を封鎖しようとしたが、
敵の狙いが『ラスト・ラフ』のドローンを利用することだと気づき、その直後バットマン・フー・ラフズから連絡を受ける。
そして彼からゴッサムは元々悪を生むための場と教えられ信念が崩れ、闇の感覚で見た市民の姿もあり絶望感に飲まれてしまう。
その勢いで『ラスト・ラフ』を起動するも勝利は諦めておらず、『ラスト・ラフ』を汚染するグリムナイトをゴードン親子に任せ、
自身は血清完成に必要な最後のブルース・ウェインでバットマン・フー・ラフズをおびき寄せ最後の戦いを挑む。
感染が進んだことで互角の戦いを繰り広げるが、敵が狙う最後の幸福なブルース・ウェインとは、
悪に堕ち自分を解放したこの世界のバットマンのことであり、ジョーカー化が完成したことで細胞を奪われてしまう。

  • ジェームズ・ゴードン
ゴッサム市警本部長でバットマンの良き理解者。バットマンと共にバットマン・フー・ラフズに挑む。
ウェインタワー崩壊後、敵がどこの水道管に血清を使用するか知るために息子ジェームズ・ジュニアの手を借りようとする。
サイコパスの治療中の息子には親としての情を抱きながらも、サイコパスとしての彼を見てきたため治療に疑念を抱いていた。
それでもゴッサムに迫る脅威を前に協力を求めていると、『ラスト・ラフ』起動の鍵を握っていたためグリムナイトにさらわれた。
別世界のバットマンであるグリムナイトを説得しようとするが、彼が別世界の自分に恨みを抱いていたため殺されかける。
しかし更に残忍な復讐のために生かされ、『ダーク・マルチバース』のジェームズ・ジュニアが変化したロビンに命を狙われてしまう。
間一髪のところで息子に救出され『バットケイブ』にたどり着き『ラスト・ラフ』起動を進め、
敵の狙いが『ラスト・ラフ』だと知ると中止するよう声を上げたが、絶望に飲まれたバットマンには届かず失敗に終わる。
『ラスト・ラフ』は起動するも諦めてはいなかったバットマンからグリムナイトの対処を任され、
息子と共にバットマン・ビヨンド風のスーツを身に着け挑むも、追い詰められ息子に助けを求めた。
しかし戦いの直前に不信感を抱えたままだと明かしたこととグリムナイトの甘言によって仲違いを起こしてしまう。

  • ジェームズ・ゴードン・ジュニア
ゴードンの息子でサイコパスの犯罪者。現在は新薬でサイコパスの治療中で、監視付きながらパートタイマーとして働いている。
治療は順調なようでサイコパスだった自分は過去のものとして受け入れており、犯罪者の知識も失われている。
しかし父やバットマンからは疑いの目で見られており、ゴッサムの水道管を完璧に把握していた知識を買われ協力を求められた。
当初は知識が無くなったため協力する気はなかったが、父がグリムナイトにさらわれたため手を貸すことになった。
実は治療の成果は出ておらず常人のふりをしており、敵の目的となる水道管を発見した際には何らかの薬を流そうとしていた。
しかしバットマンと協力する中で正しいことに目覚め、父のピンチにギリギリ間に合い彼を救い出した。
だがグリムナイトとの戦いではその直前に父から拒絶されたことと敵の言葉で本性であるサイコパスとして動き出した。


≪ヴィラン≫

  • バットマン・フー・ラフズ(ブルース・ウェイン)
『ダーク・マルチバース』の『Earth -22』のバットマン。バットマンの知性とジョーカーの狂気を併せ持つ。
バットマン・メタル』での戦いの後レックス・ルーサーに囚われていたが、互いに干渉しないことを条件に解放された。
そして『ダーク・マルチバース』の幸福なブルース・ウェインを利用した血清でゴッサムを悪に変えようと動き出した。
バットマンを上回る能力とグリムナイトの協力で、常にバットマンの一歩先を行き次々に血清を回収していく。
さらにゴードンを取り戻し『ラスト・ラフ』という希望を得たバットマンには、『ラスト・ラフ』こそが真の狙いだと気づかせた上で、
ゴッサムの真の姿が悪を生み出す場所だと語り、バットマン自身の手で『ラスト・ラフ』を起動させるという絶望を与えた。
その後最後の血清を回収しようとしたが、バットマンの妨害と完璧主義からウェイン邸での決戦の誘いに乗った。
しかしその戦いさえも彼の狙い通りで、戦いの中で完全にジョーカー化したバットマンから細胞を回収した。

  • グリムナイト(ブルース・ウェイン)
『ダーク・マルチバース』のバットマンの1人。銃を始めとするあらゆる武器に魅了される恐怖が生み出した。
全身につけた武器を操り、特に自分の世界のゴードンのために作られたナイフにこだわりを持つ。また電子技術の扱いにも長ける。
両親を殺された直後に犯人ジョー・チルが落とした銃で彼を殺害、それ以来武器に魅了されるようになった。
そして他のバットマン同様に犯罪との戦いを志し、蝙蝠のコスチュームと様々な武器で戦いを開始した。
次々に犯罪者を手に掛けゴードン刑事に目をつけられるも、直接対決で汚職警官ごと刑務所を壊滅させゴードンに絶望を与えた。
その後は衛星兵器でゴッサムの平和を保っていたが、アルフレッドの裏切りと地下に潜伏していたゴードンの執念に敗北した。
そして『バットマン・メタル』での戦いでバットマン・フー・ラフズの誘いに乗りこの世界に現れた。

他の『ダークナイツ』と異なり呼ばれた直後は戦いに参加せず、各種インフラに仕掛けを施すなど準備を進めていた。
バットマン・フー・ラフズが動き出すと彼の援護をしながら自分の目的であるゴードンへの復讐を狙う。
ゴードンを捕えた際には、彼が自分の知る存在と別人ということを実感し復讐をすぐに終わらせようとしたが、
バットマン・フー・ラフズの説得で復讐を継続し、別世界のジェームズ・ジュニアが変化したロビンで追い詰めた。
その後『ラスト・ラフ』が起動するとその汚染に動き出し、ゴードン親子と直接対決になり武器と言葉の両方で追い詰めていく。

犯罪の道化王子とも呼ばれるバットマンのライバル。バットマン・フー・ラフズの再来を感じ『アーカム・アサイラム』から姿を消していた。
そして『バットケイブ』に現れると自らを撃ち、心臓に仕込んだウイルスでバットマンを敵と同じ存在に変えようとする。
瀕死の重傷を負うも、敵の狙いを知っていると思ったバットマンの指示でアルフレッドが治療し一命を取り留めた。
その後ヒントとしてジェームズ・ジュニアの存在を教え姿を消し、今度は変化を受け入れたバットマンに接触した。
彼に自分の望みは永遠の戦いであると伝え戦いに送り出し、バットマンからは完全に変化した後の対応を任され、最後は笑いあった。

  • ミスター・フリーズ(ビクター・フリーズ)、ペンギン(オズワルド・コブルポット)、梟の法廷
ゴッサムで活動するバットマンのヴィラン。バットマン・フー・ラフズの計画に巻き込まれ被害を受けた。
ミスター・フリーズは『アーカム・アサイラム』でジョーカーが狙われた際に、
ペンギンは3人目の、『梟の法廷』は5人目のブルース・ウェインが狙われた際に大きな被害を受けた。


≪その他≫

  • アルフレッド・ペニーワース
ウェイン家に仕える執事。いつも通りバットマンをサポートするが、ジョーカーの治療には納得いかない姿を見せ、
バットマンがジョーカー化を受け入れてまで戦おうとした際には止めようとするなど自分の意思を強く見せている。

  • トーマス・ウェイン
ブルースの父。ブルースの独白や回想シーンに登場し、死の瞬間にブルースの胸に手を当てた感覚や、
彼が語った『思うことで夢を実現する』という考え、初期のゴッサムが目指した平等の形はブルースに大きな影響を与えている。
しかしどの記憶もバットマン・フー・ラフズとの戦いの中で最悪の形に塗り替えられていく。

バットマンの最初のサイドキック。回想シーンに登場し、戦いに迷いを抱いたバットマンは、
ゴッサムに伝わる諺『幸せとは子供の目で世界を見ること』を実践するために彼の目を見つめていた。
簡略化されたものを『ラスト・ラフ』の起動コードにするほどバットマンはこの諺を気に入っていたが、
父との思いで同様にバットマン・フー・ラフズとの戦いの中で形を変えていく。

  • 『ダーク・マルチバース』のブルース・ウェイン
ゴッサムを変化させる血清を作るために呼び出された『ダーク・マルチバース』のブルース・ウェイン。
バルバトスとの戦いでゴッサムに残された闇の金属を介して召喚される。この世界のバットマンより幸せな人生を歩んでいる。

1人目はベインとの戦いで背骨を損傷後に引退し、都市計画に力を尽くした。セリーナ・カイルと結婚しメイという娘を儲けている。
死体が共同墓地から運び出されされていたところを発見され、バットマンに事件の存在を気づかせた。

2人目はジェイソン・トッド死後に引退し、市長として街に尽くした。
飛行船でのエネルギー事業のパーティの最中に呼び出され、そのまま墜落し死亡した。

3人目は最後の敵となったペンギンに勝利するため、闇社会を支配した。
ペンギンの『アイスバーグ・ラウンジ』で呼び出され殺された。

4人目は『ブラックゲート刑務所』の所長となり、刑務所を拡大した。
変化を受け入れ闇の感覚を手にしたバットマンによって発見されたが、先を読んでいたバットマン・フー・ラフズの手で殺された。

5人目は影から街を支配する考えに同調し、タロンとして『梟の法廷』の支配者となった。
『梟の法廷』を襲撃したバットマン・フー・ラフズの前に現れ殺された。

6人目はウェイン財団を作り、あらゆる公共事業に資金を投入した。
その功績を讃えた『バットファミリー』による表彰式の最中に呼ばれるも、狙撃の直前にバットマンの手で元の世界に戻された。

7人目はこの世界のバットマンの最も幸せな記憶である4歳の頃の彼と同じ存在。
バットマン・フー・ラフズをおびき寄せるためにこの世界のバットマンに呼び出された。



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最終更新:2021年12月20日 09:37

*1 ジョーカーの心臓に仕込まれたウイルス。感染した者をジョーカーに変え、『ダーク・マルチバース』ではバットマン・フー・ラフズを生み出した。

*2 初期のゴッサムに存在した浄化システム。ゴッサムで伝染病が発生した時に発動し、都市を完全封鎖して飛行船でワクチンをばら撒くというもの。バットマンは『梟の法廷』との戦いでその存在を知り、その後のジョーカーとの戦いを経て新たなシステムを構築した。バットマンのものは水道管も全て封鎖して専用の物を使用し、ワクチンの投入は飛行船ではなくドローンを使用している。