サッカーベルギー代表

登録日:2020/07/13 (月) 23:25:01
更新日:2020/07/15 Wed 19:54:21
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ベルギーサッカー協会により編成されるベルギー王国のサッカーナショナルチーム。
その赤いユニフォームから、通称は「赤い悪魔」
2020年時点において、近代サッカー界において最大級の躍進を果たした代表チームと言える存在である。

歴史

ベルギー代表は、歴史を辿れば第1回から第3回までの連続出場実績を持つ。

まあそんな古い話はすっ飛ばすとして。
多くの日本人は「ルーマニアと区別つかん」という程度の認識かもしれないベルギーだが、
80~90年代においては列強クラスに次ぐ有力代表チームだった。
この時代のプレーヤーとして特に有名なのが、90年代屈指のゲームメーカーとして名高いエンツォ・シーフォ。
激戦区たる欧州において82年大会から6大会連続出場(かつ、98年以外は決勝トーナメント進出)を果たしており、特にシーフォが初めて参加した86年大会ではベスト4(第4位)の結果を残す。
シーフォの引退後はマルク・ヴィルモッツが台頭し、98・02大会は彼が中心となった。
しかし、それを最後にヴィルモッツが引退するとそこから次代を担える選手が全然現れず、あっという間に弱体化。06年大会以降、本大会にすら駒を進められなくなる。
この世代のめぼしい選手は、06-14の長きにわたりバイエルン・ミュンヘンに在籍したDFダニエル・ファン・ブイテンが挙げられる程度だろう。

この惨状を受けてベルギーがとった対策は、ユース世代の育成改革。
そしてそれが驚くべき成果をもたらすこととなる。


黄金世代の前に

後に黄金世代と肩を並べることとなる、1つ上の世代の選手について数人紹介する。

  • ヴァンサン・コンパニ(Vincent Kompany)
コンゴ民主共和国人の父を持つ、フィジカルとリーダーシップに長けた闘将タイプのCB。86年生まれ。
2008年、当時は新体制に移行したての中堅だったマンチェスター・シティに移籍。
それから瞬く間に強豪となっていったシティにおいて10年以上にわたって戦力として貢献した。

  • マルアン・フェライニ(Marouane Fellaini-Bakkioui)
モロッコ系の両親を持つMF。87年生まれ。
主戦場はCMFだが、選手としての特徴は、とにかくデカい
身長194cm+アフロヘアーと驚異的なパワーによって空中戦において無類の強さを誇るという、他のポジションならともかくMFとしてはだいぶ異色な特徴を持つ。
しかし、あとは運動量が豊富なだけで足元はイマイチ。
そしてラフプレーが目立つというフィジカル系プレーヤーとしては厳しい短所もある。
かなり評価の分かれる選手だが、エヴァートンに在籍しプレミアリーグにすら通用する「戦術:フェライニ」によってその名を轟かせ、その後マンチェスター・ユナイテッドに6年在籍したという経歴は確かである。

  • ヤン・フェルトンゲン(Jan Bert Lieve Vertonghen)
2020年7月現在、代表歴代最多キャップを有する選手。87年生まれ。
上記2人はベルギーリーグでキャリアを始めているが、彼はアヤックスの下部組織で育ってトップチームへと昇格(1シーズン目はレンタル)。
コンパニ同様CBであり、同世代のベルギー代表であるトーマス・フェルマーレンやトビー・アルデルヴァイレルトと組んで活躍。
2012年からはトッテナムに渡り、トップレベルのクラブにおいて安定してキャリアを築いた選手。


彼らも紛れもなく一流のタレントを持ち合わせており、彼らが主力となった08年北京五輪は第4位という結果を残す。
そんな彼らがさらに経験を積み、そして次代の選手と合流することで、ベルギーの黄金期が始まることとなる。


黄金世代

  • エデン・アザール(Eden Michael Hazard)
91年生まれで、黄金世代の筆頭格。ポジションは主に左ウイング。なんとなく厨二病が羨みそうな名前の持ち主。
フランスのLOSCリールでプロキャリアをスタートし、2012年にチェルシーに移籍してエースとして君臨。
レアル・マドリードのファン、憧れの選手はジネディーヌ・ジダンと公言していた彼は、2019年にはジダン率いるマドリーへと移籍することとなった。

得意技はとにかくドリブル。たとえばリオネル・メッシで同じことを聞いたらシュートやパスを選ぶ者もいると思うが、アザールについてなら100人中100人がドリブルと答えるだろう、純然たるドリブラーである。
トップスピードは突出していないが機敏さに長けており、緩急で抜き去るタイプ。
無論、ドリブルで持ち込んでからのシュートやラストパスの能力にも不足はなく、ゴールとアシストを量産してきた。

両親共にプロサッカー選手であり、2歳下の弟トルガン・アザールもブンデスリーガで活躍して代表に招集されるワールドクラスのプレーヤーである。もっと言うと下の弟2人も揃ってサッカー選手の道を選んだ完全なサッカー一家。


  • ティボー・クルトワ(Thibaut Nicolas Marc Courtois)
92年生まれのGK。
自国ヘンクからチェルシーに渡り(11-18)、一度アトレティコ・マドリードに貸し出されて(11-14)からチェルシーに戻り、そこからレアル・マドリードに移籍(18-)とトップレベルでのプレーを続ける。
見ての通り、アザールとは結構な期間にわたって同僚である。

最大の強みは、199cmというワールドクラスでも稀な長身であり、その手足の長さで「タランチュラ」と綽名される。
もちろんデカいだけで最高峰のGKになるはずもなく、技術的にも卓越したセービング力を誇り、
2020年現在、世界で五指に入るレベルのGKなのは間違いないだろう。
一時期、シーズン中のエリア外セーブ率100%というSGGKめいたデータを残していたこともあったり……

同国の先輩GKとして、同じくプレミアリーグで活躍してリヴァプールの正GKも務めたシモン・ミニョレがいるが、2014W杯、すなわち22歳の時点で28歳の彼をセカンドGKに追いやっている*1

ちなみに、彼はバレーボール一家の生まれで、幼少期はバレーボールをしていたそう。


  • ケヴィン・デ・ブライネ(Kevin De Bruyne)
91年生まれだがアザールやクルトワに比べると若干遅咲きで、
アザールと同じく12年にチェルシーに移籍するもすぐブレーメンにレンタル。
そちらでは活躍するが呼び戻された後は出場機会がほぼなく、出場機会を求めてヴォルフスブルクに移籍(14-15)。
再びブンデスで大活躍を見せた結果、すでに強豪となっていたマンチェスター・シティに移籍して主力として定着し、アザールにも引けを取らない世界最高峰の選手としての評価を確かなものにした。

ポジションはOMF。フォーメーションによって一列前だったり後ろだったりサイドだったりするが、役割は基本的にOMFのそれである。
最大の武器は正確無比なクロス・ラストパス。
プレミアリーグにおいて、リーグ史上最小試合数での50アシスト、史上初の3シーズンにわたっての15アシストという記録を持つ。
その一方で不意に炸裂する強烈なミドルシュートも持ち味であり、19-20シーズンに至っては得点まで10を超えている。
彼にミドルレンジでボールを持たせれば、パスにもシュートにも最大限の警戒を要することとなる。
また、ここまでの評価を見れば想像がつくと思うがフリーキックも結構な名手。

恋人がクルトワに寝取られたというエピソードがある。


  • ロメル・ルカク(Romelu Menama Lukaku Bolingoli)
93年生まれで、黄金世代の中では年下。コンパニ同様、コンゴ民主共和国にルーツを持つ。

ポジションはCFであり、長所はなんと言ってもフィジカル。
圧倒的なパワーに加えてスピードまで兼ね備えた、完全無欠のフィジカルモンスターである。
さすがにテクニックまでは持ち合わせないが最低限の能力は備えており、
そして彼をさらに厄介にしているのが、額面だけ見るといかにも愚直なストライカーなのに
実際にはポストプレーはもちろんサイドに流れたり味方を立てるプレーにも積極的な点。
2018年W杯の日本戦において、絶好の決定機で受けたラストパスをスルーして日本の最終ラインにとどめを刺した決勝点は日本人にとってその象徴と言えるだろう。
代表では2位以下を20点ほどぶっちぎって歴代最多得点を叩き出している。現役で2位につけているのが年上のアザールであるため、この記録が覆ることは当分ないだろう。

一方でクラブキャリアにはいまいち恵まれず、2011年にチェルシーへ移籍した*2がほとんど貸し出されっぱなしで、
結局そのままレンタル先のエヴァートンに正式移籍。
2017年にはマンチェスター・ユナイテッドに渡るも、スタッツこそ高いがなぜか強敵相手にはまるで活躍できない「格下狩り」に収まってしまい、それを払拭できないまま2019年に放出。
移籍先のインテルでようやく、トップレベルのクラブで相応しいパフォーマンスを見せている。
ポテンシャルは誰もが認めるところだが、この点からやや評価を落としがち。

また、彼も兄弟サッカー選手である。
弟のジョルダン・ルカクも代表招集経験があり、ジョルダンのアシストで得点を取ったこともある。


いわゆる前線の選手に3人が固まっているが、示し合わせたようにプレースタイルがバラバラで
1チームに集まっても何ら問題ないというかむしろ完璧に役割分担して共存できたのも、代表にとって幸運であったと言える。
(世代を象徴するスター選手たちのポジションが似通っていて代表では共存がままならない、というのもよくある話である)


ここまでに挙げた4人が頭一つ抜けたトップレベルの選手だが、
欧州4大リーグで活躍するレベルの選手は他にも数多く、上の世代も含めれば他のポジションやリザーバーにも穴らしい穴はない。
量・質共にまさしく黄金期と形容するに相応しい陣容となっている。


黄金期の戦果


2014ブラジルW杯 - ベスト8

黄金世代が新進気鋭の若手として初めてA代表を戦う大舞台。
前述の通り、これまでの2大会では出場すら成らなかったことを鑑みれば大躍進である。
この時ファン・ブイテン(当時36歳)もメンバーに選ばれており、低迷期を戦ったCBは新世代の躍進を同じピッチで見届け、同年をもって現役を引退した。
また、この時代の代表監督はマルク・ヴィルモッツである。

EURO2016 - ベスト8

こちらはグループリーグ突破すら1980年以来であった。
しかしEURO初出場のウェールズ*3に敗北を喫し、ヴィルモッツは本大会をもって解任されることに。

2018ロシアW杯 - ベスト4(第3位)

黄金世代が20代後半に差し掛かり、上の世代も30歳前後の油の乗ったベテランという最高のタイミングで臨んだ本大会。
ヨーロッパ予選では中堅以下ばかりの組とはいえ9勝1分0敗、得失点差+37という圧倒的な強さで勝ち進み、
大会前の時点ですでにFIFAランキングも3位。
8年前には歯牙にもかからない存在へと落ちぶれていたベルギーは、もはや優勝候補の一角と呼ばれるまでになっていた。

グループリーグの相手はパナマ、チュニジア、イングランド
3戦目であったイングランド戦では、すでにどちらも2連勝でグループリーグ突破が決定していたため、
お互い仲良く主力を温存しての戦いになったが、勝利してグループ1位となる。
ちなみに、このベルギー代表は23人中11人がプレミアリーグに在籍しているため、メンバー次第ではほぼプレミアリーグ*4という事態もありえるところであった。

ベスト16で対するは我らが日本代表。
後半開始早々に2失点して0-2というまさかの展開になるも、そこから3点を取り返した逆転劇は世界的にも話題を呼んだ。
準々決勝ではブラジルを上手く制して下すが、準決勝でフランスを崩しきれずに敗れる。
そして、3位決定戦の相手は再びイングランド。
ここに至ってはお互いあえて戦力を出し惜しむ理由もなく、今度は概ねフルメンバーで激突した末に再び勝利。
なお、この時のスタメンは19/22プレミアリーグとなった。

過去最高記録の4位を一歩上回る3位となり、タイトルこそ成らなかったとはいえ、優勝候補の呼び声に恥じないだけの結果は残したと言えるだろう。


大会後、FIFAランキングはついに1位に浮上。
ブラジル、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス、アルゼンチン、オランダという錚々たる面々に並ぶ、史上8ヶ国目のFIFAランキング1位経験国となった。


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最終更新:2020年07月15日 19:54