2017年6月18日巨人vsロッテ戦

登録日:2021/11/14 (日曜日) 9:43:12
更新日:2021/11/15 Mon 11:23:36
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2017年6月18日に行われたセ・パ交流戦の試合。

16日からのこの日までの3連戦で、巨人は前の2試合にいずれも8-0の大差で勝利していたものの、この試合を落とせば球団史上初の交流戦最下位という瀬戸際、さらにこの試合に勝てば高橋由伸監督の就任通算100勝目の節目という事もあり、勢いのままに3連勝を狙う。
ロッテもここまでに20勝45敗と大きく負け越し、これ以上の借金増加は何としても避けたい状況であった。
シーズン半ばの1戦ながら、互いに負けられない戦いとなったこの試合は

巨人・大竹→西村→マシソン→カミネロ→森福→高木勇
ロッテ・佐々木→有吉→松永→大谷→内→益田→大嶺

…と、合計12人の継投、さらに野手は全員出場という総力戦の様相を呈していた。

そんな中、この試合の主役となったのはベンチスタートの亀井善行であった。
この日、2打席連続でホームランを放っていた5番・阿部が右膝を負傷し、亀井は7回からレフトの守備として途中出場。そのまま5番に入った。
だが、代打の切り札としては要所で勝負強さを発揮していたものの、なぜかそれ以外の場面ではまったく打てなくなるという極端な調子の波を抱えていた亀井に対し、ロッテは4番・マギーとの勝負を徹底的に避け、亀井で打ち取る策に出た。

8回裏、1アウト3塁の状況からマギーを敬遠して1、3塁とし、歩かされたマギーはすぐさま盗塁を敢行して2、3塁とチャンスを広げるものの、亀井はキャッチャーフライ、続く陽岱鋼もサードゴロに倒れ、実らず無得点に終わる。

10回裏、1番・辻が出塁して2番・寺内が送りバント、3番・坂本はセカンドゴロに倒れるもその間に3塁へと進塁し再び得点圏のチャンスを迎えるが、再びマギーが歩かされ、直後にまたもマギーが盗塁を決めて2、3塁。
8回裏と全く同じ状況で再び打順は亀井に回って来るが、内角にストレートを差し込まれて空振りの三振。
大事な場面で巡ってきたチャンスを尽く潰してしまった事と2連続敬遠の屈辱を受け、亀井は自らに苛立ちを募らせていた。

ロッテの敬遠策によって攻めあぐねる巨人はリズムを崩したのか、12回表に森福に変わって登板した高木勇がバント処理をミス、直後に満塁から押し出しを与えて2点の勝ち越しを許し、スコアを3-5とする。

そして迎えた12回裏、ロッテは益田に変わって大嶺が登板。
先頭打者の辻がフォアボールを選んで出塁すると、寺内のサードゴロの間に2塁へ、続く坂本がレフトへタイムリーツーベースを放ち4-5として、なおも1アウト2塁とチャンスを繋ぐ。

だが、ここで何としても巨人を振り切って試合を終わらせたいロッテはなおも徹底してマギーとの勝負を避け、この日3度目となる敬遠を与えて再び亀井との勝負を選択。

…この時、ネクストバッターズサークルには鬼の形相で立つ亀井の姿があった。

再びチャンスで迎えた亀井の3打席目。
1球目、フォークで大きく下に外れるボールを空振り。
2球目、外角に大きく外れるストレートを見送ってボール。
この直後、大嶺を一瞥した亀井は「なめんな」と小さく呟いた。

そして投じられた3球目。
内角に甘く入ってきたストレートを見逃さず、亀井は迷わず振り抜いた。


「どうだ!?打った!!打ったァァァァァァ!!サヨナラァァァァッ!!劇的ッ!!亀井が!!亀井の!!怒りの一振りィィィィィ!!3度目の正直!鬼の表情は亀井!亀井が決めましたァァァ!!」


真芯で完璧に捉えた打球は巨人ファンの待つライトスタンド上段に突き刺さった。文句のつけようのない、完璧なサヨナラスリーランホームランであった。

最初は淡々とベースを回っていた亀井であったが、ホームベース上で出迎えていた高橋監督の顔を見た途端、とうとうこらえ切れずに泣き崩れ、そのまま高橋監督の胸に飛び込んで号泣した。
その姿を見た高橋監督も「よくやったな」と労いの言葉をかけ、再三に渡って敬遠を与えられたマギーに肩を支えられ、亀井はベンチへと引き上げていった。

その後のヒーローインタビューでも涙が止まらず「(ここまでチャンスを全て不意にして)心が折れていた。ここで打てなきゃ命を取られるという気持ちで入った。奇跡としか言いようがない。本当に申し訳ないです」と、歓喜と自分への不甲斐なさの入り混じったコメントを残した。

  • チームメートのコメント

  • 3連続敬遠を受けたマギー「最後だけでなく、最初の2つの敬遠も亀井が何とかしてくれる確信があった。彼も感極まっていたし、直接肌に触れて、讃える。それしかできないよ」

  • 12回にタイムリーツーベースを放ってランナーとなっていた坂本「2点差あったけど、辻が先頭でよく出てくれた。さすが亀井さんです」ちなみにマギーが3度目の敬遠をされた直後の映像をよく見ると2塁ベース上で「あーあ怒らせちゃった」とでもいうようなジェスチャーを取っているのが分かる

  • 先頭打者として出塁した辻「亀井さんにマジで鳥肌が立ちました」


2021年、39歳となった亀井はこのシーズンの終了を目前に引退を表明。17年間の現役生活にピリオドを打った。
この時点でのホームランの通算成績は101本。うち7本がサヨナラとここ一番での勝負強さに定評があり、多くのファンに愛された亀井であったが、この試合の一打は特に劇的な名場面としてファン、そして亀井自身も生涯最高のホームランに挙げている。


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最終更新:2021年11月15日 11:23