登録日:2022/01/26 Tue 22:19:20
更新日:2025/03/06 Thu 21:01:52
所要時間:約 5 分で読めます
マードックが何だというのだ?奴などただの小物にすぎない。
観察して、分類して、必要ならば、葬り去り、場合によっては・・・配下にする手もあった。
『Daredevil: Born again』は1986年にマーベルコミックスから出版されたアメコミ作品。(より正確には#227〜#233までのレギュラーシリーズ内で展開された中編ストーリーを後に単行本化。)
+
|
作品情報 |
『Daredevil』#227~#231
発売 1986年2月から
脚本 フランク・ミラー
作画 デビッド・マッツケーリ
|
日本では2011年にヴィレッジブックスから邦訳本(訳:秋友克也)が発売されている。おまけとして前日譚の#226とイラスト集、下書きが収録されている。
デアデビルは1964年にスタン・リー、ビル・エヴェレットによって誕生し、マーベルヒーローの中ではマイナーな部類のキャラクターだったが、1979年にデビューしたばかりのフランク・ミラーがストーリーに携わり一躍人気のキャラクターとなった。
マーベルとしては異質なリアル路線の世界観でクライムコミック好きの作者の嗜好が反映されたハードボイルドなストーリーが特徴。
本作はその中でも特に人気が高い作品である。本作で用いられた
恐れを知らぬ男("The Man Without Fear")は後のミラーのデアデビル作品のタイトルにも使われ、デアデビル自身の代名詞となっている。
当時ミラーは本作と並行して
バットマン:ダークナイト・リターンズを、そしてこの後に再びマッツケーリとのコンビで
バットマン:イヤーワンを発表しており、立て続けに名作が世に送り出されたこの期間はアメコミファンからは正に奇跡の1年として知られる。
デアデビルが宿敵によって全てを奪われどん底に突き落とされるという衝撃的な展開から始まり、仲間の協力を得て再び立ち上がるという胸熱なストーリー。デアデビルの協力者としてベン・ユーリックが登場し、ヒーローではない彼の活躍も重要な要素である。
【物語】
"デアデビル"ことマット・マードックの元恋人で女優崩れのカレンは、麻薬欲しさにデアデビルの正体を売人に売ってしまう。
裏社会を通じてその情報を得たデアデビルの宿敵キングピンは彼を破滅させるために半年以上もの時と膨大な買収金を使った広範囲への周到な計画の下に、敏腕弁護士にして街の名士でもあった彼から社会的信用も財産も住む家も根こそぎ奪い去る。
自宅である高級アパートすらが爆破で奪われる大規模な仕掛けからキングピンが黒幕であることを突き止めたマットは彼のもとに向かうが、待ち構えていたキングピンは反対に疲れ果てて全力には程遠いマットを散々に痛めつけて酔客に偽装してタクシー毎に川の底に沈める。
デアデビルを始末したとして、安堵するキングピン。
だが、彼の死体は上がらなかった。
マットは脅威の執念で死の淵から脱出したのだ。
自身の甘さを痛感したキングピンは新たな刺客"ヌーク"を差し向ける。
同じ頃、新聞記者、ベン・ユーリックはマットが危機に立たされていることを知りキングピンの脅迫に苦しみながらも行動を起こす決意をする。
【登場人物】
昼は弁護士として、夜はクライムファイター"デアデビル"として悪と戦う盲目のヒーロー。
本作では宿敵に正体を知られてしまったことによりシリーズ最大の窮地に陥る。
マーベルヒーローの中でも地味とされていたデアデビルだが、数年前にハードボイルド物を得意とするフランク・ミラーが担当となったことから渋好みのファンに支えられて徐々に人気を集め始めており、
この『ボーン・アゲイン』と関連エピソードは、そのフランク・ミラーの復帰作にしてミラーが起こしていたムーブメントの最高潮とも呼べる企画であった。
本作での傷つき絶望しながらも最終的に力強く立ち上がる姿は「ヒーローとはどのような存在なのか」を読者に力強く訴えかける。
ニューヨークの裏社会の帝王であり、同地区を活動拠点とするクライムファイターであるスパイダーマンやデアデビルの宿敵。
身長2m超え、体重も200kgを超える非常な巨漢。
一見すると単なる肥満体に見えるが、実際には脂肪の塊どころか独自に“相撲”のトレーニングを学ぶ中で限界まで鍛え上げられた常人を遥かに超えるレペルの怪力を生み出せる筋肉の塊であり、実は超能力を持たない人間としてはMARVELでも最高レベルの達人の一人。それはもう超人ではないのか?
本作でも疲弊していた状態とはいえ、デアデビルであるマットを真正面から素手のみで打ち倒している。
デアデビルの正体を知ったことで裏社会での権力をフル活用し、マットの人生を文字通り破滅させていく。
表の顔は慈善事業家として知られ裏稼業を隠すために自ら手を汚すことを望まないが、その姿勢が結果的に仇となる。
……実は、頼まれれば全ての地位を失う選択すら出来た程に愛している最愛の妻バネッサが敵対組織に誘拐された際に起きた事故により幼児退行を起こした末に、それを治療できる可能性を持つ精神科医のポール・モンダットに言うことを聞かせる為にキングピンが彼の盲目の妻を誘拐した事件━━を解決したのがデアデビル(フランク・ミラー&ビル・シンケビッチ『デアデビル:ラブ&ウォー』)であり、事件の末に治療の中で主治医として絶対的な信頼を勝ち取ったモンダットは妻を取り戻した後にバネッサを治療の為に自国に連れ帰ったのだが、そのことでバネッサと離れ離れになったことを逆恨みしていたのが今回の事件の発端となったのである。
本作での組織のカリスマとしての冷徹かつ強大なヴィランぶりは読者を震え上がらせ、マーベルのメインヴィランとして一気に知名度を高めた。だからといって超人であるスパイダーマンまで殴り殺せるようになるとは……
本作のもう一人の主人公。『スパイダーマン』でお馴染みJJが社長を務めるデイリービューグルに務める新聞記者。
取材を通してデアデビルの正体を知った後にマットの生き様に感服して正体を暴く代わりに協力者となった数少ない表の友人であり、長年キングピンの悪事を追い続けてきた。
キングピンの脅迫によって友人や家族に危害が及び何度も心折れそうになるが、ジャーナリストとしての使命を全うする、彼もまた「恐れを知らない男」である。
NY市警のベテラン刑事。
清廉潔白で知られ、デアデビルとも友好的な関係にあったが心臓病の息子の治療の援助と引き換えにマットの破滅に加担させられる。
治療の甲斐なく息子を失った後にベンに真相を話そうとするもロイスの手で半身不随の身に。
……それでも尚もベンに真相を明かそうとしたが、今度こそロイスに殺害されてしまう。しかし、その死の間際を伝えた電話はベンに恐怖と共に立ち上がる勇気を与えた。
マノリスの息子の担当看護師。
成人男性を越える巨体の持ち主で、実はキングピンの刺客。
裏切ったマノリスを痛めつけてベンの指を折った張本人だが、マノリスを殺した件をベンに記事にされたことで暴走。
ベンの家に押しかけて口封じにかかるがマットには敵わず打ち倒された後に、真相を話そうとした所を別の刺客に殺害される。
かつては“グラディエーター”を名乗って、恵まれた屈強な肉体を利用して犯罪行為を行っていたスーパーな力は持たないこど名有りのヴィランであったものの、デアデビルに敗れ続ける中で親交を結び、デアデビルの協力を得て更生した。
現在は手先の器用さを活かしてコスチューム屋を営んでいる。
前日譚の#226は、彼が恋人でカウンセラーのベッツィーを救うべく再び犯罪に手を染めたのをデアデビルが救う話。
デアデビルの生還を知ったキングピンが差し向けた刺客。本名はシンプソン。
ベトナム帰還兵であり顔に星条旗のペイントを施し、星条旗カラーのドラッグを使用する。
実は、彼もまたキャプテン・アメリカから連綿と米軍内部により誕生計画が受け継がれてきた別タイプの“超人兵士”であり、その肉体には改造手術が施されている。
マットが潜む貧民街ヘルズ・キッチンをナパームと重機関銃で襲撃して混乱に陥れるも、デアデビルとの対決の末にまさかの相手と対峙することに。
マットの元恋人で落ちぶれた女優。
初期レギュラーの一人で、マットとフォギーに雇われていた時には二人から想いを寄せられていた。
しかし、デアデビルのファンであったことから二人を躱していたものの、そのデアデビルの正体がマットと知ったことから恋仲に。
一時は結婚まで考えていたものの、夢である女優の道が拓けたことから彼の下を去り━━今回の物語が始まる。
麻薬中毒に苦しんでおり麻薬を買うためにデアデビルの正体を売ってしまう。
その後、それが原因で自分の命も狙われたことから恥知らずにもマットに救いを求めようとするも、その過程の中でマットが自分のせいで破滅させられたことをフォギーから聞かされることに……。
紛れもない本作の元凶だが、中毒に苦しみながらもマットに会うために男に身体を売るなど、弱々しい姿を晒しながらも最終的には助けてもらおうとだけしていたマットを反対に命をかけてでも助けることで己の罪を償おうとする彼女は間違いなく本作のヒロインにして、本エピソードを象徴するキャラクターである。
マットの親友で弁護士。愛称はフォギー。彼の裏の顔は知らない。
彼もまたキングピンの罠にハマったことでマットとの共同オフィスを失い、喧嘩までしていた。
しかし、突如として訴訟の嵐に巻き込まれた彼の冤罪を晴らすために尽力するも力及ばずに離れ離れとなってしまうことに……。
助けを求めたカレンを保護する。
尚、少し前に離婚したばかりでありグローリをマットに紹介したのはフォギーだったものの、グローリがマットに別れを切り出した関係から急接近することになる。
マットの現在の恋人だが、色々とあった末に作中冒頭にて別れを切り出す。
アイルランド出身で、家族が参加していた関係から彼女自身もIRAの闘士だった過去があり見た目によらず胆力があるものの、彼女自身もキングピンの嫌がらせの被害に遭う中で助けを求めたフォギーと急接近することになる。
カメラが趣味で、その素人離れした腕前は何気ない写真を見ただけでベンがフォギーに彼女に繋いでくれるように頼んだ程。
実際に、後半からはピーター・パーカーなんかと同じくビューグルの雇われカメラマンとなったらしく、ベンに帯同してキングピン絡みの事件の証拠集めに貢献する。
新聞社デイリービューグルの編集長。
ベンの理解者でありキングピンの脅迫に動揺する彼にジャーナリストとしての矜持を説き力強く後押しする。
スパイダーマン最大の宿敵として有名なキャラクターだが、本作での彼のセリフは本作屈指の名言。
貧民街にある教会にて傷病者の看護をしている中年のシスター。
正体を隠しているが、実は幼い頃に出ていったきりとなっていたマットの母親。
偶然にも亡父のジムを訪れたことで、死の淵を彷徨っていた息子の命を救う。
アベンジャーズ
悩める愛国者ヒーロー。
ヌークのテロ行為を聞きつけて自ら事態の収拾に乗り出した。
ヌークが自分と同じ“超人兵士”であったことを知り、ある意味では“国家”への反逆行為を冒しながらも、仕えるのは政府や軍ではなく“国土”そのものだとして、軍の情報部にアクセスして彼の正体を突き止める。その後、尋問中に暴走して脱走したヌークを同じ“超人兵士”の先達として打ち倒す。
スーツはマークⅤ。
ヌークの起こした騒動に対し出撃。
ヌークを取り押さえたデアデビルに対し、ビル一棟も簡単に倒せるバワーを示して、手を引くように忠告する。
大雨を降らせヌークの砲撃によって起きたヘルズ・キッチンの火災を鎮火する。
【余談】
Netflix配信ドラマ『デアデビル』のシーズン3は本作の強い影響を受けている。
市長でも、大統領だろうとひっくり返せる500万人の読者は追記、修正お願いします。
- DKRもそうだけど、フランク・ミラーはヒーローの肉体面での限界を描きつつ、彼らの強靭なメンタルを引き立てる作風が特徴的。 ゴードンやユーリックに焦点を当てるのも同様。 -- 名無しさん (2022-01-26 22:30:51)
- デアデビルの正体がバレた理由が元恋人が薬物中毒で情報を売ったというのが生々しいな -- 名無しさん (2022-01-26 23:00:41)
- MCUでドラマ化されるらしいから再販してほしい -- 名無しさん (2022-08-17 19:11:51)
- 最後のアベンジャーズの乱入はファンの間でも結構評価が分かれてる。 加えてラスボスはヌークでなくキャップであるべきだったという意見も多い。 -- 名無しさん (2022-12-12 12:37:38)
最終更新:2025年03月06日 21:01