ペリリュー ―楽園のゲルニカ―

登録日:2022/02/03(木曜日) 23:30:00
更新日:2025/03/14 Fri 09:37:50
所要時間:約 5 分で読めます





母さん、僕は明日、死ぬかもしれません。

【概要】

「ペリリュー ―楽園のゲルニカ― 」は『ヤングアニマル』(白泉社)にて連載されていた、日本の戦争漫画。
作者は武田一義。
太平洋戦争研究会の平塚柾緒氏を原案協力としている。

2016年4号から2021年8号まで連載され、現在は外伝が不定期で連載中。
本編の話数は全87話。単行本は全11巻。

戦争漫画としては異例の80万部の売上を出し、ちばてつや氏など著名な人物からも評価が高い。
下記のように、いくつか賞も受賞している。
  • 第25回手塚治虫文化賞 マンガ大賞ノミネート
  • 第46回日本漫画家協会賞 優秀賞受賞
  • このマンガがすごい!!2022オトコ編 第9位

2025年1月16日に映画化が発表された。
続報が期待される。



ストーリーの舞台は、太平洋戦争末期・昭和19年のパラオ諸島*1・ペリリュー島。
米国軍が攻めてくるこの島で、まともな物資もないまま生きるため、或いは戦争に勝利するために奮闘する兵士たちを描く。

この漫画の、というより作者の武田氏の特徴として、登場人物たちが、三頭身の愛らしい姿で描かれている。
ついほっぺをもちもちしたくなるような主人公たちが、人体損傷、過酷な飢え、劣悪な衛生環境など、凄惨な戦地で翻弄される。目を背けたくなる描写が非常に多いが、この絵のおかげでなんとか読めるという読者も多い。(逆にエグいという声もあるが)
またこうした過酷な戦地で生まれる兵士どうしの強い絆、いわゆるブロマンスも今作の見どころ。


ちなみに、史実を参考にしているがあくまでフィクションであり、実在の人物・団体・事件などは関係ない。
また、漫画としての見やすさを重視して、兵士の服装などリアルとは違うところもある。


【登場人物】


  • 田丸均
今作の主人公。21歳。階級は一等兵。どんな目にあってもメガネだけは壊れない。
基本的いつもオドオドしており鈍臭い。気弱で人並みに臆病なので争いごとも苦手。所謂、凡人
しかし弾丸が放たれる場所で、負傷した仲間を助け起こすなど、非常に優しく仲間思い。
また小さい頃から絵を描くのが好きで、戦時中でも暇さえあれば絵を描いている。作中のキャラの中でも比較的精神的に安定だったのは、趣味の絵があったからではと本人も予想している。
頭が良い訳ではないが特別悪い訳ではなく、時たまアイデアを出して周りを助けており、また絵描き故の観察眼も役立つ事もある。
将来は漫画家になるのが夢で、召集される前は雑誌に載ったこともあったという。それを見た島田から、兵士の最後を遺族に伝える功績係に任命される。

  • 吉敷佳助
21歳。階級は上等兵。
準主人公。田丸たち一等兵と同期だが、優秀なため一人だけ上等兵に抜擢された。
米農家の生まれで、小さい頃から家の仕事をしていたら大人になっており、趣味などに時間を費やす時間はなかったという。
特にそれに悲観をすることはなかったが、軍に入り新しいことを覚えることは、持ち前の才能もあって楽しい時間だった。この事もあって初期は国のために戦うことに意気揚揚としており、米国への対抗心も強かった。
凡人の田丸と違い、軍人としては間違いなく傑物。高い技量や勇敢さだけでなく、生き残りをまとめるリーダーシップも持つ。主人公かな?
だが、元々優しく仲間思いで正義感も強いため、性格が殺し合いに合ってない。

  • 島田洋平
22歳。階級は少尉。
卓越した判断力と指揮力で、田丸たち生き残りを導く指揮官。
非常に高潔かつ仲間思いで、仲間のために何度も涙を流し、死んでいった者たちの為にも、戦争に勝利することを信条とする。
その人柄とカリスマ性から、読者からも上司にしたいと人気。

  • 小杉三郎
階級は伍長。
田丸と吉敷の初陣の際、一緒に生き残った上官。
頭も良く指揮力がない訳ではないが、自身が生き残るためを第一としているので、そのためなら部下を利用する面がある。
胡散臭い受け答えしかしないので、吉敷からも怪しまれている。
子どもには優しい一面も。

  • 片倉憲伸
階級は兵長。
的確に敵を殺す高い技量と、優秀な判断力と行動力を持ち島田からも頼りにされている。
指揮力も高く、分隊を率いて米兵を殺す役割を担っている(吉敷も一時期この分隊に入っていた)。
だが殺した敵の陵辱など過激な面があり、規律を乱した者や足で纏いを殺したりと、味方にも容赦がないおっかない人。

  • 泉庸一
田丸と同期で、階級は一等兵。
劣悪な環境の中で、仲間を励ますなど優しく献身的。
二等兵の頃に島田に助けられて依頼、彼を尊敬している。
とある理由から両親と折り合いが悪いらしく、多くの者が故郷の日本に帰ることを望む中、彼は帰りたくないと語る。

  • 入来周作
中盤から登場する。
年齢は二十代後半と今作の中では年長者。
召集される前は東京の商社に勤めており、日本には身重の妻がいるとのこと。
ややくたびれた風の男性だが年長者らしく落ち着いている。
また仲間の中で唯一英語が話せるので度々生かして活躍する。

  • 小山
田丸と同期で階級は一等兵。
田丸が軍に入って初めてできた友達。
よく田丸をからかって一緒に行動していた。




でも、やっぱり生きていたいのです。



追記・修正はスコールで体を洗ってからお願いします。

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最終更新:2025年03月14日 09:37

*1 この当時のパラオは1919年から大日本帝国の「委任統治領」とされており、島々は日本の南太平洋における拠点の一つとなっていた。なお戦後は日本が降伏の代償として海外領土を手放したためアメリカの信託統治領となり、1994年に独立するまでアメリカの支配下に置かれる事になる