グレムリン2 新・種・誕・生

登録日:2022/12/21 (水) 09:26:31
更新日:2024/12/23 Mon 16:34:01
所要時間:約 13 分で読めます





あの3つの約束を決して忘れてはいけない。

もし、忘れると……

いままた、新たなグレムリンが誕生する。



『グレムリン2新・種・誕・生(原:Gremlins 2 :New Batch)』は、1990年に公開されたホラーコメディ&パニック映画。
1984年に公開された『グレムリン』の続編。

●目次

【概要】

実に6年越しに公開された大ヒット作品『グレムリン』の続編で、前作の大成功を受けて企画自体は前作の公開後から直ぐに進められていた。
……しかし、前作を成功させた立役者である監督のジョー・ダンテが「『グレムリン』は一作で十分」として企画に関わるのを固辞していたために、ダンテ抜きで企画を練ろうとしていた。
が、結局どれもうまく行かなかったことから遂には配給のワーナーが「前作の5倍の制作費を出すから自由に作ってよい」という破格の条件を出してダンテに再度の打診を行った。

これを受けてダンテは改めて仕事を受けると共に、前作の直接の続編として企画を纏めあげて制作がスタートされた。
かなりの時間を経ての制作となった訳だが、前作から引き続き登場するキャストもおり、主演も前作と同じくザック・ギャリガンとフィービー・ケイツである。

内容的には前述の潤沢な資金を活かしたやりたい放題にも程があるものとなっており、開幕のバッグス・バニーのアニメーションから始まり、ギズモに反撃の覚悟を決めさせた存在として『ランボー』(怒りの脱出)の一場面が登場してきたり、いきなり映画が途切れたりとストーリーはしっかりとしている反面、同時にカオスな作りにもなっている。

ゲストも豪華で、全盛期のハルク・ホーガンが唐突に登場したり、本シリーズの他、前述の『ランボー』シリーズや『スター・トレック』や『オーメン』の作曲家として知られるジェリー・ゴールドスミスがチョイ役で出演していたり、往年の怪奇映画のスターであるクリストファー・リーが騒動の一端を担う科学者役で出演している。
また、前作『グレムリン』に低評価を下した著名な映画評論家であるレナード・マルティン自身を登場させてギャグテイストとはいえ惨たらしく殺害してしまう等、正攻法でもブラックユーモアでもメタでも突き抜けた演出が盛り込まれている。


【物語】

前作のキングストン・フェールズでの騒動から数年後。
ビリーとケイトは大都会NYまで出てきて、共に不動産王ダニエル・クランプの“クランプ・センター”にて別部署ながら働きつつも、将来の結婚を夢見て同棲生活を送っていた。
……そんな中、クランプが推し進める強引な再開発計画が老朽化したチャイナタウンに及ぶ中でも強固に立ち退きに応じていなかったミスター・ウィングだったが病により命が尽きてしまい、主の居なくなった骨董店もダウンタウンと共に無惨に破壊されてしまうのだった。

こうしてミスター・ウィングを失い放り出されてしまったギズモを捕まえたのは、偶然にも実験に使える面白いものを探しにやって来ていた、センターにて怪しげな実験を行っているカテーテル博士の遺伝子研究所の所員。
早速、実験用のモルモットとされてしまったギズモであったが、配達員が口ずさんでいたギズモの歌から研究所に居ることを知ったビリーに救い出されて匿われることに。
……しかし、部屋に連れ帰る前の一悶着からビリーはギズモの回収をケイトに託すが、その間に好奇心から外に出て迂闊にも水を浴びてしまったギズモからまたもや4匹の悪のモグワイが誕生。
ギズモを排気ダクトに監禁すると、一匹がギズモに成り代わってケイトに連れ帰られてしまう一方で、センターに残った三匹は早速のイタズラを行いつつもアイスクリーム屋に潜み、0時過ぎに食事を摂って繭へと変化するのであった。

クランプ会長に気に入られたのを見た女上司の強引な誘惑を振り切り部屋へと戻ったビリーだったが、ケイトが連れ帰ってきたのがギズモではないと知り、何が起こったのかを悟ると、二人は悪い予感を感じつつも深夜のクランプ・センターへ。
そこでは、早速の大混乱が起きており、自分なりに何とか食い止めようとしたビリーだったが、話が通じずにガードマンに警察に突き出されてしまい、ケイトが釈放してくれたのは翌朝……。

既に“グレムリン”が孵化していることを覚悟しつつセンターへと向かうビリーとケイトは果たして事態を収めることが出来るのか……!?

【登場人物】

※吹替はソフト版(配信含む)/テレビ朝日版の順。

  • ビリー(ウィリアム)・ペルツァー
演:ザック・ギャリガン/声:関俊彦
本作でも主人公で相変わらず童顔。
色々あって故郷から遠く離れたNYにやって来てクランプ・センターにて得意の絵を活かしてデザイナーとして雇われていた。
全くセンスのない女上司の下に居ることもあってか全く仕事ぶりが評価されずストレスを溜めている有り様であったが、気まぐれに視察にやって来たクランプ会長には気に入られ、直ぐに名前を覚えられることに。
前回の騒動が骨身に染みていたようで、今回はグレムリンの誕生と拡散にも直接的には関わっておらず、事態の集収においても活躍を見せる。


  • ケイト(キャサリン)・ペリンジャー
演:フィービー・ケイツ/声:玉川紗己子
ビリーの恋人で、色々あって故郷を出たビリーにくっついて来ていたようで、二人の将来の為に同棲しつつビリーが職を得たクランプ・センターにてコンパニオンとして働いていた。
前回の騒動を経てグレムリンとそれを生んだギズモにトラウマを抱えたらしく、前作の後半では殆どギズモと一緒にいたにもかかわらず、ビリーに保護したギズモを連れ帰るように頼まれた時には拒否反応を示していた。
……その上、それが仇になってギズモが本物かどうか確かめきることが出来なかったとも思われ、間違って連れ帰った“ダフィー”に酷い目に遭わされていた。
ビリーを釈放した後は取り敢えずシフトに入っていたのだが、目の前でグレムリンが増殖する様を目撃。
その後は自分なりにグレムリンに立ち向かいつつ、ビリーと共に事態の集収に尽力する。
前作にもあった唐突に過去のトラウマを語り出す場面が今回も登場しており(今回はリンカーン大統領と記念日ネタ)、スタッフからも賛否両論だったアレをメタ的に取り入れた演出だと思われる。
……尚、流石に前回のは不謹慎すぎたと反省したのか今回は途中でビリーに話を切られている。


  • ギズモ
本作の真の主人公にして全ての元凶
ミスター・ウィングを失い一人ぼっちになってしまった所をマーティンに捕まりカテーテル博士の研究所に囚われたものの、運良く解剖をされる前にビリーに救い出される。
…そのまま大人しく部屋に連れ帰られればよかったのだが、ケイトに保護される前に言いつけを守らずに引き出しから外に出ている間に水を引っ被ってしまい再び悪の分身を生み出すことに。
その後は、前回に続いて自分の分身達にいたぶられていたが、事態が悪化する中で憧れの『ランボー』の勇姿と言葉を胸に勇気を奮い起こし、グレムリン共に立ち向かうことを決意する。

  • ダニエル・クランプ
演:ジョン・グローヴァー/声:山寺宏一/野沢那智
NYの不動産王で、ビリーとケイトが働くハイテクタワー“クランプ・センター”の主。
強引な買収や開発を行っているようだが、当人は悪気も裏表もない人物であり、子供じみた好奇心と感性が莫大な資産で歯止めがきかなくなっている感じ。
実際、強引な立ち退きをする一方で元の店舗なり施設をセンター内に移転させて更に従業員として雇い入れて資金まで提供しているようで、それがカテーテル博士のような危険人物が内部に入り込んでいた理由である。そのため、よくよく考えるとミスター・ウィングは立ち退きに応じていれば病の治療を受ける機会を得ていたかもしれないという可能性も。
そのため、ビリーとも性格が合うなど悪辣なビジネスマンである部下達とは微妙に感性がズレている様子が見てとれる。
グレムリンの増殖と騒動については決して自分が悪いわけではないのだが、混乱の原因は自分にあると思い込み情報管制を敷こうとしたりしていたもののグランパ・フレッドの暴走から失敗。
賠償を覚悟してそれなりに落ち込んでいたものの、ビリーの機転により反対に街を救った英雄になれると唆されて事態の集収に協力する。
モデルはマイタワー持ちなのも含め明らかに後のアメリカ大統領ドナルド・トランプ。


  • グランパ・フレッド
演:ロバート・プロスキー/声:宮内幸平/辻村真人
クランプ・センター内にスタジオがあるCCNの老キャスターで、若い頃は花形である報道に進みたかったとのことだが、失敗した今では場末の古いホラー映画専門チャンネルの司会をしている。
番組では常にドラキュラの格好をしている。
同番組が好きなビリーとは顔馴染みとなり、親しくしていたが当人はなかなかの野心家。
グレムリンの増殖による大混乱の中、内部から現場リポートすることを思いつく。


  • カツジ
演:ゲディ・ワタナベ/声:梅津秀行
クランプ・センターの見学ツアーに参加していた日本人観光客。
当時の日本人観光客のイメージ通りの自他共に認めるカメラ小僧で、撮影スタジオにて料理番組を収録中なのにも構わずにフラッシュを焚こうとしてケイトに窘められていた。
大混乱の中でも興味津々で逃げずに撮影していた所をグランパ・フレッドに捕まり、専属カメラマンとして帯同させられることに。


  • フォースター
演:ロバート・ピカード/声:大塚明夫/石塚運昇
クランプ会長の腹心で、センターのセキュリティ管轄から対外交渉、宣伝等を幅広く手掛けており、ミスター・ウィングの骨董店にも立ち退きを強要しに足繁く通っていた。
酷薄な性格でミスをした人間は容赦なくクビにする等、面白さと感性第一のクランプ会長とは微妙に話が合わない所もあり、当初は冷たい態度をとり事態の原因とすら思っていたというか責任を押し付けようと思っていたビリーが会長に気に入られた後は渋々ながら自分を納得させて素直に頼るようになった。
しかし、自分の常識の埒外の事態の中で変異したグレムリンの一匹である“ガール”に一目惚れされ、何処かへと逃げ出してしまう。


  • マーラ・ブラッドストーン
演:ハヴィランド・モリス/声:勝生真沙子/小山茉美
ビリーの直属の上司で、なかなかの美人だがヘビースモーカー。
出世欲に取り憑かれており、感性の合わないビリーに毎日のように文句をつけていたが、ビリーがクランプ会長に気に入られたのを見て掌を返して強引に食事に誘いあまつさえ誘惑までした。
大騒動の中では全くの役立たずで“モホーク”の巣に捕まってしまうものの、ビリーを強引に誘った相手だと見抜かれていたケイトに敵愾心を持たれつつも助けられた時には素直に自分が悪かったと認めていた。
ビリー達と合流したときも役立たずであったが、事態の収集後にそれまでは全く視界に入っていなかったクランプ会長に見初められ、いきなり新しい宣伝部長に任命される等、出世も恋も叶えた模様。

  • カテーテル博士
演:クリストファー・リー/声:大木民夫
敷地を買収されたことで新たにセンター内にテナントを構えた怪しげな遺伝子工学研究所の所長で、資金提供を受けられるようになった今では倫理的にアウトな生体実験も含めたやりたい放題をしている超危険人物。
今回の元凶の一人。
世界中から細菌のサンプルを集めては危険なナニカを創造している。
所員にも双子のチビデブのマーティンとルイス、妙に陽気なウォリーといった個性派が揃っており、ドブネズミで発電したり、潰れないトマトを作ったりとやりたい放題で、そんな調子なのでグレムリンを見ても誰かの新しい実験の産物かと勘違いしていた。
自分達の作った怪しげな薬や遺伝子サンプルを取り込むことで異常に知能が発達したグレムリンの“ブレイン”が誕生し、自分達の実験を利用してグレムリンが進化するのを目の当たりにして漸く自らの行いを反省。
やって来たビリーに協力しようとするも“エレキ”に殺されてしまう。


  • マレー・ファッターマン
演:ディック・ミラー/声:西川幾雄
  • シェイラ・ファッターマン
演:ジャッキー・ジョセフ/声:さとうあい/寺内よりえ
キングストン・フィールドの住人で、ビリーやケイトとは親しい間柄のご近所さん。
NY観光のついでにビリー達の部屋にも泊めてもらうことになっていたが、偽ギズモに手を焼いている所だったので断られても怒りもしなかった出来た人達。
夫のマレーは相変わらず外国製品が嫌いで、前回の事件のトラウマから病院通いになっていたことを妻のシェイラにも心配されていたが、再びグレムリンを目の当たりにしたときは反対に立ち向かう勇気が湧いたようで、外に飛び出してきた“バット”を倒してしまうと、何と隙を突いて大混乱のセンター内へ。
ビリーの窮地を救った後は協力して事態の集収に尽力すると共に、見事にトラウマも払拭してみせた。


【主なグレムリン達】


  • モホーク
原:フランク・ウェルカー/声:龍田直樹/長島雄一(チョー)
ギズモから生まれた4匹のモグワイの内の一匹で、前作のストライプを彷彿とさせる高い知能と残忍性を持つ。
しかし、グレムリン化してからはギズモ苛めに夢中になっていたこともあってかストライプのように主導的な立場を取ることはなく、クモの遺伝子を取り込み“スパイダーモホーク”に進化していたのに、バカにしていたギズモに『ランボー』を気取った火矢を打ち込まれて滅ぼされてしまう。


  • ダフィー
  • ジョージ
  • レニー
原:マーク・ドッドソン/声:龍田直樹/増岡弘
ギズモから生まれた4匹のモグワイの一匹達で、それぞれに個性的でグレムリン化した後も特徴が残されている。
いつも両目をグルグルと回していて落ち着かない“ダフィー”はギズモと間違って連れ帰られた個体で、無理やりに追い出されたのを恨んでかグレムリン化した後にビリーを襲った。
親父顔だが苦労症の“ジョージ”は世話を焼いているのにバカな“レニー”が投げたものを当てられていた。

  • ブレイン
原:トニー・ランドール/声:緒方賢一
カテーテル博士の研究所に出現したグレムリンで、脳ホルモンを吸収したことで高い知能を獲得し、研究所の危険な薬品や遺伝子サンプルが自分達を進化させることに気付くと“バット”を生み出す等、物語の後半にかけてグレムリン達のリーダーとして活躍した。
知能が高くなってからは流暢に人間の言葉を話し凸眼鏡を掛けている。
残虐ながらウイットに富んだ性格で、暴れ回るだけの同族を野蛮と評しつつも人間の文化を吸収するために外に飛び出すことを提唱して歌まで歌っていた。
しかし、生まれてから間もないためかビリーの提案した“タワー内の時間を進めておく”作戦と“外から幕をかけて日没を分からなくする”作戦に引っかかり、自分達には恵みの雨だと思っていたスプリンクラーのシャワーを浴びせられ……。
ちなみに小説版では“ミスター眼鏡(グラス)”という名前になっていた。


  • バット
カテーテル研究所に出現したグレムリンで、知能を獲得したブレインの実験でコウモリの遺伝子で羽根を*1、日焼け止め遺伝子で種族の弱点であった日光への耐性を獲得して外に飛び出した。
その悪魔的な姿で街の人々を驚かせ、トラウマを発動させて騒ぐマレー・ファッターマンを襲うも、逆襲されて側にあったセメントに漬け込まれてしまい、逃げ出したものが身体が乾いてタワーに着地した所でガーゴイルのように固まってしまった。


  • ベジタブル
カテーテル研究所に出現。
野菜の遺伝子を取り込んで植物化してしまった。


  • エレキ
カテーテル研究所に出現。
電気の素を取り込み、肉体を失って電気と化してしまう。
カテーテル博士を殺害した後は会長室の電話の中に閉じ込められていたが、ビリーに逆転の一手としてスプリンクラーの水を浴びせられて増殖状態となり動きが止まった仲間達の所へ解放され、ロビーにいた連中を焼き殺すと共に自らも存在を維持出来なくなり消滅することになった。


  • ガール
声:向井真理子/川浪葉子
カテーテル研究所に出現。
性ホルモンを吸収してセクシーな女性と化した個体で、フォースターに一目惚れして追いかけていた。
特に悪いこともしていなければ企んでもおらず、外に出ていこうとした同族達に歌のパフォーマンスを贈った後はセンター内に戻りフォースターを探しており、唯一生き残ったグレムリンとなる。
マリリン・モンローを彷彿とさせるキャラ造型だったためか、ソフト版吹替ではモンローの吹替声優である向井真理子がキャスティングされている。




●アニヲタ三つの約束


一.コメ欄を荒らさない


一.煽りを吹っかけない


一.追記修正は用法を守る

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  • ブレイン
  • 1990年
最終更新:2024年12月23日 16:34

*1 作中では「空を飛ぶ唯一の哺乳類」と紛らわしい翻訳となっているが、本物のコウモリと違って、腕とは別に羽根が生えたことを指している。