グレムリン(映画)

登録日:2015/12/24 (木) 22:30:34
更新日:2024/01/18 Thu 22:03:58
所要時間:約 9 分で読めます




可愛くて、頭が良くて、いたずら好き。

知的で、そしてとても、危険。





【概要】


『グレムリン(Gremlins)』は84年に公開されたアメリカのモンスターコメディ映画。
クリスマスの夜を舞台に、チャイナタウンから持ち込まれた可愛らしい生物が、
決して犯してはならない約束を破り凶暴な怪物に変身し、街を騒乱の渦に追い込む。
あらすじだけ見るとB級モンスター映画の典型のように思われるが、変身前のモグワイの可愛らしさと変身後のグレムリンのキモさとのギャップが、
怖さだけにはとどまらない何とも言えない愛らしさに落とし込んでくれている。
また、作中こまめに挟まれる不謹慎なギャグで、一応死人が出ているにもかかわらず気軽に楽しめる一品である。

製作には名映画監督スティーブン・スピルバーグ、監督は『ピラニア』、『インナースペース』のジョー・ダンテ。
脚本には後に『ホーム・アローン』、『ハリー・ポッターと賢者の石』を監督するクリス・コロンバスが担当。
コミカルな作風と、ダンテのホラー演出との絶妙なバランスが楽しめる。

ちなみにオープニングでの町の広場は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と同じセットである。

続編に『グレムリン2 新・種・誕・生』、前日譚にアニメシリーズ『Gremlins: Secrets of the Mogwai(原題)』がある。

【物語】


アメリカの小さな町、キングトン・フェールズ。
そこに住む青年、ビリーは仲のいい両親や友人に囲まれて暮らす、うだつの上がらない銀行員だ。
もうすぐクリスマスだというのに、片想いの同僚・ケイトに告白することも出来ず途方に暮れる毎日を送るビリー。

そんな中ビリーは、出張から帰ってきた父に、クリスマスプレゼントとして一匹の生き物を贈られる。
そのネズミか猿かに似ている奇妙な生き物「モグワイ」は、チャイナタウンの骨董品店で飼われていたという。
ビリーはそのモグワイを「ギズモ」と名付け、とても可愛がるが、彼はモグワイを飼うにあたって守らなくてはならない三つの約束事を教えられる。

一.光を当てない。
一.水をかけない。
一.夜中の零時過ぎに食べ物を決して与えない。

守るのは簡単だ、とたかを括っていたビリー。
だが誤ってコップの水をギズモにかけてしまうと、なんとギズモの背中から飛び出した毛玉が、同じ数のモグワイの同種に成長した。
それを仲間が増えたと思って、ビリーはむしろ歓迎していたし、友人や周囲の人間も大事のように思っていなかった。
しかし、遂にビリーは真夜中に腹をすかせて騒ぐモグワイたちを落ち着かせるために、時計が止まっていることに気付かずチキンを振る舞ってしまう。

次の朝、ギズモ以外のモグワイたちは不気味な繭に姿を変え、やがてそれを突き破った彼らは「豹変」していた。
モグワイは小さくとも凶暴で狡猾な怪物「グレムリン」となり、本能のまま悪行の限りを尽くしながら、町へと繰り出したのである…!
ビリーとギズモは彼らの暴走を止めるために奔走するが、勝手に仲間を増やしたグレムリンは、聖夜の町を狂乱の渦に変えていく…。


【登場人物】


  • ビリー・ペルツァー
演:ザック・ギャリガン 吹替:関俊彦
主人公。童顔なのでかなり若く見えるが実は成人で、きちんと就職している。性格も至って善良で、ギズモとも確かな信頼関係を築いた。
奥手でヘタレな銀行員で、クレーマーや口うるさい上司にいつもやり込められる。愛犬を連れてきて机に隠すなど勤務態度もあまりよろしくない。
扱いに厳重な注意が必要なペットを飼うや否や、飼ってほんの数日で約束を破ってしまった困ったちゃん。
ただし、三つ目の約束に関してはギズモ以外のモグワイたちが悪知恵を駆使した結果でもあるので、これに限っては彼だけの非ではない。
この手の映画のお約束として、騒動を通じて勇敢に成長する。

  • ケイト・ベリンジャー
演:フィービー・ゲイツ 吹替:岡本麻弥(フジテレビ版)/玉川砂記子(ソフト版/テレビ朝日版)
ビリーの同僚。お転婆で気立てのいい娘さんだが、クリスマスとサンタに不謹慎なトラウマを持つ。
それが高じてスイッチが入るとどんどんネガティブな方向に行ってしまうところがある。
兼業でパブのウェイトレスのバイトもしており、これが原因でグレムリンの大群が店で大騒ぎした際に接客する羽目になってしまう。
本作の騒動で(言い方は悪いが)めでたくトラウマが追加され、続編『グレムリン2』ではギズモに対しても良い感情を抱いていなかった。

  • ランダル・ペルツァー
演:ホイト・アクストン 吹替:富田耕生
ビリーの父。社会人にもなった息子にプレゼントを与えるあたりかなりの子煩悩なビジネスマン。
だが、本来売り物ではないモグワイを無理に言って買い取ったあたり、不注意で独善的なところがうかがえる。
ペルツァー家の日用品には彼の発明品も数多く活かされているが、性能にムラがありすぎて使うには不便。
オレンジジュースは買ってきたものを飲もう。

  • リン・ペルツァー
演:フランシス・リー・マッケイン 吹替:此島愛子(フジテレビ版)/池田昌子(ソフト版/テレビ朝日版)
ビリーの母。
大らかで息子に甘い性格で、突然やって来たペットにも優しい。
…のだが、台所を荒らしまくった(元)ペットたちにブチ切れ、包丁、電子レンジ、ミキサーによる残虐コンボで三匹虐殺した。母は強し(物理)。

  • ルビー・ディーグル
演:ポリー・ホリデイ 吹替:高橋和枝(フジテレビ版)/京田尚子(ソフト版/テレビ朝日版)
不動産屋の社長のババア。猫大好き。
ビリーの銀行の大本のボスであり、しょっちゅうビリーや他の住人たちに文句を言っている。
さらにはちょっと気分を害しただけで、相手の家賃を気分で値上げするなど暴君そのものなため恐れられている。
グレムリンの襲撃を受けシュポーンされた。ざまぁ。
詳しくは触れられていないが、続編でビリーとケイトが転職・ニューヨークに転居したのは間違いなくこの人が死んだ影響で不動産屋が傾き、
銀行の方もシャレにならない打撃を被ったからであろう。

  • ロイ・ハンソン
演:グリン・ターマン 吹替:中尾隆聖(フジテレビ版)/江原正士(ソフト版/テレビ朝日版)
ビリーがお世話になった化学教師。
分裂したモグワイの一匹をモルモットとして預かり、実験として怪しい薬を注射した。
しかし、置きっぱなしにしたスナックを食べられ、結果グレムリンに変身したモルモットに同じ目に遭わされる。

  • ピート・ファウンテン
演:コリー・フェルドマン 吹替:渕崎ゆり子(フジテレビ版)/小宮和枝(ソフト版)/坂本千夏(テレビ朝日版)
ビリーの家の隣に住む少年。
ビリーと一緒にモグワイたちを可愛がる。
ジェイソンを殺した天才少年だったり擦れた眼鏡少年だったりしたが気のせい。

  • マレー・ファッターマン
演:ディック・ミラー 吹替:八奈見乗児(フジテレビ版)/西川幾雄(ソフト版/テレビ朝日版)
ビリーの近所に住む農夫。
外国製のものが大嫌いで、グレムリン(あくまで機械の邪魔をする小鬼的な意味で)が住んでいるとディスったりしている。
グレムリンが運転する車の襲撃を受けて「グレムリンだ!」と叫びながら退場。
小説版では死亡しているが、映画では生存しており続編にも登場する。

  • ウイング
演:ケイ・ルーク 吹替:藤本譲(フジテレビ版)/石井敏郎(ソフト版/テレビ朝日版)
チャイナタウンの骨董品店の店主で、ギズモの元の飼い主。
取り扱いが難しいモグワイを売ることを頑なに拒むが、孫がランダルの出した大金に目がくらんで無断で売ってしまった(店が金銭的に困っていたのが原因)。
最終的に騒動を聞きつけて町を訪れ、モグワイを買うことの難しさを無視した彼らを責めながらギズモを回収するが、
ビリーとギズモの間に確かな友情が育っていたのを見て「いつか君たちにもモグワイを飼える日がくる」と言い残して帰っていった。



【モグワイ】

声:ホーウィー・マンデル 吹替:滝沢久美子
骨董品店の老人・ウイングが飼っていた奇妙な生物。知性が非常に高く、人間の文化を理解したり道具を使いこなしたり歌ったりできる。
ギズモは例外的に大人しく良心が強いものの、大部分はイタズラ好きかつブレーキがまったく利かない厄介な存在。
小説版で明かされた設定によると、遠い星の異星人『モグターメン』が生み出した人工生命体であり、ギズモはそのオリジナルの一体らしい。
ずんぐりとした胴体に短い四肢が生えたぬいぐるみのような容姿。直立歩行ができ、大きな目と耳を持つ。食性は雑食で人間と同じものを食べても問題ない。
第1作で出た個体はギズモを含めて大体茶色と白の混ざったゴールデンハムスターのような毛並みだが、模様には個体差がある。
本来は人間の言葉を話すことはできないが(それがラストシーンの感動にもつながっている)、吹き替え版では結構喋る。
ファービーとは言うな。チェブラーシカとも言うな。


  • ギズモ
オリジナルのモグワイ。人間によくしつけられている為、大人しく優しい性格。
また他のモグワイたちがビリーを騙してチキンを食べている時も、しつけの成果か食べようとしなかったくらい理性的。
TVを見るのが好きですぐ影響されやすいところもある(玩具の車を運転しながら、映画スターを思い浮かべているドヤ顔は必見)。
劇中ではトランペットを演奏するなど豊かな感性を持っている。

温厚で人懐っこいためか、他の無軌道なモグワイからはいじめられる。
しかし、非力ながらも理不尽に屈しない勇気を持っており、
新しい飼い主・ビリーとすぐ親友になり、彼と共にグレムリン鎮圧に協力する。

  • ストライプ
分裂したモグワイのリーダー格で本作のラスボス。名前の由来は頭の毛並みが縦縞=ストライプに見えるから。
元々いたずら好きの悪ガキでずる賢く、グレムリンと化してからは人間をも超えた凶暴性も獲得した。
ちなみに原語版の声はメガトロン様でお馴染みのフランク・ウェルカーである。

【三つの約束】


  • 光を当てない
モグワイは総じて光に弱い。
日常的な人工の明かり程度なら問題ないが、カメラのフラッシュを当てられただけで昏倒するくらい強い光に弱い。
とくに太陽光には最も弱く、浴びると比較的短時間でも死んでしまう。
昼間に外を出歩く時は必ず日光を遮って持ち歩くこと。

  • 水をかけない
モグワイが水に触れると背中から毛玉が分離して飛び出し、すぐにモグワイに成長する。
それにより元のモグワイが肉体的に消耗するとかのデメリットはないが、
新しいモグワイは調整が出来ていないため、抑制が効かず大惨事の火種となりかねない。

  • 夜中の零時過ぎに食べ物を与えない
最も破ってはいけない最大の禁忌。
栄養を与えると、繭へと変化し「グレムリン」に変身する。
ただし何時からは大丈夫になるのかは不明。


【グレムリン】


夜中の零時過ぎに食事をとったモグワイが変身した怪物。グチョグチョした繭の段階を経てこの形態となる。
モフモフのモグワイとは打って変わって爬虫類か両生類のような不気味な質感の皮膚に細い瞳孔の瞳、
小柄だが細長く引き締まった筋肉質の体躯を獲得し、その姿は完全に翼の無い(小)悪魔である。
すばしこいが耐久力はなく、上記のママのように普通に原始的な物理攻撃を加えただけで死ぬ。

グレムリンになっても上記のうち「光に弱い」「水で増える」の特性はそのままで、
逃走したストライプがプールに飛び込んだことで大増殖して町は大騒ぎに。

非常に獰猛かつ凶暴で、おまけに高い知性は据え置き。ただし、食べ物をひたすら食い荒らしたり、聖歌隊を結成したり、
ディズニーの「白雪姫」の映画を見てノリノリで合唱したりと、無軌道ながらも根本的なノリは小さな悪ガキのいたずらと変わらない。
しかし抑制が効かないためやらかすことがデカく、本能の赴くままフリーダムに暴れ回るため危険度は人間の悪ガキを遥かに超越しており、
劇中では死人すら出している。
手の構造上人間の道具も使用可能で、グレムリン化したストライプが拳銃でビリーを射殺寸前にまで追い詰めた。

余談

〇当初の脚本は、残酷シーン満載のガチホラーだったらしい。
しかし音楽担当のジェリー・ゴールドスミスはプロットを聞いて閃いたイメージをピアノで弾いてダンテに聴かせたのだが、それは「陽気で滑稽で狂騒的なラグタイム」だった。
これにはダンテも面食らったが、そこから映画のイメージが膨らんでいった。

〇ギズモのモデルは、当時スピルバーグが飼っていたコッカスパニエル犬。
このデザインを提出した所、一発でOKが出たという。
さらにスピルバーグはその愛くるしさにすっかりやられてしまい、「ギズモだけは最後までかわいいままにして!」と注文を付けた。
上記のエピソードもあって、コロンバスが当初手がけた脚本は事実上の解体。撮影終了間際に本人が現場を訪れた時にはかなりショックを受けたとか……

〇ギズモの人形は、撮影中よく故障していたらしい。
あまりにも故障するのでギズモはスタッフからヘイトを買いまくっており、彼らの鬱憤晴らしのためにダーツの的にされるシーンが作られたという。
お前ら人間じゃねぇ!

〇ケイトがクリスマスやサンタのトラウマを語るエピソードは、悲しむべきなのか笑うべきなのか、観る者を困惑させる迷シーン。
それはワーナーも同じで、このシーンをカットするよう要求したが、ダンテは拒否。
スピルバーグもこのシーンの意味が分からなかったが、「君がそこまで言うなら……」と後押し。
「ホラーとコメディの融合」を目指した本作の真骨頂と言うべきシーンであることを考えると、残ってよかったの一言である。

〇本作ではテレビで映画が放送される場面が3回ある。
一本目はクリスマス映画の古典『素晴らしき哉、人生!』。
二本目はクラーク・ゲーブル主演の『スピード王』。
三本目は宇宙生物による乗っ取りの恐怖を描いた『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』。
いずれも、本作の展開を暗示する伏線となっている。*1

〇本作の監督候補には、当時無名だったティム・バートンも挙げられていた。
スピルバーグは彼の手がけた短編作品を観て監督を任せようと考えたこともあったが、当時まだ長編を手がけてなかった点が危惧され、結局流れてしまった。
しかしダンテとバートンの作風は、「50年代のB級SF・ホラー作品へのオマージュ」「アニメの手法・表現をそのまま実写で再現」「不謹慎ギャグ」など、かなり共通点が多い。
マーズ・アタック!』や『フランケンウィニー』などを観ると、本作から影響を受けているのがうかがえるだろう。


●アニヲタ三つの約束

一.コメ欄を荒らさない

一.煽りを吹っかけない

一.追記修正は用法を守る

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最終更新:2024年01月18日 22:03

*1 特に『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』の主演者ケビン・マッカーシーは、ダンテの『ピラニア』でも主演を張っている