カタン(ボードゲーム)

登録日:2023/03/06 Mon 01:02:22
更新日:2024/04/14 Sun 12:05:44
所要時間:約 9 分で読めます




カタン』(Die Siedler von Catan)、もしくは『カタンの開拓者たち』とはドイツ生まれのボードゲームである。
本作は翻訳のバージョン違いが多く、プレイしている人によっては使用するカードの名称などに違いが出たりもする。
この項目では、日本カタン協会が現在使用している訳語に沿って解説する。



概要

1995年にドイツで発売され、その後世界各国で翻訳バージョンが作られた名作ボードゲームの一つ。
全世界で2000万個を売り上げたとも言われており、現代型ボードゲームとしては恐らく最も著名な作品。世界大会なども頻繁に行われている。

モノポリー』などと同じく、基本的な構造は運と戦略と交渉が物を言う大人向けのボードゲームではある。
しかしルールそのものはこの手の拡大再生産系ゲームの中でも比較的シンプルにまとめられており、理解するだけなら小学生でも十分にできる。

「なにかボードゲームを始めたいのだけど、おすすめは?」と初心者が質問した際、ボドゲマニアが勧めることも非常に多い作品でもある。「迷うぐらいならとりあえずカタン買っとけ」とも。
また一部では「ルールの軽い簡単なゲームからルールの重い複雑なゲームにステップアップしたい際にオススメ」と言われる程適度にルール内容は重い。
プレイヤー層がとにかく他作品とは比較にならないほど厚いため、攻略情報が充実しているのも魅力。

難点を挙げるとすれば、基本セットの価格がやや高めかつ箱がでかいので手を出しにくい点か。
安価で持ち運びしやすいキャリーケース版なども存在するが、コマの作りがチープで紛失しやすいため、本気でやり込むつもりなら通常版が推奨される。
もっともこだわっている人は、今のプラスチック駒ではなく昔ながらの木製コマを愛用しているとか。
ちなみに、タイルが立体になった豪華版も存在するが、ゲーム内容は全く同じであるにもかかわらず、軽く5万円近くはするブルジョワ仕様。
完全なマニア向けの一品…というか、ボードゲームというかほとんど芸術作品のレベルである。

ルール

拡張版や別バージョンも多い作品だが、ここでは基本セットをベースに解説する。
プレイ人数は3人と4人でゲームデザイン的には4人で遊ぶ方をメインにデザインされている。

プレイヤーは未開拓の島「カタン島」に入植した開拓者となり、資源を集めながらこのカタン島を開拓していくことを目的とする。
勝利条件は「最初に勝利点を10点集めること」。
勝利点の集め方は後述するように多数あるので、自分の好きな戦略を選べる。

カタンで使用するボードマップは、六角形の独特の形状をしたタイルの集合体となっている。
それぞれのタイル毎に固有の「資源」と「数字」が設定されており、各プレイヤーはタイルの各頂点に「拠点」を設置していくことができる。
この「資源」と「拠点」が勝利点に繋がっていく。

資源の獲得方法はややユニークで、これがカタンの一番の特徴と言ってもいい。
各プレイヤーは自身の手番毎に一度、6面ダイスを2個振る。
そして出目の合計数に該当するタイルの周りに拠点を持っているプレイヤー全員がタイルに対応した資源を受け取るのである。
例えば、数字が6のタイルの周りにプレイヤーAとBが拠点を持っている状態でプレイヤーCがダイスで6を出したと仮定する。
この場合、拠点を持っているAとBは資源を得られるが、Cは拠点を持っていないため出目を出したのに何も得られない……といった具合である。
6面ダイス2個の出目の合計数は6・8が出やすく、2・12が出にくい。正確には一番出やすい合計数は7だが、後述するように7の土地はない。
この数字の「出易さ」「出難さ」がそのままカタンにおける土地の価値となる。

ゲーム開始時、まず盤面として六角形の島を構成するタイルと資源獲得出目の書かれたチップをタイル毎にタイル中央に配置する。
基本的にはこの盤面配置自体は自由だが初心者向けのテンプレート配置も有るので初心者はそれに従おう。
次にすべてのプレイヤーは拠点である開拓地とそこから伸びる街道をそれぞれ2個ずつ配置する。
配置する順番はプレイヤー1→プレイヤー2→プレイヤー3→プレイヤー4→プレイヤー4→プレイヤー3→プレイヤー2→プレイヤー1。
資源獲得の仕様もあって、この初期配置の時点でその後の戦略が確定すると言っても過言ではない。
また、初期配置順の通り手番によって置くべき場所の戦略も変わってくる他、この時点でも心理戦が起きうる。

資源

カタンで使用する資源は5種類。それぞれに対応した土地タイルが1つずつ存在する。
「丘陵」タイルから得られる「レンガ」
「森林」タイルから得られる「材木」
「牧草地」タイルから得られる「羊毛」
「畑」タイルから得られる「小麦」
「山地」タイルから得られる「鉱石」
また、これ以外に特殊な地形タイルとして「砂漠」がある。ここからは何の資源も得られない。

なお、5種類の資源の価値は等価ではない。
  • 基本セット内では丘陵と山地のタイルが他よりも1つずつ少ないため、レンガと鉱石は純粋に得られる数が少なくなる可能性が高い。
  • 小麦は後述するほとんどのアクションにおいて必須となるため、他の資源よりも重要度が一段高い。
といった具合である。
ただ、これに関しては島の構成状態やプレイヤーの戦略などによって価値や判断が分かれるところでもある。
「いや、鉱石のほうが重要度高いだろう」「材木とレンガはセットで確保しないと」など、様々な意見が出る。

建設

資源を用いてできるアクションは以下の通り。

  • 街道
材木とレンガをそれぞれ1枚ずつ用いて「街道」を建設する。
開拓地を立てるには自分の拠点から最低でも2本は街道を伸ばさなければならないため、全ての基本となるアクションとなる。

  • 開拓地
材木とレンガと小麦と羊毛をそれぞれ1枚ずつ用いて「開拓地」を建設する。
開拓地が隣接したタイルからは資源1枚を獲得でき、また1つにつき勝利点1点として換算する(最大5点)。
カタンにおける最も基本的にして重要な拠点。
重要なルールとして、拠点は種類を問わず自分のものでも他人のものでも隣り合わせて配置することはできない。
そのため、相手の拠点設置を阻止するための開拓地建設も重要な戦略となる。

  • 都市
小麦2枚と鉱石3枚を用いて自分の開拓地1つを「都市」にグレードアップさせる。
都市が隣接したタイルからは資源2枚を獲得でき、また1つにつき勝利点2点として換算する(最大8点)。
開拓地を変化させるため数値上の勝利点の上昇は1点だけだが、それ以上に資源が2枚得られるようになるのが非常に強力。

  • 発展カード
小麦と鉱石と羊毛をそれぞれ1枚ずつ用いて「発展カード」を1枚引く。
効果は後述。

交易

システムの関係上、どうしても特定の資源を得られないことはザラにある。
というか初期配置だけで全ての資源を獲得するのは至難の業である。
そのため、足りない資源を補う「交易」というシステムが存在し、余った資源を必要な資源に変えることができる。

  • 島外交易
手持ちの任意の資源4枚を、任意の資源1枚に交換できる。
最もベーシックな交易。もっとも見ての通り交換レートは非常に悪い。
よほど急いで資源が欲しいか、誰も交渉に乗ってくれないのでもない限り島内交易を優先した方が良い。
ただ、バースト回避のために余った資源を減らしておくというのも有効な戦略である。
しかしこうすると手札の資源の比率が偏るため、バーストのリスクは下げられるが重要な資源をピンポイントで奪われるリスクは高まるので痛し痒しか。

ボードの端である海岸線にある「港」(通称「3:1港」)のある場所に拠点を持っていると、島外交易による交換レートを3:1に下げることができる。
また、特定の資源が書かれた「専門港」に拠点をもっている場合は、その資源を支払う島外交易限定で交換レートを2:1まで下げられる。
ただし専門港には3:1港の効果はないので注意。

  • 島内交易
カタンの醍醐味とも言える対人交渉システム。
他のプレイヤーに自身の持つ任意の資源を提示して、相手側の余った資源と交換できる。
相手の現在の手持ちだけでなく、相手が将来的に手にするだろう資源、建設するだろう拠点まで把握して交渉を持ちかけられれば理想的。
ベストはもちろん1:1交換だが、状況次第では2:1交換や3:1交換も仕方ないだろう。
基本的に「有利プレイヤーは交渉を断られる可能性が高い」「下位プレイヤー同士なら多少不利な交渉でも飲んでもらいやすい」といった傾向はある。

なお、現在の手番のプレイヤーが絡まない交渉はルール上不可なので注意。
他のプレイヤーから手番プレイヤーに交渉を持ちかけるのはありだが、他のプレイヤー同士の交易はダメ。

盗賊

7の出目を出した場合「盗賊イベント」が発生する。
前述した6面ダイス2個の出目の確率上、ゲーム中何度も遭遇することになるだろう。

7の目が出た場合は、以下のような形でイベントが進む。
  • 1:全プレイヤーが自分の資源の枚数を確認し、8枚以上持っているなら半分になるように任意の資源を破棄する。これを「バースト」と呼ぶ。
    (捨てる枚数は端数切り捨て。9枚なら4枚捨てる。)
  • 2:7を出したプレイヤーが「盗賊コマ」を任意のタイルに移動させる。盗賊コマの初期位置は砂漠。
  • 3:7を出したプレイヤーは、盗賊コマを移動させた先のタイルの周りに拠点を持つプレイヤーの1人から、内容を見ずに資源1枚を奪い取る。

そして盗賊コマが在住しているタイルからは、ダイスで数字が出ても資源を一切得られなくなってしまう。
元に戻すには盗賊コマを移動させるしかない。

ここで初心者は「自分は鉱石に困窮しているから、あのプレイヤーの8の山地に盗賊を置いて鉱石の産出量を減らしてやろう」などと考えがち。
だが実際のところ、相手の鉱石を減らしたところでそれが直接的に自分の鉱石に直結するかというとそんなことはなかったりする。
かえって市場全体の鉱石価値が高騰して交渉で獲得しづらくなるだけである。
ここで「自分が潤沢に確保できている資源」の方を盗賊で抑えると、自分の資源の価値を釣り上げて交渉を有利に進めることもできたりするのである。

発展カード

前述したように資源を用いて1枚ドローすることができるカード。
資源さえあれば1ターン中に何枚でも引けるが、使用できるのは1ターンに1枚なので注意。
ターン内であれば使用タイミングはいつでも構わない。騎士カードをいつ使うかは個人の好みが分かれるところ。

発展カードの効果は以下の通り。

  • 騎士カード
最も枚数が多いカード。使うと盗賊を任意の場所に動かせる。
バーストは起こらないが、移動先のプレイヤーから資源1枚を奪うことはできる。

  • 進歩カード
使うとゲームが有利になる効果が発動する。
以下の3種類が存在する。
○街道建設
任意の場所に街道を2本建設する。
資源4枚分の効果があるため、まあまあ当たりと言われる。
○収穫
任意の資源を2枚獲得する。
……資源3枚を使ったのにたった2枚しか得られないため、ハズレ扱いされやすい。
とはいえ盗賊のバーストを回避できる外部の資源というのは便利。
必要なタイミングまでキープしておくといいだろう。
また、ダイス目の偏りなどで高騰している資源があると一気に価値が増す。
○独占
任意の指定した資源を全プレイヤーから全て徴収する。
進歩カードの中でもトップクラスの当たり。ただし使用タイミングが悪いと直後にバーストが入って折角集めた資源が大放出というのもカタンあるあるである。

  • 勝利ポイントカード
引いた時点で勝利点1点になるカード。
ゲーム進行には寄与しないため、人によって評価が分かれがち。序盤で引いても持て余すことが多い。
合計10点となり勝利が確定するタイミングまでは手札でキープ&クローズされるので、長い間伏せてあるカードはこれを疑われ易い。
尤もそれを見越して騎士カードなどを持ってて使用機会を窺ってるかの様にブラフする手も無い訳ではない。

勝利点

勝利点の獲得方法は以下の通り。
  • 拠点…開拓地1点、都市2点
  • 最長交易路ボーナス…一筆書きで描ける街道の長さが5本以上になると獲得できるボーナス点。2点。
    もっと長い街道*1を作られるとそちらのプレイヤーに移動する他、途中に他プレイヤーの拠点が挟まると無効になるので注意。
  • 最大騎士力ボーナス…騎士カードを3枚以上使うと獲得できるボーナス点。2点。
    こちらもより多くの騎士カードを使ったプレイヤーが出るとそちらに移動する。
  • 勝利ポイントカード…前述の通り。

この合計が10点となったプレイヤーが勝者となる。



派生作品

前述の様に、基本セットを拡張する追加セットや独立した別バージョンなどが複数販売されている。

またカタンを題していない類似作品として、PSで『じぱんぐ島〜運命はサイコロが決める!?』というゲームが発売されている。
こちらは日本の戦国時代をモデルに舞台が変更されている他、テレビゲームの特性を活かして複数のボードやAIキャラが搭載されている。

主な違いは以下の通り。
  • 資源が「米」「木」「石」「」(!?)「鉄」「金」の6種類に変更されている。
    ただし金は通常では獲得可能な土地が存在せず、貿易でしか手に入らない。
    資源の最大所持数は99。大体10単位で取引されるようになっている。
  • 島内貿易のシステムがオミットされており、島外貿易のみになっている。
    交換のレートは各プレイヤーの所持資源で変動する。
  • 数字が7の土地が存在する。盗賊に相当する「一揆」の発動条件は「ゾロ目が出た時」となっている。
  • 拠点は最低ランクの「砦」が追加されており、「砦」「小城」「大城」の3ランク制になっている。
    砦は資源は獲得できるが勝利点に相当する「石高」に加算されない。海沿いの砦は「港」に改築でき、貿易を有利に進められるが大城にはできない。
  • 兵士を使って相手の拠点に攻め込めることができる。攻め落とした拠点はそのまま自分のものにできる。
    最大の違いであり、上手く侵略できれば一気に有利にできる。侵略することと相手の侵略を防ぐことを戦略に組み込む必要がある。
  • カードは主に自分をサポートする「内政」と、相手を邪魔する「戦略」の2系統に大別されている。

アレンジされている点は多いが、こちらはこちらでカタンとはまた違った魅力があり、プレイヤーからの評価は概ね高い。


余談

コミュニケーション能力、情報処理能力、状況判断力が問われるゲームであるため、企業の新人研修などに使用されるケースもある。

風来のシレン2はカタンの要素をローグライクゲームに取り込んで作られている。
企画立ち上げ時に開発スタッフが親交を深め、アイディアを出すための旅行(合宿)を行ったのだが、その際にスタッフの一人が様々なボードゲームを持参しており、スタッフ達が遊ぶ中で一番盛り上がったのがカタンだったので、材料を集めて城を建築するというゲーム要素へと落とし込んだインタビューで語っている。



追記・修正は開拓者の皆さんにお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • カタン
  • ボードゲーム
  • ドイツゲーム
  • 交渉ゲーム
  • 名作
  • カタンの開拓者たち
  • カタンしか勝たん
  • クラウス・トイバー

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月14日 12:05

*1 「単独で一番長い」街道を作った時に移動するため、現在このボーナスを所有しているプレイヤーよりも1本分長い街道を作る必要がある。そのため、奪われる可能性があるとはいえど先に獲得した方が有利。これは最大騎士力ボーナスも同様。