アットウィキロゴ

砂漠

登録日:2023/03/05 Sun 00:05:33
更新日:2026/07/26 Sun 22:32:40
所要時間:約 10 分で読めます






砂漠は清潔だ

砂漠とは、が非常に少なく植物が育たず、昼夜の気温差が激しい土地。


概要

定義としては、最暖月の平均気温が10度以上で、年間降水量が250mm以下の地域。雨が非常に少ないため植物がほとんど育たず、人が住むのには適していない。
「砂漠」と聞くと見渡す限りの砂の世界にラクダに乗って移動しているという固定観念を思い浮かべる者も多いと思われるが、
砂の海が広がる砂漠は全体の2割程度に過ぎず、多くても半分を超えることはまずない。

そのためイメージの問題から用語を説明する際の漢字表記として「沙漠」を使用する例もある*1

また、同様に砂漠の植物としてのイメージが強いサボテンがあるのは北アメリカの砂漠だけである。

ちなみにこれらのイメージから、樹木はあるものの地表に土がむき出しで生物多様性に乏しい森林を「緑の沙漠」と呼ぶこともある。

気候

基本的には砂漠のイメージ通り、非常に苛烈な環境である
概要でも触れた通り年間降水量は東京の6分の1に満たず、せっかく降ってもすぐに蒸発してしまい、地表に水分を保つことが非常に困難。
日中は強烈な太陽の日差しによって非常に暑くなり、低緯度地域の砂漠は日中に50度を越すこともある。
アメリカのデスバレー国立公園では1913年7月10日に世界最高気温となる56.7度を記録している。2020年8月18日*2にはそれに迫る54.4度を記録。
また確証は持てず世界最高気温ともみなされてはいないが、かつてジブチ71.5度を記録したというデータもあるらしい。
ただし空気が乾燥するため湿度は低くなりやすく、日本の夏のようなジメッとした感覚は少ないとも言われている。
40〜50度の気温に対応できるラクダも日本の夏場では夏バテしてしまうことがある。
逆に言えば汗がすぐに蒸発するため水分を失っていることに気づきにくく知らず知らずのうちに熱中症になってしまいがちなためこまめな水分補給は当然必須。
雨が少ないため必然的に日照時間は長くなりやすく、年間で3000時間を越す地域が多い(日本は平均約1850時間、最長の山梨県で約2200時間程度)。

一方で植物が育たず地表に熱を保つのが難しいため、夜には気温が急激に下がり、毛布が必要になるような寒さになることも珍しくない。
この原理はフライパンとよく似ていて、地面が砂に覆われた固体の状態なため、比熱*3がとても小さく、熱しやすくて冷めやすい。
地表や空気中に十分な水分があれば昼間に太陽熱をゆっくり吸収しておき、夜間にその熱を放出するため、昼夜の気温差は小さくなるが、砂漠ではそれも叶わないため日中は太陽の熱がそのまま放出されるが、夜は放出する熱がないため気温が大きく下がるわけである*4
これが砂漠本来の役目であり、温暖化の抑制の為に熱を効率的に外に逃がす為にこのような形態となっている。

雨は1年に数回や数年に1回程度不定期に一気にふることが多く、場合によっては平年値に肉薄する数値や軽く超える量が降ることもある。この時に花が一気に芽を出したり花を咲かせ、場所によっては一時的に花の絨毯ができあがることもある。
降った雨水は染み込まずに標高が低い場所に集まり、川のようになって砂漠なのに溺死する事故も起きやすい。
このような場所で生存するには水分の確保が重要な要素となるが、脱水症状で死亡した人が水筒に水が残っていたというケースはかなり多く、水を節約しすぎたために死亡したという事例も多い。
このような環境なので農業には適さず、灌漑農業が小規模に行われる程度で牧畜が生活の基盤となるので、人口も少なく居住地もまばら。近くに高い山があり、その頂上で降った雪解け水が砂漠の地下に溜まると砂漠で数少ない水が出る場所となり、いわゆるオアシスが出来上がる。多くの場合このオアシスに人々は住む。
全世界の乾燥地域に住む人の割合は世界人口の35%程度とされている。


この極度に乾燥した気候は人間などの生物にとっては過酷だが、屋根下へ収容することが難しい大型の産業機器、特に航空機の保管に適しており、アメリカの砂漠には用途廃止となり、再使用可能な部品をもぎ取られ、あとは解体されるだけになった状態の飛行機が多数置かれる飛行機の墓場と呼ばれる場所が何箇所も存在する。

また、砂漠の砂はミネラルを含んでいるため、近隣の地域や海を越えた先に風で運ばれ、森林の促進を促す作用もある。

砂漠の種類

砂砂漠

砂漠と言えばこれを思い浮かべる人は多いだろう。
上述の通り実際は砂漠全体の2割程度しか占めていないのだが、いかんせんそのイメージがつきすぎてしまった感がある。
砂粒が2mm未満の場合に砂砂漠と呼ばれる。
鳥取県の鳥取砂丘は、風によって砂が溜まってきた地形で海岸砂丘と呼ばれるものなので砂漠ではなく、砂丘がある鳥取市の年間降水量は1931mmもあるため放っておくと草が生えてきてしまう。なので地元の住民やボランティアが除草してその姿を保っているのである。

岩石砂漠

大きな岩石が剥き出しになった砂漠。世界の砂漠はこれが最も割合が大きく、実はこれが砂漠のスタンダードな姿である。
サハラ砂漠がある地域では別名ハマダとも呼ばれる。

礫砂漠

砂利のような小石に覆われた砂漠。「礫」と聞くとこの作品を思い浮かべる人が多いかも。
砂砂漠と岩石砂漠の中間にあたり、砂粒が2ミリ以上の場合礫砂漠に分類される。
サハラ砂漠はこの礫砂漠が70%を占めている。

世界の主要な砂漠

大きいものから順に紹介する。その砂漠の中にある都市など気候データがある場合は記載する。

1位 サハラ砂漠

面積:940万km² (日本の約25倍)
国: モロッコ, 西サハラ, モーリタニア, アルジェリア, マリ共和国, ニジェール, チュニジア, リビア, チャド, エジプト, スーダン

言わずとしれた世界最大の砂漠。
アフリカ大陸の3割程度を占め、アメリカに近い面積を持つ。
この地域に住む人口は約2500万人。最大の都市はヌアクショット。
長い年月をかけて湿潤と乾燥を繰り返しており、8000年前は最湿潤期だった。
人口が1960年以降急激に増え続け、それに伴う過度な森林伐採や放牧、焼畑農業が行われたことにより砂漠化が深刻な問題となっている。
一年で約6万km²もの勢いで広がっており、2007年以降アフリカ連合によって植林などの砂漠化を防ぐ努力が続けられている。
また石油や天然ガス、リン鉱石などの豊富な地下資源を持つが、それが利権となってそれを巡っての紛争の原因になってしまっているのが悲しい。
一方で、気候変動によって再び植生が変化しつつあり、南縁部には緑化の兆候もあるなど明るい話題もなくはない。
サハラはアラビア語で砂漠を意味するため、直訳すると砂漠砂漠になってしまうというのは有名な話題。サハラ砂漠という呼び方は「頭痛が痛いみたいな名前」とか危険が危ないとなるわけである。

+ カイロの気候
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
最高気温記録 31 34.2 37.9 43.2 47.8 46.4 42.6 43.4 43.7 41 37.4 30.2 47.8
平均最高気温 18.9 20.4 23.5 28.3 32 33.9 34.7 34.2 32.6 29.2 24.8 20.3 27.8
平均気温 14 15 17.6 21.5 24.9 27 28.4 28.2 26.6 23.3 19.5 15.4 21.8
平均最低気温 9 9.7 11.6 14.6 17.7 20.1 22 22.1 20.5 17.4 14.1 10.6 15.8
最低気温記録 1.2 3.6 5 7.6 12.3 16 18.2 19 14.5 12.3 5.2 3 1.2
降水量 5 3.8 3.8 1.1 0.5 0.1 0 0 0 0.7 3.8 5.9 24.7
湿度 59 54 53 47 46 49 58 61 60 60 61 61 56
日照時間 213 234 269 291 324 357 363 351 311 292 248 198 3451

2位 オーストラリア砂漠

面積:337万km² (日本の約9倍)
国:オーストラリア
オーストラリア大陸の40%ほどを占める砂漠。
オーストラリアの人口はこの砂漠を避けた東部の海岸沿いに集中しており、砂漠がある場所にはほとんど人が住んでいない。砂砂漠と礫砂漠が入れ混じっていて、岩石砂漠はほとんどない。
中部付近には先住民アボリジニの聖地で世界遺産にも登録されているウルル(エアーズ・ロック)が聳え立つ。
ウルルばかりが目立つが西部には直径約8kmにもなる世界最大の一枚岩マウント・オーガスタスがある。

3位 アラビア砂漠

面積:246万km²(日本の約6.5倍)
国: ヨルダン, イラク, クウェート, オマーン, カタール, サウジアラビア, アラブ首長国連邦(UAE), イエメン
アラビア半島を中心にイラン西部まで広がる砂漠。南部には世界最大の砂砂漠が広がるルブアルハリ砂漠があり、場所によっては東京タワーより高い砂丘もある。
3世紀頃までは比較的湿潤な地帯であったようで、乳香交易のキャラバンがこの地を横断していたが、砂漠化が進行し渡るのが困難になり現在では不毛の荒地が見渡す限り続いている。
世界最大の産油地帯であり、オイルマネーも相まって経済的に豊かな地域が多い。
夏には大変暑くなるため、市民がこぞって昼夜逆転生活をすることでも有名である。

+ リヤドの気候
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
最高気温記録 31.5 34.8 38 42 45.1 47.2 48.1 47.8 45 41 38 31 48.1
平均最高気温 20.1 23.6 27.8 33.8 39.4 42.7 43.4 43.6 40.4 35.2 27.5 22.2 33.3
平均気温 14.6 17.5 21.5 27.2 33 36 36.8 36.9 33.7 28.5 21.4 16.4 26.9
平均最低気温 9.2 11.5 15.2 20.7 26.1 28.4 29.4 29.5 26.2 21.3 15.5 10.8 20.3
最低気温記録 -2.3 -0.3 4.5 11 18 21.1 23.6 22.7 16.1 14 7 1.4 -2.3
降水量 15.4 6.1 21.1 24.3 5.4 0 0 0.5 0 1 11.4 14.7 99.9
湿度 47 36 32 28 17 11 10 12 14 20 36 45 26
日照時間 212.4 226.6 219.8 242.3 287.7 328.2 332.1 309.2 271.6 311.4 269.2 214.3 3224.8

4位 トルキスタン砂漠

面積:194万km²(日本の約5倍)
国:トルクメニスタン,イラン,アフガニスタン
中央アジアのカスピ海東に広がる砂漠。
砂漠のイメージである黄土色の砂は少なく、黒や赤い砂の砂漠が広がっている。寒暖差は砂漠の中でも特に激しく、冬には冷気によって雪が降る場所もあるため、イランにはスキー場もある。
かつては琵琶湖の約100倍、日本の東北地方とほぼ同じ大きさを持つ巨大な湖「アラル海」を中心にまばらな草原がある遊牧地域であったが、ソ連時代の1930年代にアラル海に流入する川の水を無謀な農業計画を立て綿花栽培などに使いすぎたことによりアラル海は水面が止めどなく低下。現在は最大時の1割以下まで縮小し、辛うじて残った部分は塩分濃度が非常に高くなり魚も住めない死の湖になってしまった。使われなくなった漁船が「船の墓場」として残っている場所もある。
また湖を失ったことにより漁業が出来なくなっただけでなく、気候が変動し過酷さにさらに拍車がかかり、塩分や有害物質を含んだ砂嵐により周辺住民の健康にも深刻な脅威をもたらした。
このアラル海の縮小は「20世紀最大の環境破壊」と言われた。
この人間の欲によって消滅の危機にまで追い込まれた悲劇の湖として有名となり、再生に向けての取り組みが行われている。

5位 北アメリカ砂漠

面積:130万km²(日本の約3.4倍)
国:アメリカ,メキシコ
北アメリカ大陸に広がる砂漠。先述した通り一般的に砂漠の植物としてイメージされるサボテンは実はこの地域の砂漠にしかない。
年間降水量が地域によってまちまちで地形もまばらなため、植生は地域により相違が大きく、植生によってグレート・ベースン砂漠、モハーベ砂漠、ソノラ砂漠、チワワ砂漠に区分されている。
一部は砂に石膏が含まれるため、真っ白な砂が広がる場所もある。

6位 ゴビ砂漠

面積:129.5万km²(日本の約3.4倍)
国:中国,モンゴル
モンゴル高原の中部に広がる砂漠。ゴビはモンゴル語で荒地を意味し、降水量が砂漠の中ではそれなりに多いためステップという草原が広がっている。
世界の砂漠の中でも最も緯度が高く、北海道の札幌市とほぼ同じ緯度に位置している。このため冬には-20〜40度という極寒になり、砂漠の灼熱の地のイメージとはかけ離れた厳冬の地となる。一方で夏には40度を超えることもあり、年較差が非常に激しい。
古くから交易やモンゴル帝国の活躍の場であり、シルクロードの拠点としても重要な役割を果たした。
現在こそ砂漠だが古代には植物が豊かな地域で、中生代には大型の恐竜も生息していた。このため恐竜化石の世界的な産地の一つで、卵を抱いたオビラプトルや、プロトケラトプスとヴェロキラプトルが喧嘩している化石など珍しい化石も発掘されている。

+ ダルンザドガドの気候
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
最高気温記録 9.4 18.9 22.2 30.7 33.8 37.4 39.9 37.5 33 29 18.9 13.6 39.9
平均最高気温 -7.1 -2.1 5.9 14.8 21.4 26.7 29.2 27.2 21.2 12.5 2.8 -5 12.3
平均気温 -13.9 -9.2 -1.1 8 14.7 20.4 23 21 14.8 5.8 3.9 -11.7 5.7
平均最低気温 -19.3 -15.4 -7.6 -1.3 8.1 14 17.1 15.1 8.7 -0.3 -9.6 -17.1 -0.1
最低気温記録 -32.8 -31.1 -27.8 -20 -8.9 -1.1 5.4 3.9 -12.8 -17.2 -28.9 -36.1 -36.1
降水量 2 3 4 4 11 22 33 29 15 5 3 3 134
湿度 61 51.5 40.3 32.1 32 36.8 42.4 43.4 39 41.4 51.1 59.1 44.2
日照時間 262 221 253 264 316 304 291 299 279 268 233 229 3219

7位 パタゴニア砂漠

面積:67万km²(日本の約1.8倍)
国:アルゼンチン
南アメリカ大陸アンデス山脈の雨陰砂漠。一年を通して強い偏西風がアンデスから吹き降り、夏でも霜がしばしば降るが、砂漠のイメージ通り乾燥しているため雪はあまり降らない。
ゴビ砂漠の冬のように気候は砂漠の灼熱のイメージからかけ離れたもので、南緯45度線より北側の沿岸以外は気温が12度を超えることがほとんどない冷涼な砂漠である。

8位 タール砂漠(大インド砂漠)

面積:60万km²(日本の1.6倍)
国:インド,パキスタン
インド・ラージャスターン州とパキスタン東部にある砂漠。名前のタールは間違ってもタバコなどに含まれる乾留液ではなく、「砂の荒地」の意味。
インダス川が砂漠の西方流れ、古代には言わずと知れた四大文明の一つ、インダス文明が栄えた。その時の都市遺跡で世界遺産にも登録されているモヘンジョ=ダロがある。

9位 カラハリ砂漠&ナミブ砂漠

面積:57万km²(日本の約1.5倍)
国:ナミビア,南アフリカ共和国
アフリカ南部の砂漠。南岸はカラハリ砂漠の一部と考えられるナミブ砂漠が広がっている。
砂の色は褐色で、南西部以外はところどころ年間降水量が250mmを超え植物に覆われた場所があるため、厳密に言うと完全な砂漠ではない。
石炭、銅、ニッケルの埋蔵量が多く、北東部には世界最大級のダイヤモンド鉱山がある地下資源の宝庫である。

10位 タクラマカン砂漠

面積:52万km²(日本の約1.4倍)
国:中国
中国西部の中央アジアのタリム盆地の大部分を占める砂漠。
ウィグル語で「生きては帰れない」「一度入ったら出られない」といった意味とのこと。
東にはゴビ砂漠があり、西にはパミール高原、南は崑崙山脈、北は天山山脈に囲まれた形で存在している。大部分が砂丘に覆われており、砂砂漠の割合は半分近くあり、割合としては最大級とも言われている。
見渡す限り砂しかないように思えるが、場所によっては大都会もあり電波もしっかり通っている所も多い。


11位 イラン砂漠(ルート砂漠)

面積:39万km²(日本とほぼ同じ)
国:イラン
イラン東部ケルマーン州に位置する砂漠。岩石砂漠が大部分を占めており、地域によっては黒い玄武岩溶岩が広がり、砂漠のイメージを地でいく灼熱の地である。
2016年には類稀な自然美と地球の歴史の重要な段階を示す鑑として評価され、世界遺産に登録された。

12位 アタカマ砂漠

面積:36万km²(日本とほぼ同じ)
国:チリ
チリのアンデス山脈と太平洋の間に広がる海岸砂漠。
平均標高は全ての砂漠の中でも最高クラスの約2000mで、砂漠内にはオアシスがありアンデス山脈との交易の拠点となった。
雨が少ないとされる砂漠の中でも最も雨が少ない地域で、標高の高さも相まりあまりの過酷さからこの砂漠への道は「死への道」と恐れられた。
過去500年もの間まともに雨が降った記録は一切なく、まるで火星の地表のような風景が広がっている。
このような気候は天体観測に適していて、巨大な天体望遠鏡が設置されている。


その他有名な砂漠

モハベ砂漠(モハーベ砂漠、モハーヴェ砂漠とも)

国:アメリカ
何故か資料によって安定しないが面積は約3万5千~7万㎢といった所。
エドワーズ空軍基地や、「飛行機の墓場」ことモハーヴェ空港が所在する事で知られる。
特に無数の飛行機が並んでいる光景は現代に於ける砂漠のイメージ例の一つとなっている。

余談 伊豆大島の砂漠地帯

国:日本国
そんなバカな…とお思いだろうが 国土地理院の地形図に「砂漠」と表記されている土地 は存在する。
尤も、伊豆大島は年間降水量が約2800mm前後と非常に多く、気候区分では典型的な温帯湿潤気候に属する。
つまり、概要で述べた「年間降水量250mm以下」という砂漠の定義とは真逆の環境であり、気候学的には全く砂漠ではない。

ではなぜ国土地理院の地形図に「砂漠」と表記されているのか。
それは気候ではなく 地名としての慣用性 が採用基準となっているためである。

国土地理院の「地名選定の手引き」では、「地元で長く使われている名称(慣用地名)を尊重する」「自治体からの申請に基づき採用する」という方針が示されている。

裏砂漠・奥山砂漠は昭和46年に大島町が正式に地名として申請し、昭和47年から地形図に掲載された。
つまり、地元で自然に使われていた名称がそのまま公式地名になったというわけである。

さて、気候学的には全く砂漠ではない裏砂漠・奥山砂漠がなぜ、地元で「砂漠」と呼ばれたのか。
裏砂漠は三原山の北東側に広がる黒い荒原で、噴火のたびに降り積もるスコリア(多孔質の黒い火山岩)と火山灰が地表を覆い尽くしている。
スコリアは非常に軽く、透水性が高く、栄養分も乏しいため植物が根を張りにくい。
さらに伊豆大島は年間を通して強風が吹きつけるため、芽生えた植物が吹き飛ばされ、地表が常に更新され続ける。

特に三原山東部の櫛形山付近では、大量の降下火砕物に覆われていて透水性が高く、通常時は水が地表にほとんど流れないため、谷が未発達で、斜面が広い面として残ることから、大雨時には水が地表を薄く広く流れるシートフラッドが発生しやすい。
谷が一本しかない場所では、雨水が集中せず面状に流れるため、砂漠地帯特有の「谷が育たない地形」が維持される。

結果として、「雨は多いのに植物が育たない」という、気候学的砂漠とは異なる理由で砂漠状の景観が維持されているというわけである。

一方、砂漠地帯の南側では、谷やガリー(雨水で削られた溝)が深く削られているが谷筋の勾配は10°以下と緩やかという特徴がある

裏裏砂漠はその特異な景観から、昭和初期には「日本で砂漠体験ができる場所」として注目されていた。
1931年(昭和6年)には、観光用としてラクダ2頭とロバ11頭が導入されている。
当時の観光パンフレットや写真には、黒い火山砂の荒原をラクダが歩く姿が残されており、
「月の砂漠をは〜るばると〜♪」の世界を日本で再現したかのような光景だったという*5

しかし太平洋戦争期には飼育が困難となり、ラクダは島から姿を消した。
戦後しばらくはが代わりに使われたが、昭和36年には大島公園動物園でラクダの飼育が再開された。

1986年の三原山噴火から30年以上が経過し、火山灰やスコリアの表層が風雨でわずかに安定してきたため、実は近年になって少しずつ植生が回復しつつある。

もっとも、裏砂漠は年間を通して強風が吹きつけるため、風を避けられる窪地や岩陰から少しずつ植物が進出するという「点状の回復」が特徴である。
スコリアは透水性が高く、雨が降ってもすぐに地中へ吸い込まれてしまうため、
植物が根を張るには「風が弱い」「水が少し溜まる」「粒子が安定している」という条件が揃う必要がある。

そのため、裏砂漠全体が緑化するわけではなく、黒い荒原の中にポツポツと緑の点が増えていくという、まるで「黒いキャンバスに絵の具を落としたような」独特の景観が見られる。

植生が回復しているとはいえ、裏砂漠の中心部は依然として強風と乾燥した地表のため植物が育ちにくく、
「日本で唯一、地図に砂漠と表記される場所」という特異性は今も健在で、ドラマ・MV・CMなどのロケ地としても人気が高い。

一方、伊豆大島にはかつて表砂漠と呼ばれる砂漠地帯が存在した。場所は三原山の北西側で、裏砂漠と対になる位置関係にあるためこの名が付いたとされる。
昭和初期には観光地として賑わい、昭和10〜17年頃には砂漠斜面を滑り降りる「滑走台」なる遊具が設置され、幅広の黒ひもに前だれをつけた姉っこ(アンコ)姿の女性が滑走する写真が伊豆大島郷土資料館に残されている*6

しかし1950〜51年の三原山噴火で状況は一変する。
北西側へ流れた溶岩流が表砂漠の大部分を覆い尽くし、砂漠地形は壊滅。
その後は風が比較的弱い地帯であったこともあり、植生が急速に回復して森林化が進み、現在では「表砂漠」という名称は地元でもほとんど使われなくなった。
裏砂漠が残り、表砂漠が消えたのは、風環境と火山活動の差がそのまま地名の存続に影響した好例である。

裏砂漠のさらに奥(海側)に広がる荒原が奥山砂漠である。
こちらは裏砂漠ほど広大ではないが、スコリアと火山灰が厚く堆積し、植生が乏しい点は共通している。
ただし裏砂漠よりも風の影響が弱いため、部分的に低木が定着している場所もある。

地形的には、スコリア堆積による黒色の荒原と透水性が高く、降雨時のみ水が流れる涸れ谷が点在し、風成作用による微地形(砂丘状の起伏)が見られるなど、
裏砂漠が「風で植生が吹き飛ばされる砂漠」だとすれば、奥山砂漠は「火山砕屑物が厚く積もりすぎて植物が育たない砂漠」といった趣がある。

フィクションにおける砂漠

砂漠=過酷というイメージもあってかゲームでも過酷なマップとして登場することが多く、
砂嵐が吹き荒れて視界が悪かったり、一定時間やターン毎に熱によるダメージを受けるなどのシステムを採用している場合もある。

マリオシリーズではワールド2として採用されることが多い。

ファイアーエムブレムシリーズでは飛行系ユニットと魔道士などの軽装な歩兵ユニットを除き、移動力が低下する。
特に移動力がウリの騎兵ユニットとただでさえ移動力が小さい重装系ユニットにとっては天敵とも言えるマップである。
また隠しアイテムが埋まっているマップの場合、たいていは骨などのわかりやすい目印がある。ただし盗賊系ユニットは確実だが、それ以外は発掘できるか否かが確率で決まる場合が多い。
顔の似た大男2人組がプレイヤーの笑いを誘う喋り方をしながら敵として登場する、というイメージも。

砂漠と言えばエジプトのピラミッドのイメージも強いためか、それをオマージュした遺跡や城などのダンジョンが存在するのも定番。

砂漠マップで出現するモンスターは強めに設定されている場合も多く、ほとんど場合属性は地属性となる。

一方でアクションゲームではそれほど過酷そうなイメージはなく、北アメリカ砂漠のイメージの影響かメキシコ系の陽気な雰囲気になる事もある。
何かとステージ2辺りの序盤で登場する事も多い。また、一定時間立っていると飲み込まれる流砂のギミックがあったりすることも。
敵の姿に関しても砂漠の生物というイメージの強いサソリは勿論だが頭にターバンを巻き、蛮刀で武装したアラビアの盗賊を思わせる敵は最早お約束。
ボスキャラとしてトレマーズデューン砂の惑星の影響からか、
砂の中を泳ぐように移動する巨大なワームのような怪物が登場する事も。

上記の通り、現代が舞台である場合、飛行機の墓場のイメージがピックアップされる事も散見される。





追記・修正はサハラ砂漠を横断してからお願いします



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年07月26日 22:32

*1 「沙」自体は砂の意味合いだが、当用漢字から外されているため一般人になじみが薄いため。「砂砂漠」という表記よりも「砂沙漠」の方がわかりやすい…などの理由もある。

*2 ちなみに前日には、日本でも静岡県浜松市で日本最高気温である41.1度を記録している

*3 物質1gの温度を1度上げるために必要な熱量

*4 しかしアラビア半島では夏には夜でも30度を下回らない場合も多い

*5 ラクダはフタコブラクダで、観光客の乗馬体験にも使われたらしい

*6 この時代の観光写真は非常に貴重で、裏砂漠よりも表砂漠の方が観光地として先に発展していたことがわかる