イケイケ↑えんま堂!(ちゃおホラー)

登録日:2023/03/12 Sun 00:06:45
更新日:2025/03/24 Mon 18:06:28
所要時間:約 11分で読めます




『イケイケ↑えんま堂!』はちゃおデラックスホラー2014年3月号に収録されたホラー短編(一応)。
作者ははやみ知晶。推理ゲームを買って全部攻略サイトを見てクリアしたことがあるらしい。
今となっては有名な話だが、実は作者はあの人の別名義。

地獄で働くりんねを主人公としたコメディ。
人間を地獄におとすバイトをしているがノルマを一度も達成したことのないりんねちゃん。
そんな時出会った人間のカップルを地獄におとすため、ひと悶着起こすことになる。
ちゃおデラックスホラーはホラーだけでなく、箸休めとして「オカルト要素はあるがホラー要素はない作品」を掲載することがある。
これもそんなタイプの話のひとつ。本当に「コメディに見せかけて最後ホラーオチ」とかも無いので安心して読もう。

なお本作は現状単行本化していない。そもそもちゃおホラーのコメディものは単行本収録率が異様に低い。
ついでに収録されたちゃおデラックスホラーが現状電子化もしていないため地味に読むのが困難。
古本屋とかで見つけたらありがたく読もう。



【登場人物】


◆りんね
地獄でバイトしている女の子。
年齢は1465歳くらいで、職業はえんま大王の手下。
仕事の内容は人間界で罪人を見つけて地獄におとすことだが、現状は0人で、3日以内に地獄に罪人を落とせなければ8大地獄巡りツアーをすることになってしまう。
これは地獄でのお仕置きであり、8つの地獄を巡らせ痛めつけるというもの。
終わった時には人としての原形を保っていないらしいが、りんね的にはツアーが終わるまで5000年はかかりその間自由がなく、少年漫画好きで週刊少年マンデーを愛読しているりんねには由々しき問題であった。
なお、コスプレ姿に免じて今まで許されてきたが、見飽きたということでダメになった。
お悩み相談の体で罪人を見つけ出す作戦を立て、七宮ななせが来たことで彼女を罪人として地獄に落とそうとする。
そのために、「えんま大王の地獄道具その6シークレット人形」という、この人形の中に消したい相手の写真と名前をかいた紙を入れて焼くと、その相手は消えてしまうというアイテムを渡している。

◆七宮ななせ
本作の実質的な主人公。
女子グループの罰ゲームで伊予部という少年と付き合うことになってしまい、過去のトラウマからそれを断ると仲間はずれにされてしまうと思い、断ることができずにいる。
そのため、伊予部を地獄におとそうとしたが、彼の本来の人柄を知ることで迷っていった。
本当のことを話そうと決心し、女子グループの無視するという発言にも毅然として去る強さを見せている。

◆伊予部新
ぼーっとしている少年。初登場時には机で寝ていたところをななせに起こされ、よだれを垂らす情けない姿を見せていた。
そのためにななせからは嫌われていたが、妹を託児所に迎えにいくなど、家族想いな男。
自分が要領悪いことを知っていながらも、親や妹のために身を粉にして働く好青年であった。
学校でぼーっとしているのも働き過ぎで寝不足に陥っているためであった。
ななせに対しては実はひとめぼれであったという。


◆えんま大王
なぜか2頭身の姿をしている。
りんねには相当恨まれているようだが、半年で成果0の彼女をクビにしない辺りかなり温情である。
ただりんねのコスプレ姿はえんま大王の趣味である模様。


◆新の妹
お兄ちゃんのことが大好きな妹。兄に彼女が出来たと知って心底喜んでいた。


◆ななせのグループの女子
ななせに罰ゲームとして伊予部と付き合わせていたグループ。
伊予部に本当のことを話す決心を固めたななせに対して反対し、
「言うのならこれから卒業までななせを無視する」と言い出す始末。
さらには毅然として去って行ったななせにも、何かしてやらなきゃ気が済まない、と考えるほど。
……こいつらを地獄に落とせばよかったんじゃない?とはだいたい誰もが思うはず。


※以下ネタバレ

ななせはいきなり、りんね(メイド服姿)の謎空間に囚われる。
理由は、ななせがようやく人形を使ってくれたから、その報告にきたとのこと。
実はグループの女子たちが憂さ晴らしにななせバッグを焼却炉に入れたのだった
その結果、バッグの中のシークレット人形が焼かれて呪いが発動したのである。

そしてりんねは地獄におちてしまった伊予部の姿を見せる。
彼は戸惑う中地獄の鬼たちに捕まり、様々な罰を与えられてしまう

……というのはりんねがつくった合成映像
地獄は罪人が行くものだが伊予部は善人であるため、人形の力は無効になる。
しかし経緯はどうあれ、ななせが人形を使ったのは事実であるため、ななせは地獄に落ちてしまうことは変わりは無い。
りんねは、伊予部を地獄におとした罪悪感を味わったままななせを地獄で過ごさせるため、わざわざこの映像をつくったのだった。ゲスい
なおこの映像は伊予部が輪切りにされるところまで映される中々グロイものだった。本作唯一のホラー要素。

だが、それを見たななせは自身が身代わりになると涙ながらに訴えかけたことでりんねの目論みは失敗した。
他人のために自分を犠牲に出来る自己犠牲精神の持ち主は善人にカウントされる
つまりりんねがわざわざCG映像を見せなければ問題無くななせを地獄におとせたのに、ゲスさが生んだ自業自得によってりんねの企みは失敗し、自身の地獄巡りが確定したのである。

最後はビシッとななせに忠告していたが、彼女の性格を考えると地獄に堕とす気無いなら私に手間かけさせるんじゃねえが近いと思う。


かくして、地獄めぐりツアーが決定したと思われたりんねだが、地獄に戻るとえんま大王がツアーを免除していた
りんねにしてはあと一歩まで行ったゆえの措置らしい。
だがえんま大王がそれだけで終わらせるはずもなく……。


その代わり今人間界の幼女に大人気の「魔女っ子ポリス☆めめたん」の痴女同然の衣装で地獄一周してこい!



ギャーーーーーーーッ

何だこのセンス!!


そうしてりんねはほぼ半裸のコスプレ衣装に着替えさせられるのだった。



【余談】


ある程度漫画家に詳しい方なら知っていると思うが、『はやみ知晶』は『ぼっち・ざ・ろっく!』のはまじあきの少女漫画時代の名義。

はまじあきは最初は少女漫画を描いていたがそのうちに萌え系漫画の方が求めるものに近いと感じきららに移った人。
そういう意味で言うと、同じ話で3回もコスプレをするりんねちゃんは作者らしいキャラだったのかもしれない。
というか小学生もメインターゲットのちゃおで「幼女」という言い回しは地味に珍しい(「JS」とかはよく聞くけど)。
今更だが、本作がはやみ先生初のちゃおホラー作品*1

はやみ知晶はその後ちゃおホラーでは「スウィート♰ブラッド」を描いている。
ちゃおデラックスホラー&ミステリー2014年10月号及び2015年7月号に掲載。こちらも現状単行本未収録。というかはやみ先生の作品は実質読み切りだけなので、単行本化する機会がなかった。
話はノリのゆるいミステリーもの。ロリババア吸血鬼のキュルテンが偶然出会った巡査の榊原よりと共に事件を解決していく。
全体的な萌え度はさらに上がっているお兄ちゃんが大好きすぎて構ってほしいゆえに狂言事件起こす妹に、話の都合でページの大半半裸晒すアイドルなどなど。
そもそも主人公が日本人は血が甘いと聞いて来日した1500歳の美少女ロリータ吸血鬼というのがすごい。

こうして見ると作品内容は少女漫画から萌え漫画に徐々に変化している。

ちなみにもともとちゃお本誌で読み切りを掲載していた時も、二次元やオタクがテーマの作品が多かった。ちゃおではまあまあ珍しい作風の方。
余談だが『二次元オタクなごみちゃん』という読み切りには一コマだけぼっちちゃんにしか見えない顔芸が出てくる。





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最終更新:2025年03月24日 18:06

*1 今まで本誌で読み切りを描いていたが、これで初めてホラーデビューになった。なお本誌読み切り→ホラー読み切り→連載がちゃおの基本的な出世ルート