西九州新幹線

登録日:2023/10/11 Wed 17:37:26
更新日:2025/01/28 Tue 09:34:04
所要時間:約 5 分で読めます




西九州新幹線(にしきゅうしゅうしんかんせん)とは、佐賀県の武雄温泉駅と長崎県の長崎駅を結ぶJR九州の高速鉄道路線である。

路線データ

管轄:九州旅客鉄道
路線距離:武雄温泉~長崎間 66km
軌間:1,435mm
駅数:5
電気方式:交流25,000V 60Hz
保安装置:ATC(KS-ATC)
営業最高速度:260km/h

概要

『建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画』に基づいて計画された整備新幹線の1つである。
博多駅と長崎駅を結ぶ新幹線路線(うち博多〜新鳥栖間は九州新幹線と共用)として計画され、暫定開業扱いとして2022年9月23日に武雄温泉〜長崎間が先行開業した。

整備上の名称は「九州新幹線(長崎ルート)」で、旅客案内では九州新幹線の鹿児島ルート(博多〜鹿児島中央)と区別をつけるために「西九州新幹線」の路線名が使用される。
路線名決定前は「九州新幹線長崎ルート」「長崎新幹線」などと呼ばれていた。
計画そのものは1973年に決定していたものの、建設ルートや佐賀県の費用負担などをめぐる問題が多発し、最初の区間の着工に至ったのは2008年になってからだった。
整備にあたってはフリーゲージトレイン*1の導入も検討されたが、走行試験中のトラブルの事例や割高な保守費用などの問題があることから、JR九州はフリーゲージトレインの導入を断念し全線フル規格で整備する方針を示している。

路線の全長は66km(営業キロでは69.6km)で、これは現在ある日本の新幹線路線で最も短く、東海道新幹線の米原〜京都間(68km)よりも短い。

先述の通り、将来は九州新幹線の新鳥栖まで延伸し、九州新幹線・山陽新幹線経由で新大阪まで結ぶ計画である。これにより新神戸駅がどえらいことになるのは想像に難くない。
しかし、佐賀県側が建設に反対しているため、武雄温泉~新鳥栖間は現状はルートも含めて未定となっている。

これは主に、
  • そもそも既存の線路をFGTによってそのまま利用できるというのが大前提だった(現計画では新線路の敷設が必要となり、佐賀県にも莫大な費用負担が発生する)
  • 特急料金の値上げや第三セクター化による値上げや本数削減が懸念される
  • 長崎本線は佐賀県内は高速走行に適した線形になっており、そのままでも博多へのアクセスが便利*2である
以上より、佐賀県及び県民にとって負担は増える一方でメリットが少ないことが背景として挙げられる。
一方、長崎県はこれとほぼ逆の特性であることや、遠方から来る人の集客を見込めるなど、
建設のメリットが期待されていたことからかなり前向きだった。

ルート候補としては長崎自動車道方面へ迂回する北回りルート、佐賀駅を経由するルート、佐賀空港を経由する南回りルートの3つの案が挙げられている。

並行在来線の扱い

長崎本線が並行在来線となっている。
2022年9月の暫定開業時点では江北〜諫早間が上下分離方式となり、列車運行はJR九州が引き続き担い、設備は佐賀県と長崎県が出資する社団法人「佐賀・長崎鉄道管理センター」が管理する方式に変更された。
これに伴い肥前浜~長崎間の電化設備が撤去されている。
新幹線開業後23年間はJR九州が経営を行い、その後は協議するとしている。

なお、地図上は武雄温泉~諫早間で佐世保線および大村線と並行しているが、これらの路線は並行在来線にはあたらない。

使用車両

  • N700S系8000番台
形式でもわかる通り東海道新幹線の車両をベースにしたもの。
6両編成の全車電動車となっており、形式付番は東海道新幹線の同系と大きく異なっている。
車体は白ベースだがJR九州のシンボルカラーである赤色が下部に塗装されており、先頭車には落成当時の800系と同じく当時のJR九州社長・青柳俊彦が揮毫した「かもめ」のロゴが描かれている。全線開業時にはあっさりとロゴが消されることだろう
車内は全車普通車で、指定席車は2+2、自由席車は2+3の座席配置となっている。

開業当初は4編成が運用されていたが、全般検査実施に合わせ2023年8月に1編成が増備された。

列車愛称

  • かもめ
1961年から長崎へ向かう特急列車に使われてきた由緒ある愛称で、当初は京都発着で1975年3月の山陽新幹線博多開業でいったん廃止され、1976年7月の長崎本線・佐世保線電化に伴い博多発着の電車特急として復活。2022年9月23日の新幹線開業に伴いその愛称が引き継がれた。
武雄温泉〜長崎間の全区間を運行する列車が大半を占めており、早朝と深夜に新大村〜長崎間の区間列車が下り2本・上り1本ずつ設定されている。

停車パターンは、
  • 嬉野温泉・新大村通過
  • 嬉野温泉通過
  • 各駅停車(上記の区間列車含む)
の3通りとなっている。
これらは側面の行先表示器に表示されている列車名欄の色で判別することが可能で、本項で停車パターンを描いた色がそれを示している。

なお、駅の発車標では上り列車の行き先はリレー特急の行き先で表示される(例えば接続のリレー特急が博多行きであれば『かもめ○号 博多』という表示になる)ため、初見だと困惑するかも。
特に上りのかもめ64号は接続のリレーかもめ64号が門司港行きとなっているため、門司港行きの新幹線という非常にカオスな案内がされる。

現在は武雄温泉で対面接続を行うリレー方式を取っており、在来線特急の「リレーかもめ」または一部の「みどり」「ハウステンボス」と接続している*3
「リレーかもめ」と「かもめ」は事実上同一列車の扱いとなっており、大幅な遅れでない限りは遅延時でも接続を取るようになっている。

停車駅

  • 武雄温泉
現在の起点駅。佐世保線乗り換え。
リレー特急とは改札を出ずに同一ホームで乗り換え可能。
佐賀県西部の主要都市、武雄市の代表駅で、駅名にもなっている武雄温泉の最寄駅。

  • 嬉野温泉
嬉野市唯一の鉄道駅かつ線内唯一の単独駅。
1931年の肥前電気鉄道廃止以来、市内には約91年間鉄道駅が存在しなかった。
日本三大美肌の湯に選ばれている佐賀県の有名温泉地・嬉野温泉の最寄駅。
窓口はあるが指定席券売機は設置されていないので、切符購入時は要注意。

  • 新大村
大村線乗り換え。
新幹線開業と同時に在来線にも駅が設置された。
長崎県の空の窓口である長崎空港の最寄駅で、本駅を往復するシャトルバスも出ている。
が、今のところ長崎市や佐世保市へ直通する高速バスが利便性、料金などすべてにおいて優位なので、本駅が真価を発揮できるかはこれからのバスとの連携次第というところだろう。
最長片道切符の終着駅でもあり、新幹線開業と同時に肥前山口駅(現:江北駅)から変更された。

  • 諫早
長崎本線・大村線・島原鉄道線乗り換え。
長崎県内第3位の人口をもつ諫早市の中心駅。

  • 長崎
終着駅。長崎本線・長崎電気軌道(長崎駅前停留所)乗り換え。
長崎県の県庁所在地・長崎市の代表駅。長崎駅前電停はやや離れておりかつ歩道橋を超えなければならない点に注意。
元々は地上駅だったが、新幹線の整備に向けて高架化が進められ、2020年に新幹線開業に先立ち今までの駅の西側に近未来的な高架駅に生まれ変わった。
新幹線・在来線ともに行き止まり構造になっている唯一の駅でもある。


追記・修正は全通がいつになるかを予想しながらお願いします。

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最終更新:2025年01月28日 09:34

*1 狭軌と標準軌を切り替えることにより、新幹線と在来線の両者を直通できる列車のこと。

*2 武雄温泉駅からなら特急かもめのみ(新鳥栖駅で九州新幹線に乗り換えない)でも約1時間、佐賀駅からだと約30分で博多駅に着く。

*3 対象列車はそれぞれ「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」と案内される。