長崎本線

登録日:2015/04/15 (水曜日) 15:30:00
更新日:2024/11/16 Sat 16:19:52
所要時間:約 9 分で読めます




長崎本線(ながさきほんせん)は、鳥栖駅から長崎駅を結ぶJR九州の鉄道路線である。

*1

概要

JR九州の主要幹線の1つで、曲線区間が多い有明海の入り組んだ沿岸部や軟弱地盤地帯の佐賀平野を走る為、早くから路線変更や線形強化、新車投入が行われてきた。
肥前山口で分岐する佐世保線(江北~早岐間)と諫早駅から乗り入れる大村線は、開業から昭和初期まで元々長崎本線の一部だったりする。
両線は共に1934年の新線(有明線)開業後に分離・編入して独立した。
路線記号は鳥栖~佐賀間にJHが付番されている。

上記以外にも大村湾側を走る喜々津~浦上駅間の非電化区間である旧線と、市布経由で電化区間の新線(浦上線)に分かれている。
その為、函館本線中央本線予讃線と並びJRの路線でも珍しい「旧線と新線が共存する路線」でもある。
旧線と新線が共存している理由としては

  • 西九州新幹線の建設に力を入れている為、JR九州に長崎本線を複線化する意思がない。
  • 複線化費用に対する国の補助金額が少なすぎる為、自治体負担のみではとても複線化費用が捻出できない。
  • 曲線区間が多く線形が悪いものの新線区間を複線化するよりも、旧線を残して事実上の複線状態にしといた方がコスト的に安く済む。

というJR九州と地元自治体双方の財政的事情が存在する。

但し旧線区間は非電化、新線区間は電化しているので厳密には複線ではなく単線並列である。
因みに上記に関連して単線区間である江北~諫早間をもし複線化するとなると60年近くかかるという試算が出ている…。

西九州新幹線開通後

2022年9月23日に長崎市民待望の西九州新幹線が開業したが、同時に付いてくるのが長崎本線の江北~諫早間の並行在来線問題であった。
当初はフリーゲージトレイン導入の話もあったが安全面とカネの問題で頓挫してしまい今の所全線フル規格での開業が強まっている。
そうすると新鳥栖〜江北間も並行在来線問題に関わる可能性が強まっているが、
現在

  • 先行開業区間の江北~諫早間は上下分離方式にして開業後23年間はJR九州が経営を行う(その後は協議する)
  • 新鳥栖~江北間は佐賀県の猛烈な反対により現在白紙状態

となっている。

路線図

*2

運行形態

鳥栖~江北間では特急「リレーかもめ」「みどり」「ハウステンボス」が、鳥栖~肥前鹿島間では特急「かささぎ」がそれぞれ運行されている。
新幹線開業までは全線で特急「かもめ」が運転されていた。
その為、鳥栖~江北間では1時間あたり2~3本もの特急が運行する特急街道となっている。
普通は概ね鳥栖~江北、江北~諫早、諫早~長崎間に分かれている。新幹線開業前は全区間通しの列車もあったが、肥前浜以南の電化設備が撤去されたため運転がなくなった。

  • 鳥栖~江北
上記の様に特急街道であり、普通は1時間あたり1~2本程度運転される他に区間列車や唐津線佐世保線に直通する列車もある。

  • 江北~諫早
有明海の沿岸部を走る為にカーブが非常に多く、ここの区間は全線が単線となっている。
振り子式の特急車両でも最高速度が120km/hでの運転となり、最高速度130km/hで走る他の区間よりも速度が落ちる。
普通列車は電化と非電化の境界駅である肥前浜始発・終着列車が多い他、江北~肥前鹿島・多良・肥前大浦、小長井・湯江~諫早間の区間列車もある。
江北~肥前鹿島間は1時間あたり1~2本程度運転されるが、肥前鹿島~諫早間は2時間以上間隔が空く時間帯がある。
特に県境を含む肥前大浦~湯江間は閑散区間で、昼間は5~6時間ほど運転されない時間帯があるので要注意。

  • 諫早~長崎
新旧線それぞれで1時間あたり1~2本程度運転されている。
因みに新線は新幹線開業までは電化区間だった為、電車で運行されていた。
現川~浦上間にある長崎トンネルは全長6kmにも及ぶ信号場も備えた長大なトンネルで、市街地の真下をぶちぬいている。
大村線直通列車は普通列車とふたつ星4047は旧線、シーサイドライナーは新線を経由する。


車両

電車

西九州新幹線開業後は鳥栖~肥前浜間での使用となっている。

  • 885系
特急「リレーかもめ」「みどり」「かささぎ」で使用。
6両編成で、振り子式の制御方式・最高時速130km/hを出す高スペック。
車内は床をピカピカの木目と革張りの座席という豪華仕様である。
「かもめ」編成は落成当初写真のような黄色塗装だったが、運用共通化に合わせて青塗装に変更されている。
*3

2001年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
  • 783系
「みどり」「かささぎ」「ハウステンボス」に使用。
「ハイパーサルーン」という愛称があり、客用扉が車両の真ん中にあるのが特徴。
当初「かもめ」用に導入された編成は「有明」用編成との区別のため、先頭車の展望席部分が青帯となっていた。
*4

1989年鉄道友の会ローレル賞受賞。
  • 787系
「リレーかもめ」「かささぎ」で使用。
4人用の個室や通常のグリーン席の上位となるDXグリーン席が設置されているなど豪華な作りになっている。
また、D&S列車の「36ぷらす3」もたまにやってくる。
*5

1993年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
  • 415系
国鉄からJR九州へ直接承継された車両と、JR東日本から譲渡された車両がある。
鳥栖~佐賀間で朝ラッシュ時のみ運転。
*6
  • 811系
1989年に導入されたJR九州初の一般型電車である。
鳥栖~肥前浜間でラッシュ時に運転。
  • 813系
1994年に登場した近郊型電車。
製造時期が長期にわたるためバリエーションが多彩で、改造などで更にカオスになっている。
鳥栖~江北間で夜の下りと朝の上り1本ずつ運転。
*7
  • 817系
九州の電化区間ではどこで見みられる近郊形電車。
普段は2~3両編成だが、ラッシュ時間帯は4~6両で運転する事がある。
*8


気動車

  • ふたつ星4047
武雄温泉~長崎間で使用される特急車両。
元は「はやとの風」と「いさぶろう・しんぺい」で使用していた車両で、列車廃止に伴い再改造された。
形式はキハ40・キハ140で、車両番号は全て4047に変更されている。
  • YC1系
キハ66系置き換えのために投入されたハイブリッド気動車。
屋根上の蓄電池と前面を覆うLED照明が特徴的。
踏切事故対策らしいが見た目から「イカ釣り漁船」呼ばわりされたりする。
小長井~長崎間でのみ運用される。
  • キハ47形
唐津線直通および江北~長崎間で使用。
普段は2両編成だが、唐津線直通はキハ125形との混結で最大4両編成で運行。
江北~長崎間は電車から思いっきりダウングレードした青い専用塗装の車両が使用される。
  • キハ125形
唐津線直通で使用。
普段は1両ないしは2両編成だが、キハ47形と混結で最大4両編成で運行。

駅一覧

  • JH01 鳥栖
鹿児島本線乗り換え。
九州の交通の要衝かつ鳥栖市の中心駅。
だが、新鳥栖駅開業後は役割を奪われつつある。
  • JH02 新鳥栖
九州新幹線乗り換えで、西九州新幹線との分岐駅になる予定。
元々ここに駅を作る予定はなかったが、新幹線の計画が生まれた事により作られた。
  • JH03 肥前麓
陸上自衛隊鳥栖分屯地最寄駅。
  • JH04 中原
みやき町唯一の駅。北側には煉瓦造りの煙突の廃墟が残る。
  • JH05 吉野ケ里公園
50ヘクタールに渡る弥生時代の大規模集落跡で有名な吉野ヶ里遺跡の最寄駅。
  • JH06 神埼
その名の通り神埼市の中心駅。ここからでも吉野ヶ里公園へアクセス可能。
  • JH07 伊賀屋
駅舎は21世紀になって立て直されたものだが、それ以前の木造時代もこぢんまりとした駅舎だった。
  • JH08 佐賀
唐津線乗り換え。
佐賀県の県庁所在地である佐賀市の中心駅。
本丸御殿が木造復元された佐賀城の最寄駅でもある。
本駅のすぐそばにサイゲームスの拠点ビルがある。
「ロマンシング佐賀」コラボの一環として、列車接近時にはロマサガシリーズのオープニングタイトル曲をアレンジしたメロディが流れる。
  • 鍋島
長崎県への貨物輸送の拠点駅。実は当駅以西には貨物列車が一本も運行されておらず、有田・佐世保・長崎方面へは当駅からトラックに積み替えられて輸送されている。
  • バルーンさが
佐賀インターナショナルバルーンフェスタ開催期間(10月下旬~11月上旬の1週間程度)のみ営業を行う臨時駅。
つまりかなりレアな駅である。
かつてはバルーンフェスタ期間外はホームさえなかったが作業員がグモる事故があって以降、ホームのみ常設されている。このため営業期間外の車窓からでも確認は簡単。
  • 久保田
唐津線分岐駅。
  • 牛津
小城(おぎ)市の代表駅。駅舎は赤レンガ倉庫風の洒落た造り。
  • 江北
佐世保線分岐駅。
佐賀県中部地域の鉄道交通の要衝の為、栄えている。
元は「肥前山口」と呼んでいたが、新幹線開業に合わせて地元の町名である「江北」に改称された。
ふたつぼし4047停車駅で、武雄温泉からやって来た列車はここで進行方向を逆転して長崎本線へと入る。
SUGOCA北九州エリアはここまで。
  • 肥前白石
白石町の中心駅。
国鉄民営化直前の廃線ラッシュにより1年弱であるが、最長片道切符の起点駅となった事がある。
ここから6駅連続で「肥前」が頭につく駅名が続く。
  • 肥前竜王
地元のスポーツ施設が近くにある。祐徳稲荷行きのバス停もすぐの国道沿いにある。
  • 肥前鹿島
鹿島市の中心駅。西九州新幹線開業時に取り残される区間の中でも利用が比較的多かったために色々問題が起こり、当駅まで特急が存置されることになった。
  • 肥前浜
ふたつぼし4047停車駅で、日本三大稲荷の1つ祐徳稲荷神社の最寄駅。
しかし徒歩40分と難易度高めである上、連絡交通機関も一切ない。
(神社行きのバスが停車する、バス停までは徒歩15分)
新幹線開業後、電化区間はここまでとなった。
  • 肥前七浦
鉄道省時代からの木造駅舎が残る。ゾンビランドサガにも出てきたガタリンピック開催地こと道の駅鹿島の最寄り駅。
  • 肥前飯田
駅舎がなく、盛り土上のホームへ下から入場する構造。春の撮影スポット。
肥前シリーズはここで終了。
  • 多良
太良町の中心駅でふたつ星4047停車駅。
一部の普通列車が上り方面へ折り返す。
  • 肥前大浦
佐賀県最南端の駅。
ここから本数が激減する。
  • 長里
駅舎がホームと隣接していない、少し変わった構造。
  • 小長井
有明海に面し、ふたつ星4047停車駅となっている。
地元の小学生が作った花壇アートや、ハートフルこながい名付けられた洋風の駅舎が特徴。
  • 湯江
ここから普通列車の本数が少し増える。
  • 小江
ローマ字表記で一番短い駅名の一つ(「Oe」)。
  • 肥前長田
駅舎がない…事ぐらいしか特筆することがない。
  • 東諫早
この辺りから諫早の市街地に入る。
  • 諫早
西九州新幹線、大村線、島原鉄道島原鉄道線乗り換え。
大村線の一部の列車はここで引き返すが、殆どの列車が長崎方面に乗り入れる。
諫早市の中心駅で、長崎県内で2番目に利用者が多い駅。
因みに島原鉄道の駅としても2番目だったりする。
新幹線ホームの追加と共に巨大な駅ビルを建てる壮大な再整備計画をぶち上げている。
これより先はSUGOCA長崎エリアとなる。
  • 西諫早
眼鏡橋*9をイメージした駅舎になっている。
  • 喜々津
長崎本線旧線乗り換え。
長崎方面の列車がほとんど通過するため、朝のラッシュがすごい。
  • 市布
福砂屋の工場の最寄駅。
  • 肥前古賀
2015年3月に無人になってしまった駅。また旧線を除く唯一の棒線駅。
ホームと列車の間が広く空いている上、洒落にならないくらい傾斜があるため電車を待つのに注意が必要。
その傾きっぷりは通過するだけでわかるレベルで、初見ではギョッとすること間違いなし。
  • 現川
長崎トンネル諫早側出口の手前にある駅。「うつつがわ」と読む。
通過線があり、新幹線開業前はかなりの時間停車していることもあった。
  • 浦上
長崎電気軌道(浦上駅前停留場)乗り換え。
旧線との合流駅にして全旅客列車停車駅。実は初代長崎駅だったりする。(1897~1905)
1945年8月9日の原爆投下地点から最も近かった駅で、駅は壊滅的被害を被った。
2020年3月28日に長崎駅と共に高架化された。
  • 長崎
西九州新幹線・長崎電気軌道(長崎駅前停留所)乗り換え。終点駅。
長崎県の県庁所在地である長崎市の中心駅。
かつては長崎駅の先に上海への貨客船への連絡やコンテナを扱う長崎港駅という駅が存在した。
この駅もまた原爆投下で壊滅的な被害を受けた。
県庁所在地の中心駅の中で高松駅と並び全国に2駅しかない終着駅。ホームも櫛形である。
2020年3月28日に高架化されて暫定開業。
今後は2025年をめどに全面開業予定。

旧線

  • 喜々津
長崎本線新線乗り換え。
  • 東園
かなり海に近いがホームからは殆ど海が見えない。
  • 大草
諫早市の駅。旧線区間で交換が可能なのは今ではここと長与のみ。
ここから喜々津までは大村湾に沿って走る文字通りのシーサイドライナーとなり、福山雅治の故郷を題材とした歌そのままの風景が広がっている。
一度は快晴の日に旧線に乗ってみてほしい。
  • 本川内
松之頭峠を登る勾配区間の途中にある長与町の駅。
勾配区間で列車交換を行うためにスイッチバック設備を備えていたが、
今はシザースクロスポイントも撤去されており、駅舎と旧ホーム草に埋もれた線路のみがと残っている。
福山雅治の写真集のロケ地に使われたことでも有名。が、彼の座っていたベンチも撤去済み。
  • 長与
長与町の中心駅。
旧線のなかでも通勤通学利用客が多く、長崎駅から当駅折り返しの列車もかなりある。
因みに「クラッシュギャルズ」で一世を風靡した女子プロレスラー長与千種の「長与」はここが由来。
けど、本人は大村市出身だったりする。
  • 高田
長与駅とは1kmしか離れておらず、新線含めて最短区間となっている。
桜並木と並行しており、春には撮影スポットになる。
  • 道ノ尾
長崎市と長与町の境にまたがる。周りの発展に取り残された大正時代の木造駅舎が最大の特徴。
原爆投下時には余波を受けてわずかに駅舎が歪む被害を受けている。緊急の救護所ともなり、長与駅まで地獄絵図が続いていたという。
かつては2面2線の駅で交換設備があったが、新線開通と共に廃止された。使われなくなった2番ホームはそのままになっている。
そのため、旧線全体のラッシュ時の容量が少なく再度の駅拡張を望む声もあるが、日中は全く不要になるので望みは叶いそうにない。
  • 西浦上
長崎電気軌道住吉電停が近い。
長崎大学の最寄駅で、駅付近にはアーケード街が広がっているが、悲しいかな長崎電軌の本数がJRの20倍くらいある上電停が長崎大学の目の前と非常に不利を背負っているためJR駅の利用者はあまり多くない。
  • 浦上
新線合流駅。


追記・修正宜しくお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • JR九州
  • 佐賀県
  • 長崎本線
  • 鹿児島本線
  • 電化
  • 単線
  • 新線
  • 佐世保線
  • 大村線
  • 鉄道
  • 長崎県
  • 非電化
  • 唐津線
  • 複線
  • 旧線
  • 幹線
  • 西九州新幹線
  • かささぎ
  • リレーかもめ
  • 路線シリーズ
  • 赤いかもめ
  • 白いかもめ
最終更新:2024年11月16日 16:19

*1 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ltdec/885b.jpg 日時:2016/01/04

*2 出典:Wikipedia URL: http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e1/Kyushu_Shinkansen_map_Kagoshima_route_and_Nagasaki_route.png 日時:2016/01/04 出典者:ikaxer

*3 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ltdec/885b.jpg 日時:2016/01/04

*4 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ltdec/783huis.jpg 日時:2016/01/04

*5 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ltdec/787around.jpg 日時:2016/01/04

*6 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/type/411_1600.jpg 日時:2016/01/04

*7 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/813a.jpg 日時:2016/01/04

*8 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/817a.jpg 日時:2016/01/04

*9 長崎市が有名だが、諫早にも同名の橋が存在する。本駅はもちろん諫早市のものがモチーフ。