登録日:2015/05/11 (月曜日) 14:00:00
更新日:2024/09/01 Sun 20:19:59
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九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)は
博多駅から
鹿児島中央駅まで結ぶ、
JR九州の高速鉄道路線である。
山陽新幹線と直通運転を行っており、時刻表では「山陽・九州新幹線」ないしは「東海道・山陽・九州新幹線」等、様々な呼び方が存在する。
【路線データ】
管轄:九州旅客鉄道鉄道事業本部新幹線部
路線距離:
博多~
鹿児島中央間 256.8km
軌間:1,435mm
駅数:12
電気方式:交流25,000V 60Hz
保安装置:ATC、車内信号式KS-ATC、ATC-NS(
博多駅構内~博多総合車両所付近)
営業最高速度:260km/h
【概要】
2004年に新八代~
鹿児島中央間で先行開業し、7年後の2011年に
博多~新八代間も開通し全線開通となった。
何故南半分が先に部分開業したかというと、他ならぬ
鹿児島県側の招致及び熱意が凄まじかった為である。
この背景には並行在来線である
鹿児島本線の問題が絡んでくる。
現在、鹿児島本線の八代~鹿児島間は昭和初期に建設された川内線(海側ルート)と呼ばれた新線区間である。
当時の
山側の旧線ルートからすれば画期的な短縮ルートだったものの、単線&海岸線に沿ってる為に線形が劣悪であった。
その故に鹿児島県民の新幹線にかける情熱は半端なものではなく、また先に博多~熊本間が部分開業してしまうと
「熊本~鹿児島中央間って何も急いで作らなくて良くね?」
という
東北新幹線の盛岡以北みたいな前例を危惧した為、行政も県民も揃って鹿児島県側が部分開業に拘ったのである。
その事は、部分開業後の利用者数が開通前の鹿児島本線の八代~鹿児島中央間の
2.3倍にも上った事からもうかがえる。
一方で、この問題の負の面は新幹線開通に伴い経営分離された
肥薩おれんじ鉄道線に対する扱いにも露骨に尾を引いている。
詳細は
肥薩おれんじ鉄道線を参照。
全線開通となったのは2011年のダイヤ改正が行われた、2011年3月12日。
お察しの通り、前日である3月11日に
東日本大震災が発生してしまい、出発式や祝賀セレモニー、記念CMは軒並み中止となる憂き目に遭ってしまう。
その5年後の2016年4月14日には、九州新幹線自体も
2016年熊本地震によって被災・全線が不通となるという、地震大国ゆえの災厄に見舞われてしまった(ただ、東北新幹線は全線開通のたった3ヶ月後、はやぶさ運転開始の僅か
6日後に東日本大震災に見舞われてしまった為、これでもマシと言えてしまうのが余計に悲劇である)。
まさに踏んだり蹴ったり。幸い2週間後に全線復旧したのが救いか(完全復旧は一年後)。
なお、計画当初は鹿児島ルートと呼ばれていた。これは長崎方面へのルートと区別するためで、こちらは
西九州新幹線の名前で2022年9月23日に武雄温泉~長崎間が部分開業した。
将来は新鳥栖駅で接続し、
山陽新幹線の
新大阪駅まで乗り入れる計画のようだ。
便利だが新神戸駅がまたえらいことに・・・
【列車愛称】
博多~
鹿児島中央間を運行する「のぞみ」ポジションの列車。山陽新幹線直通で
新大阪まで乗り入れる。
九州新幹線内の停車駅は博多、久留米(一部)、熊本、川内(一部)、鹿児島中央の5駅のみである!
(なお、殆どの列車は3駅のみ停車となるが、
山陽新幹線直通はのぞみ停車駅が加わる)
但し、ダイヤは1日8往復しかない…ローカル線かよ!
まあ、当初は計画にも含まれておらず航空機対策で急遽作られたから仕方ないと言えば仕方ない。
その為か、2018年のダイヤ改正に伴う大幅減便においても本数は変わらなかった。
実は優等列車を最寄り駅に停めたい沿線自治体と優等列車の停車駅を主要駅のみに絞りたいJRとの妥協の産物。
車両はN700系のみが使用される。
因みに「みずほ」という名前はかつて東京~熊本・長崎・大分を結んでいた寝台特急から受け継いでいる。
「ひかり」ポジションの列車。
1時間あたり2本運転されている。「みずほ」同様に山陽新幹線からの直通列車も設定されている。なおその区間の停車駅は主要駅のみなので「ひかり」よりも「のぞみ」に近い。
しかし、2018年のダイヤ改正に伴う大幅減便において日中・夜の3本が減らされてしまった‥。
停車駅はみずほの停車駅に加えて新鳥栖・久留米・川内の各駅に停車する他、
- 毎時2本のうち1本が熊本~鹿児島中央間の各駅
- 山陽新幹線直通列車の1.5往復が筑後船小屋・新大牟田・新玉名に、上り1本のみ博多~熊本間の各駅
に停車する。
車両はN700系と800系が使用されるが、800系は山陽新幹線には直通しない。
「みずほ」同様、「さくら」という名前はかつて東京~長崎間を結んでいた寝台特急から引き継いでいる。
「みずほ」と「さくら」では「さくら」の方が元々格上の列車に用いられていた為、一部の鉄が歴史を蔑ろにするのかと騒いだとか。
ゆるぎない各駅停車。
1時間あたり1~2本運転されている。
運転系統が時間によって異なり
- 朝夕は博多~鹿児島中央の全駅+博多~筑後船小屋間、川内~鹿児島中央間の区間運行
- 日中は博多~熊本間のみ
となっているので注意が必要。
日中の熊本~鹿児島中央間の各駅停車は「さくら」が役目を果たしている。
しかし、2018年のダイヤ改正に伴う大幅減便において日中・夜の3本が減らされてしまった‥。
「つばめ」の愛称はかつて博多~西鹿児島(現:鹿児島中央)間を結んでいた同名の在来線特急から受け継がれた。
余談だが、「つばめ」という列車名は東海道本線が始まりで、徐々に運転区間が西へ移って最終的には九州新幹線の愛称となった。
【使用車両】
全列車で使用。8両編成。
2011年3月の全線開業時に営業運転を開始した。
カラーリングは白藍をベースに紺藍と金の側面ラインが入るもので、
東海道新幹線用とは大きく印象が異なる。
車内はグリーン車と普通車指定席が2+2列、自由席が2+3列となる。
山陽新幹線内では300km/hで運行されるが、九州新幹線内は260km/hで運行される。
7000番台が
JR西日本(S編成)、8000番台が
JR九州(R編成)所属。
写真の開業記念虹色編成を筆頭に数多くのラッピング車両が存在する。
「つばめ」「さくら」で使用。
九州内のみで運行される為、N700系とは異なり6両編成。
九州新幹線と言えばこれという諸氏も多いはず。
新八代開業と同時に運行を開始し、2009年に3編成(1000番台)が増備された。
この増備編成は
ドクターイエロー的な役割を担うため専用機器類が増設されている。
700系のデザインコンペで没になったデザインを流用し、E2系と同じパンタグラフを設置している。
落成当時は当時の
JR九州社長・石原進の揮毫による「つばめ」の毛筆ロゴが描かれていた。
室内はこれまでの新幹線とは異なり「和」を意識した作りとなっている。
1000番台に至っては川辺仏壇の木彫り・蒔絵・彫金,博多織や久留米絣など九州の素材・工芸品を使用する等かなり本格的。
なお、普通車のみでグリーン車はなく、フル規格の新幹線車両で
2+3列の座席配置が無い唯一の形式である。
本形式は山陽新幹線への乗り入れ試験も実施したが、結局営業運転では見送られている。
2005年鉄道友の会ローレル賞受賞。
【駅一覧】
山陽新幹線・
博多南線・
鹿児島本線・
篠栗線(福北ゆたか線)、福岡市営地下鉄空港線・七隈線乗り換え。
九州最大かつ
福岡県第一の都市、福岡市の玄関口。
山陽新幹線との境界駅である他、長崎・佐世保・大分各方面の特急もここが始発駅。
長崎本線乗り換え。
西九州新幹線開通後は分岐駅になる予定。
元々ここに駅を作る予定はなかったが、西九州新幹線の計画が生まれた事により急遽作られた。
その西九州新幹線が開業する前までは佐賀県内で唯一の新幹線停車駅だった。
ちなみにこの駅、佐賀県にあるので
福岡から佐賀に一度行ってまた戻ってくると言う奇妙なルートを取っている事になる。
鹿児島本線・
久大本線乗り換え。筑後川花火大会の最寄駅。
福岡県第三の都市・久留米市の代表駅。元々は市の中心部に建てられたはずだったのに、中心部が東に移動してしまった珍しい駅。
その為、現在の市の中心街に位置する西鉄久留米駅には乗降客数で2倍以上の差を付けられている…。
それでも駅別取扱収入はJR九州の全駅中8位であり、県庁所在地の代表駅を除けば小倉駅に次いで2位だったりする。
2018年のダイヤ改正に伴い、みずほの一部列車が停車するようになった。
鹿児島本線乗り換え。
本当は新幹線単独駅になるはずだったが、船小屋駅を南に約500メートルほど移設し鹿児島本線との共同駅になった。自民党の某有力議員の力が働いているとかいないとか。
新幹線開業後駅前には
福岡ソフトバンクホークスの練習施設や公園が作られるなど開発が進んでいる。
数少ない九州新幹線の単独駅。
因みに新大牟田となっているが、鹿児島本線では吉野駅が一番最寄駅だったりする。
南西に7km離れた鹿児島本線の大牟田駅に行くにはバスに乗る必要がある。
数少ない九州新幹線の単独駅その2。
半径1km圏内は全て田んぼしかないという非常に自然に恵まれた駅。
市の中心駅である玉名駅は南西に4km離れた場所にある為、移動は
タクシーかバスを用いる必要がある。
鹿児島本線・
豊肥本線・
三角線、熊本市電幹線・田崎線(熊本駅前電停)乗り換え。
熊本県の県庁所在地&中心駅。
近年復元が進んでいる
熊本城の最寄駅でもある。
鹿児島本線乗り換え。
この駅から日中は「つばめ」が停車しなくなる為にダイヤが在来線に負けるほど少なくなる。
部分開業時の始発駅で、日本初となる在来線と新幹線が同一ホーム上に乗り入れる構造となっており、「つばめ」と「リレーつばめ」は当駅で対面乗り換えを行っていた。
JR九州の「人気駅弁ランキング」で3年連続1位をとっている名物駅弁の鮎屋三代はここで買える。
なお、新幹線開業に伴う相乗効果を狙い新幹線が走っていない
宮崎県からの客を取り込もうと宮崎から新八代までを高速バス、新八代から博多まで新幹線で移動する
B&Sみやざき号を新たに設けそこそこの旅客数を確保している。
肥薩おれんじ鉄道線線乗り換え。
実は鹿児島本線時代はこの駅は存在せず、「信号場」があった場所を改造して駅に昇格した。
当然接続や乗客は…お察しください。
肥薩おれんじ鉄道線乗り換え。
こちらは出水市の中心駅とあって、鹿児島本線への直通快速である「スーパーおれんじ」と「オーシャンライナーさつま」の大半が停車する。
鹿児島本線、肥薩おれんじ鉄道線乗り換え。
新幹線開業前までは単なる普通の駅だったが、新幹線開業後は状況が一変。
JR九州の鹿児島県内の駅としては鹿児島中央駅に次ぐ第2位、駅取扱収入もJR九州全体で11位となった。
そして、当駅~鹿児島中央の新幹線区間定期券利用者数も博多~熊本間に次ぐ第2位と、今では「新幹線で最も恩恵を受けた普通の駅」となっている。
更に2018年のダイヤ改正に伴い、みずほの一部列車が停車するようになった。
鹿児島本線・
日豊本線・
指宿枕崎線、鹿児島市電第二期線・唐湊線(鹿児島中央駅前電停)乗り換え。
乗降客数九州第3位、収入第2位の南九州市最大の都市にして
鹿児島県の中心駅&終着駅。
日本最南端の新幹線停車駅&複数の鉄道接続駅でもある。
なお、鹿児島本線の川内線ルート開通前までは「武駅」、新幹線開業前は「西鹿児島駅」だった。
【余談】
宮城県の松島基地に所属するブルーインパルスは、震災発生前日から九州新幹線全面開業による式典のために7機が飛来し芦屋基地に遠征中だったため、保管庫の予備機1機以外は津波被害を免れた。
松島基地所属の部隊機は当日の悪天候などによって空中退避ができずに全機が津波で水没してしまっており、損害が軽微で済んだ部隊はブルーインパルスのみである。
JR九州はこの全面開通に伴う相乗効果を目論み、B&Sみやざき号以外にも福岡県と宮崎県を結ぶ
高速バス「
フェニックス号」の共同運航から外れ、独自に「たいよう号」を走らせたがフェニックス号に惨敗し僅か1年余りで終了、再び共同運航に参加している。
一方、
熊本県のひのくに号は開業に伴い大幅な減便…になるどころか、それまでの鉄道客が高速バスに流出したことで更に増便することとなった。
一方、鹿児島県と福岡県を結んだ空路は、鹿児島空港の立地上新幹線に惨敗することが確定したことから大幅な減便となっている。
開業CMはカメラを搭載した虹色専用ラッピングの試験車両を事前告知の上で
鹿児島中央駅~
博多駅間で走らせて、沿線の人を撮影するというもの。
当日は
JR九州の想定を大きく超える住民が個人・団体問わず詰めかけ、七色の横断幕や新幹線のパネル、チアリーディングに気球に謎の風船人形等思い思いのパフォーマンスで開業を祝った。
撮影されたその様子はCM向けにいろんな尺で動画編集・作成されたものの、前述のとおり震災に伴う自粛で殆どテレビ放送されることなく幻のCMとなってしまう。
しかし開業から数日経ってJR九州のYoutube公式や個人サイト、某笑顔動画に上がっていたものが注目を浴び始める。特に地元の人たちが純粋に喜んでいる姿がマイア・ヒラサワによる音楽「Boom!」の軽快さもあって、地震による被災者を勇気付けているとネット上で反響を呼び、関連動画は数百万再生に上った。
JR九州はCMのDVDを販売したが、反響から最終的には追加販売分を含め27000枚を売り上げる大ヒットを記録した。
また、ACCCMフェスティバル大賞、
ギャラクシー賞CM部門大賞、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル金賞、ロンドン国際広告賞銀賞、スパイクスアジア広告祭金賞とこの年の国内外のCM関連賞を総なめにする快挙を達成している。
追記・修正宜しくお願いします。
- しれっとR10編成の写真入れるなら触れてやれよ…w -- 名無しさん (2015-05-11 16:20:40)
最終更新:2024年09月01日 20:19