登録日:2024/1/18 Thu 19:37:21
更新日:2025/04/02 Wed 21:28:11
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石鹸魚(英:soap fish)はスズキ目ハタ科に属するヌノサラシ、ルリハタ、キハッソク、アゴハタの総称である。
彼ら/彼女らは皮膚からグラミスチンという魚毒性の溶血作用を持つ蛋白毒を分泌する。
このグラミスチンは厄介なことに石鹸洗剤を混ぜたかのように、水を泡立たせる効果があり、ゆえに石鹸魚、と名前がついた。
他種の魚にとって「こうかは ばつぐんだ!」といっても過言ではないほど強力なものだが、我々哺乳類も毒の対象となる。蛋白毒であるため、加熱処理を施せば食べられないことは無いが、食用厳禁。
実際ニューギニアではヌノサラシを食べた人が亡くなるという事故もある。
なお、グラミスチンは特徴的な苦味があるらしく、食べても美味くない上、一部シガトキシンに似た症状のオマケ付き。
興奮や警戒時など、彼らの気持ちが昂ぶっている時は分泌量が増える。
見た目が美しいため、飼育をしてみたいと思うのはやまやまだが、他種と混泳飼育をしようと彼らを入れたら最期、一夜にして水面は泡立ち、タンクメイトは全滅、その中を元凶・石鹸魚は耐性があるために我が物顔で泳いでいる...という惨劇を招くため、混泳はこれまた厳禁。どうしても、というなら同種でどうぞ。
え?海ではどうなのかって?そりゃあ海だもの。広すぎてコイツラが束になって毒を出そうとも、海からしてみればちょっと痺れる程度だろう。うみのちからってすげー!
毒の話で結構使ってしまったが、それでは彼らがどのような子達か見ていこう。
- ヌノサラシ Grammistes sexlineatus
スズキ目ハタ科ヌノサラシ亜科ヌノサラシ属に分類される。
ちなみにヌノサラシ属は本種のみで構成される。
石鹸魚といえばキハッソクかコイツ、と言われる程には有名。(と言っても、石鹸魚を知らない人にはナニソレオイシイノ状態にはなるが。)
ちなみに、和名にもある「サラシ」と言うのは漂白剤のことで、「布を漂白できるほど水が濁った」というのが語源であると考えられる。
ヌノサラシは体型は楕円形で、ちょうど鶏卵を横倒しにしたような見た目。正面から見ると、横に押し潰したような形、いわゆる側扁系である。
全長30㎝ほどで、体全体は黒または暗い茶褐色で、体側面には6本程度の黄色から白色の縦帯が不規則に入るため、判別は容易。
口はハタ科らしく同じ大きさの魚に比べ大きく、下顎に髭のような皮弁(ヒダ)があるのがチャームポイント。
可愛い見た目から飼育したいと思うかもしれないが、上述の通り致死量の愛、もとい毒を注いでしまう。
分布域はインド太平洋の熱帯・亜熱帯域の岩礁域。西はアフリカ東岸から、東はハワイを含む太平洋の島々まで広がり、南はニュージーランド北部から、北は日本まで広がっているというやたら広い範囲にいる。
南方種であるため、気温の変化の激しい日本国内では少ないかと思えば、南日本を中心に、
鹿児島県、山口県、高知県、
和歌山県、相模湾、伊豆諸島、小笠原諸島、琉球列島から記録されているほか、
岩手県からも記録があるほど。
いかに本種が優勢であるかがわかるであろう。
- キハッソク Diploprion bifasciatum
本種は1828年に発見された石鹸魚の中でも古参種。また、その見た目から鑑賞魚として流通することもある。
ハタ科キハッソク属に分類される。
和名は「煮えにくく、煮るのに木八束を要する」の木八束から。
体型は側扁がヌノサラシより強く、体高が高い。
体長は25㎝ほどだが、ハタ科に似つかわしくなく、体高はその約3倍ほどであるから驚かされる。
またヌノサラシは鱗が円鱗─すなわち
ウナギと同じ作りの為、頭から撫でても尾鰭から撫でてもツルツルしているが、キハッソクは普通の魚のように尾鰭から撫でるとザラザラしている。
また本種の幼魚はカワハギやツノダシよろしく、背鰭の2、3棘が糸状に伸長する。
体色は黄色地に藍や紺など暗色の横縞が2本走る。頭から数えて一本目は眼の位置にあり、これは外敵から眼を攻撃されないようにしていると思われる。
幼魚は灰色から青色を帯びた体色で、体の後半部に黄色い部分が見られることもあり、背鰭の棘条部は黒色で、ヒゲニジギンポ属という有毒で灰色の体色を持つイソギンポ科に分類される魚に擬態していると言われる。
上述のヌノサラシより分布域は狭いが、西はモルディブやインド、東はパプアニューギニアやソロモン諸島、ニューカレドニア、北は日本、南はオーストラリアまで広がっており、オーストラリアでの生息域は西オーストラリア州ロットネスト島からニューサウスウェールズ州のソリタリー諸島海洋公園までの、インド太平洋の熱帯・亜熱帯域に広い範囲に生息する。
幼魚はそれよりも南方まで生息している可能性があり、タスマン海のロード・ハウ島からも報告がある。
日本でも南日本を中心に生息しており、琉球列島のほか相模湾から鹿児島湾までの太平洋沿岸などでみられるが、さすがに岩手県にはいない。
また、西インド洋の紅海やアデン湾に生息し、岩礁やサンゴ礁に生息する、同属のディプロプリオン・ドラーチという種もいるが、全長14cm程度と小型。
- ルリハタ Aulacocephalus temminckii
スズキ目ハタ科ルリハタ属に分類される。ちなみにルリハタ属は本種のみで構成される。
属名である「Aulacocephalus」はギリシャ語で笛を意味する「aulos」と頭を意味する「kephales」の合成語である。
体長25㎝程で、その名の通り体は瑠璃~藍の地色に、黄色の縦縞が口から眼を通り体後方まで一筋延びる。
本種も観賞用として流通されるが、キハソックよりは少ない。
日本近海では伊豆諸島、相模湾〜高知県柏島の太平洋沿岸、長崎、希に瀬戸内海の水深10~70mの岩礁で見られるため、アカハタ釣りの外道として釣れることも。
本種は石鹸魚の中で唯一食用に出来るのだが、利用はほとんどなく、また皮も硬いため唾棄モノだろう。
ちなみに筆者は過去にコイツを刺身で食べたが、身は透明感のある白で、淡白な味わいが大変美味だった。ただし鮮度低下が他のハタ科に比べて速いので、ご利用はお早めに。
本種は紅海北部、南アフリカ北部沖、モザンビーク南部、インド洋西部ではコモロ諸島、レユニオン、モーリシャス、モルディブから記録されている。西太平洋では、北は南日本、韓国沖、台湾沖、中国南部、タイ沖やフィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、ノーフォーク島、フランス領ポリネシア沖の、インド・西太平洋域に広く分布する。
本種は和歌山県南部では「キハソック」といわれるが、これは地方名、または流通名なので混同しないように注意。上述のキハソック(D.bifasciatum)は標準和名である。
追記、修正はキハッソクが木何束で煮れるか数えた人がお願いします。
- 結局、なんで「石鹸」魚なんだ?石鹸水のごとく白濁するから?? -- 名無しさん (2024-01-19 11:18:20)
- 文章短くない?それとも、それだけ説明する事が少ないって事?とはいえ5分どころか1分で読み切れると思うが… -- 名無しさん (2024-01-19 11:54:30)
- ご指摘ありがとうございます。石鹸魚の由来に関しては本文中に追記させていただいたように水を泡立たせることが由来だそうです。 -- 名無しさん (2024-01-19 19:20:08)
- また、文章が短いとのご指摘もありましたが、逆に説明したいことが多すぎるため、ひとまずは、と形にさせていただきました。これからも追記等で皆様に見やすく、分かりやすい説明ができるよう、精進させていただきます。 -- 名無しさん (2024-01-19 19:24:29)
最終更新:2025年04月02日 21:28