登録日:2024/10/22 Tue 00:12:54
更新日:2024/10/23 Wed 15:42:06
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まだ恋を知らない私にキミがおしえてくれたのは愛でした
『そらいろメモリアル』はかつてちゃおで連載されていた少女漫画
兼百合漫画。
作者はやぶうち優。代表作は『
少女少年』や『ないしょのつぼみ』など。
連載期間は2020年から2023年までで全3巻。
ちゃお初となるGL(ガールズライフ)作品でもある。
「命」をテーマとして女子小学生ふたりの友情を描いた作品。
主人公の蒼月は親友の紅葉と穏やかな日常を送っていたが、突如現れた死神により紅葉が1年後に死ぬということを知ってしまう。
蒼月は悩んだ末にせめて紅葉の最期の1年をより良いものにしようと尽力する。
蒼月が親友とのメモリアルをつくっていきその中で命の尊さに気づいていくのがメインストーリー。
思い出作りが主題ということもあり1巻ごとに季節が移り変わっていく。
……しかし休載の影響もあり『秋』はかなり短い。
本作最大の特徴は
蒼月と紅葉の友情描写が濃厚であること。
やたらと距離間が近かったりお互いの姿に思わずときめいたりと関係性は友達と呼ぶには強火すぎるものであった。
クラスではほぼ公認カップル扱いだし、修学旅行ではさも当然のように夫婦茶碗を買っている。
第2話における
「あたしは蒼月が好きっ! ううんっ! 大好きだけど!! だからなに!?」は名言。
というか百合であることは作者と編集が暗に認めている(詳しくは後述)。
ちゃおの中でも連載方式が慌ただしかったことでも有名。
最初はちゃお本誌で2020年3月号から11月号まで連載。
その後休載を挟み増刊号であるちゃおデラックスにて2021年3月号から移籍連載……のはずだったものの、作者の怪我もあり休載に入ってしまう。
アナウンスもなく連載再開が危ぶまれたもののウェブ版ちゃおことちゃおプラスにて2023年8月から移籍連載。
そしてようやく2023年10月に完結した。その後ちゃおデラックスでちゃおプラスから遅れる形で連載されている。
このように全3巻という短さの割には休載を挟み完結まで3年かかっている。
休載が決まったのは2巻発売直後。だが2巻ラストエピソードがどんでん返し回だったためやきもきしたファンも多かろう。
【あらすじ】
主人公・余目蒼月は虹の橋小学校に通う小学5年生。
大好きな親友の有森紅葉と平凡だけどそこそこ幸せな日常を過ごしている。
紅葉と大人になってもおばあちゃんになってもずっと一緒に居られる、蒼月はそう考えていた。
そんなある日、蒼月は死神を名乗る少年『偲』と出会う。
そして蒼月は偲に「有森紅葉は1年後に死ぬ」という事実を伝えられる。
あまりに衝撃的な事実にショックを受けその言葉を受け入れられない蒼月。
しかし紅葉や偲の言葉を受け、その事実を自分の胸だけにしまい、紅葉が最期の日まで笑って過ごせるよう自分なりに尽くすことを決めるのだった。
そうして蒼月は紅葉と過ごす1分1秒を最高の思い出にしようと努力していき……。
【死神について】
人間や動物等の魂を回収する不老の存在。
基本的には姿は見えない。しかし神社の娘である蒼月など特殊な人間には見える。
特殊な術を使うことが出来る。偲はこれによって蒼月たちのクラスに紛れ込んだ。
隠密行動が秘密厳守が彼らの基本主義。偲が蒼月に紅葉の死を教えたのは、彼女の焦る顔を見て、思わず教えてしまったため。本来はイレギュラー。
担当の人間の死期の一定期間前に近づき、死んだときに魂を肉体から切り離すのが仕事。
魂が苦しまずあの世に行けるようにすることが目的であり、偲曰く「在り方は天使に近い」。
なお死神たちは人間の死を事前に知り近づくがその死は変えられない運命とされている。
無理やり運命を変えようとすれば代償として無関係の数多の命が犠牲となる。
だからこそ蒼月は紅葉の死を自分なりに運命として受け入れ、せめて彼女の最後の1年を良いものにしようとした。
【登場人物】
◆余目蒼月(あまりめ・そら)
本作の主人公である小学6年生。もしくは紅葉の嫁。
代々神社を営んでいる家系の一人娘。作中でも時折巫女服を披露している。
少し頼りなく気弱なところがある守ってあげたくなる少女。
すさまじいドジっ子でありよく何もないところで転んでいる。階段を登れば足を滑らせるし、1話ではいきなり車に轢かれかけた。相当な泣き虫でもあり「ぴえん」が口癖になっている。
気弱な反面感受性が強くやるべきときはやってくれる。
その代表格が紅葉の運命について。紅葉が1年後に亡くなる運命であることについて最初は大泣きして認められなかった。しかし偲のフォローもあり「紅葉との最後のメモリアルを作りたい」と考えられるようになった。
おとなしい子ではあるが大勢の前でも言うべきことは言う。もっとも言ってからテンパってしまい、紅葉にフォローされることも多いが。そんな真っすぐな人柄から紅葉や偲、玄など惹かれる者は多い。
そして何より紅葉ラブ。親友の紅葉のことが大好き。
1話に1~2回くらいのペースでよく紅葉にときめいている。紅葉が「景色キレイだね」と言い出すと「紅葉ちゃんもキレイ……」と考えだす子である。
紅葉との出会いは小学4年生の時。東京からの転校生ということもありクラスで僻まれていた紅葉を成り行きで助けることになり、彼女に感謝されたのがきっかけ。それから紅葉に強く惹かれるようになった。
一応少女漫画の主人公らしく恋について考えたこともあったが、結局「今は恋より紅葉ちゃんの方が大切」に落ち着いた。そもそも恋について考えたのは紅葉が「いつか蒼月の結婚式を見に行きたい」と言い出したからで本人はそこまで恋に興味はない。
そんな大好きな紅葉の思い出のために行動しているのが今の蒼月。考えすぎるあまり何が一番の行動になるかわからず苦悩することも多々あるが、それでも偲たちに支えられながら前向きに進んでいる。
紅葉と出会う前のことをよく覚えていない、偲が直々に「特別な魂」と言い出すなど何か秘密がありそうだが……。
◆有森紅葉(ありもり・いろは)
もう一人の主人公である蒼月の親友。もしくはクラス公認の蒼月のナイトさま。
小学4年生の時に引っ越してきて、運命に導かれるように蒼月と親友になった。
名前が示す通り秋生まれで誕生日は10月24日。
町にあるマンションの上級階に住んでいる。身長160センチで蒼月より頭一つ大きい。
明るく快活な頼れる少女。蒼月いわく「ヒーローみたいな女の子」。蒼月はそんな紅葉が大好き。
頭のいい子であるためクラスでは女子たちのリーダー格になっている。
年の割にかなり大人びている。蒼月が学校で初生理をむかえ慌てた時には、メンタル面環境面両方から全力で彼女フォローしていた。
作中でドジっ子過ぎてよく死にかける蒼月が五体満足なのは紅葉が毎回助けているから。
そんな完璧っぷりに蒼月は「私なんかが友達でいいのかな……」と時折思ってしまっている。だが紅葉はそんなことは関係なくただ蒼月と一緒に居たい。
そして嫁に負けないくらいに蒼月ラブ。「好きな人は蒼月」と公言している。巫女姿の蒼月にはときめいていた。
第2話における「あたしは蒼月が好きっ! ううんっ! 大好きだけど!! だからなに!?」は名言。
上述の通りよくピンチに陥る蒼月を助けているが、その行動力は小学生女児のものを越えている。蒼月が車に轢かれそうになれば身を挺して助けるし、蒼月が沼に落ちておぼれれば自分も沼に飛び込みに行く。それくらい蒼月のことが好き。
誕生日回で一緒に作ったレジンのストラップが何よりの宝物。
なお蒼月には隠しているが、彼女に対する独占欲はかなり強い。
さばさばした気質に反して彼女の価値観は「蒼月>>(越えられない壁)>>それ以外」と重苦しいもの。しかもその価値観はぶれることはない。
学芸会では発言の力の強さを生かし、自分が王子役で蒼月が姫役の『白雪姫』をやろうとしていた(失敗したが)。
バレンタイン回では「紅葉ちゃんのチョコだけ特別にしたいな」と考える蒼月とは対照的に「蒼月にだけあげたいな」と考えていた。
蒼月が紅葉とのメモリアルをつくると決意するまでの理屈と比べればわかるように、蒼月とは根本的な考え方が真逆。
このスタンスの違いが2巻で明かされる新事実に繋がることになる。
◆偲(しのぶ)
死神の少年で1年後に亡くなる紅葉の魂の担当をしている。
死神学校に通う見習いであり紅葉の魂を導くことが卒業条件になっている。
蒼月と紅葉の監視もあり現在は術を使い、蒼月以外に正体を隠し彼女たちのクラスに潜り込んでいる。
口数が少なく表情も乏しいそんなこともあり蒼月は最初は少しおびえていた。
そんな彼だが自身の仕事に対しては真摯。
命を尊いものとしてとらえており自身の仕事に対して「魂が迷わないため未練を断つもの」とプライドを持っている。紅葉の魂の回収にこだわるのも彼の信念ゆえ。
魂の回収を「点数稼ぎ」と考える死神もいる中偲は魂ができる限り安らかな最期を迎えることを祈っている。
その性格もあり蒼月はなんだかんだでしのぶのことを信頼している。
ぶっきらぼうに見えるが根っこはツンデレ気質。
愛想こそ悪いがかなり面倒見が良い一面がある。序盤では紅葉の死が受け入れられず消沈する蒼月に対し、見捨てることなく命や死について説明し続けた。
彼の助言のおかげで蒼月は「紅葉との思い出を作る」と決意することが出来た。
その後も蒼月に対してはかなり甘い。蒼月が悩んでいるとたとえ偲自身の仕事にあまり関係ないとしても相談に乗ってくれる。何故か大抵高いところにいる。
紅葉のことになると思いつめやすい蒼月は偲に相当助けられている。
特に夏祭り回では雨で盆踊りが中止になり紅葉との思い出を作れなかったことを蒼月が悲しんでいることを知り力を使い切り雨をやませた。その後動けなくなっていたのを見るに本当に無茶をしたらしい。
誰よりも優しい死神。
◆文(ふみ)
偲の同級生である死神の少女。何故か関西弁を使う。偲を追って人間界にやってきた。
偲とは対照的に頭の軽い女の子。初登場時は「魂の回収なんて点数稼ぎ」と発言して蒼月をドン引きさせた。さらに死神は人間には見えないことをいいことに万引きもしている。
実は偲に恋をしている。人間界にやってきたのも彼のことが気になったから。最初は偲が蒼月のことが好きだと勘違いしており彼女にやきもちを焼いていた。
偲は文のことをどうも思っていない。しかし夏祭りに行きたい彼女に付き合ってやるなど面倒見はいい。
物事を深くは考えない死神だったが蒼月たちとの出会いで命について考えていくようになる。
◆玄(げん)
蒼月たちと同じクラスの少年。明るい性格からクラスの男子のリーダー格。苗字は不明。
紅葉とは対になる少年ということもあり、クラスでは彼女と付き合っている説が流れている。なお紅葉は蒼月が大好きすぎるので恋をする気がない。
しかし実際は蒼月のことが好き。蒼月も玄は紅葉のことが好きなのだと思っていたこともあり一時期関係性はこんがらがった。
2巻ではついに蒼月に告白した。だが蒼月が考えた末に「恋よりも紅葉ちゃんを大切にしたい」と考えたため想いが実ることはなかった。
メタ的には蒼月と紅葉の関係性強化のための触媒となり、3巻にはほぼ登場しなかったかわいそうな少年。
ただ、最終回の描写を見るに関係性は不明だが生涯にわたって蒼月を支えたようである。
【ボイスコミック版】
Youtubeにて公開。
ちゃおは漫画の紙面を声優が読み上げるボイスコミックを配信している。
その中の1作品として『そらいろメモリアル』も公開された。
第1話が前編と後編と分けて2020年2月に配信。その後コミックス1巻発売記念として前編と後編をまとめた第1話完全版が2020年8月20日に配信された。
声優は以下の通り。
- 余目蒼月:福緒唯
- 有森紅葉:星乃葉月
- 死神:榊原優希
- 蒼月の父:東條達也
かまわない!
代わりにあたしが死んでもいい 世界が滅んだってかまわないから
あたしは蒼月を助けたい!!
実は紅葉と同じく、蒼月にも1年後に死の運命が待っている。
そしてそのことを知っているのは紅葉のみ。
紅葉がそれを知ったのは時系列で言うと第1話直前。
蒼月の担当である目つきの悪い死神と出会い、彼の嫌がらせで教えてもらった。
紅葉も「ひとりの死の運命を変えようとすれば数多の犠牲が出る」ということは教えられている。
しかし彼女はそれを聞いたうえで上の言葉と共に蒼月を助けることを決意した。
上述の通り紅葉の価値観は「一番大切なのは蒼月」。
蒼月は紅葉を助けたかったが変えられない運命があると知り、せめて思い出を作ろうとした。
だが紅葉は運命を捻じ曲げてでも蒼月を助けようとした。
親友だが考え方は真逆なふたりなのである。世界が滅ぶのはマズくないですかね。
表向きは親友を心配させないため明るく日常を謳歌している紅葉。だがその裏では蒼月を助けるために奔走している。
誕生日回では紅葉の最期の誕生日を祝えたことを安堵する蒼月と対照的に「あたしが蒼月の運命を変えてみせる…」と怖い顔で呟いていた。
【余談】
◆やぶうち優先生について
やぶうち優先生はちゃおにおける大御所の漫画家。
1983年になんと13歳で漫画家デビュー。それから40年以上にわたりちゃおで漫画を描き続けている。
代表作品としては……
- 女装した少年がアイドルになってしまう『少女少年』
- 女児の第二次性徴をテーマとした『ないしょのつぼみ』
- まさかのVtuberを題材とした『青のアイリス』
などなど。
御年51歳でVtuberを題材にするなど、まだまだ漫画家として意欲的。
『ないしょのつぼみ』を描いた影響か生理や発育など少女漫画の割にはお色気シーンがあるのも特徴。
友情がテーマの『そらいろメモリアル』では「初生理を迎えた蒼月が、ショーツを汚してしまったので紅葉の替えのショーツを借りる」というきわどいシーンがある。
最新作『上杉くんは女の子をやめたい』に至っては「女体化した男子中学生が生理の痛みに苦しむ」というシーンがある。
ちなみに『そらいろメモリアル』は上述の通り先生の怪我により大規模な休載をしていた作品。
先生いわく最初は怪我の影響で脱稿が1回遅れてしまった……位になる予定だった。
しかし事態が思ったよりも深刻だったということもあり、期限なしの休載となった。
やぶうち優先生も休載によって思い残りがいくらかあるとのこと。
本来は1巻ごとに季節が変わり春夏秋冬で全4巻になる予定だった。
しかし休載の影響で全3巻になってしまい3巻に秋冬をまとめなければならなくなったとか。
実はそのためか序盤で意味深に描かれていた蒼月の伏線あれこれは割とざっくり回収されている。
なお完結後ツイッターでこんなツイートをしている。
~まだ恋を知らない私に
キミがおしえてくれたのは愛でした~
「そらいろメモリアル」(完結)
#ちゃおコミ
#漫画が読めるハッシュタグ
#百合 #メメントモリ
……アレ?
◆ちゃおにおける作者が勝手に百合と言い出した作品
このようにツイッター上で作者公認で百合ということになった『そらいろメモリアル』。
だがこんな作品はこれだけではなく、作者がSNSなどで自作品を百合と言い出すのは、ちゃおではたまにあること。
◆そらいろメモリアル(やぶうち優/2020/ちゃお連載)
ここまで紹介した通り。
このツイート前から読者に散々百合と言われていたが、作者公認になるとは思わなかっただろう。
◆おともだち(いしいゆか/2014/ちゃおデラックスホラー読み切り)
中学生の暦は転校したばかりで友達のいない女の子。そんな中隣のクラスの「紗綾」という少女と親しくなっていく。
「友情」と呼ぶには重すぎる執着心を抱く紗綾が魅力。
先生は現在はちゃお以外で活躍している方だが、当時を振り返りツイッターで「ちゃおで最後に描いた友情百合ホラー」とコメントしていた。
◆さよなら、私たちの終末(小森チヒロ/2020/ちゃお読み切り)
不治の病を抱え入院している少女彼方はその運命から何もかもに無気力な性格であった。
そんなある日彼方は命を吸わないと生きられない性質を持った少女型ウイルス「リリーオ」に寄生される。
ウイルスのくせにハイテンションな彼女に振り回されながらも、彼方は自分の世界を広げていくことになる。
不治の病の少女と命を吸わないと生きていけない少女型ウイルスというちゃおにしてはかなり珍しいシリアスな構図。
そこから描かれる2人の湿度高い関係性から、ネットでは「百合姫でやれ」と言われた。
作者はエゴサして「百合漫画」と評されていることを知り本人がノリのいい人ということもあり受け入れてしまった。
その後の宣伝では「例のウイルス百合」と表現している。
◆茜色の空に結ぶ(今坂みう/2022/ちゃおプラス読み切り)
中学生の茜は絵がとても大好きだったがとある父の言葉が原因で筆を折り絵を描いていたことも隠している。
彼女の前に現れた無邪気な少女遥陽は何故か茜が絵を描いていたことを知っており、絵を習いたいと言い出す。
終盤で明かされる春陽の真実と茜への想いが重々しい。
ツイッターの某百合漫画宣伝アカウントで本作が宣伝された際、作者本人がリツイートしていた。
◆メイドはお嬢様と笑いたい(鮎ヒナタ/2023/ちゃおプラス読み切り)
世界初の感情を持つAIを搭載したメイド型ロボットのイチゴ。彼女は名家のお嬢様であるかりんを笑顔にするために派遣されたはずであった。しかし彼女は何故かちっとも笑ってくれない。
最終的にイチゴはかりんのことを考えると胸の熱いものが爆発しそうになる。
鮎ヒナタ先生は自作品をブログで紹介するのが恒例だが、本作の紹介記事のタグに「#百合」とあった。
他の少女間の関係性を描いた作品にはつけなかった辺り、思うところがあるらしい。
◆ふしぎな猫のまち メルティア(佐倉おりこ/2023/ちゃおプラス連載)
ファンタジー舞台の作品。
猫耳を持つ記憶喪失の少女モコは置手紙に導かれ魔法の町「メルティア」のカフェで暮らすことになる。
ちゃお版ごちうさみたいな内容でありカフェを営む女の子たちによる日常もの。
作者が百合も扱う人ということもありツイッターでは「友情百合」「ほんのり百合」と紹介していた。
ちなみに佐倉おりこ先生は「編集部に『ちゃおに百合要素があっても問題ない』と言われた」と証言している。
◆王子ちゃんの好きな人(るぅ1mm/2023/ちゃおプラス読み切り)
小学生の姫子は大好きな少女漫画のキャラクターに似ているクラスメイトの王子ちゃんことたまこのことが気になっていた。
ふとしたきっかけで王子ちゃんも同じ漫画が好きと知った姫子。
最初こそ同じ漫画が好きな友人であったはずの王子ちゃんに対し、姫子は自分でも理解しきれない友情とは違う感情を抱いていく。
先生が自身のツイッターやnoteにて百合漫画であると紹介していた。
なお他の作品が飽くまで「友情と呼ぶには濃すぎる関係性」であったのに対し、本作は明確に女の子が女の子に恋する描写がある。
◆ベドランナの恋人(るぅ1mm/2024/ちゃおプラス読み切り)
ファンタジー世界が舞台。
魔女の娘であるベラは母の狂愛により触れたものの命を奪う毒の呪いをかけられる。解呪の方法は真に愛する者が現れることだけ。
呪いを疎み森の奥で孤独に暮らしていたベラだが、毒花を描く売れない絵描きのアンナと出会う。
今までの人間とは違い自分を「美しい」と評するアンナに、ベラは特別な感情を抱いていき……。
るぅ1mm先生のちゃおにおける2作目の漫画。先生はBL、GLなんでも来いの人だがちゃおでは百合漫画家として生きるらしい。
ちゃおプラスでは異例のなんと全121ページの読み切りという気合の入った作品。
前作「王子ちゃんの好きな人」よりも百合描写が濃くなっている。クライマックスではまさかのキスシーンあり。
◆ スパーク!!ララナギはりけ~ん(もりちかこ/2001/ちゃお連載)
ちゃおにおける百合のある意味原点的な作品。ちゃおの中でも有名なギャグ漫画でもある。
小学生のナギは有力なバレーボールの選手であり、転校先でもエースになるはずだった。
しかしナギとは対照的な少女ララの登場によりエースの座が危ぶまれてしまう。
はたして二人のライバル対決はいかに!?
ララがとある理由によりナギが大好きであり、結婚して子供産む妄想までしている。
作者曰く「何回も言うけど、ララは百合っていうよりガチですぞ。ナギは普通」「スタンプのため久しぶりにララナギ読み返してるけど、この作者頭沸いてんな」。
◆ちゃおにおけるGL(ガールズライフ)作品
『そらいろメモリアル』は2023年からちゃおプラスで移籍連載された。
ちゃおプラスとはウェブサイト版ちゃおであり、過去の名作の試し読みしたりサイト限定作品を読んだりできるサイトのこと。
ちゃおプラスでは作品ごとにタグ付けをされる。そしてその中で『そらいろメモリアル』には「GL(ガールズライフ)」というタグがつけられていた。
現状このタグの意味や定義など詳しい説明はされていない。
作品に共通しているのは「初掲載の場がちゃおプラス」「少女間の強い関係性がテーマ(1作だけ例外アリ)」の2点。
少女間の友情をテーマにした作品の場合、「友情」タグがつけられる。そのため「GL(ガールズライフ)」とは友情とは違う少女間の何かをテーマにしていると言える。
つまるところ「GL(ガールズラブ)」をちゃおなりに表現したのが「GL(ガールズライフ)」と考えられる。
2024年現在このタグがつけられている作品は6作。
- そらいろメモリアル(やぶうち優/2020)
- あの娘はラブリープリンセス(三ツ星しずく/2021)
- 茜色の空に結ぶ(今坂みう/2022)
- 王子ちゃんの好きな人(るぅ1mm/2023)
- 上杉くんは女の子をやめたい(やぶうち優/2024)
- ベドランナの恋人(るぅ1mm/2024)
御覧の通り錚々たるメンツである。
この中で例外となるのがやぶうち優先生の『上杉くんは女の子をやめたい』。
ひょんなことから神様の手違いで女体化してしまった上杉くんとその周囲との三角関係を描いた恋愛もの。
主人公が男子中学生ということもあり百合要素は全くない。しかし女体化してしまったことにより女の子としての生活を送ることになるため、言葉の上では「GL(ガールズライフ)」。
余談だが「GL(ガールズライフ)」と対になる「BL(ボーイズライフ)」も存在する。
最近の少女漫画界において百合は「数は少ないがキャッチコピーにするにはそこまで珍しくもない」くらいの扱いになっている。
おっそ~い 蒼月! まちくたびれちゃったよー! なんてね♪
紅……葉ちゃ……っ 私も…っ…私も…ずっと…っ ずっと待ってたよ…っ!!
大遅刻だねーっ♪ ありえんっ
最終更新:2024年10月23日 15:42