百合

登録日:2009/06/07(日) 11:49:43
更新日:2022/05/15 Sun 04:08:51
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ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属の多年草の総称。

茎を高く伸ばし、夏に漏斗状の花を咲かせる。
鱗茎(球根)を有し、百合根として食用になったり滋養強壮、利尿の生薬になるものもある。
一方、ユリ科の植物は毒性もあり、などはユリの葉や浸かっている水を飲むだけでも死亡したり重度の障害が残るケースもあるためペットを飼っている場合は管理に注意すべき植物の一つである。

花言葉は威厳、純潔、無垢。

白い百合の花が聖母マリアの象徴だったり、歴代のフランス国王の紋章に用いられていたりする。




キマシタワー!!!

女性、主に思春期の少女同士の恋愛感情や強い友愛関係を示す言葉。
本来は女性同士の恋愛やレズビアンの女性そのものを指していたが、2010年台には既に友情による関係や、友情/恋愛の区別の曖昧な感情をやり取りする関係などといったより広範な関係性を示す意味合いに変わってきている。
場合により女女, GLなどと使い分けられる。
女性同士の巨大な感情の遣り取りと解釈する声もあり、友情の介さない負の感情を向け合う関係性も百合と捉えられる場合はあるが、必ずしも合意形成されている訳ではない。

【百合概論】

1971年、ゲイ雑誌「薔薇族」の編集長、伊藤文學が薔薇族に対して百合族と呼ぶことを提唱した*1
当時はさほど定着しなかったが、レズポルノのタイトルに使われたりエス小説イメージと重ねあわされたりして、定義の曖昧な単語として残った。
ちなみにエスとはSisterの略でマリみてのスールと同義。その歴史は戦前に遡る。

現在では実際の女性同士の恋愛ではなく、女性同士の恋愛を扱った作品、または作中で描かれる女性同士の恋愛や友愛を表すことが多い。

なお、百合と関連のある対人関係には、ウーマンス(ロマンシス*2)と称する精神的な繋がりが強い友情関係も存在する。
ブロマンスの女性版に相当し、性行為を伴わない女性間の密接した交遊関係や親密な絆を指している*3
女性間におけるロマンティック・フレンドシップ及び社会学用語のホモソーシャルにも近しい概念で、女性同士のバディも一部が該当する。
当事者とそのパートナーはブロマンスと同様に、異性愛者同士、或いは同性愛者と異性愛者*4の組み合わせが想定されている。
ブロマンスやロマンティック・フレンドシップの研究者(Stefan Robinson, Adam White, Eric Anderson, 2017 & Lisa M. Diamond, 2003)によれば、異性愛者でも同性に対して独占欲や恋人のような感情を抱く場合もあるらしく、異性の恋人や伴侶を持つ者でも同性に心酔する例はあり得るそうである。
少なくとも平成期までの日本では馴染みの無い概念で、国内で話題作として挙げられるのは『マイ・ブロークン・マリコ』くらいだろうか。

【二次元における百合】

現在のサブカルにおける百合は元々GL(ガールズラブ)とも呼ばれ、かつては婦人向け漫画雑誌に掲載されているようなジャンルであった。
それが00年代後期からは、まんがタイムきららやコミック百合姫や美少女アニメの影響もあって、男性の間で百合を嗜むオタクが急増し、百合というジャンルは急成長を見せている。
無論、女性でも百合を好む層は多い。

ただしツンデレ等と並び、百合の定義は非常に曖昧なもので、意見が分かれること多い。

明確な恋愛感情はレズ、友達以上恋人未満が百合と言う解釈もあり、例えば百合ブームの火付け役となった『マリア様がみてる』では大半のキャラクターがスールと言う関係で結ばれた「擬似恋愛」的な関係であり、百合的な展開を度々していながらも男性に思いを寄せるキャラクターもいる*5

二次元における百合の定義については他にも
  • 百合とレズは違うよ
  • 友達以上恋人未満?
  • 感情ではなく関係
  • 女性バディやロマンシスのような恋愛より信頼の関係は百合と言えない
  • 両思いが成立して初めて百合
  • キスまではOK、セックスはいくらなんでもダメだろ
  • キスしたらレズ
  • マリみては百合、ストパニはレズ?
  • そもそも百合とかレズとか分けようとする人間に百合を語る資格は無い
などの意見があり、定義に関しては議論が絶えない。
まあ自分が百合と感じたものが百合ということだろう。

2ちゃんねるの実況板ではアニメ実況中に百合シーンになるとストロベリー・パニックの玉青のAA『キマシタワー!!!』が大量に貼られ画面を埋め尽くす。特にtvk民は百合が大好物らしい。
このキマシタワーとマリみての「ごきげんよう」はもはや百合の代名詞的セリフである。

ここまで百合について多く語ってきたが、ここ数年では百合好きが高じるあまり、
  • 百合という題材を明確に示していない作品の女性キャラクタ―を百合化させ、その話題を百合とは関係の無い場所へ持ち出し、百合という認識を他者に強要する。
  • 理想のカップリングの邪魔になるキャラ(主に男性キャラ)を、例え公式でカップリングされている相手であっても敵視し、徹底的に排除しようとする。
  • 他のジャンルには極度なまでに住み分けを強要するが、自分たちは勝手に作品を百合認定するなどといった矛盾した行動を繰り返す。
といった過激な言動を繰り返す百合愛好家が増加傾向にあり、多くの反感を買っている状況となっている。このような過激派は百合豚もしくは百合厨と呼ばれている。

また、
  • とある女性が別の女性からストーカー被害に遭ったという実際の事件に対して、被害者女性の心情を無視して百合だと騒ぎ、加害者女性を擁護する。
  • 百合カップルの間に割って女性を寝取る男を激しく憎悪する一方で、男女カップルに入って"女性を寝取る"の女性に対しては寛大で迎合する。
といった、百合を見るという欲望を満たすためなら倫理観をも踏みにじるような百合豚・百合厨も存在しており、同じ百合好きの間でも警鐘を鳴らす声も多い。

【百合カルチャーの変遷】

百合を扱った最古の漫画誌は1991年刊行の『Girl Beans』であるとされている。1987年には同性愛者女性の生の声を集めた特集『女を愛する女たちの物語』が宝島社から刊行されているため、当時としては現実の同性愛に対する認知度もややあったものと思われる。
女性同性愛者向けの漫画は森島明子らが1996年にaniseに寄稿したものがいくつか確認できるが、同人ではセーラームーンの百合漫画に1993年刊行のものがある。
Girl Beansはやおい・少年愛のような耽美系・ギャグ系がメインでありよくある恋愛漫画的な展開は少ないようだった。その後数年でダイレクトな恋愛漫画が出ていることを考えると、90年台に百合漫画の原型ができたように思われる。
とはいえ、この頃はまだジャンル全体に広く知られたものではなかったらしく、あまり多くの作品がヒットする訳ではない。BLのように個人が追いきれないまでに作品が増えていくのは、2010年台まで待つことになる。

1994年には月刊コミック電撃大王, 2002年にはまんがタイムきららが刊行され始めている。アダルトゲームでは1997年の「アトラク=ナクア」などが女性同性愛描写がある。これらもまた、『百合姉妹』で取り上げられているが、同様に百合的な目線で見られることがあったようだ。

「エス」の文化はそれよりも早く、1920年には既に吉屋信子の『花物語』が刊行されている。80年代に入るとコバルト文庫で氷室冴子や栗本薫といった作家が本を出しているので、小説の中では早々にこの文化は根付いていたと思われる。
ただしエス文化はあくまで戦前の倫理規範における思春期の嫁入り前の女学生達の交流を前提としたもののため、純粋に少女達の恋愛を好む人々にとってはやや邪道なのだとか。

『百合姉妹Vol.1』は2003年8月に刊行されているようだ。同誌によれば同年3月に刊行された蔵王大志の成人向け同人漫画が百合漫画界隈に一定の影響を与えていると書かれている。
この頃には既に百合漫画は一定の多様化をみせており、百合姉妹で扱われる内容は少女漫画らしいもの, 当時のBLらしいもの, 青年漫画らしいものとさまざまなであるように見える。

その後、百合姉妹の後継となる雑誌『百合姫』では2008年に日常系漫画・『ゆるゆり』が連載されていたり、2011年には姉妹誌として成人向けのものを扱う『百合姫Wildrose』が刊行されたりと、百合姫レーベルでもさまざまな方向性の漫画が生まれていった。

2000年台になると個人サイトの増加、さらにはssの活発化やPixivの台頭等があったからか、いわゆる萌え系や美少女系の漫画の二次創作が増えるようになる。

2015年頃になると百合姫にはシリアス系の漫画が多くを占めるようになったことや、同じく百合を扱う漫画雑誌『ひらり、』が休刊したことにより、所謂ハピエンを扱うような商業漫画はむしろ非百合専門雑誌(電撃大王, バース, alive, キューン等)に多く見られるようになる。
この頃からSNSやブログを始めとするweb媒体が大きな力を持つようになり、漫画の宣伝や感想にこれらが積極的に利用されるようになると、個人間のやり取りも活発化し、百合好き同士の団結や周知が目立つようになってくる。百合という語は「男の絡まない, 女性同士の旨みを活かした, 女性同士の恋愛を外部から眺めるもの」というような意味として受け止められ、広く受け入れられるようになっていった。

このあたりになると既に百合漫画は少女漫画やBL漫画の発想とは異なる方向性を持ち始めていた。百合はBL漫画同様、対象になりきるというよりは対象をまなざす方向へ移行した(このため単に女性同性愛を百合と呼称する漫画以外の界隈との齟齬が発生している)。またBL漫画とは違い多様な性別や性的指向を持つ作者が入り乱れた結果、たとえばこの頃のBL漫画によくあった「同性愛者であることに対する引け目」を展開の一部に組み込むような発想は少数派となっていった。

2018年頃からはSNSの更なる普及, Youtuberをはじめとするインフルエンサーの増加等に伴い、TwitterやPixivにとどまらず、ポイピクやfusetterといったいわゆるダークウェブでのイラストや文章の投稿も活発化していくことになる。この影響からか、二次創作のなかでは一部に百合を扱ってもそのことにあまり拘らないもの(たとえば男体化やふたなり)が再び増加し、また女性同性愛を扱ってもBL的な空気感を持っているというような作品も二次創作界隈では増えてくる。商業作品でも『百合+カノジョ』という一人称視点の女性同士の恋愛漫画が出版されたのは、百合という語の意味の広範さが一時的に取り戻されたかのように見える。もはやBLや他ジャンルとの区別は(重要ではあるにせよ)個人の嗜好以外では希薄であり、その作風や愛し方において今のところ百合漫画, ひいては百合カルチャーは他ジャンルとの再統合の流れになっているようだ。

【様々な百合まとめ】
















【余談】

「科学技術を以てしても辿り着けない宇宙の果てに、人間の妄想は一瞬にして辿り着くことができます。
その想像したものが、正しいか間違っているかは、どうでもいいではありませんか。その素晴らしい力で、おおいに百合を楽しみましょう。」
――コミック百合姫編集長 中村成太郎

コミック百合姫2011年1月号のコメントより一部を抜粋

ただし、正しいか間違っているかは人それぞれであり、決してどうでもよいものではない。
「あなたの萌えは他人の萎え」
こちらを肝に銘じ、節度ある活動を。





それではみなさんごきげんよう

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最終更新:2022年05月15日 04:08

*1 余談だが、実は伊藤氏自身は異性愛者なんだとか

*2 ロマンス+シスターフッドの造語

*3 身体的接触は接吻や抱擁や添い寝程度に留まる

*4 ホモマンスとも呼ばれる

*5 ユリイカのインタビューで、原作者はかつて百合=女性同性愛という認識を抱いていたことを明かしていて、百合を意識して執筆していた訳では無く、聖と栞の関係も「恋愛と言い切っていいのかどうかは判らない」とコメントしている。また作品について「女同士だけで完成して幸せに暮らす世界を目指した訳では無い」とも話していて、登場人物についても「女子校時代を卒業すれば、男性と恋愛して結婚してしまっているんだと思う」と回答している。