ただいまお茶づけ中(CM)

登録日:2025/01/02 Thu 20:44:00
更新日:2025/03/06 Thu 21:41:40
所要時間:約 8 分で読めます





『ただいまお茶づけ中』とは、永谷園の商品『お茶づけ海苔』のテレビCMである。

1997年〜2000年代前半にかけて放映されていた。




【内容】

(※30秒版に準拠)

薄暗い部屋の中央に置かれたちゃぶ台の前に胡坐をかいた男性。
お茶づけ海苔の封を切り、茶碗に盛られた飯に荒っぽい手つきで中身をぶちまけ、土瓶で沸かした熱湯を注ぐ。

出来上がったお茶づけを箸で掻き込む。途中から電話が鳴るも、男性は構わず一心不乱にお茶づけを啜り続ける。

お茶づけを完食し、ベルが鳴り続けていた電話に「ただいまお茶づけ中」と書かれた紙を貼り付ける。電話はピタリと鳴り止んだ。

お茶づけのイメージ映像とパッケージが映し出され、男性によるナレーションが商品名を告げる。
最後にお茶づけを食べ終えた男性が大きく「ふぅ…」とひと息をつくのだった。

※後期に放映されたバージョンでは男性が息をつくシーンで「うまい」というナレーションが追加されていた。


このCMに出演している男性は、俳優やタレントではなくCM制作を担当した広告代理店・東急エージェンシー社員(当時)の松村雅史。
当初は著名人を起用する予定で、松村はデモンストレーション用の映像に代役として出演していたのだが、このデモCMを見た永谷園の永谷栄一郎社長*1が、素人同然である彼のワイルドで飾り気のない食べっぷりに惚れ込み、そのまま起用されたという逸話がある。
それまで普通の広告マンとして働いていた松村本人も、当初この異例のキャスティングに困惑したが、後述するCM放映後の反響の大きさにはさらに驚かされたとのこと。

BGMなし」「男性がお茶づけを食べ続ける」「咀嚼音の強調」「ただいまお茶づけ中のキャッチコピーを使用」など独特の要素を取り入れたお茶づけ海苔のCMには、これ以外にも何パターンかが存在するのだが(詳細は後述)、特に広く知られているのは、上記の電話が鳴るバージョンである。
シリーズの中には、反町隆史、玉木宏など著名な俳優を起用したものや、高見盛、遠藤、熱海富士といった人気力士のバージョンでもおなじみ。


【反響】

このように、内容はただ男性が終始お茶づけを早食いするだけのシンプルなもの。BGMもなく、ナレーションやテロップなどによる補助的な商品説明も存在しない。

しかしながら、「うまいものに言葉は要らない」と言わんばかりに、敢えて解説的な要素を排しその食べっぷりを強調した演出が、鮮烈なインパクトを与えるCMとして、放映後瞬く間に大きな話題を呼んだ。また、お茶づけをあまり食べない若年層への認知拡大にも貢献した。
出演していた松村の詳細についても永谷園へ多くの問い合わせが殺到したという。

きわめて庶民的な食べ物である「お茶づけ」の広告として、「ちゃぶ台」「土瓶」「黒電話」など質素かつ古風な小道具で雰囲気を演出し、そして何よりも敢えて有名人ではなく「素人」を起用したことが、普遍的で飾らない親近感を視聴者に与えヒットに結び付いたのではないかとも分析されている。

当時CMを観た多くの人が、一度はこのお茶づけ早食いを真似そして見事に口中を火傷したのではないだろうか?
早食いはともかくお茶づけが食べたくなる購買意欲に火を点けたという意味では、多大な売り上げに寄与した名CMと言える。

しかしこのインパクト絶大なCM、一概に好評だったというわけでもない。
特に「わざと大きく音を立てて食べる」「早食い」は食事マナーとしてよくない行為のため視聴者からは批判的な意見も挙がった他、
電話を無視するという演出に嫌悪感を示した者も。
これらの理由から「嫌いなCM」として挙げる人もいる。


【関連CM】

ここでは、松村または別の俳優が出演し「ただいまお茶づけ中」に類似する演出を使用した永谷園製品のテレビCMについて記述する。

◆「お茶づけ海苔」別バージョン

いずれも「ただいまお茶づけ中」のキャッチコピーを使用。

●仕事帰りバージョン
深夜*2、仕事から帰宅したスーツ姿の男が、部屋の灯りを点けることなくリビングでお茶づけを食べ始める。コントラバスによるBGMが存在する。

●半裸バージョン
やかんの笛が吹き、男がお茶づけを作って食べる。後半からは熱いのか途中で服を脱ぎ上半身裸で食べ続ける、キュウリの浅漬けをおかずにするなど、電話バージョンとはまた一味違った趣向が楽しめる。

●冷やしバージョン
いつもの熱々のお茶漬けではなく、冷たい水のお茶漬けをキムチをおかずに食べる。こちらでは氷の音など清涼感や爽やかさを意識したCMである。


◆その他の永谷園製品

●あさげ時々めし
1998年から数年間放映されていたインスタント味噌汁「あさげ」のCM。
テレビから天気予報を告げるアナウンスが響き渡る中、首にタオルをかけた男性がちゃぶ台であさげをおかずに白飯を掻き込むという内容。
他にも早朝のランニング後にシャワーを浴びた後だったり、ご飯がおにぎりだったりと、全体的に朝食らしき描写が目立つ。
お茶づけと異なり早食いはしていないが、啜る音や咀嚼音、食べる時の口元を強調した演出など共通点が多い。
部屋の情景が詳細に描かれており、「あさげ・めし」という約まやかながら味わい深い食卓にマッチした暮らしぶりが想像できる。
キャッチコピーは「めしまでうまい」のこともあった。
他にも「減塩みそ汁」では立ち寄ったコンビニの店員から「体に良いらしいっすよ」と声をかけられるバージョンもある。

●おいしいたのしいすし太郎
1998年から2000年まで放映されていた、ちらし寿司の素「すし太郎」のCM。
少女と一緒に、すし太郎で作ったちらし寿司を食べるというもの。お吸い物*3も添えている。
少女の分の寿司桶はミニサイズで子供でも食べ切れそうな量だが、男は推定5合ほどはある量に一人で挑戦。持ち前の豪快な食べっぷりをもって最後には見事完食。
男以外に出演者が登場する珍しいパターンである。余談だが、この少女は男を「お兄ちゃん」と呼んでいる。親子ではないようだが兄妹だろうか?

●チカラひたすらチャーハン
1998年から数年間放映されていた「チャーハンの素」のCM。「俺vsチャーハン」「愛してるぜチャーハン」だった時期もある。
肩にタオルをかけた男が、出来立てのチャーハンを息で冷ましながら夢中で食べ尽くしていく。お茶づけよりはゆっくりめだが早食いに近い。
男性の服装や傍らには麦茶を入れたポットがあったり、暑さに耐えかね途中で扇風機の風力を強めるなど真夏日を思わせる。また食べ終わった後にギターを弾くバージョンもある。
こちらも庶民的で味ある生活感に溢れ、視聴者側に熱気を感じさせる描写に定評がある。


【令和にまさかの復活】

2022年、「お茶づけ海苔」発売70周年を記念して「ただいまお茶づけ中」のリメイクCMが放映された。
現代の若者にもお茶づけを食べてもらうきっかけとしてリバイバル放映が決まったという。

当時絶大なインパクトを与えた伝説のCM復活については、「懐かしCM」としてネット上で再び大きな話題を呼んだ。

リバイバル放映より少し前の2022年2月には、タレントの出川哲朗が出演する「ただいまお茶づけ中」と「あさげ時々めし」のパロディCMがYouTubeで公開された*4
完全再現というわけではなく、内容や演出などは出川風にアレンジされている*5
本家のCMの持ち味を知る視聴者からの評価は……うん、まぁ、あくまでパロディだと割り切れば悪くはないといったところか。※一応永谷園公式です。
この誰得セルフパロディが、後の本家リバイバル放映決定の布石だったのかは不明。




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最終更新:2025年03月06日 21:41

*1 現在は永谷園ホールディングス会長。

*2 背景のテレビ画面にカラーバー→砂嵐が映っていることから(テレビが放送を終えた)かなり遅い時間帯だと思われる。

*3 おそらく永谷園の「松茸の味 お吸いもの」。

*4 出川は永谷園とCM契約を結んでおり、「チャーハンの素」「広東風かに玉」などのCMに出演している。

*5 特に大きな違いとしては、「ただいまお茶づけ中」の電話が鳴る演出が、スタッフが楽屋のドアを叩きながら出川を呼ぶ演出に変更され、「ただいまお茶づけ中」という紙が楽屋のドアの隙間から出てくる点が異なる