SCP-725-JP

登録日:2025/01/14 Mon 19:15:10
更新日:2025/01/17 Fri 16:45:08
所要時間:約 12 分で読めます




これをつければきょうからきみもお姫さま!


SCP-725-JPは、SCP Foundationに登場するオブジェクトのひとつ。
オブジェクトクラスはSafe。

概要


SCP-725-JPは、ティアラを模した女の子向けのおもちゃである。
外見上は、銀やダイヤ・ルビーなどの宝石で作られている本物のティアラと区別がつかないが、
材質検査から全体がポリ塩化ビニルで作られていることが判明している。

このティアラの異常性は、3歳以上17歳以下の女性が頭に着けた場合にのみ現れる。
条件を満たす人がこれを着けると、着けた女の子の人格が歴史上の実在したプリンセスに書き換えられてしまうのである。プリンセスの人格は今のところ6人分まで確認されており、それぞれSCP-725-JP-AからFに指定されている。

この手のSCiPにありがちな「着けると二度と外せない」的なことはなく、さらに外せばその人格は元に戻るのだが、外した瞬間に着用者は入れ替わった相手…つまり歴史上に実在したプリンセスと同じ死因で即座に死ぬ。
どこぞの仮面首飾りとも似ているが、「異常性が発現する人が限られていること」「置き換わる人格が毎回変わること」あたりが大きな違いだろうか。

ところで、ここまでの説明を聞いて、どういうことかお分かりだろうか。そう、これを着けた女の子は必ず死ぬのである。「不死の首飾り」ならぬ、とんだ「死の頭飾り」があったものである。しかもこれ子供のオモチャだよね?

よく「財団は冷酷だが残酷ではない」と言われるが、収容したオブジェクトの異常性を確かめるためには実験をするしかない。犠牲になるのが18歳未満の女の子であってもである。その為、このオブジェクトの実験に携わるDクラス職員は少年院から更生が困難な17歳以下の女の子に限定されている。

実験記録


実験記録725-JP-1 - 日付20██/07/17

着用対象: D-19735(16歳、女性)
変更後の人格: 近代ロシア語を話す10代後半と思われる女性。SCP-725-JP-Bに指定。

結果:彼女は名前をアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァと名乗ったが、無意識にティアラを外した後、崩れ落ちるようにして倒れて死亡した。遺体からは複数の銃創と頭部への打撃の跡が見つかった。

アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァは、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世の娘である。ロシア革命の結果、皇帝も含む家族もろとも処刑されている。

実験記録725-JP-2 - 日付20██/07/25
着用対象: D-19736(18歳、女性)
変更後の人格: N/A

結果:人格は変わらなかった。
どうやら人格が変化するのは17歳までに限られるらしい。

実験記録725-JP-3 - 日付20██/07/28

着用対象: D-19737(17歳、男性)
変更後の人格: N/A

結果:人格は変わらなかった。
17歳であっても男性では変化はないらしい。

実験記録725-JP-4 - 日付20██/08/01

着用対象: D-19738(16歳、女性)
変更後の人格: 恐らく古ノルウェー語と推測される言語を話す推定年齢2、3歳の幼女。SCP-725-JP-Cに指定。

結果: 彼女は人格が入れ替わった後、周囲を見渡し大パニックで泣き喚いた。その後ティアラが外れた後、彼女は乗り物酔いのような症状を起こして嘔吐を繰り返し、その後死亡した。
入れ替わった人格は13世紀に3歳でスコットランド王位を継承した「ノルウェーの乙女」ことノルウェー王女マーガレットではないかと推測されている。
ちなみに、マーガレットは結婚のためスコットランドに行く船で船酔いを起こして亡くなっている。

実験記録725-JP-5 - 日付20██/08/09

着用対象: D-19739(17歳、女性)
変更後の人格: 古風な日本語を話す10代前半と推測される少女。SCP-725-JP-Dに指定。

結果:彼女の人格が入れ替わった後、彼女は状況に困惑しながらも、実験担当者に説明を求めた。これは明晰夢であるとの虚偽の説明と、頭部に付けたSCP-725-JPは外さないように、という指示をして素性を尋ねたところ、名前を伊万と名乗った。インタビュー終了後、ティアラを外れないよう固定した上で標準人型収容室に収容したのだが、翌日再度インタビューを行った後に、ティアラを取り外したところ、彼女は頭部が切断され死亡してしまった。

入れ替わった人格は安土桃山時代の武将・最上義光の次女、駒姫のものであると推測されている。ちなみに駒姫は豊臣秀次と一緒に処刑されてしまった悲劇の姫としても知られる。

実験記録725-JP-6 - 日付20██/08/15

着用対象: D-19740(17歳、女性)
変更後の人格: アメリカの先住民族の言語であるラコタ語を話す10代~30代と推定される女性。SCP-725-JP-Eに指定。

結果:彼女は興奮状態で喚きたて、インタビュー担当者である███博士に殴りかかった。即座に保安要員がを取り押さえようとするが、彼女は武装した保安要員4人を素手で無力化し、なおも███博士に襲いかかった。博士が咄嗟に突き出した手がティアラを頭上から叩き落とし、結果人格は元に戻る。その後彼女は西部開拓時代の銃による銃創で死亡。なお███博士は全治2週間の怪我を負ったものの命に別状は無し。

入れ替わった人格が何者なのかは不明。これまでの傾向からしておそらくネイティブアメリカンの酋長の娘だと思われるが、
インディアンの社会は合議制であり、酋長は指導者ではなく調停者の立ち位置にある。このため酋長の娘を「プリンセス」とするのは間違い。
報告書では、ティアラの開発者がこのあたりを誤解している可能性があると指摘されている。

実験記録725-JP-7 - 日付20██/09/04

着用対象: D-19741(16歳、女性)
変更後の人格: 不明。SCP-725-JP-Fに指定。

結果:彼女は人格が入れ替わった後に、未知の言語を話し始め、不明な方法で実験室の壁を破壊し逃走。収容違反が発生したことを受けて保安要員が追跡、サイト8154第3エリア廊下にて狙撃で彼女の頭部からティアラを除去、は消失。彼女は[削除済]。

分析:使用していた言語について、言語学や音響工学の専門家、医師による調査の結果、人類には発音不可能であることだけが判明している。
もしかしたら、宇宙にもプリンセスはいるのか???

この実験の後、サイト8154管理者から以下の勧告がなされた。
これ以上のSCP-725-JPを使用した実験を行わないよう通達する。
SCP-725-JPの実験には17歳以下の女性Dクラス職員という特殊な職員を使用することに加え、現時点で全員が死亡している。SCP-725-JPの特性及び収容方法の調査はこれまでの実験で十分であるはずだ。どのような人格が発生するかという知的好奇心を満たすためにこれ以上実験を行うことはDクラス職員の浪費であると言わざるを得ない。もし今後実験を行う必要が出た場合は私の許可を得るように。許可のない実験を行なった場合は懲戒処分の対象となる。  ―サイト8154管理者████
Dクラスといえど、決して浪費していいわけではない。それが更生可能性のあるティーンエイジャーとなればなおさらである。
「次はどんなプリンセスになるのかな〜?」みたいなノリで実験を繰り返すことは許されない。財団は冷酷だが残酷ではないのだ。

発見経緯:

当然と言えば当然だがこの死亡済姫追体験迷惑ティアラにも財団が確保へ動くに足るような未収容事案が発生している。
20██年7月██日、滋賀県██市にて「5歳の娘が自宅で突然英語で喚きたてたかと思うと胸と頭から血を出して倒れた」という119番通報が入った。犠牲になったのは当時5歳だった██沙羅ちゃん。母親である██沙織氏は当初虐待の疑いアリとして警察に事情聴取されていたが、司法解剖で沙羅ちゃんの死因は時速130~150kmで硬い障害物に激突したのと同等の衝撃を受けたことによるものと推測されたことや沙織氏がその瞬間を動画で撮影していたことにより疑いは晴れた。財団の分析によると沙羅ちゃんの喋っていた英語は流暢なイギリス英語であり声紋鑑定の結果、故ダイアナ元皇太子妃の声と一致しているそうだ。

以下は沙織さんへのインタビューである。

███博士:それでは、お嬢さんが亡くなった時のことを話していただけますか?

██沙織:はい・・・・・・あの日はちょうど娘・・・・・・沙羅の誕生日でした。沙羅は[██社製作のアニメーション]が好きで、私もお姫様になりたいって以前からずっと言ってました。だから誕生日にはなにかそれらしい物をあげたいと思っていたんですが、ちょうどいい物が見つからず、別の品物を用意してたんです。そしたら誕生日の3日ほど前に知人の██さんって人がせっかくだからっておもちゃの王冠をくれたんです。

███博士:その██氏というのはどういう関係の方なんですか?

██沙織:別れた夫の知り合いでおもちゃの卸売をしている人です。夫と離婚した後も色々と世話になった人で、沙羅と二人で今までやってこれたのは██さんのおかげでした。

███博士:なるほど。

██沙織:ここ3ヶ月くらい音沙汰がなかったのですが、不意に訪ねてきまして。それで、取引先が倒産した際に引き取ってきたものだけど置いてても処分するしかないので良ければ、って。おもちゃとは思えないくらいよくできた王冠で、母親の私でも欲しくなるくらい綺麗でした。

███博士:その王冠を娘さんに誕生日にプレゼントとしてあげたのですね?

██沙織:はい。沙羅も箱から出した瞬間ひと目で気に入ったようで。今までで一番の笑顔で「ママ、ありがとう。かぶってもいい?」って。だから私、スマホで動画を撮りながら言ったんです。「お姫様になった沙羅をママに見せて頂戴」って。そしたら、そしたら・・・・・・[対象は慟哭し始める。落ち着くまでインタビューは30分間中断した]

[重要度が低いため省略]

███博士:では、続きを。

██沙織:・・・・・・あの王冠をかぶった途端、沙羅の表情が見たこともない強ばったものになって、そして突然英語で喚きだして。私びっくりして、でもどうしたらいいかわからなくって、あの子の肩を持って揺さぶっちゃったんです。そしたら、あの王冠が沙羅の頭から取れて、その瞬間まるで何かにぶつかったように沙羅の体がびくんっ、って跳ねて、血が、血が・・・・・・[対象は嗚咽を漏らす]

███博士:それで119番に電話された、と。

██沙織:病院に着いた時には沙羅はもう・・・・・・[対象は再び慟哭し始める]

███博士: (しばらくの沈黙)インタビューを終了します。

インタビューを受け、財団は██氏の調査を開始。調査の結果██氏はこの事案が発生する3カ月前から行方不明となっており、更なる調査から██氏は行方不明となった時点で滋賀県内の山林にて自殺していたことが判明した。つまり母娘にティアラを持ってきたのは変装した別人ということになる。

補遺:

それにしても、こんな趣味の悪いティアラを作ってなんの罪もない母娘に渡したのは一体誰なのだろうか? その答えは、ティアラが入っていたと思われるパッケージに記載されていた。

きれいなドレスをきたお姫さまになりたいってあこがれはおんなのこなら誰だってもってるよね?
そんな夢みるおんなのこに博士がおくる『博士のプリンセスなりきりティアラ』!
これをつければきょうからきみもお姫さま!みんなががうらやましがるステキなプリンセスになれちゃうぞ!
さぁ、きみも『博士のプリンセスなりきりティアラ』をつけてステキなプリンセスの仲間入り!おんなのこの夢をかなえちゃおう!
楽しもうね!

おとこのこのための誰でも王様になれる『博士のキングなりきりクラウン』もよろしく!

保護者の方へ:この商品には尖った部品があります。小さなお子様が使用されるときは必ず近くで見守ってあげてください。



SCP-725-JP

博士のプリンセスなりきりティアラ



こんな「なりきり」があってたまるか!!!
保護者への注意書き含め何処をどう切り取っても悪意しか感じられないあたり流石というかやはり「博士」である。
それにしても「博士」、男の子用のものまで作ってたのかよ。エグすぎる。

追記・修正はプリンセスを夢見る人にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-725-JP – 博士のプリンセスなりきりティアラ
by itinomiyaP
http://scp-jp.wikidot.com/scp-725-jp

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最終更新:2025年01月17日 16:45