サクラ(植物)

登録日:2025/03/17 Mon 20:45:30
更新日:2025/04/20 Sun 16:39:49
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サクラ(桜、櫻)とは、バラ科サクラ属の植物である。
花言葉は「純潔」「精神美」「優れた美人」
名前の由来は日本神話の女神・コノハナサクヤヒメ(木花咲耶姫)から。
英語ではCherry(チェリー) blossom(ブロッサム)

なお、以下固有名詞以外はカタカナ表記で統一する。

目次

〈サクラの花〉

日本人にはなじみ深い、小さくて淡い桃色の花を咲かせる樹木。
特に観賞用として好まれており、日本人のお花見といえば十中八九サクラを見に行くこととされるくらいである。
日本の「国花」は実は法的に定められていないが、菊と並び桜も慣例的に国花の一つとして扱われる事が多く、日本(人)にとり最も特別な位置付けにあると言える。


〈サクラの実〉

日本で観賞用として親しまれている桜の多くは実を付けないが、ヨーロッパの桜、すなわちセイヨウミザクラは実が成る。これがサクランボ
小さく、甘酸っぱい味わいは日本でも人気。
栄養価の面で言えばカリウムが豊富な点が特徴。
なお、中国原産の「シナミザクラ」という品種も食用になる果実をつけるが、こちらの果実はほとんど市場には出回らない。

日本国内では生産量・生産敷地面積共に山形県が日本一。
2位の北海道に比べると、生産量は9倍以上、敷地面積も約6倍と突出している。国産サクランボの実に約78%が山形県産ということになる。同県の地元メディアの通称が「さくらんぼテレビ」なのも頷ける。


〈生き物とサクラ〉

花から出る蜜には昆虫や鳥が集まってくる。
スズメやヒヨドリはもちろん、春という季節からメジロやウグイスなどを観察することもできる。良い組み合わせの例えで「桜に鶯」という言葉もある。サクラにやってきた鶯を見つけることができたらラッキーだ。
また、サクラの葉や樹液を好む虫も多い。特にサクラが散った頃合いにはの幼虫である毛虫が増えるので、散り終えたサクラの樹の下を通る時には気をつけよう。
夏盛りにはカナブンやクワガタもとれるぞ!


〈サクラの特徴〉

バラ科の木本でも特に、「春、葉っぱが出るより先に花が咲きはじめる」という特性が強い。
ソメイヨシノに至っては、葉っぱの緑色がほとんど出ていない内に花が全部咲き揃う。
そのルックスが、日本人にとって春の訪れの象徴として尊ばれる。

サクラの特徴の一つが「傷に弱い」ということ。
樹木の中でも比較的傷口が治りにくく、剪定などもプロが慎重に行わないと寿命を縮めてしまう。
桜切る馬鹿、切らぬ馬鹿」なんて言葉があるくらいである。
もちろん、枝を折るなど以ての外。しかし観光客などが「映え」を求めてやりがちなので、サクラや管理者にとって深刻な問題になっている。

その他、「せっかく花見を楽しみにしていたのに、丁度その時期に雨が降った所為で桜が軒並み散ってしまった」という体験を多くの人が一度はするからか、「桜は極端に散り易く、雨が降ると満開にならずに花弁が丸ごと落ちてしまう」という印象を持つ人も居る。
だが実際は、桜という植物だけが極端に脆い訳では無く、七分咲きくらいの時に雨に打たれても他の花と同様に早々散りはしない。
桜という植物は、満開になってから概ね一、二週間ほどで花弁の根元に離層と呼ばれる細胞の層が形成され、それによって何もせずとも花ごと切り離され易くなる。
そして、本来ならこの離層が形成されるタイミングは個体によってまちまちで気温次第で時期早まりもするのだが、日本においてはクローン体のソメイヨシノがメジャーなので、多くの桜において離層が形成されるタイミングは概ね統一される。
そうした事情でソメイヨシノが一斉に散る光景を毎年目にするため、桜という植物は儚さの象徴として日本人の心象に強く刻み込まれている訳である。

〈素材としてのサクラ〉

樹木は頑丈で香りも良く、家具や建造物、彫刻や浮世絵の版木や燻製用のスモークチップに利用される場合がある。

樹皮は灰色みを帯びた見た目が綺麗で艶々しており、日本の伝統的な木工工芸品(樺細工)に使われる。
染料として利用すると、薄いピンクの染物ができあがる。


〈品種〉

野生種の山桜と栽培種の里桜に分かれている。
野生種は葉と花が同時に咲き、栽培種は花が先に咲いた後に葉が生えるのが特徴。
当項目では数が多すぎるので、主な品種のみを記す。

★ヤマザクラ(山桜)

開花期は3月から4月。花弁は5枚。
後述のソメイヨシノが生み出される前は日本を代表するする品種であり、多くの和歌で詠まれたり多くの浮世絵に刷り込まれていた。
また、現在の花見の定番はソメイヨシノであるが、過去の花見の定番はこの品種だった。

★オオシマザクラ(大島桜)/サトザクラ(里桜)

開花期は3月から4月。花弁は5枚。
花と葉共に強い芳香を持ち、葉は塩漬けで保存される場合がある。桜餅に使われる葉はだいたいこの品種の葉。
そして、緑の葉と相まって白い花弁が目立つため、別名「白旗桜」と言われれている。
100万年前からフィリピン海プレートに乗って関東地方に突き刺さった伊豆大島を始めとする伊豆諸島の火山列が原産で、火山の煙にも枯れないことで知られている。

☆カンザン(関山)

開花期は4月。花弁が20枚から50枚くらいあるのが特徴。
オオシマザクラの派生種。
花はで漬け、桜漬けに利用される。

☆ギョイコウ(御衣黄)

開花期は4月。花弁は10枚から15枚。
オオシマザクラの派生種。
黄緑色の花を咲かせる。

★エドヒガン(江戸彼岸)

開花期は3月から4月。花弁は5枚。
若葉は花が終わってから伸びる。

☆シダレザクラ(枝垂桜)

開花期は3月。
エドヒガンの派生種。
柔らかい枝が特徴。

☆ソメイヨシノ(染井吉野)

開花期は3月から4月。花弁は5枚。
エドヒガンとオオシマザクラの交配種。
おそらく日本で1番有名な品種。
若葉の前に花が咲くエドヒガンと花が大きいオオシマザクラの特徴を併せ持つ。
ちなみに染井も吉野も地名だが、この場合の吉野は桜の名所転じて見事な桜の意で染井が原産地。
有名な話だが、ソメイヨシノは全個体がクローンである*1
全ての木がほぼ同一の遺伝子を持つため同じ要因には似た反応を示す。いわゆる「桜前線」のように、地域ごとに気温などから開花予想が成り立ち一斉に満開となるのはこのため。
一方で世代交代による耐性の獲得などが発生し得ず、弱点も全部同じなため、一度サクラ種に害をなす病気や虫が出てくると結構ひどいことになる。

★カンヒザクラ(寒緋桜)

開花時期は1月から3月。
ニュースで「沖縄県で桜の開花が…」と報じられるのはこの品種。
赤みが強く花はあまり開かない。
3月頃に卵円形で直径約1cmの果実がなり、5~6月頃に赤紫~黒紫色に熟し、少し苦味がある。

☆カワヅザクラ(河津桜)

カンヒザクラとカンザクラの交雑種。
早咲きで基本的に2月か3月に開花するが、12月や1月に開花することもある。
発見されたのは伊豆半島南部の河津町で、今日に於いても河津町は2月ごろになると河津川沿いの桜並木が観光客で賑わう。

★セイヨウミザクラ(西洋実桜)/カンカオウトウ(甘果桜桃)

サクランボの主流。中東からヨーロッパ原産。花弁は5枚。
実は赤く、甘みが強い。
多数の白い花をつける。
いわゆる「アメリカンチェリー」というワインレッドカラーの品種もこの系統。

「佐藤錦」など、この下にも数多くの品種がある。

★シナミザクラ(支那実桜)/ダンチオウトウ(暖地桜桃)

「サクランボ」として果実を食用にすることができる品種。名前の通り中国が原産。花弁は五枚で、白い。
故・牧野富太郎いわく本来の「桜桃」は本種を指すという。
西洋実桜よりも病害虫に強いが、果実は真っ赤になるまで熟さないとなかなか甘くならない。
現在は植物園に植えられていることが多いが、果実が市場に出回ることはほとんどない。

〈サクラの分類と仲間〉

サクラの分類は国や時代によってばらつきが大きい。
サクラ類は人間に馴染みがあるぶん、学者たちも日夜議論に()を咲かせているのである。

サクラ属とスモモ属

我々が一般的に「サクラ」と呼ぶ植物は、サクラ属に分類する場合とスモモ属に分類する場合がある。
特に東洋ではサクラ属と呼ばれるサクラの仲間が独立したカテゴリー分類を行い、西洋ではスモモ属というサクラやスモモ、ウメなどを一括した分類を行っているのが一般的。
そもそもサクラ属はほとんどがアジア大陸原産なので、東洋の方が分類の細分化を行っているのだ。

ここで、西洋式のスモモ属を基準に、サクラの仲間をいくつか紹介していく。

サクラ亜属

まずはサクラ亜属。つまり我々がサクラなしにサクラと呼ぶサクラ。
主に上の品種で解説している「サクラ」がここに属する。

モモ亜属

中から桃太郎が生まれることでお馴染みのモモの仲間。
モモの他にアーモンドもこの亜属に分類される。モモ亜属についてはアーモンドの方に解説が詳しい。

スモモ亜属

スモモもモモもモモのうちと言われているが、スモモ亜属とモモ亜属は別とみなされている。
スモモの他に、ウメやプルーン、アンズなどがここに属している。


〈関連キャラクター〉

さくらんぼモチーフも含めると流石に多すぎるので割愛させていただく。

桜モチーフのキャラクター・アイテム


“名前”に「桜/さくら/サクラ」の入るキャラクター・人物


「桜/櫻/さくら」が使われている“苗字”

「佐倉」など同音異義語は対象外とする。
その他の苗字

桜に関連する食べ物

  • サクランボ
  • 桜肉(=馬肉
  • 桜餅
  • 桜鯛
  • 桜でんぶ
  • 桜漬け
  • 桜えび

桜の名を持つ作品


その他桜に関するもの



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最終更新:2025年04月20日 16:39

*1 ソメイヨシノに限らず、栽培種のサクラの多くがこの特徴を持つ。

*2 さくらコマースが保有する競走馬は全て名前に「サクラ」を冠する。

*3 「桜」と題材にはあるが、実際はマメ科の「ジャカランダ」という花。

*4 なお、日産では英語名である「チェリー」や、シルビアの海外名として「サクラ」を車名に使っていたこともある。