Smith&Wesson社

登録日:2025/08/28 Thu 23:17:20
更新日:2025/08/28 Thu 23:28:15NEW!
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概要

アメリカの銃器会社。
名前は創設者のホーレス・スミス氏とダニエル・ベアード・ウェッソン氏が由来。
主にリボルバーや自動拳銃を手掛けるが、ライフル(M&Pブランドの一つ)やナイフなども生産している。



歴史

1852年、創設者の2名がボルカニックのブランドでレバーアクションの拳銃とライフルを発表したことに始まる。ボルカニック・アームズ社として起業したものの、財政難からオリバー・ウィンチェスター氏に売却。
1856年に再度会社を興し、そちらがS&W社の源流となった。尚売却したボルカニック・アームズはウィンチェスター社としてレバーアクション銃の老舗となっていった。
S&W社ではコルト社の元社員ローリン・ホワイト氏氏が特許を取っていた薬莢式リボルバー関係の技術の工業権を取得し、1857年には.22口径薬莢を使用する現代的なシングルアクションリボルバーを開発。モデルNo.1として世界初の薬莢式リボルバーとなった。
.32口径版のモデルNo.2は南北戦争での私物の護身拳銃として活躍。坂本龍馬も所持しており、日本でもギリギリ古式銃として博物館で見ることができる。
モデルNo.3では.45スコフィールド弾など大口径弾を使用できるようになり、コルトSAAに先駆けて米軍に採用された。

1873年にはスミス氏が引退し、ウェッソン家の家族経営(ダニエルとその息子3人)となる。ゴタゴタの末1906年頃以降は長男ジョセフ氏が社長に就任。技術畑であるジョセフによりリバウンド・スライド(引き金を引く際以外に作動する安全装置の一種)やハーフムーンクリップを発明した。

第一次大戦による特需も戦後はなくなり、ジョセフ死後に社長に就任したハロルド氏(次男の息子)がなんとか立て直そうとしたものの色々と失敗。コンサルタントとしてヘルストルム氏が入り、失敗したイギリス軍との主力小銃契約の穴埋めや生産能力の強化を行い立て直しに成功した。
第二次大戦後の1946年からはハロルドの逝去に伴い、実績によりヘルストルムが社長に選出された。

1965年、家族経営から離れBangor Punta社参加となる。その間警察向けのリボルバーや手錠などで隆盛するが、80年代から警察用拳銃のセミオート化が進むにつれ業績が悪化。ついでにBangor Punta社も84年に他社に買収されてしまう。
1987年から2001年までは英国のトムキンス社傘下となり、再度回復したもののブレイディ法やアサルトウェポン規制法が94年から始まり、世相の面で再度苦境に立たされる。不買運動対策としてクリントン大統領(当時)と合意した内容でNRAと対立し株価が大幅下落。当時のCEOが解任されるなど大波乱であった。
2001年、サフ・T・ハマー社が買収。トムキンス社買収時の1億ドルは1500万ドルになっていたことからもかなり悲惨であったことがわかる(これに3000万ドルの負債もある)。
ハマー社社長のボブ・スコット氏はもともとS&W社所属で、方針に反発しハマー社に移動していた。スコット主導で買収は進み、スコットが社長に就任した。
2016年からはアメリカン・アウトドア・ブランズと改名しS&Wはブランド名になるはずであったのだが、同時期にM&Pブランドのライフルによる高校銃乱射事件などが多発し経営悪化。
そのことからか2020年にはアメリカン・アウトドア・ブランズから分離して再度S&W社となった。

1990年以降、競技向けなどのニーズにこたえるためパフォーマンスセンター部門が設立されている。特注のカスタマイズ(専用パーツや用意されていない長さのバレルやコンペンセイター)モデルを製造している。



製品の一例

歴史の通り経営状況の上下が激しいが、そのたびに新機軸を打ち出したりするなどしている。とくにM500などは会社を支えた名銃といえるだろう。
1957年以降からモデルナンバーが振られるようになったが、それ以前のモデルは独自の命名となっている。
モデルナンバーの規則性はあまりないが、慣例としてステンレスのバリエーションモデルでは元モデルの頭に6をつけることが多い。
現在では1990年代の経営悪化の際に古いモデルを生産終了させており、クラシックモデル等としてリバイバル生産している場合があるが純正の新品は入手不可といえる。

レバーアクション

  • ボルカニックライフル/ボルカニック拳銃
  • モデル1854
上記ボルカニックライフルをモチーフに2024年に製造されたレバーアクションリピーター。

リボルバー

伊達ではない量のリボルバーを開発している。
  • モデルNo.1/2
  • モデルNo.3
  • ハンドエジェクター
 スイングアウト式のフレームを世界で初めて採用した。I、K、Nフレームの直接の祖先

現行フレーム

  • Jフレーム
1950年~。小型。5連発で.38スペシャル~.357マグナム弾を使用。
  • Kフレーム
1899年~。中型。M10、M13、M14、M15、M19。
  • Lフレーム
1980年~。中~大型。M586、M686。
  • Nフレーム
1908年~。大型。M27、M28、M29、M629、M327。
  • Xフレーム
2003年~。超大型。M500。
  • Zフレーム
ガバナー専用のNフレームベースの.410口径散弾用フレーム。

廃止されたフレーム

  • Cフレーム
1973年。JフレームとKフレーム用シリンダーの組み合わせ。M73のみでコルト ディテクティブ(D)を意識したものだが現在は2桁も残存していない。
  • Iフレーム
1903年~1976年。小型。.38スペシャル弾に耐えられないので廃止。M30、M32、M33、M34。
  • Mフレーム
1902年~1986年。超小型。.22LR弾などを使用。レディスミスの1種のみ。後継としてM36、M60などの超小型モデルをレディスミスと名付けることがある。

自動拳銃

  • M35
  • M39

  • M41
  • M422
  • M61 ポケット エスコート

  • ボディーガード 380

  • SW/シグマ

  • SW99

  • M&P拳銃

M&Pブランド

M&P拳銃を発端として最近のS&W銃器に用いられるブランド名。ベレッタのStormシリーズ等と違い、PCCを除いてパーツの互換性などはあまりない。上述したものを除いたもののみここで触れる。
  • M&P 22
M&P拳銃の.22LR仕様
  • M&P 15
AR-15クローン
  • M&P 15/22
M&P 15の.22LR仕様
  • M&P 10
M&P 15の7.62x51mm仕様
  • M&P FPC
ケルテック SUB-2000に似た折り畳み式PCC。M&P拳銃とマガジンの互換性がある。

OEMその他

  • M1500
  • M1000
どちらも豊和工業のM1500/フジスーパーオートのOEM品である。詳細は豊和工業の項目を参照。
  • M76
概ね唯一の短機関銃。カールグスタフm/45の米国生産版。

弾薬

リボルバーの先駆者らしくかなりのリボルバー用弾薬を開発している。
エルマー・キース氏との協力によりそこそこの良のマグナム弾ブランドを作り上げている。
  • .22ショート(5.6x10.7mmR)
リボルバーモデルNo.1用に開発したもの。薬莢を15mmに延ばせば概ね.22LR。
  • .32S&W(7.65x15mmR)
リボルバーのほか、デリンジャーなど護身用拳銃向けに用いられたショート弾。
  • .32S&Wロング(7.65x23mmR)
.32S&Wの延長でハンドエジェクターと同時に導入うされた。
  • .35S&Wオート(8x17.2mm)
M35(M1913)専用弾。
  • .38S&W(9x20mmR)
ウェブリーリボルバーなどで使用された。.38スペシャルとの互換性はない。
  • .38S&Wスペシャル(9x29.5mmR)
.45ACPと同じく.38ロングコルト弾がストッピングパワーを発揮しなかったことから開発された。黒色火薬時代からの弾であるが今もリボルバーをメインウェポンとしている場合の警察などで現役。
  • .356TSW(9x21mm)
競技用に9x19mmから40%近くパワーアップさせた弾。ルール改定で使用されなくなった。
  • .357S&Wマグナム(9x33mmR)
.38スペシャルではギリギリボディーアーマーなどに対抗しきれないと判断した者によって開発された。無煙火薬専用となっているため.38スペシャル向け銃器に装填できないよう薬莢長が延長されている。
これが出るまでは.38-44HVのように.44スペシャル弾ベースの専用弾を用いていた。
  • .40S&W(10.2x22mm)
10mmオート弾を短縮し9x19mm弾に近い寸法となるように調整したもの。FBIの研究により10mmオートの弱装弾が制圧に最適とされたことから開発された。
  • .41マグナム(10.4x33mmR)
.357マグナムと.44マグナムの間を埋める形で考案され、S&Wやレミントン、ノルマで試作された。最終的にはレミントンのものが選ばれた。
  • .44アメリカン(11x23mmR)
モデルNo.3向けのモデル。
  • .44ロシアン(10.9x24mmR)
モデルNo.3をロシア帝国に輸出する際の要求に対応したモデル。のちの.44マグナムなどにも影響を与えている。
  • .44S&Wスペシャル(10.9x29mmR)
トリプルロックのニューセンチュリーモデル向けに開発されたモデル。ロシアン時代の黒色火薬向け設計から無煙火薬向けに設計を変更している。
  • .44レミントン・マグナム(10.9x33mmR)
弾薬(カートリッジ)の該当箇所を参照。
  • .45S&Wスコフィールド(11.5x27mmR)
ジョージ・スコフィールド少佐の提案による騎兵向けモデルNo.3用弾。.45コルト弾より短い為45コルト弾を発射する銃なら使用可能。
  • .460S&Wマグナム(11.5x46mmSR)
.45コルト弾や.454カスールを延ばしたようなマグナム弾。強めの7.62x39mm弾並の威力を誇る。
  • .500S&Wスペシャル/マグナム(12.7x32mmSR/12.7x41mmSR)
コルボン/グレイザー社がS&Wからの要請で開発した.50口径弾。.3006弾並の威力を誇る。

その他にも前述の警察向けの手錠やナイフなどがある。



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最終更新:2025年08月28日 23:28