弾薬(カートリッジ)

登録日:2011/04/14 Thu 22:22:20
更新日:2025/07/01 Tue 20:11:47
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概要

弾薬(カートリッジ、ケース、実包、Ammunition、Ammo)とは現代のにおいて発砲の際に使用する、弾頭、薬莢などを組み合わせた物。
閲覧の際にはの項目も参考に。
個別の名称については口径の項目を参照。
古式銃の弾に関してはマスケット銃などを参照。

内部は主に以下のもので構成される。

弾頭(弾丸、バレット)

円頭弾(ラウンドノーズ)、平頭弾(ワードカッター)、尖頭弾など弾丸の形は色々ある。

弾芯(コア)

 主に鉛で構成され、命中時にその柔らかさでエネルギーを伝える。

被甲(ジャケット)

 弾芯を包む。主に銅で構成され、ライフリングが鉛で汚れたり発射時の弾芯の変形や破損を防ぐために装着される。

薬莢

薬莢(ケース)

 主に真鍮か鉄で構成され、発射時まで弾薬のすべての部品を保持/保護し、発射時には銃側の薬室やボルトとともに装薬のエネルギーを受け止める。

雷管(プライマー)

 主に薬莢の尻に埋め込まれている丸い部品。この部品を叩くことで火花が発生し装薬に点火する。

装薬(パウダー)

 薬莢内に込められる火薬。雷管によって点火後ガスとして膨張、弾頭を加速させる。
 火薬だがダイナマイトのような爆薬ではない。
 爆薬の爆発(爆轟)が音速に達するほど高速であるのに対し、装薬は爆燃という遅めの燃焼/膨張をする。
 それにより比較的時間をかけて弾頭を加速することができるため、同じエネルギー量だったとしても効率がいいという理屈である。
 発射薬は粉状ではなく、粒状や円柱状やマカロニ状になっている。燃焼速度を調整するためであり、粒が大きいものは遅く、小さいものは早く燃焼する。
 形状や材質、装薬量によって適切な燃焼速度に調節し適切な銃に使用されるようになっている。
 例えば銃身が短い拳銃では速燃性発射薬が、長銃身のライフルでは遅燃性発射薬が適している。

材質

弾頭

前述の通り主に鉛を銅で覆う形式が主流だが、メッキを施したり樹脂製のチップを追加したり識別用に色を塗っていたりで銅の色そのままというわけではない場合もある。
材質は同じでも形状によって効果が変わる。
  • 完全に覆われて鉛が見えないフルメタルジャケット(FMJ)
 普通の弾で被弾者に命中した状態でも変形しづらく直進、貫通する。
  • 先頭付近の鉛が露出し穴が開いているホローポイント(HP/オープンチップ。穴が開いていないものはソフトポイント/SP)
 被弾者に命中した際に先端から変形(マッシュルーミング)、断片化(フラグメンテーション)を起こし、より深刻なダメージを与える。
材質によっては以下に変化する。
  • 徹甲弾
 弾芯やその最奥部に硬い金属を封入し、命中時にその金属で走行を打ち破る方式。ボディアーマーや装甲車両に対して使用するが、弾速なども挙げていたりするので生身に対しては多少ダメージが減ってしまう。
  • フランジブル弾
 銅の粉を固めたりして作成した弾で、被弾者に対しての効果はホローポイントと同じだが、その時点で砕けて二次被害を低減する。
  • 曳光弾
  • 焼夷弾
 弾芯底部にマグネシウムなど光る材質を用いて弾道を明示化したり、命中時に燃焼して相手を燃やす。
  • 榴弾
 弾芯に炸薬を詰め込み命中時や貫通時に爆発する。12.7mm以上でギリギリ用意されることがある。

構造的にバッティングしなければ複数の機能を持たせる事は可能で「徹甲曳光弾(AP-T)」や「徹甲榴弾(APHE)」等、3つ以上なら「多目的弾」「多機能弾((主目的)-MP)」等と呼称される。

LF(鉛フリー)

電子工学系なら聞くことも多い*1かもしれないが、近年欧州では鉛の使用を控えている。
鉛はベートーヴェンの聴力を奪ったことで有名で、重金属としての汚染力がある存外危険な金属である。
上記の考え方は弾でも変わらず、弾芯を軟鉄などで代用する場合が増えている。

拡張弾

上記ホローポイント弾など命中時にFMJ以上のダメージを与えるもの全般を拡張弾という。
起源は「ダムダム弾」。イギリスの植民地であったカルカッタのダムダム工廠で造っていたライフル銃用ソフトポイント弾だった。
今では「必要以上に苦痛を与える」として軍隊での使用はハーグ陸戦協定で禁止されているが、戦争以外での使用は禁止していないため警察や自衛用としては現役。
近年では被甲部分の材質や弾芯の形状を工夫したホローポイント弾がブラックタロン、ゴールデンセイバー等々のブランド名で発表されているが、これらは「ハイテク・ホローポイント」と総称されることもある。
単薬室連発式の銃では、弾頭が薬室へ装填する際にフィーディングランプにこすれる。そのため複雑な形状だと引っかかることがある。
引っ掛かりの少ない形状にしたり銃側で対応したりと各社工夫している。
なおフィクションではFMJの頭の被甲をナイフ等で剥いて弾芯を出し、そこに十字傷を付けた物をダムダム弾と称していることがある。
無論前述の通り気を使わないと引っかかって装弾不良につながる。マスケットの丸弾時代に行われていた技法と混同したものと思われるが、HP弾は手軽に売っているのでウォルマートで買おう。

薬莢

銀幕上で「キーン」といった甲高い音を出して転がり、後々踏んづけて転ぶあれ。弾頭とともには飛んでいかず、大抵は銃右側面に指ではじく程度の速度で飛ばされる。
主に真鍮や鉄で作られている。
なぜ必要なのかはの項目を参照。

使用後に回収して洗浄・再整形をすれば再利用可能(リロード弾)なので、米軍含め各国軍では現在90%以上を回収している。
再利用による諸費用の回収も目的であるが、弾の横流しや不正備蓄を防ぐためという立派な理由がある*2
戦闘でも薬莢は可能な限り回収するようにしている。落ちている薬莢の量に応じて『この場所で戦闘があった、どの程度の規模の戦闘で、どのくらい弾薬を消耗したか』を敵に悟られない為。
使用しきれなくなった場合は材料レベルに還元してリサイクルする場合もある。使用済み雷菅と弾頭だけを取り付けた薬莢をストラップみたいに加工した土産なんかも存在する。
訓練場をカートで掃いたり、排出直後虫取り網で受けたり、銃に薬莢受けを取り付けることで散らばらないように対処している。
自衛隊隊員や韓国軍兵士の銃にカーキ色の袋がついている情景は時たま見かけるだろう。

新品の弾(ファクトリー弾)と比べると以下のメリットデメリットがある。
  • ファクトリー弾派
 工場の設備で正確に測っているので精度も高い。
 それ以外にもダブルロード*3などの事故を防げる。
 そもそもリロードはよほどの知識・技術・選定力がなければ大変危険。業者に任せていたらコストも新品を買うのと変わらないだろう。
  • リロード弾派
 同じ銃で発射するのならば、チャンバーにぴったりフィットするのでファクトリー弾より精度が高くなる説がある。
 リーズナブルだし装薬の細かい調整が効く。

グアムなど大規模な観光射撃文化がある場所ではリロード弾が使用されていた(専門業者もいた)が、コロナなどを経て2023年以降はファクトリー弾が使用されているという。
リロード弾の場合、再成型の際に削るのでその後がつく。多少黒ずむ点でも区別できるので撃つ前と撃った後に観察してみよう(小型の銃であっても排莢直後は高熱なので触るには手袋が必須。)

特殊な薬莢

  • 薬莢と発射薬の中に弾頭が埋まっている構造の弾薬を「テレスコープ弾薬(CTA)」と呼ぶ。高速連射への適性を見込まれ、対空機関砲用として研究が進められている。
  • 薬莢内部に弾頭を押すシリンダーを内蔵し、外部に発射ガスからくる音を出さないようにした弾なども存在(7.62×38mm SP-3)。
  • 現代の戦車砲では、車内スペースが薬莢に取られないよう、装薬を固めて作られた焼尽薬莢が使用されている。*4
 小銃としても研究され、G11では発射薬が剥き出しのケースレステレスコープ弾として結実。軽量かつ排莢の必要もないが、色々と問題も多く結局採用されなかった。

雷管

雷汞(らいこう)とそれを囲う金属で構成される。銃ごとに大きく変化することはない。
こちらもなぜ必要なのかはの項目を参照。



現代の製造企業例

偏りが酷いのであくまで一例です。

  • Nosler, Inc.(米):狩猟弾専門
  • Hornady Manufacturing Company(米):XTPなど高品質の弾薬ブランドが存在
  • Hodgdon Powder Company(米):リロード用の火薬などを専門としている
  • Remington Ammunition(米):2020年のレミントン社破綻後に分裂した会社
  • Federal Premium Ammunition(米/チェコ):ハイドラショックなどのブランドで有名
  • PMC ammunition(韓国):X-TACなどのブランドが存在
  • ArmsCor(フィリピン):M1911周りや弾薬を販売
  • AGUILA(メキシコ)
  • Prvi Partizan/PPU(セルビア):マイナーな弾を多く製造数している
  • Century International Arms(米):RedArmyStandardブランドとしてロシア圏(トゥーラ等)の弾を輸入し販売している
  • Tula Cartridge Plant(ロシア)

  • Alexander Arms
  • FN
  • オートマグ社(旧)
その会社が専用で採用した弾は基本的にその会社か子会社が制作している

  • 豊和工業
  • 日本工機
  • 旭精機工業
日本の弾薬メーカー。自衛隊、海上保安庁、警察への納品が主。ダイキンなども砲弾を製造している。



余談

日本で許可されていない実包を持っていると懲役刑となる
薬莢は撃てない状態ならセーフだが、グアムやハワイ等海外の試射場で撃った後の空薬莢でも、税関で見つかれば色々面倒。
火薬類が含まれないなら大丈夫ということで、本物の弾頭と薬莢、偽物の装薬と雷管を組み合わせたダミーカートが販売されていたりする。



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最終更新:2025年07月01日 20:11

*1 RoHS指令など

*2 「渡した弾」と「戻ってきた薬莢の数」を数えることで、こっそり弾薬を溜め込むことを防止している。これを許してしまうと最悪大量に弾を溜め込んでクーデターを起こす等の可能性がある

*3 2重に装薬を入れてること。想定していないと銃が壊れるし射手も壊れる(最悪頸動脈が切れて死ぬ)。対策としては、装薬をかさの多いものに変え2重に入れたらあふれるようにするなど

*4 それでも底部だけは金属製なので残る