SCP-8866

登録日:2025/10/01 Wed 22:46:49
更新日:2025/10/02 Thu 06:35:47NEW!
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SCP-8866とは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「Locally Sourced(地元食材)」。
アノマリー分類システムは採用されておらずオブジェクトクラスは「Safe」。

概要

SCP-8866は標準的な野菜用ピーラーの見た目をしている。報告書に添付された画像を見る限り、日本でポピュラーなひげ剃りに近い姿ではなく欧米で普及している彫刻刀の丸刀に近い姿のピーラーなようだ。
(ちなみに日本でよく使われているピーラーは『Y字型ピーラー』、対して欧米でよく使われる彫刻刀もどきは『I字型ピーラー』と呼ばれている)

その異常性はこのピーラーを生体に対して使用した時に発現する。野菜の皮を剥くのと同じ要領でSCP-8866を使用すると、ピーラーから排出される物質はジャガイモやカブ、ニンジンなどの一般的な野菜をスライスしたものへと変換されるのだ。
またSCP-8866によって生成される野菜は削られる生体の身体的特徴によって左右されるらしく、高齢の被験体に対してSCP-8866を使った場合食用に適してはいるものの若年成人から生成したモノと比べてかなり古い野菜の皮が出現するとのこと。

剝いたモノを野菜に変換するピーラーというだけのAnomalous認定されてもおかしくないオブジェクトなので、
特別収容プロトコルも随分と簡略化されている。
  • 使用しない時はサイト-73の収容ロッカーに保管してね
の一点のみ。模範的なSafeクラスオブジェクトといえる。

ちなみにSCP-8866によって生体を削っている時に痛みを感じるか否かは本文中のどこにも明記されていない
わざわざ明記されていないということは、つまりそういうことなのだろう。

発見経緯

そんな剝いたモノ野菜変換ピーラーことSCP-8866だが報告書はかなり短く前述の特別収容プロトコル、オブジェクト説明を除くと後は補遺に書かれた発見経緯しか内容が残っていない。
SCP-8866は財団が収容する前までアメリカ合衆国ニューヨーク在住のホームレス、ジャニス・バクスターさんが所有していた。
財団に捕捉され収容されるまではそれなりの紆余曲折があったようなのでザックリ以下にまとめる。

バクスターさんは財団がSCP-8866を発見する3年前までベジタリアン/ヴィーガン向けメニュー専門のスープキッチンを経営していた。

その店は2011年に「動物が侵入した形跡がある」として複数の安全衛生違反により閉鎖させられている。
おそらくバクスターさんはそこら辺の野生動物を捕まえてはSCP-8866ですり下ろして提供していたのであろう。健康・趣向目的のベジタリアンはともかくヴィーガンの方はブチギレ案件では

店の閉鎖後バクスターさんの消息はしばらく不明。

2013年に彼女が肉料理専門店を主な標的とした食品窃盗を複数回行っていたという通報が入る。この犯行は8ヶ月間にわたって幾度か繰り返されたがその後唐突に途絶えたとのこと。

後に行われた現地自治体の調査により、スープ店の閉店以後、バクスターさんは現地のとある橋の下で暮らしていたこと、バクスターさんが自治体の発見時点で既に死んでいたことが発覚。(バクスターさんは風雨に晒され死んでいたのだが、報告書曰く自ら風雨に晒されに行った疑いアリとのこと)

身体の一部が植物化したドブネズミの生息が現地で報告され、財団のSCP-8866干渉開始

バクスター女史の衣類の山の中から、腐敗したベビーキャロットの削りカス6kgと共にSCP-8866発見&回収

前述の通りこの報告書はとても短いためSCP-8866を発見した時点で報告書全体の記述も終わっている。


余談

ここからは作者直々に解説したわけではない与太話と思ってもらいたい。

バクスター女史がどこでこのピーラーを手に入れ、何を思って利用していたのかはもはやわからない。
しかし、ホームレスとなった後にわざわざ肉料理専門店へと窃盗を行ったあたり、肉を食べる、もしくは食肉を販売することに隔意があった可能性が高い。
嫌悪する肉料理店へ当てつけのように窃盗を行い、得た肉塊をオブジェクトによって野菜片へと変換して食べていたのだろう。

また、得られる野菜片はどんな肉だろうと可食かつ消費に適したものとなるようなので、手直な生き物を捕獲して削り取ることで食材を確保することもできる。*1
財団の発見した「身体の一部が植物化したドブネズミ」は、削る最中に逃げ出したことで皮膚と変換された野菜がつながったままだったのだろう。

SCP-8866の持つ特性の一つに「生成される野菜は削られる生体の身体的特徴によって左右される」というモノがあったが、「削った生体が高齢の場合、連動して生成物も古い物となる」という事例を見る限り、
逆に削った生体が未成熟だった場合、連動して生成物も未成熟の物となる可能性が高いのではないだろうか。

ところで報告書の最後の方に出てきた『ベビーキャロット』。「普及しているニンジンに比べて成体が小さいニンジンの総称」とすることもあるが、「成熟前のニンジンを間引き商品としたものの総称」とする場合が多い言葉である。

腐敗したベビーキャロットの元であろう「6kg以上」かつ「未成熟」「生体」



バクスターさんは、一体なにから6kgの未成熟人参をすり下ろしたのだろうか

なぜ、6kgもの重量を一度にすりおろし、服の山へと隠したのだろうか



……真相は、闇の中である。*2





追記・修正は生体にピーラーを掛けながらお願いします。



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最終更新:2025年10月02日 06:35

*1 理論上だが、膵臓や腎臓、骨と言った明確に食用に適さない部位すら切削、変換できるようだ

*2 特に関係はないが、生後2か月の乳児の平均体重はおよそ6kgらしい