登録日:2025/10/06(thu) 22:56:00
更新日:2025/10/06 Mon 22:55:54NEW!
所要時間:約 28 分で読めます
ネットワークゲームの最高峰
PSOをやりながら読め!
『ファンタシースターオンライン
光の継承』『ファンタシースターオンライン
闇の因子』とは、SEGAのオンラインアクションRPG『
ファンタシースターオンライン』の小説版である。
出版は角川スニーカー文庫。
初版は、上巻『光の継承』が2001年4月1日、下巻『闇の因子』が2001年7月1日に発行された。
著者は『ダンシング・ウィズ・ザ・デビルス』『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』などを手掛けた庄司卓。
イラストは、表紙を『PSO』メインイラストレーターの水野暁一、本文挿絵を『ラブプラス manaka days』や漫画版『蒼穹のファフナー』の現津みかみがそれぞれ担当。
【概要】
2000年にドリームキャストで発売され、国産初の家庭用機向け本格的オンラインゲームとして伝説的人気を誇った『PSO』の公式ノベライズ作品。
『PSO』本編より5年後を舞台とし、完全新規の物語が展開される。
細かい設定が整理された『ファンタシースターオンライン エピソード1&2』よりも前に発売されたため、エピソード2以降の内容は考慮されておらず、現在の公式設定や公式年表とは齟齬も多いが、エピソード1とのすり合わせ自体は念入りに行われている。
庄司氏の独自解釈による設定補完も多く、正史とはまた違った『PSO』ワールドが楽しめる。
庄司氏自身がファンタシースターシリーズの熱心なファンということもあって、随所に『PSO』本編やシリーズ過去作の小ネタがふんだんに盛り込まれており、シリーズユーザーなら思わずニヤリとさせられるだろう。
小説作品としての純粋な完成度も高く、多数の思惑が交錯する入り組んだ内容ながらもテンポよく物語が進んでいく。
一応主人公もいるが、様々なキャラクターが力を合わせて大きな危機に立ち向かう姿は、まさに『PSO』のキャッチコピーである「英雄は一人じゃない」を体現するようである。
物語を理解するために必要な要素は全て丁寧に解説されているため、ゲーム本編を遊んでいなくても十分楽しめるはず。
復刻や電子化はされていないため、今から読むとなると中古市場を探すしかないが、シリーズファン、特にハンターズ、元ハンターズの方々には是非とも手に取って欲しい一作である。
【あらすじ】
A.U.W.3084年に実施された惑星ラグオルへの移民計画「パイオニア計画」と、ラグオル植民者の拠点セントラルドームに突如として発生した謎の爆発「ブルーバースト」に伴う一連の怪事件から5年後。
ラグオルへの移民は段階的に再開され、本星である惑星フォーブにも一応の平穏が訪れていた。
そんな中で、見習いハンターのナルタは相棒ローディーと共に、教官を務める凄腕ハンター、リンクスのシゴキに耐えながら下積みの日々を送っていた。
ある日、ナルタとローディーが新米フォースのアーチェを暴漢から救ったところ、その養父タンタロスとも知り合うこととなった。
タンタロスはアーチェに他者との交流の機会を与えるため、彼女をハンターギルドに登録させたが、その裏ではかつて自分の人生を狂わせたある事件の黒幕を探し続けていた。
一方その頃、シフォン家の当主クジカは、フォーブに災厄が降りかかりつつあることを直感し、事態終息のために行動を開始。
政府やハンターズ評議会でもこのことが様々な憶測を呼び、パイオニア計画の影にもあった陰謀が、再び動き出していた。
様々な思惑が交錯する中、突如としてフォーブ軌道上に巨大宇宙船が姿を現す。
それは、かつてラグオルに旅立ち、そしてフォーブへの帰還中に突如行方不明になった恒星間移民船、パイオニア3だった…
【登場人物】
●ハンターズ
各キャラクターのセクションIDは『光の継承』のキャラクター紹介コーナーに掲載されたカラーイラストで確認できる
・ナルタ・ジョーダン
本作の主人公。
赤いハンタースーツを着たヒューマー。
ハンターズライセンスのレベルは5。セクションIDはブルーフル。
絵に描いたような熱血馬鹿で、考えるのは苦手だが正義感と行動力は誰にも負けない。
軍人の名家であるジョーダン家の1人息子だが、規律に縛られた軍人生活を嫌って家を飛び出し、「自分の意志で行動する」ハンターズになった。
そのため実家と軍にはあまりいい感情を持っていないものの、父親のことはなんだかんだ尊敬している模様。
パイオニア3出現時にはタイロン3に居合わせ、危うくステーションと運命を共にするところだったが、リンクスの「ここにいるよりはマシ」という判断でローディー、リンクスと共にテレパイプを用いてパイオニア3に避難。
これをきっかけに、新米でありながらフォーブ、ひいては全宇宙の命運を懸けた戦いに身を投じることとなる。
武器はセイバー。冒頭の訓練シーンではソードを使っていた。
なお、ハンターズ達が標準装備している左腕のシールドデバイスを持っていないが、これは「見習い」という設定を反映してのもの。
・ローディー・アーンハート
青いハンタースーツを着たヒューマー。
レベルは5。セクションIDはスカイリー。
ナルタの相棒であり、プラチナブロンドの長髪が特徴的な優男。
自称「正義と美女と美少女の味方」で、面倒ごとは嫌いだが美女絡みならナルタ以上の行動力を発揮する。
ナルタのお馬鹿ぶりにはよく突っ込んでいるが、心の底では強く信頼しており、息の合った連携を見せることも多い。
実はフォーブ屈指の大企業アーンハート・エンタープライゼスの現社長、ブルーノ・アーンハートの末息子。ナルタと違って、必要な場合はその名前を利用することにも特に抵抗はない模様。
武器はソード。冒頭の訓練シーンではセイバーとハンドガンを使っており、初歩的ながらテクニックの心得もある。
ナルタと同じく、左腕のシールドデバイスはない。
・リンクス
白いハンタースーツを着たハニュエール。
レベルは87。ポーズの所為でちょっと見えにくいが、セクションIDは恐らくオラン。
スレンダーな体型の者が多いというニューマンには珍しい、グラマラスな肢体の持ち主であり、シャワー上がりのタオル1枚の姿も披露した。まあ挿絵はないんですが
勝気で男勝りな女傑だが、内面は繊細で、心を許せる相手の前では涙もろい一面も見せる。
ある企業が非合法に製造した、身体能力を極限まで高めたニューマン「Lin」シリーズの10番目で、本名(というより開発コード)は「Lin-X」。命の恩人にして初恋の相手であるケントの影響を受け、彼と同じハンターズになった。
かつてパイオニア2の乗組員としてラグオルでの過酷な戦いを生き延びた凄腕ハンターであり、素早い身のこなしに物を言わせた高い戦闘能力によって「白山猫」の異名で知られる。
クジカが休職し、どこか満たされない日々を過ごしていた中でナルタ、ローディーの2人と知り合い、かつての自分とクジカと通じるものを感じたことで鬼教官になった。
「ハンターたるもの、常に自分から前に出るべし」をポリシーとし、非常時以外は銃もテクニックも使わない。
武器はダガーとスライサー。また、予備の武器として一応マシンガンも所持している。
・タンタロス
真紅のボディが特徴的な、隻眼のヒューキャスト。
レベルは20程度(正確には不明)。セクションIDはレッドリア。
3、4年ほど前にギルドに登録したばかりだが、まともなハンターズならスルーするような、高額報酬だが危険な依頼ばかりを受け、その悉くを達成してきた謎多き凄腕。
その強さに対抗心を煽られたハンターズ数人が任務に同行し、悉く殉職したことから「赤い死神」の二つ名で呼ばれる。
そんな身の上から物騒な印象を持たれやすいが、実際は温厚な性格で、目下のナルタやローディーに対しても紳士的に接する好人物。
孤児であるアーチェの養父であり、危険な依頼ばかりを受けるのも彼女の養育費を稼ぐためである。
アーチェとの親子仲も良好で、彼女を可愛がりながら、ちゃんとした大人になれるか常に心配する姿は下手な人間よりも人間臭い。
ボディはかの「黒い猟犬」ことキリークと同型だが、紳士的な表の顔の下に狂気を隠した彼とはまさに正反対の人物と言える。
武器はパルチザンとハンドガン。
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本名はタロス。
過去は青いボディで、レベル86のベテランだった。
パイオニア3の乗組員としてラグオルを訪れ、居留地襲撃事件の際もハインツ、リード、フィリップと共にマーリカを救出した。
しかし、デ・ロル・レに殺害されゾンビ化されたハインツ達を射殺する羽目になった上、事態隠蔽を図った政府に「恐怖心でエラーを起こし、錯乱してパーティーメンバーを射殺した」という濡れ衣を着せられて社会的に抹殺されてしまった。
そのまま機能停止刑に処され、危うく暗殺されるところだったが、ケントとシフォン家に命を救われ、「タンタロス」という仮の名でマーリカ=アーチェを守りながら、自分の人生を狂わせた黒幕を探し続けていた。
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・アーチェス・リーン
物語の前日に登録したばかりの新米フォニュエール。通称アーチェ。
レベルは明言されていないが、恐らく1。セクションIDはピンカル。
外見年齢はヒューマンの14,5歳相当だが、ニューマンなので実際はそれよりもさらに若い。
内向的で人見知りな性格だが、気の許せる相手になら柔らかな笑顔も見せる。
実の親ではないタンタロスのことも強く信頼し、父として愛している。
何らかの不思議な力を持っているようだが…
戦闘シーンはないものの、ナルタ達と出会った際にはウォンドを所持していた。
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ネタバレ |
本名はマーリカ・マクダ。
かつてパイオニア3に乗っていた移民の1人であり、地上居留地に住んでいた。
居留地襲撃事件の際は洞窟エリアにいたため命拾いしたが、帰宅したところをゾンビ化した家族や知人に襲われ、タンタロス達に命を救われた。
事態終息後、危うく研究所に連れ去られるところをシフォン家に救出され、
「シフォン家がかくまった場合、マーリカを巡って政府との全面抗争に発展しかねない」というタンタロスの判断により、仮の名前で彼に引き取られることになった。
本来は歳相応の明るい性格だったようだが、変わり果てた家族や知人に襲われた挙句ハインツ達の惨死まで目撃したことで心に深い傷を負い、現在の寡黙な性格に変わってしまった。
そして、その身に宿した生体フォトンの力のせいでデュラハンに狙われ、再び動乱に巻き込まれていく…
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・アール・ケント
ハンターギルド評議会議員。
公明正大で実直な人物であり、ギルド評議員という立場でありながら質素な暮らしを好む。
約10年前にケガで引退するまではレイマーとして知る人ぞ知る渋い活躍をし、「百発百中のケント」として尊敬されていた。リンクスらLinシリーズのニューマンを救ったのも彼である。
その人徳のおかげで現役時代を知る現場のハンターズから人気が高く、評議会では何度も再選を果たしている
かつては評議会を代表してパイオニア3にも乗り込んでいた。
タンタロスの旧友でもあり、彼を裏からサポートする傍らで、父親として奮闘する彼の姿を見守っている。
・ピーター・ジャッド
ハンターズ評議会議長。
ラグオルで起きた一連の事態の真相を知っているらしく、突如出現してきたパイオニア3に対して一切の接触を禁じる不可解な命令を出した。
・ハインツ、リード、フィリップ
かつてパイオニア3に乗り込んでいたハンターズ。
ハインツがヒューマー、リードがフォニューム、フィリップがレイマー。
恐怖心で錯乱したパーティーメンバーのアンドロイドに、アルタードビーストと誤認され射殺されたとされる。
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タンタロスことタロスのかつての仲間達。
タロスと共にマーリカを救出したが、その後出現した小型デ・ロル・レの騙し討ちを受け、触手に貫かれて惨殺されてしまった。
おまけにその際に注入されたD細胞によってゾンビ化までされてしまい、やむなく射殺された。
マーリカは勿論、タンタロスにとっても仲間が目の前で殺された挙句ゾンビ化し、自らの手で殺さざるを得なかったことは強いトラウマであり、彼は本編時点でも3人やアーチェに「人殺し」と罵られる悪夢に苦しめられている。
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・テレサ
リンクスがクジカと別れてから教官になるまでの間、よくコンビを組んでいたレイキャシール。
レベルとセクションIDは不明。
元々は軍の試作機であり、非常に高い戦闘能力の持ち主だが、感情表現を可能とする新開発のAIを組み込んだところ動作が不安定になり、お払い箱にされてハンターズに転身した模様。
表情豊かでお喋りだが、他人の感情の機微を察することはイマイチ苦手で、ドジかつコミュ障。
元軍用ということには妙なこだわりがあるらしく、周囲からいくら「見た目を変えよう」と勧められてもモスグリーンのカラーリングを保ち続けている。
クジカの大ファン。
●シフォン家
・クジカ・シフォン
古風な口調が特徴的なフォマール。
休職中だがハンターズで、レベルは85。セクションIDはホワイティル。
フォーブの名家、シフォン家の現当主であり、政財界に大して強い影響力を持つ。
現役時代はリンクスの相棒であり、強力なフォイエ系テクニックで敵を焼き尽くす最強のフォースとして「爆炎姫」の異名で知られていた。
しかし、逆にそれ以外のテクニックのレベルを碌に挙げておらず、ラグオルにいた時はレスタすらレベル1(自分の傷しか治せない)。もし当時のオンラインにこんなフォースがいたら地雷扱い間違いなしだっただろう
一応現在は高レベルのグランツも使えるようなので、少しはマシになったのだろうか?
一見すると奥ゆかしい淑女だが、本来の性格はむしろお茶目で冗談好き。
シフォン家の名前を気にせず対等に接してくれるリンクスは、彼女にとって唯一心を許せる相手である。
シフォン家は代々、呪術や妖術、マジック等に優れた血を取り込むことで神秘に通じる血統を作り上げており、彼女もまた優れた第六感を備える。
メイン武器は不明だが、予備の武器としてハンドガンを所持。また、実家の蔵にはM&A60ヴァイスなどの強力な武器を多数保管しており、武器マニアらしい節も見られる。
・ムザル・シフォン
シフォン家の重鎮であり、クジカの祖父。
高齢により一線を退き、課長の役割はクジカに一任しているが、現在でもその頑明さは衰えていない。
クジカと同じく、かつてはハンターズだった模様。
・ハンゾ
クジカの側近を務める、黒服のレイマー。
クジカとは真逆の頭が固い常識人であり、彼女の型破りな性格に振り回される苦労人。
他にもシフォン家には直属のレンジャーとフォースが多数在籍しており、レベル50以上の凄腕も多い。
●軍
・ハルト・ジョーダン
フォーブ宇宙軍第三艦隊司令官。階級は大佐。
ナルタの父親であり、公私ともに厳格だが良識もある軍人の鑑。
ナルタが家出した際は親戚一同から連れ戻すよう求められたが、息子の選択を尊重して全て拒否していたという。
なんだかんだで、心の中では息子とお互いに好感を持ち合っている。
・ケネス・ブラバム
フォーブ宇宙軍第三艦隊旗艦、宇宙戦艦サラスヴァティーの艦長。階級は中佐。
ハルトとは苦楽を共にした戦友であり、プライベートではファーストネームで呼び捨てにし合う仲。
●パイオニア3
・クリフォード・デュラハン
かつて存在していた生体フォトン研究所に所属するニューマンの科学者。
ハンターズではないが、外見はフォニュームのそれと似ている。
ピンクのアフロヘア―とゴーグル、痩せぎすの身体と血色の悪い肌が特徴的な見るからに不健康そうな風体で、常にハイテンションな奇人。
己の研究のためなら常識や倫理など毛ほども気にしない、『PSO』本編のオスト博士を彷彿とさせるマッドサイエンティストにして、
言動の端々に「自分の天才さを誇示したい」という願望を隠しもしないナルシストである。
地上居留地襲撃事件と何らかの関わりがあるらしく、パイオニア3でアルタードビーストの研究を進めている。
回想シーンや映像記録では頻繁に登場するが、本編時点での本人はどこかに姿を隠し、事態を観察している模様。
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実は現在の名前と姿は仮のものであり、脳だけを様々な体に移植し続けて長年生き続けていた。
自分では「多分元々はヒューマンだった」と語っているが、何度も身体を交換していくうちに本来の姿も名前も性別も忘れ果てており、そしてそのことを気にも留めていない。
デュラハンとしての身体も本編よりかなり前に捨てており、アンドロイドのボディを手にして裏で暗躍していた。
自身にとって最高の作品である究極のアルタードビーストを生み出し、自分がその頭脳になって全てを取り込もうとする。
しかし、既にその精神はダークファルスに汚染されており、他者を野望の為に利用していたつもりが、自身もダークファルス復活のための駒として無自覚に動かされる姿はまさに因果応報。
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・D50/100
パイオニア3から送り込まれてきた旧式のアンドロイド。通称Dハーフ。
デュラハンからのメッセージを携えてハンターギルド総本部を訪れ、アーチェをパイオニア3に連れ去った。
「ハンターギルド所属、マスターはアーチェス・リーン」と登録されているが、真のマスターはデュラハンであり、アーチェからの要求もある程度までしか聞かない。
タンタロスのような自我を持たず、マスターからの命令がなければ行動できない旧式のはずだが、時折妙に人間的なふるまいも見せる。
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ネタバレ |
その正体は アンドロイドのボディに脳を移植したデュラハン自身。
旧式アンドロイドというのも偽装外装を纏った姿であり、実際は最新式。
性能は非常に高く、人間の脳を組み込んでいるおかげでテクニックも使用できる。
終盤で 偽装外装を排除して正体を現し、アーチェを拉致して究極のアルタードビーストに組み込んでしまうが…
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・マックス・トールマン
フォーブ政府財務局次官にして、かつてのパイオニア3総督。
直接は登場しないが、「地上の安全は保障された」と強弁してパイオニア3から選抜されたヒューマンとニューマンによる試験的居留地を設置し、他の乗組員にはラグオル上陸を原則禁止した挙句、
居留地襲撃事件が発生しても一切助け舟を出そうとしない、と不可解な決定ばかりを出した胡散臭い人物。
●その他
・ゲーリー、グレーゴア
ハンターギルドに難癖をつけに来た、悪徳企業マンソン運送のゴロツキ従業員達。他にも名無しの同僚が3人登場。
アーチェに売春を強要しようとした挙句、助太刀に来たナルタとローディーに対しても強気に振舞っていたが、ニューマンに対する差別的発言をうっかり口にしたばかりにその場にいたハンターズ全員を敵に回してしまった。
負け惜しみとばかりに、親会社ロータス貿易のコネを笠に着て「ハンターズライセンスを剥奪してやる」と脅したが、
ロータス貿易の更に親会社はアーンハート・エンタープライゼスであることをローディーに指摘され、結局恥をかくだけかいて退散していった。
【用語】
本作のみの独自解釈も多いため、『PSO』本編初出の用語についても必要に応じて改めて解説する。
●惑星フォーブ
人類の母星。エピソード2以降で言うところの惑星コーラル。
元々環境がいいとは言えない星だった上、資源枯渇と環境破壊によって、可住惑星としては限界に達しつつある。
貧富の差も激しく、居住性のいい降雨地帯は富裕層に独占されている。
スペースコロニーが建造されたこともあったが、劣悪な環境のせいで全て中止され、最後の希望としてパイオニア計画を始動させた。
その裏では軍部と政府がダークファルスの軍事利用を狙ってMOTHER計画を進行させていたものの、結果は『PSO』本編で描かれた通り完全な大失敗に終わった。
率直に言ってかなり詰んでいる星だが、最終的にパイオニア計画は一応成功しているため、20年経っても入植できていない正史世界よりは断然マシな状況である。
●惑星ラグオル
フォーブから出発した人工衛星が発見した、パイオニア計画の移民先となる惑星。
豊かな自然を有する美しい星だが、地底には謎の先文明の遺跡が眠っており、その最深部に封印されたダークファルスによって、ブルーバーストや原生生物の狂暴化、その他数多くの怪事件が発生していた。
ハンターズの奮闘でダークファルスが討伐されたのち、軍人と大型兵器を満載したパイオニア4こと恒星間宇宙戦艦ディアウスによって、今度こそ脅威は一掃された。
現在では軌道上のディアウスを拠点とし、段階的に入植が進んでいる。
●ハンターギルド
フォーブの傭兵達をまとめ、その活動をサポートする国営組織。
フォーブ軌道上の巨大宇宙ステーションを総本部とし、毎日舞い込んでくる無数の依頼に対応している。
所属するハンターズには技量や実績に応じて1から100のレベルを割り振っており、実力者はそれだけレベルが高く、報酬も莫大。
尤もラグオルならいざ知らず、フォーブではレベル70以上を適正とするような高難易度の依頼など数年に一度あるかないかといったところであり、
レベルが高すぎると却って仕事に恵まれなくなる問題点も抱えている。
基本的に実力主義だが、裏を返せば実力さえあれば相応の評価も得られるため、人種差別的思想を持つ者は基本的にいない。
一方、立場上軍とは衝突が絶えないため、軍への忖度として個人で携行可能な小型武器しか使用を認められておらず、その威力についても厳しい制限がある。
フォーブではそれでもよかったが、ラグオルではこのせいで、未知の脅威相手に携行武器のみで立ち向かう羽目になり、多くの犠牲者を出してしまった。
●フォトン
宇宙にあまねく存在する、万物を司るとされるエネルギー。
フォトンジェネレーターの開発により、フォーブではエネルギー資源として利用できるようになった。
これを用いた武器は射程こそ短いものの、実弾よりもはるかに強力で、信頼性も高い。
ハンターズはフォトン兵器の研究開発において軍よりも進んでおり、独自に携行用のフォトン武器を多数開発した。
軍は未だ小型化に難儀しており、戦艦などの搭載兵器としてしか実用化出来ていないが、ジェネレーター直結式なので破壊力はハンターズのそれとは比べるべくもない。
●テクニック
限られた者のみが使える神秘の技「マジック」を科学技術で疑似的に再現したもの。
正史では、エピソード2で「フォトンによって発動する」と設定されたが、本作では「精神感応機能を持つナノマシンを操作する技術」と解釈されている。
このナノマシンは使い手の意思次第である程度分子構造を変えることが出来、この性質を攻撃や治療などの様々な用途に利用する。
ナノマシンは使い手の精神力に応じた量しか携行できず、それ以上はナノマシン同士が互いに反応を起こして消滅してしまう。このナノマシンの所持上限がTP(テクニックポイント)である。
ゲームバランスを考慮しなくてもよい小説故か、全体的にゲーム中よりもかなり派手に描写されており、フォイエですら高レベルなものなら金属製の壁を溶かして大穴を空けられる。
グランツに至っては、極まったフォースがフルパワーで発動すれば惑星すら破壊出来ると噂されているという。それはどちらかというとメギドの立ち位置な気もしなくもない
●タイロン3
フォーブ軌道上に存在する宇宙ステーションのひとつ。
ハンターズの訓練施設であり、最新鋭のVR技術によって様々な状況での訓練を行える。
ラグオルから持ち込まれた生物もある程度保管されており、これを相手にした実践訓練も出来るようだ。
ワープアウトしてきたパイオニア3と衝突し、大破した。
●奥の院
シフォン家が所有する宇宙船、通称「黒船」の中でも最重要に位置するもの。
丸型の船体に漆黒の塗装が施されており、宇宙の暗闇にほぼ完璧に溶け込める。識別灯の類も一切備わっていない。
搭載された設備も高度で、軍の暗号化回線にも容易く割り込むことが出来る。
他にも「夏の御殿」など、様々な黒船が存在する。
●パイオニア3
パイオニア2がラグオルに到着したくらいのタイミングでフォーブを出発した、パイオニア級移民船の三番艦。
パイオニア2と同じく、乗組員は民間人が中心。
「ある区画」以外はほぼパイオニア2と同じ構造で、ゲーム中におけるシティエリアやロビーと思しき場所も登場する。
しばらくはパイオニア2と共にラグオル軌道上に留まっていたが、トールマン総督の決定によって、選ばれたヒューマンとニューマンのみがラグオル上陸を許され、地上に試験的に設置された居留地で暮らし始めた。
当然パイオニア2乗組員や選ばれなかった者(特にアンドロイド)からの不満が爆発したが、その後居留地がアルタードビーストの襲来によって壊滅する事件が発生し、地上の安全が確保されていなかったことが露見。
これに伴って不満の声は一気に鎮静化した。
最終的にディアウス到着によって入植は達成され、ラグオル生物の研究サンプルを満載してパイオニア2と共にフォーブに向けて出港したが、その途上で突如消息を絶った。
しばらくは完全に行方不明だったが、5年後になって、突如デュラハンたちを乗せてフォーブ軌道上に姿を現した。
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実はデュラハンの研究施設として政府から提供されており、フォーブとの通信を断った状態で究極のアルタードビーストの研究を進めていた。
居留地襲撃事件も、入植者=能力不足で用済みになった生体フォトン適応者を始末するついでに研究材料とすべく、人為的に起こされたもの。
5年経って遂に究極のアルタードビーストが完成し、最後のピースとなるアーチェを手に入れるべくフォーブに出現した。
デュラハン以外の乗組員は皆アルタードビーストに変異するか、究極のアルタードビーストの素材として取り込まれ、既に死亡している。
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●生体フォトン
生体フォトン研究所が「生物に秘められた癒しの力」と主張する未知のエネルギー。
詳細については分かっていないが、これを使うことで従来のテクニックよりもはるかに高度な治癒を行うことが出来る。
ダークファルスの力とは一見似ているようで、対極に位置するとされる。
●アルタードビースト
かつてラグオルに出現した、原生生物よりも強靭かつ狂暴な変異生命体の総称。ゲーム中で言うところの「A.Beast」。
ラグオル地下の研究施設から脱走したワーム型実験体デ・ロル・レの触手でD細胞を注入された生物が変異して誕生する。
幸い人間はD細胞を注入されてもアルタードビーストになることはない…と公表されているが、実際は真っ赤な嘘であり、
人間もD細胞によって生ける屍のようなアルタードビースト、早い話がゾンビに変わり果ててしまう。
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MOTHER計画の失敗を受けてなおダークファルス軍事利用を諦められなかった政府に対し、デュラハンが「ダークファルスに極限まで近づけた究極のアルタードビーストを開発し、生体フォトンの力でその意思を抑え込むことで自由自在に制御できるようにする」という計画を売り込み、パイオニア3で研究が開始された。
その過程で、ラグオルにもいなかった新種のアルタードビーストが多数誕生し、人間やアンドロイドすらその素材にされてしまった。
最終的に、デュラハン以外のパイオニア3全乗組員を犠牲にする形で究極のアルタードビーストが完成したが、実はそれもデュラハンの精神を密かに乗っ取ったダークファルスの思惑通りであった。
なお、マーリカ=アーチェは生体フォトンの力によってアルタードビースト(作中ではグラスアサッシン)と交流できたが、
彼女曰く「皆本当は大人しいのに、自分がこんな姿になって、どうしていいか分からない」とのこと。
彼らもまた、MOTHER計画とダークファルスの被害者なのだ。
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●ダークファルス
ラグオルでうごめいていた一連の怪事件の黒幕。
詳細な概要は
別項目を参照のこと。
ハンターズが甚大な犠牲を払って討伐したが、その実態については未だに最高機密である。
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ネタバレ |
ダークファルスそのものは実体を持たない精神体であり、ハンターズに倒されて肉体が滅びてからも存在し続けている。
新たな肉体を手に入れるべくデュラハンの計画に目を付け、彼の深層心理に取り憑いて密かに操っていた。
究極のアルタードビーストは最終的にナルタとアーチェの活躍で倒され、囚われていた人々の魂も解放されたものの、本体であるダークファルスの思念も消滅したという保証はどこにもないのだ…
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【余談】
- 本作の主要キャラクター達の外見は、『PSO』のキャラクリで再現出来るようになっている。本編からの時間の経過を考慮して、一部デザインは意図的に変えられているが、それでもぱっと見違和感がない程度には寄せられる。
因みにナルタ、ローディー、リンクス、クジカ、アーチェ、タンタロスは『闇の因子』のあとがきでキャラクリレシピが公開されている。
『PSO』は勿論のこと、『ファンタシースターユニバース』シリーズや『ファンタシースターオンライン2』シリーズでも復刻コスチュームを使えば再現出来るので、作りたい場合は参考にしてみよう。
- 庄司氏が本作の執筆中だった2001年1月31日、SEGAが家庭用ゲームハード事業から撤退することが発表された。
マークⅢ時代からの古参セガ人だった庄司氏はやはり大変ショックを受けたようで、『闇の因子』のあとがきでは「フェラーリがジャン・アレジの代わりにミハエル・シューマッハと契約したり、AppleがファンシーなカラーリングのiMacを発売したようなもの」と喩えた一方、
「あくまでトップを目指すために最も過激な選択をしたとすれば、それはそれでセガらしい決断と言えるかもしれない」との公式に対する申し訳程度の配慮コメントを残した。
諸君!追記・修正だ!追記・修正を開始したまえ。究極の項目を作り出す編集だ。編集だ!編集だ!!
最終更新:2025年10月06日 22:55